アダモス医療・環境関連ニュースNo.7 Ⅰ.医療関連ニュース p1~27 ケアネット 繊維摂取と大腸がんの関連~性別や部位で異なる 2015/08/26 これまでの研究において、繊維摂取量と大腸がん発症の間に 負の相関が認められているが、がんのステージによる違いは検 討されていない。スウェーデン・ルンド大学の Alexandra Vulcan 氏らは、The Malmo Diet and Cancer Study で、繊維摂取量と その供給源、および大腸がん発症との関連を、性別、腫瘍部位、 TNM 分類ごとに検討した。その結果、繊維摂取量と大腸がんの 間に、性別、腫瘍部位、繊維供給源により異なる関連が認めら れた。とくに果物やベリー類からの高い繊維摂取は、女性において大腸がん発症を防 ぐ可能性があるという。 The British journal of nutrition 誌オンライン版 2015 年 8 月 18 日号に掲載。 The Malmo Diet and Cancer Study は 45~74 歳の集団ベースのコホート研究である。 著者らは、食事データは改変食事歴法で収集し、TNM 分類は病理/臨床記録から取得、 再評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・2 万 7,931 人(女性が 60%)における 42 万 8,924 人年の間に大腸がん 728 例が認め られた。 ・繊維摂取量と大腸がんリスクとの間に負の相関がみられた(傾向の p=0.026)。 ・結腸がんに関しては、繊維摂取量と性別の交互作用はボーダーライン上であり(p= 0.052)、女性に限れば有意な負の相関(傾向の p=0.013)が認められた。 ・果物とベリー類の摂取量は、女性において結腸がんと負の相関がみられた(傾向の p =0.022)。 ・直腸がんにおいて、繊維(p=0.048)および野菜(p=0.039)の摂取量と性別との 間に有意な交互作用が認められたが、男女とも繊維摂取量やその供給源の間に有意な 関連はみられなかった。 ・繊維豊富な穀物製品の摂取量と N0M0 腫瘍における負の相関を除いて、異なった TNM ステージでは有意な関連は認められなかった。 (ケアネット 金沢 浩子) 原著論文;Vulcan A, et al. Br J Nutr. 2015 Aug 18:1-11. [Epub ahead of print] 医療ニュース 健康カプセル!「良い医者の見分け方」【8 月 23 日放送】 2015 年 8 月 24 日(月) Live on TV 2015 年 8 月 23 日(日) 7 時 00 分~7 時 30 分 / TBS -1- 「良い開業医の標榜診療科は1か2」 ドクター100 人に「どんな医者にかかりたいですか?」のアンケートで、良い医者 の条件を聞いた。今回は腕のいい医者の見極め方を紹介する。渡辺満里奈氏は「フィ ーリング」とし、三宅祐司氏は「受付の女の人が不細工の医者」などと話しした。 良い医者を見つける方法で、1 番多かった答えが「知り合いのドクターを紹介しても らう」「ナースの評判、MR などから情報収集」「看護師などの医療スタッフの評判」 などだった。番組では日本医学ジャーナリスト協会の松井宏夫氏と大西正夫氏に話し を聞いた。 まずは病院・クリニック選びのポイントについて、松井氏は特に外科医の場合は、 症例数を挙げ、 「心臓外科医などは年間 100 例を超えているかがポイント」と話しした。 続いて、大西氏は「常勤と非常勤の割合」と答え、 「常勤医師が多い方が良い」と語 った。ホームページに情報が記載されていることが多いとのこと。さらに開業医の場 合は、診療科の数がポイントで、1 人の医者の場合は「いくつも並んでいるよりも 1 ~2 個が目安だ」と話しした。しかし、複数の医者の場合は診療科が多くて、良い場 合もあるとのこと。 診察、手術、処方で見分ける良い医者 良い医者の見分け方、診察編 アンケートで多かった答えは「患者の話を聞く」「詳 しく話を聞いてくれる」が 28 票で堂々の1位となった。松井氏は「話を遮らずにしっ かり聞いて生活習慣まで引き出す人は良い医者が多い」と話しした2位は「はっきり と分かりやすく説明してくれる」「分かりやすい言葉で説明する」などが 20 票となっ た。松井氏は「イラストなどを使い説明する医者は良く、イラストが上手い先生は、 手術も上手だ」と話しした。 その他の回答としては「目を見て話す」など、患者をよく観ている医者などの意見 が多かった。例えば診察所に入っても作業をしていて、最初から患者の方を見ない医 者は要注意で、最初からしっかり患者を見ている医者は、異変に気づいてくれること が多いという。 良い医者の見分け方、手術編 アンケートで多かった答えが「術前の説明が上手」 「納 得するまでよく説明してくれる」が 30 票で堂々と1位となった。大西氏はいくつか手 術方法を示す場合がある時に、「先生や自身の家族が同じ状況ならどれを選ぶか?」 などと聞いてみることも大事で「かなり真剣に考えてくれると思う」と話しした。ま た手術後のケアも重要で、「患者の不安を看護師に任せるのではなく、医師として対 応してくれるかどうか」といった回答もアンケートで寄せられた。 良い医者の見分け方、処方編 アンケートで多かった答えは「たくさん薬を出さない」 「最小限の薬を出す」が 52 票で1位となった。松井氏は、薬の副作用を指摘した。ア ンケートでも「副作用の有無の説明」と答える人も多かった。しかし大西氏は、「薬 をたくさんもらわないと病院に行った気がしない」という患者もいると指摘。松井氏 は「最少の量を最低期間服用する」のが基本と説明した。 三宅は良い医者と感じた経験で、緊急手術でも、家族などを集めて納得するまで説 明してくれた体験をあげた。アンケートの少数意見も紹介。まずは「最新の知識があ り経験豊富」「威張っていない」「専門用語をなるべく使わない」といった回答があ った。 -2- 実際にいたありえないドクター ありえないドクターとして「手術中にこの先どのよう進めるか論議を始めるドクタ ー」や「回診で、『写真を』と頼むとカメラを持ってきた」「『1回しか説明しない から』と言って録音テープを渡した医者」などをあげた。 続いてはありえない患者。しっかり薬を飲んでいないのに、飲んでいるなどと嘘を つく患者が挙げられたほか「医者の指示に従わない」「ネットで調べて勝手に診断す る」などがあがった。また、次々に違う医者に行く「ドクターショッピング」もあげ た。医者に聞いたアンケートでは「ケガをしているのに縫わないで治せ!と言ってき た患者」「勝手に自己退院してしまう患者」などがあがった。 医者が治療しやすい良い患者について、松井氏は診察に必要なことをメモして持っ てくる患者をあげた。メモの内容としては「どのような症状がいつからあるか」「過 去の病歴」「現在服用している薬の情報」などをあげた。三宅氏は「人間と人間だと いう気持ちでいくことが必要」だと話しした。今回の健康カプセルの成分は…「話聞 き薬少なく(リスク無く) おトクダー(ドクター)」とまとめた。 ケアネット 失明患者の視覚を回復、人工網膜システムが欧米で初承認 2015/08/26 これまで治療法がなかった網膜色素変性症に対する、人工網 膜システム Argus II(Second Sight 社)が開発された。網膜色 素変性症は光受容体の消失により失明に至る遺伝性のまれな疾 患である。開発されたシステムは、メガネに搭載された小型カ メラと映像プロセッサにより、イメージを電気信号に変換し網 膜に移植した電気デバイスに送信して視覚を提供するというも の。今回、米国・ウィルズ・アイ・ホスピタルの Allen C. Ho 氏らは、Argus II 移植後 1 年および 3 年の臨床試験成績を報告。 網膜色素変性症による失明に対し Argus II の長期的な安全性と有用性が認められたこ とを明らかにした。なお、本研究の中間解析結果により承認申請がなされ、Argus II システムは世界初かつ唯一の網膜移植システムとして米国および欧州で承認された。 Ophthalmology 誌 2015 年 8 月号(オンライン版 2015 年 7 月 8 日)の掲載報告。 研究グループは、欧米の 10 施設において Argus II の安全性および有用性を検討す る臨床試験を行った。 対象は、網膜色素変性症により失明した 30 例で、片眼に Argus II を移植し、移植 眼と非移植眼およびシステムオン時とオフ時(残存視覚)の視覚機能を比較した。 主要評価項目は、安全性(有害事象)およびコンピューターによる客観的な検査で 測定される視覚機能である。 主な結果は以下のとおり。 ・移植 3 年後においても、30 例中 29 例で Argus II システムが機能していることが確 認された。 ・3 年間で 11 例、計 23 件の重篤な有害事象(デバイス関連または手術関連有害事象) -3- がみられたが、全例が標準的な眼科的方法により治療可能であった。 ・視覚機能検査および視力評価は、システムオフ時に比べシステムオン時で有意に良 好であった。 原著論文 Ho AC, et al. Ophthalmology. 2015;122:1547-1554. Epub 2015 Jul 8. 医療ニュース カルテ開示義務4割知らず 患者5千人、請求1割未満 制度の周知不十分 2015 年 7 月 21 日(火)配信共同通信社 患者の権利確保の実情を把握しようと厚生労働省の検討会が昨年12月~今年1月 にかけて、過去半年以内に入院や通院の経験がある男女5千人に「医療機関のカルテ 開示義務」を知っているかどうか聞いた結果、4割超が「知らない」と答えたことが 20日、分かった。実際に開示を求めたことがあるとした人は1割に満たなかった。 厚労省が患者の求めに応じた開示義務を医療現場向けの指針に盛り込んでから10 年以上たつが、患者が自らの症状や治療方針、経過を理解するための制度が十分に周 知されていない現状が浮き彫りになった。 調査は、患者への差別や偏見が相次いだハンセン病問題の再発防止に関する厚労省 の検討会が実施。患者の権利を守る取り組みの実態把握に向け、さまざまな疾患で入 院や通院をした20代以上の男女5千人を対象にインターネット上で質問し、全員か ら回答を得た。 カルテ開示義務を「知っている」としたのは57・8%で、「知らない」は42・ 2%。自身の診療内容の開示を求めたことがあるのは6・2%にとどまった。開示を 求めたことがある患者は、81・8%が「カルテが役に立った」としている。 カルテ開示は、患者と医師との信頼に基づく「安心・安全な医療」の実現に有効と の指摘もあり、検討会の座長を務める多田羅浩三(たたら・こうぞう)大阪大名誉教 授(公衆衛生)は「医療従事者よりも立場が弱い患者の権利を守るためにも、国は開 示義務が国民に十分認識されるよう普及、啓発に努める必要がある」としている。 医療事故の遺族で「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」代表の永井裕之(な がい・ひろゆき)さん(74)は「カルテは自分たちのものと思っている医療関係者 がまだ多いのではないか。カルテを見ることで患者は自分の病状をより理解できる。 開示義務があることを医療機関が患者に知らせ、国は医療関係者を教育する必要があ る」と話した。 厚労省の指針は、全医療機関が患者の求めに応じて原則開示するよう規定。個人情 報保護法も5千人分以上の個人情報を扱う医療機関に開示を義務付けている。 ※カルテの開示義務 厚生労働省は2003年9月、「診療情報の提供等に関する指針」を作成。医師や 薬剤師、医療機関の管理者ら医療従事者は、患者の求めがあった場合、第三者の利益 を害する恐れがあるときを除き、カルテや処方箋、手術記録といった診療記録を原則 開示しなければならないと規定している。一方、05年4月施行の個人情報保護法も、 カルテなど5千人分以上の個人情報を扱う医療機関は、患者の求めに応じて診療記録 を開示するよう義務付けている -4- 医療維新 県別医師給与、長崎 1 位、厚労省賃金調査 東京が最下位、全国平均 1150 万円、推計値 2015 年 7 月 24 日(金)配信池田宏之(m3.com 編集部) 厚生労働省が毎年実施している 2014 年の「賃金構造基本統計調査」の都道府県別デ ータを集計した結果、都道府県の医師年収の推計値にはばらつきがあることが明らか になった(調査結果は、厚労省のホームページ)。調査対象者の平均年齢は地域によ って差が大きいものの、最も高かったのは、長崎県で約 1794 万円、最も低かったのは 東京都で 747 万円。全国平均は、40.8 歳で 1150 万円となった。三大都市圏で、トップ 10 に入ったのは、京都府のみとなった。トップ 10 の中で、2006 年末に 10 万人当たり の医師数が全国平均を下回っているのは山形県のみとなっている。 調査は、2014 年 7 月に、無作為抽出された民間事業所を対象に実施。集計対象は、 「(医師を含む)10 人以上の常用労働者を雇用する」、5 万 98 事業所。医療機関の場 合は、国立病院機構と都道府県、市町村立の病院など地方公営企業の運営する病院以 外は、国立大学法人や学校法人なども含め、全て対象となっている。都道府県別の医 師の調査結果を見ると、平均年齢は 24.5 歳から 52.6 歳、集計対象者は 2 人から 1462 人とばらついている。 調査では、2014 年 6 月の賃金と、2013 年 1 年間の賞与を含む特別給与額を聞いてい る。年収の推計値として、「2014 年 6 月の給与×12 カ月分+2013 年の特別給与額」を 用いた。 その結果、最も高かったのは、長崎県で 1794 万円。他に 1700 万円を超えたのは、 熊本県 1754 万円、高知県 1749 万円、北海道 1730 万円。 一方、最も低かったのは、東京都の 747 万円。700 万円台は他に、石川県 751 万円、 岩手県 755 万円、広島県 759 万円となっている。700 万円台の都県は、いずれも平均年 齢が 40 歳未満だった。 超過勤務時間が最も長かったのは、岩手県(76 時間)、大阪府(42 時間)、鳥取県 (40 時間)。短かったのは、青森県(0 時間)、奈良県と千葉県(ともに 1 時間)。 厚労省賃金福祉統計室の担当者は、「調査で回答する個人の選択は、事業所に委ねら れている」としている。 平均年齢で区分して給与を見ると、結果は以下の通りとなった。 【45 歳以上】(10 自治体) 1 位 熊本県(1754 万円) 2 位 高知県(1749 万円) 3 位 鹿児島県(1549 万円) 【40 歳以上、45 歳未満】(18 自治体) 1 位 長崎県(1794 万円) 2 位 北海道(1730 万円) 3 位 和歌山県(1522 万円) 【40 歳未満】(19 自治体) 1 位 愛知県(1378 万円) -5- 2位 3位 山梨県(1335 万円) 滋賀県(1297 万円) -6- -7- 医療ニュース 夏休み明け、自殺集中 9月1日に最多131人 18歳以下、日付別に分析 2015 年 8 月 19 日(水)配信共同通信社 18歳以下の子どもが自殺した日を1972~2013年の42年間で365日別 に集計すると、夏休み明けの9月1日が131人と突出して多いことが18日、内閣 府の分析で分かった。長期休暇明けに自殺が多い傾向が鮮明となっており、文部科学 省は「先生の目が届きにくい休暇中は、家庭も子どもの行動や身なりの変化、体調な どに気を付けて見守ってほしい」と呼び掛けている。 内閣府は、厚生労働省の「人口動態調査」の情報を基に、自殺した18歳以下の子 ども計1万8048人を日付別に分析。9月1日に次いで、4月11日(99人)、 4月8日(95人)、9月2日(94人)、8月31日(92人)が多く、新学期開 始の前後に増える傾向がみられた。夏休み期間中の7月下旬~8月中旬は比較的、自 殺者が少なかった。 不登校の子どもや親を支援するNPO法人も18日、「学校がつらければまずは休 んで」とする緊急メッセージを出した。 内閣府などのまとめでは、小中学生の自殺の原因は「家族からのしつけ、叱責(し っせき)」「親子関係の不和」といった家庭生活によるものが多いが、高校生は「学 業不振」「進路に関する悩み」が増え、「うつ病」などの精神疾患も主な原因になる ことが明らかになっている。 内閣府は、中高年層よりも若年層の自殺率の減少幅が鈍いことを受け、厚労省の調 査結果を分析した。10代前半は他の年齢層に比べて予兆を見せずに自殺する傾向が あるとし、「子どもが周囲に悩みを打ち明けやすい環境を大人がつくることが重要」 と指摘している。 文科省も今月4日、都道府県教育委員会などに通知を出し、「18歳以下の自殺は 長期休業明けに急増する傾向があることに留意し、組織的に対応できる態勢を整え、 児童生徒への見守りを強化してほしい」と求めた。 文科省は子どもや保護者の相談窓口として「24時間子供SOSダイヤル」、電話 0570(0)78310を設置。NPO法人「チャイルドライン支援センター」も、 電話0120(99)7777で子どもの電話相談を受け付けている。 医療ニュース 大阪の院長に懲役2年求刑 無資格レーザー脱毛で 2015 年 8 月 3 日(月)配信共同通信社 医師免許がない従業員らにレーザー機器で脱毛などの医療行為をさせたとして、医 師法違反(無資格医業)罪に問われた美容外科「T―クリニック」(大阪市)院長の 医師土屋誠太(つちや・せいた)被告(44)と、妻の准看護師恵(めぐみ)被告(4 7)の論告求刑公判が31日、名古屋地裁(渡辺健司(わたなべ・けんじ)裁判官) であり、検察側は2人に懲役2年、罰金100万円を求刑した。 検察側は論告で「利益のために患者の安全をないがしろにした。行政指導を受けて も無視しており、順法意識に欠ける」と指摘。弁護側は最終弁論で「閉院を決め生活 の糧を失うなど社会的制裁を受けている」と執行猶予付き判決を求めた。判決言い渡 しは9月4日。 -8- 起訴状によると、2012~13年、大阪市のクリニック本院と名古屋市の分院で、 医師免許がない従業員らにレーザー機器による脱毛や入れ墨除去などの医療行為をさ せたとしている。いずれも起訴内容を認めている。 印刷する 医療ニュース 長崎大にBSL4施設 文科省、予算要求へ 2015 年 8 月 24 日(月)配信共同通信社 文部科学省は21日までに、エボラ出血熱などの危険な病原体を扱うバイオセーフ ティーレベル(BSL)4の施設を長崎大(長崎市)に設置するための必要経費を、 2016年度予算の概算要求に盛り込む方針を固めた。数年かけて大学内での建物新 設や実験装置の配備をすすめ、事業は100億円規模になる見通し。レベル4の施設 では、有効な治療薬がなく感染すると致死率が高い危険な病原体を扱う。このため住 民から反対の声も挙がっており、稼働には地元との調整が必要となる。 厚生労働省は今月7日、国内で唯一のレベル4の施設として国立感染症研究所村山 庁舎(東京都武蔵村山市)を指定。長崎大が認められると国内2カ所目となる。 国立感染研の施設は、地元との合意に基づき、感染者の診断や治療に関わる業務に 特化するのに対し、長崎大では、治療法や薬の開発につながる基礎研究や、人材育成 を担うことを目指す。他大学の研究者も加わる態勢を整える。長崎大病院が隣接する 坂本キャンパスが候補地に挙がっている。 日本学術会議は14年の提言で新たな施設整備の検討を求めていた。長崎大は感染 症研究に力を入れており、レベル4施設の設置に向け今年、海外での施設稼働状況を 調べる調査費1500万円を文科省から受けた。 医療維新 20 年後の保健医療政策、国民的議論を保険医の定数配置/総合診療の推進の声も 2015 年 8 月 25 日(火)配信 成相通子(m3.com 編集部) 20 年後を見据えた保健医療政策のビジョンについて、塩崎恭久厚生労働大臣の私的 懇談会「保健医療 2035 策定懇談会」(座長:渋谷健司東京大学教授)が 6 月に策定し た提言書を周知し、国民的な議論を深めるために、厚労省は 8 月 24 日、シンポジウム を開いた。策定懇談会のメンバーやアドバイザーの識者が、保険医の定数設定や総合 診療医の推進などについてディスカッショ ンした。 スクリーン右手には、会場からツイッターで 募集した意見を表示。提言書はコメディカル や終末期医療への言及が少ないとの声もあ った。 冒頭のあいさつで塩崎大臣は、厚労省内に 提言書の実現に向けた推進本部を設置した ことを紹介。「実行するために、今日何をす るのか大事」として、9 月初めまでに省内の -9- 関係部局が提言書の 120 項目について、実現可能性を整理すると述べ、「必ず実行し たい」と意気込みを語った(『「保健医療 2035 推進本部」を設置、厚労省』を参照)。 策定懇談会の座長を務めた渋谷氏も登壇し、若手の識者や厚労省職員をメンバーに した策定懇談会で、充実した議論を行ったことをアピール。提言の実現に向けた動き について「プロセスが始まったのはうれしい」とした 上で、「提言書にはあえて議論を喚起する提案も盛り 込んだ。国民的な議論の端緒にしてほしい」と期待を 込めた。 提言書では、高価値の保健医療サービスを低コス トで提供する「リーンヘルスケア」、個人が必要なサ ービスを主体的に選択できる「ライフデザイン」、日 本の優れた保険医療制度をモデルに世界をけん引する 「グローバルヘルスリーダー」の 3 つのビジョンと、 これらを実現するための具体的な施策 120 項目を挙げ ている(詳細は「保健医療 2035」のホームページを参 照)。 パネルディスカッションでは、策定懇談会メンバーの日本医療政策機構理事の小野 崎耕平氏がファシリテーターを務め、渋谷氏のほか、東海大学教養学部人間科学環境 学科社会環境博士課程教授の堀真奈美氏、慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室 教授の宮田裕章氏、厚労省保険局総務課企画官の榊原毅氏、アドバイザーの地域医療 機能推進機構理事長の尾身茂氏、内閣官房社会保障改革担当室長の宮島俊彦氏の 6 人 のパネリストが参加。ツイッターで会場からの意見もリアルタイムで壇上のスクリー ンに表示された。 地域間格差をどう乗り越えるか 意見が相次いだのは、医師の地域や診療科の偏在の問題。地域ごとに人口の高齢 化の速度や資源が異なり、地域医療に関して中央集権的な決定をするのは困難だとの 見方に対し、尾身氏は「東北地方などでは、県を超えた医師の偏在の問題など、県内 の資源だけでどうにかできる限界を超えている。地域連携を支えるオールジャパンで の意思決定が必要だ」と指摘。「この県のこの診療科の医師はこれぐらいでいいとい う議論は、これまではタブーだったが、プロフェショナルを尊重しつつ、地域のニー ズに沿った配置をする意思決定が求められる」と主張した。 これに対して渋谷氏は、地域の医療ニーズに合わせた病院機能を整備する地域医療 構想に触れ、「成功したらいいと思うが、本当に成功するのか疑問。在宅医療もでき れば理想的だが、経済的なコストが高いとの指摘もある。病床機能を再編して、在宅 に任せれば全て解決するとは思えない。民間で人々が求めるサービスを提供すること も重要だ」と意見を述べた。 座長を務めた渋谷健司東京大学大学院教授は多くの人が提言書を読んで議論が沸き起 こることを期待すると話した。 また、提言書の「医師の偏在が続く地域での保険医の配置、定数の設定」と「自由 開業の標榜の見直し」の項目に触れ、「これは必ずしも強制的にやることではない」 としたのは、宮島氏。「地域医療は医師単独でやるのではなく、地域ケアに携わる人 -10- 材や地域の人がいて初めてできる。また、医師 1 人でやらなくてもいい。主治医と副 主治医で地域を診るという形もあるだろう。強制的ではなく、ネットワークとしてだ んだん形成されていく過程をたどる。強制してもできないのでは」と注文を付けた。 小野崎氏は、策定懇談会の中で一般から意見を募った際に、「国である程度、医師 や専門家の配置について、考えた方がいいのではないか」という意見が多かったこと を紹介。「医学部教育に多額の国費をかけて、国を挙げて育てた医師が、地域や専門 に(定数)配置されてもいいと思う人が割といることが分かった」と説明し、保険組 合が配置定数を決めるドイツの例を挙げ、今後の議論が必要だとした。 総合診療医はなぜ大切なのか 尾身氏は、日本ではこれまで縦型の専門医が中心になってきたが、専門医を増やす だけでなく、コモン・ディジーズを診るファーストコンタクトの医師の質を高め、増 やすことが必要だと指摘。総合診療医が 19 番目の専門医になったことに触れ、「今回 初めてポジションが明確に定義された。これまでは総合診療医を選んだ人は専門家に なれないと思われていた。今後はキャリアディベロップメントが重要になる」と述べ た。 榊原氏は、個人的な意見と断った上で、「自己負担の議論はこれからだが、良かれ と思って在宅は厚めに診療報酬が付くようにしていたが、患者はより多く払わないと いけなくなる。提供者には厚く、受診者には負担を減らすようなインセンティブも議 論していいのではないか」と提案した。 宮田氏は、総合診療医は専門医よりも、医学知識の常時アップデートが難しいと指 摘し、「IT 化や専門医チームとの相談で支援できる」と指摘。渋谷氏は、「生活習慣 病の指導や予防などの公衆衛生の視点も必要になる。重要なのは、患者にとっての価 値をどう高めるか。マネジメント能力やコミュニケーション能力など基本的なコンピ テンシーを持った人材の育成が必要だ」と話しした。 医療ニュース 日本の臨床医学の論文数は 1 万 6,646 件、世界 5 位 内閣府会合 臨床 2015 年 8 月 25 日(火)配信厚生政策情報センター 科学技術指標と科学研究のベンチマーキング 2015(8/20)《内閣府》 内閣府は 8 月 20 日、科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーシ ョン会議の有識者議員との会合を開催し、「科学技術指標と科学研究のベンチマーキ ング 2015」の報告を受けた(p1~p9 参照)。「科学技術指標と科学研究のベンチマーキ ング」は科学技術・学術政策研究所が、日本と主要国の科学技術活動に関する状況を まとめたもの。論文数や注目度の高い論文数などから分野ごとに分析している。 研究開発のアウトプットの量的指標である「論文数(2011 年~2013 年)」は、日本 が全分野合わせて 7 万 7,094 件で世界第 5 位。世界の全論文の 6.2%を占めた(p312~ p313 参照)。 臨床医学分野では、論文数は世界 5 位の 1 万 6,646 件で、全世界の 6.2%を占めてい る。1 位はアメリカ 8 万 5,371 件(シェア 31.9%)、2 位はイギリス 2 万 3,392 件(同 8.7%)、3 位は中国 2 万 941 件(同 7.8%)、4 位はドイツ 2 万 268 件(同 7.6%)(p326 ~p327 参照)(p368~p369 参照)。 -11- 他方、質的指標の「被引用件数の多い論文数(Top10%補正論文数、2011 年~2013 年)」(p271 参照)では、日本は全分野合わせて 6,546 件で第 8 位。全世界の 5.2%の 割合を占めている(p312~p313 参照)。 臨床医学分野では、日本は 1,337 件で第 10 位で、全世界の 5.0%の割合。なお、1 位はアメリカ 1 万 3,253 件(同 49.5%)、2 位はイギリス 3,970 件(同 14.8%)、3 位はドイツ 3,072 件(同 11.5%)だった(p326~p327 参照)(p368~p369 参照)。 資料 1 P1~P35(4.2M) 資料 2 P36~P251(6.9M) 資料 3 P252~P269(4.8M) 資料 4 P270~P376(2.3M) 資料 5 P377~P401(3.9M) 資料 6 P402~P455(9.9M) 資料 7 P456~P479(0.8M) 資料 8 P480~P681(22.4M) 資料 9 P682~P705(0.9M) 医療ニュース 海水浴での細菌感染:怖いのは海水よりもビーチの砂 提供元: HealthDay News 2015/08/06 細菌が気になるなら、ビーチによくいく人は海よりも腰 を下ろす砂を恐れる必要がある―こんな研究結果が、 「Environmental Science & Technology」オンライン版に 6 月 30 日掲載された。米ハワイ大学(マノア)の Tao Yan 氏 らの研究。 ハワイのビーチの水と砂を用いた研究で、大腸菌などの糞便汚染を示す細菌は水よ りも砂に「多量」に認められた。Yan 氏らによれば、過去 10 年の研究で、ビーチの砂 の大腸菌レベルは付近の海水の 10~100 倍であることが判明したという。 同氏らは汚水で汚染されたビーチおよび海水の実験室シミュレーションを行い、大 腸菌を含む全体的な細菌集団の経時的な変化を観察した。砂の検体は、オアフ島のク アロアビーチの満潮線の 1.5 フィート(約 45cm)上側で入手した。 シミュレーションでは、細菌の減少は海水よりもビーチの砂ではるかに遅い傾向が みられた。これにより、通常、海水よりもビーチに大腸菌が多い理由の説明がつく可 能性があるという。 大腸菌などの細菌が砂の中に長期間存在する理由について、Tan 氏らは、排水中の細 菌が砂の中の「バイオフィルム」に入り込みやすい可能性、および細菌の増殖を防ぐ 効果のある日光が砂により遮られる可能性を挙げている。 Yan 氏らは、「実際、排水で汚染されたビーチの砂は海水よりも、慢性的な細菌源と なる可能性がある。水質モニタリングと公衆衛生に対する影響を評価するうえで、ビ ーチの砂は慎重に検討する必要がある」と述べている。 原著論文;Zhang Q, et al. Environ Sci Technol. 2015;49:8531-8540. ケアネット 成功している人は過剰飲酒リスクが高い? HealthDay News 2015/08/03 高収入で健康な 50 歳以上の人―いわゆる「成功者」が、1 つ注意しなくてはならな いことがあるという。過剰な飲酒のリスクが高いということだ。英国の慈善機関 Age UK -12- の Jose Iparraguirre 氏率いる研究チームによると、「中流階 級の現象」として、「健康状態が良好で、十分な収入があり、 学歴も高く社会的に活発な人は、有害なレベルの飲酒をする確 率が高い」という。 今回の研究では、イングランドに居住する 50 歳以上の 9,000 人以上を対象に 2008~2009 年と 2010~2011 年に実施した調査 の回答を追跡した。男性では週 22~50 単位、女性では週 15~ 35 単位の飲酒があれば問題飲酒のリスクが「増えつつある」と し、男性で週 50 単位、女性で 35 単位を超えていればリスクが 「高い」とした。ビール 1 パイント(568 ml)またはワイン小グラス 1 杯でアルコー ル 2 単位に相当するものとした。 研究の結果、問題飲酒のリスクは、男性では 60 代前半がピークでその後は減少し、 女性では年齢とともに減少していた。女性では収入の高さと問題飲酒のリスクに相関 が認められた。喫煙、学歴の高さ、健康状態の良好さは、いずれも男女ともにリスク に関連していた。 雇用形態は有意な因子とはならなかったが、女性では仕事を引退しているとリスク が高かった。抑うつや孤独感にリスクとの関連はみられなかったが、男性では別居や 離婚を含めて一人暮らしをしている人は問題飲酒が多かった。男性では白人に問題飲 酒がみられる比率が高かった。この研究は、「BMJ Open」オンライン版に 7 月 23 日掲 載された。 この知見から、問題飲酒は成功している高齢者の隠れた健康面・社会面の問題だと いえると、研究グループは指摘している。米シルバー・ヒル病院(コネチカット州) の Eric Collins 氏は、豊かな暮らしが問題飲酒のリスクを高める理由として、余暇の 時間が豊富にあることを挙げている。また、健康に不安がない人は過剰に飲酒しても 自分は大丈夫だと考えており、財政面でも十分に酒類を買う余裕があると同氏は説明 している。 米ズッカー・ヒルサイド病院(ニューヨーク州)の Bruce Goldman 氏は、今回の知 見からリスクのある高齢者を特定する重要性が示されると述べるとともに、「医療従 事者は簡単で汎用性のある飲酒スクリーニングを取り入れるべきだ。アルコールの使 用とリスクについて患者と率直に話すきっかけにもなる」と指摘している。 原著論文 Iparraguirre J. BMJ Open. 2015 Jul 23;5:e007684. 医療ニュース シリーズ:私の医歴書◆高久史麿・日本医学会会長 高校 3 年生、成績は 227 人中 109 位◆Vol.5 スペシャル企画 2015 年 8 月 5 日(水)配信橋本佳子(m3.com 編集長) それで、次第に勉強するようになりましたね。私が入ったのは、旧制五高の理 1。数 学が得意なので、理論物理をやりたかった。あの頃、湯川秀樹さんがノーベル物理賞 をもらったこともあり、興味を持っていました。けれども、実際に物理の講義を受け てみると、全然つまらなかった。それで理学部に行くのが嫌になり、工学部も線を書 いたりするのが苦手で、農学部にはあまり興味がなく……。結局、キリスト教的な考 えもあって、医学部にしようと思ったのが、五高の 3 年生のときです。 -13- ですから、1 年生、2 年生のときは、植物や動物の授業 を全然受けてなかったのです。動物と植物の先生のところ に行って、「医学部を受験したいから、講義を受けたい」 と言ったら、「全然、問題ない」との答え。そもそも昔の 高等学校は、出席も何も取らなかったですから。講義以外 には、植物と動物の本、それぞれ 1 冊買って、勉強しまし たね。 遠い親戚に一人医師がいるくらいで、私の親戚にはほと んど医師がいませんでした。実はもともと医師を目指して いたのは、兄でした。しかし、日本に引き揚げてきてから、 肺結核にかかりました。当時は、ストレプトマイシンはな く、治療と言えば、ただ寝ているしかなかった。福岡高等 学校に入っても、休学が多かったですから最終的に兄は 医学部をあきらめて、九大の文学部を選び、 第五高等学校時代(写真提供:高久氏) 結局、医師にはならなかったのです。 ――医学部を目指すことを決めた高久氏。最初は九大を目指していた。その進路を東 大に変えたのは、どんな理由だったのだろうか。 医学部に行くと決めた私は、九州に住んでいたので、最初は兄と同じ九大に行くつ もりでした。それが変わったのは、私が五高 3 年生の夏休み。広島県の宮島で、全国 の高等学校の YMCA の大会が開催され、私は五高の代表で行きました。宮島で全国から 集まった学生と合宿をしたのですが、東京から来た学生が、何となくスマートという か、やはり良く見えたのですね。合宿の内容はあまり覚えていないのですが、その点 だけは印象に残っています。広島から小倉に帰る汽車の中で、「やはり東京の方がい い」と思い始めました。 当時は、終戦直後のこともあり、国立大学を 2 校受けられたのです。それでまず九 大の試験を受けました。九大の試験は、やさしかったですね。英語の試験は、15 分く らいで書き終えました。その足で夜行列車に乗り、東京大学の試験を受けました。途 中、小倉駅に見送りに来た母と兄に「試験はどうだった」と聞かれた時、「九大は通 ったと思うよ」と答えました。一方、東大の試験は難しかったですね。英語も、試験 時間いっぱいの 1 時間かかりました。合格する自信はなかったのですが、幸い、合格 通知の電報が来ました。その日もいつもの通り、卓球をしており、家に帰ると両親が とても喜んでいました。 ――大学入学にめぐっては、面白いエピソードがある。 これは後で聞いた話ですが、東大に合格したので、九大の方は手続きなどは何もし ていなかったら、兄の友達が言うには、九大の学内の立て看板に、「高久史麿、事務 所に出頭すべき」と私の名前がデカデカと張り出してある、と……。私が入学式で代 表であいさつする予定だった。その私が、一向に入学手続きをしないから、呼び出さ れたと聞きましたが、本当かどうかは分かりません(笑)。 昨年だったかな、熊本大学に行く機会があって、その際に、「五高記念館」に行き ました。当時の赤レンガの建物が残っていてね。私たちは五高の最後の卒業生。「五 高記念館」には、一期から最後の年まで、各学年 3 人ずつの名前が載っているプレー -14- トが飾られていて、そこに私の名前もありました。五高からは 2 人、総理大臣が誕生 しています。佐藤栄作と池田勇人。卒業生の成績表が全て残っているというので、有 馬朗人先生が文部大臣の時、熊本に行かれた時、「2 人 の成績表を見たい」とお願いしても、個人情報だから ダメだと断られたそうです。私は自分の成績表が渡さ れ、「飛行機の中で見てください」と言われました。 その理由は成績表を見て分かりました。高校 1 年生の 時は 236 人中 45 位、2 年生は 226 人中 42 位、3 年生の 時はなんと 227 人中 109 位でした(笑)。 五高記念館(写真提供:高久史麿氏) ケアネット 新しいがん免疫療法、これまでと何が違う?~肺がん医療向上委員会 2015/08/04 ※ 7 月 27 日(月)、都内で第 8 回肺がん医療向上委員会 が開催された。その中で、 委員長である中西 洋一氏(九州大学大学院医学研究院臨床医 学部門内科学講座呼吸器内科学 教授)が、注目を集める新し いがん免疫療法について、これまでの免疫療法との違い、抗 PD-1 抗体薬の試験成績と今後の課題について講演した。 これまでの免疫療法との違い 免疫療法は、患者の免疫応答と関係なく、一定期間経過する と消失する「受動免疫療法」と、患者の免疫応答を誘導する「能 動免疫療法」に分けられる。また、この分類とは別に、特定の がん抗原に対する免疫を強化する「特異的免疫療法」と、免疫機能全般を強化する「非 特異的免疫療法」に分けられる。 中西氏によると、非特異的免疫療法の中には、免疫力全般を高め、ある程度の有効 性が示されている免疫グロブリンやピシバニールのほか、プロポリスやアガリクス、 丸山ワクチンなど有効性に関しては“怪しい”と言わざるを得ないものが含まれる。 これらはまったく効果がないわけではなく、免疫力を若干高めるというもので、その もの自体が怪しいわけではない。しかしながら、それらを「免疫を高めるから、がん に効く」と紹介したり、宣伝したりすることで“怪しい”ものになってしまっている という。 がんの免疫療法としては、受動免疫療法においては、がんを標的とした抗体や細胞 療法、また、能動免疫療法には、がんワクチン、サイトカイン(IL、TNFα、GM-CSF)、 T 細胞活性化メディエーターがある。現在注目されている新たな免疫療法は、この T 細胞活性化メディエーターである。これまで開発されてきた免疫療法の多くは特異的 免疫療法であるが、T 細胞活性化メディエーターは非特異的免疫療法である、と中西氏 は強調した。また、T 細胞活性化メディエーターには、アクセルである共刺激経路と、 大きな注目を集めている、免疫のブレーキである免疫チェックポイント(免疫抑制経 路)がある。 現在、肺がんにおける免疫チェックポイント阻害薬として期待されているものとし -15- て、抗 PD-1 抗体(ニボルマブやペンブロリズマブなど)と抗 CTLA-4 抗体(イピリム マブなど)がある(肺がんに対しては現在、国内未承認)。その違いについて中西氏 は次のように説明した。CTLA-4 はリンパ組織における抗原提示を制御し免疫系全体を 抑制するのに対し、PD-1 は不特定多数のがん特異的免疫を抑制する。よって、抗 CTLA-4 抗体のほうが、抗 PD-1 抗体より効果が強いが副作用も多い可能性がある。 ニボルマブの肺がんにおける試験成績と今後の課題 ニボルマブの扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対する CheckMate017 試験、非扁 平上皮 NSCLC に対する CheckMate057 試験は、どちらも進行期肺がんのセカンドライン におけるドセタキセルとの比較で、全生存期間(OS)を主要評価項目として実施され た第 III 相試験である。これらの試験の OS のハザード比は、扁平上皮がんで 0.59、非 扁平上皮がんで 0.73 と、どちらも驚くべき結果が認められ、肺がんに対する免疫療法 で初めて科学的に有効性を証明した。さらに、安全性にも期待が持てる結果であった。 一方、これらの試験では、ニボルマブ群とドセタキセル群の生存曲線の交差と、PD-L1 発現とニボルマブの効果の相関という 2 つの点において、検討すべき結果が示されて いる。非扁平上皮がんではニボルマブ群とドセタキセル群の生存曲線が交差しており、 ニボルマブにまったく効果のない例が存在する可能性があるという。また、非扁平上 皮がんでは PD-L1 の発現割合の多い症例でニボルマブ群が優れており、PD-L1 発現とニ ボルマブの効果に相関がみられたが、扁平上皮がんにおいては PD-L1 の発現の有無に かかわらず、ニボルマブ群が優れていた。 中西氏はこれらの結果をまとめ、抗 PD-1 抗体ニボルマブは既治療の NSCLC(扁平上 皮がん、非扁平上皮がん)に対して、従来の抗がん剤に比べ、明らかに優れた結果が 示されたと述べた。しかしながら、ニボルマブの効果を予測するバイオマーカーにつ いて、PD-L1 は関連がある場合とない場合があるため不十分であるとし、また、治療開 始の早い段階で効果のない症例を見極めて次の治療を考えることが必要であると強調 した。 最後に、中西氏は、肺がんに対する薬物療法において、これまでの化学療法と分子 標的療法に加え、免疫療法というもう 1 つの武器が手に入ったが、今後、どのように 使い分けていくか、どのように併用するかを、安全性の点を含めてしっかりと検討す る必要がある、と結んだ。 ※肺がん医療向上委員会 特定非営利活動法人日本肺癌学会が、肺がん患者とその家族に正しい情報を提供する とともに、正しい診断と治療がなされる環境を目指し、学術団体、がん領域に関わる 患者支援団体、臨床試験グループ、製薬・臨床検査関連企業など、肺がん医療に関わ るすべての関係者との連携の下、2013 年 11 月に設置。 (ケアネット 金沢 浩子) 医療ニュース ジェネリック医薬品市場が急拡大!さらなる普及に向けた課題 2015 年 8 月 21 日(金)配信 薬キャリ Plus 後発品(ジェネリック医薬品)市場が急拡大している。 8 月上旬までにリリースされたジェネリック医薬品メーカー大手 3 社(沢井製薬、東和 -16- 薬品、日医工)の 2015 年 4~6 月期連結決算を並べてみたところ、そのいずれもが、 同期比過去最高の純利益を更新していることが分かった。 沢井製薬 売上高 293 億円(対前年同月比 17%増) 純利益 50 億円(同 48.1%増) 東和薬品 売上高 194 億円(同 17.9%増) 純利益 22 億円(同 74.6%増) 日医工 売上高 350 億円(同 15.3%増) 純利益 22 億円(同 20.0%増) 政府が医療費削減政策の一環としてジェネリック医薬品の利用促進を積極的に推し 進めていることも背景にあり、現状で 50%強の普及率も、程なくして政府目標値に達す るものと考えられる。 4 月に富士経済が発表した市場調査結果によると、2014 年のジェネリック医薬品市 場規模は 6,766 億円(見込み)。2017 年のジェネリック医薬品市場規模は 9,240 億円 (2013 年比 151.9%)にまで拡大する見込みで、医療用医薬品全体の市場規模が 2013 年比 105.4%と予測されていることをふまえると、ジェネリック医薬品市場の急成長ぶ りは明らかだ(詳細は富士経済「国内のジェネリック医薬品市場を薬効領域別に調査」 に記載)。 しかし、ジェネリック医薬品の普及には課題も多い。 患者側には価格面でのメリ ットがある一方で、先行薬との添加物や剤形の違いから、厳密には効果にぶれが発生 するリスクがあることは、すべての薬局できちんと説明されているとは言い難い。 また、薬価差益を享受しようと、薬局側が意図的に先行薬を優先して販売する場合 もあるなど、ジェネリック医薬品の更なる普及に向けては、今後一層、サービス面、 制度面の整備が必要不可欠であると考えられる。 ケアネット 1日2時間、座るより「立つ」と健康に好影響 HealthDay News 2015/08/11 たとえ定期的に運動をしている人でも、座って過ご す時間が長いと心血管系に悪影響をおよぼすことが、 オーストラリアの研究者らにより報告された。座る時 間が長いと血糖値や脂質値が上昇し、体重増加、心疾 患の発症につながるが、1 日 2 時間、座位から立位に 替えることで、これらの指標が改善し、ウエスト周囲 長も低減するという。 「座る替わりに立って過ごすことが、心血管代謝に 好影響をおよぼす。座るよりも立つ時間を長くすることで、血糖値やコレステロール 値は改善し、さらに、座る時間をウォーキングに替えることでウエスト周囲長や BMI の改善も図れる」と、研究を主導したクイーンズランド大学の Genevieve Healy 氏は 述べている。 この報告は、「European Heart Journal」オンライン版に 7 月 30 日に掲載された。 なお、今回の研究は、立つことやウォーキングが健康に対して有益という因果関係を 証明するものではない。 同氏らは、オーストラリア糖尿病・肥満・ライフスタイル研究(Australian Diabetes, Obesity and Lifestyle Study)に参加した 36~80 歳の男女 782 人に活動量計を提供。 これにより、対象者が(1)座位、(2)臥位、(3)立位、(4)歩行、(5)走るとい -17- う活動に費やす時間を追跡した。 また、対象者には、血液検査、血圧・ウエスト周囲長・身長・体重(BMI)測定を実 施。活動量計は 24 時間、7 日間にわたって装着された。 その結果、1 日 2 時間を座位から立位に替えると、空腹時血糖値が 2%、トリグリセ ライドが 11%それぞれ有意に低下し、立っている時間が長いほど HDL-C 増加と LDL-C 低下に関連していた。 また、1 日 2 時間を座位からウォーキングやランニングに替えることで、BMI が 11% 低下し、ウエスト周囲長が 7.5cm 減少することもわかった。ウォーキングに替えた場 合には、さらに食後 2 時間血糖値の 11%低下、トリグリセライド値の 14%低下に関連 していた。 「自身の心臓の健康とウエスト周囲長低減のためにも、“座るな、立ち上がれ”」 と、同氏は訴えている。 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)心臓病学教授の Gregg Fonarow 氏は、 「これまで多くの研究から、座っている時間の長さが糖尿病や心疾患、若年死亡に関 連することが示されている」と指摘。座っている時間が長い人では、たとえ定期的に 運動していても早期死亡リスクが高いが、一方で、最も健康のリスクが高いのは、ま ったく運動しない人であるとの考えを示している。 付随論説を執筆した米メイヨークリニック(ミネソタ州)の心臓専門医である Francisco Lopez-Jimenez 氏は、 「これまで社会は、“運動”に注意を払いすぎてきた。 1 日の間に座っている時間を長くとりすぎないこと、“立つ”といった低強度の運動の 重要性にも留意すべきだ」と述べている。 原著論文 Healy GN, et al. Eur Heart J. 2015 Jul 30. [Epub ahead of print] ケアネット 双極性障害の自殺、どの程度わかっているのか 2015/08/18 双極性障害患者の自殺企図や自殺死には多くの要因が影響を 及ぼしている。国際双極性障害学会(ISBD)では、こうした要 因の存在やその影響度に関する文献をまとめた自殺に関するタ スクフォース報告書を発表した。筆頭著者であるカナダ・トロ ント大学の Ayal Schaffer 氏らは、「研究の対象やデザインが 不均一性であるため、これら要因の影響度を再検討し確定する さらなる研究が必要である。このことが最終的には、双極性障 害患者のリスク層別化の改善につながる」と述べている。Australian & New Zealand Journal of Psychiatry 誌オンライン版 2015 年 7 月 14 日号の掲載報告。 ISBD は、「双極性障害」と「自殺企図または自殺」をキーワードに 1980 年 1 月 1 日から 2014 年 5 月 30 日までに発表された論文を対象として、システマティックレビ ューを行った。双極性障害患者の自殺企図や自殺死に関連すると思われる要因につい て、すべての報告を調査した。要因を、(1)社会人口統計学的、(2)双極性障害の 臨床的特徴、(3)併存疾患、(4)その他の臨床変数、の 4 つに分類し分析した。 主な結果は以下のとおり。 ・20 の特異的要因が自殺企図や自殺死にどのように影響するかを調査した 141 件の研 -18- 究を特定した。 ・要因については、それぞれのエビデンスのレベルや一致の程度にばらつきがあった。 ・その中で少なくとも 1 件の研究で、以下の要因について影響があることが認められ た。性別、年齢、人種、婚姻状況、宗教、発症年齢、罹患期間、双極性障害のサブタ イプ、初回エピソードの極性、現在/最近のエピソードの極性、優位極性、気分エピソ ードの特徴、精神病、精神疾患の併存、パーソナリティ特性、性的機能不全、自殺や 気分障害の一親等家族歴、自殺企図歴、若年期のトラウマ、心理社会的要因。 関連医療ニュース 双極性障害、退院後の自殺リスクが高いタイプは 双極性障害とうつ病で自殺リスクにどの程度の差があるか うつ病と双極性障害を見分けるポイントは 原著論文 Schaffer A, et al. Aust N Z J Psychiatry. 2015 Jul 14. [Epub ahead of print] ケアネット 脳卒中リスク、日本でも居住地の経済状況が影響 2015/08/17 地区の社会経済状況の水準を指標化したものを、地理的剥奪指 標(areal deprivation index)という。これまで欧米の多くの 研究で、この地理的剥奪が循環器疾患リスクに影響する因子であ ることが示されている。しかし、アジアにおける検討はこれまで なかった。今回、国立がん研究センターによる多目的コホート研 究(JPHC 研究)で、地理的剥奪指標と脳卒中死亡および発症リ スクとの関連が前向き研究で検討された。その結果、居住地の剥 奪指標が脳卒中の発症に影響することが明らかになった。著者らは「地区の社会経済 状況は脳卒中リスクを減少する公衆衛生介入の潜在的なターゲットになりうる」とし ている。Journal of epidemiology 誌オンライン版 2015 年 3 月 5 日号掲載の報告。 対象となったのは、JPHC 研究に参加した 40~69 歳の日本人男女 9 万 843 人。地理的 剥奪指標に応じて、脳卒中の死亡率(平均追跡期間 16.4 年)、および発症率(同 15.4 年)の調整ハザード比を推定した。共用 frailty モデルを用いた Cox 比例ハザード回 帰モデルを適用した。 主な結果は以下のとおり。 ・個人の社会経済的状況で調整後、脳卒中発症の調整ハザード比(95%CI)は剥奪指 標の最低群(最も裕福な地区)を基準として、 低い順に 1.16(1.04~1.29)、1.12 (1.00~1.26)、1.18(1.02~1.35)、1.19(1.01~1.41)(最高群:最も貧しい地 区)であった。 ・この関連性は、行動および心理社会的な因子(喫煙、飲酒量、身体活動、ストレス、 婚姻状況)で減弱したものの、依然、有意であった。さらに、生物学的な心血管リス ク因子(過体重、高血圧・糖尿病・高脂血症の既往歴)で調整することにより、この 関連性は有意ではなくなった。 ・居住地の剥奪指標と脳卒中の死亡率には有意な関連性は認められなかった。 原著論文 Honjo K, et al. J Epidemiol. 2015;25:254-260. -19- ケアネット やはり優れたワルファリン!(解説:後藤 信哉 氏 東海大学医学部循環器内科教授) 臨床研究適正評価教育機構 2015/08/19 脳梗塞後の心房細動患者でのワルファリンの有用性/BMJ(2015/08/18 掲載) BMJ 誌は、NEJM 誌、JAMA 誌とは別の方向の研究を掲載する傾向がある。 本研究は新薬でもなく、仮説検証研究でもない。「Get With The Guidelines (GWTG)-Stroke program」という、文字通りガイドライン遵守率を上げようとする病院 群における観察研究の結果である。 筆者はこの GWTG を直接知らないが、米国の健康維持機構(HMO:health management organization)の 1 つと理解している。筆者は米国に 4 年住んでいたので、国民皆保 険により患者の医療機関選択が自由な日本と、「医療もビジネス」と考え、保険があ っても自由に医療機関を選択できない米国の差異を体感していた。 自由主義経済の米国では、保険会社も医療機関を選択する。診療ガイドラインを遵 守する医療機関の治療成績が良いのであれば、多くの保険会社が医療コストがトータ ルで低くなるガイドラインを遵守する病院と契約を結ぶ国が米国である。ガイドライ ン遵守を売り文句にした医療機関は「われわれのグループはガイドラインを遵守する ので、医療コストが低いです。ぜひ、われわれと契約してください」と、保険会社と 折衝することになる。そのときに、保険会社を説得するデータとして、本論文のよう なデータベースを蓄積することが病院には得になる。 日本の医療は明らかに public sector であるが、米国の医療は基本競争原理の働く private sector である。private sector ゆえに evidence based の世界に通用する evidence 集積のインセンティブが各医療機関に働く。金持ち優遇と批判を受けながら 米国の医療システムが分厚く崩れないのは、fair な競争原理に支えられているゆえで あろう。 脳卒中のため入院した心房細動症例の脳卒中リスクは高い。ワルファリンが使用さ れていない心房細動にて、脳卒中で入院した 1 万 2 ,552 例を対象とした研究というデ ザインも面白い。「ガイドラインを遵守する」ことを売り物にしている病院でも、こ のリスクの高い症例群の 12%には、退院時になんらかの理由によりワルファリンを使 えなかった。脳卒中を発症するまでワルファリンを使用していなかった心房細動例で も、初回発症後はワルファリンを使用した群において在宅可能期間が長く、心血管イ ベントの発症率も低かった。 本研究は米国の保険医療データベースである。基本、自由診療の米国ではメディケ アを受け、Get With The Guidelines (GWTG)-Stroke program に参加した病院は、米国 すべてではない。日本の保険診療は国民皆保険である。日本で保険病名として、「心 房細動」があり、「脳梗塞」の病名にて入院した症例のうち、退院時に「ワルファリ ン」が処方された症例と処方されていない症例の、その後の 2 年間の「入院」の有無 を調べるのは、レセコンデータをみるだけで簡単にできる。 医療が public sector で、保険システムの宣伝をしなくても皆が保険料を払ってく れる国民皆保険制度は、システムとしては素晴らしいが、米国人から見れば「fair で はない」、「科学的根拠がない」などと言われる隙がある。TPP などにより「非関税障 -20- 壁」が取り払われる前に、世界の人が理解できる科学の論理により、医療を構築でき ると良いと筆者は考える。 後藤 信哉先生の他のコメント いわゆる「新規経口抗凝固薬」:中和剤は臨床的に意味があるか?【2】(解説:後藤 信哉 氏)-383(2015/07/13 掲載) ヘパリンブリッジに意味はあるのか?(解説:後藤 信哉 氏)-381(2015/07/08 掲載) いわゆる「新規経口抗凝固薬」:中和剤は臨床的に意味があるか?【1】(解説:後藤 信哉 氏)-380(2015/07/08 掲載) J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とは J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な 啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指してい ます。 ケアネット 周術期の音楽が術後の疼痛・不安を軽減/Lancet 2015/08/24 成人患者の手術後の疼痛や不安感の軽減を支援する手段とし て、音楽が有効であることが、英国・ロンドン大学クイーンメ アリー校の Jenny Hole 氏らの検討で明らかとなった。医療にお ける音楽の使用の歴史は長く、19 世紀半ばにはフローレンス・ ナイチンゲールが入院患者の回復を目的に導入しており、周術 期の患者支援としては 1914 年に Evan Kane 氏が初めて報告した。 音楽は、施行が簡便で失敗がほとんどなく、非侵襲的で安全か つ安価な介入法であるが、その有用性についてはこれまでに包括的なレビューがいく つかあるものの、メタ解析は行われていないという。Lancet 誌 2015 年 8 月 12 日号掲 載の報告。 種々の対照と比較した 73 件の無作為化試験を解析 研究グループは、術後の回復における音楽の有効性を検討した無作為化対照比較試 験の論文を系統的にレビューし、メタ解析を行った(研究助成なし)。 対象は、手術を受けた成人患者の術後の回復に関して、周術期の音楽による介入と、 標準的なケアまたは薬物以外の介入(マッサージ、安静、リラクゼーションなど)を 比較した試験とした。中枢神経系や頭頸部の手術は除外し(聴覚障害の可能性がある ため)、英語以外の論文も可とした。 関連文献の検索には 4 つの医学関連データベースを用いた。2 人の研究者が試験の適 格性を評価し、別個にデータの抽出を行った。メタ解析には Review Manager(version 5.2)を用いた。ランダム効果モデルで参加者や介入法の異質性を調整し、アウトカム の測定法の違いを調整するために標準化平均差(SMD)を算出した。 質的な統合解析は日本の試験を含む 73 試験で行われ、メタ解析はこのうち 72 試験 で実施された。各試験の参加者は 20~458 例までの幅があり、手術手技は内視鏡によ る小手術から移植手術までさまざまで、ほとんどが待機的手術の試験であった。 全身麻酔下でも有効、患者満足度が向上、施設で工夫も可 選曲は患者または研究者が行っていた。患者だけが聴く場合はヘッドホンや音楽枕 -21- (音楽の再生機能がある枕)を使用し医療者も聴けるようにスピーカーを用いた試験 もあった。介入時期は術前、術中、術後のほか、これらを組み合わせた試験もあった。 介入は覚醒下または麻酔下に行われ、音楽の再生時間は数分のものから一定時間を 数日間にわたり繰り返す場合もあった。比較対照はさまざまで、通常のケアのほか、 無音のヘッドホン装着、ホワイトノイズ、平静な床上安静などが含まれた。 メタ解析の結果、音楽は対照に比べ、術後の疼痛(SMD:-0.77、95%信頼区間[CI]: -0.99~-0.56)、不安感(-0.68、-0.95~-0.41)、鎮痛薬の使用頻度(-0.37、 -0.54~-0.20)を有意に改善した。 疼痛と鎮痛薬の使用は、患者自身が選んだ音楽のほうが、患者の選択ではない場合 よりも良好で、不安はむしろ患者が選んでいない音楽ほうが良好な傾向がみられたが、 これらの差はいずれも小さかった。 また、音楽による介入の時期は、疼痛、不安、鎮痛薬の使用のいずれにおいても、 術前が最も効果が高く、次いで術中、術後の順であったが、これらも差は大きくなか った。 一方、術中の音楽が患者の回復に及ぼす効果は、全身麻酔を用いない場合(疼痛: -1.05、-1.45~-0.64、不安感:-0.91、-1.33~-0.48、鎮痛薬の使用:-0.58、 -1.05~-0.11)のほうが、全身麻酔を行った場合(-0.49、-0.74~-0.25、-0.48、 -0.91~-0.05、-0.26、-0.44~-0.07)よりも優れたが、全身麻酔下の改善効果 も対照に比べ有意に良好だった。 さらに、音楽は、対照に比べ患者満足度を有意に向上させた(1.09、0.51~1.68) 。 入院期間には差を認めなかった(-0.11、-0.35~0.12)が、入院期間の評価を行っ た試験は少なかった。また、音楽による介入が感染症や創傷治癒、医療費に及ぼす影 響を評価した試験はなかった。 著者は、 「音楽は術後の疼痛や不安感からの回復に有効であり、介入の時期や方法は 個々の施設や医療チームの状況に合わせて変えてよいと考えられる」とまとめ、 「実際 に臨床の現場に導入するには、著作権や知的財産の問題などの障壁があり調査を要す るが、個別の手術では患者向けの情報冊子や施設のガイドラインで患者に音楽を聴く よう薦めてよいと考えられる」と指摘している。 (菅野守:医学ライター) 原著論文 Hole J, et al. Lancet. 2015 Aug 12. [Epub ahead of print] ケアネット 各種ダイエット法の減量効果/JAMA アトキンス式(Atkins、低炭水化物[糖質制限]食)やオーニ ッシュ式(Ornish、低脂肪食)など固有の名称が付されたダイエ ット法は、実際に良好な減量効果をもたらしていることが、カナ ダ・トロント大学の Bradley C Johnston 氏らの調査で示された。 個々のダイエット法の優位性については種々の主張があり、どの 方法が優れるかは明らかではなかったが、今回の解析では、どれ も大きな差はないことが確認された。JAMA 誌 2014 年 9 月 3 日号掲 載の報告。 3クラス、11 種のダイエット法のネットワークメタ解析 -22- 研究グループは、ダイエット食のクラス別(低炭水化物食、中等量主要栄養素食、 低脂肪食)および個々のダイエット法別の減量アウトカムを評価するメタ解析を実施 した。対象は、過体重および肥満者(BMI≧25)の無作為化試験とした。 6 つの医学関連データベースを検索して選出された文献から、2 名のレビュワーが別 個にデータを抽出した。相対的な減量効果を推定するために、ベイズ的枠組みを用い たネットワークメタ解析を行った。主要評価項目は、6 ヵ月および 12 ヵ月時の非ダイ エット群との比較における体重減少とした。 ダイエット食のクラスは摂取エネルギーに占める主要栄養素の割合で定義し、低炭 水化物食は炭水化物が≦40%、タンパク質が約 30%、脂質が 30~55%、中等量主要栄 養素食はそれぞれ約 55~60%、約 15%、21~30%、低脂肪食は約 60%、約 10~15%、 ≦20%とした。解析には 11 種のダイエット法が含まれた。 低炭水化物・低脂肪食は半年で約 8kg 減量 48 件の無作為化試験(論文 59 本)に参加した過体重~肥満の 7,286 例が解析の対象 となった。全体の年齢中央値は 45.7 歳、体重中央値は 94.1kg、BMI 中央値は 33.7、ダ イエット食による介入期間中央値は 24 週であった。 6 ヵ月時には、すべてのクラスのダイエット法が非ダイエット群に比べ有意に良好な 減量効果を達成し、12 ヵ月時も有意差は維持されたが、6 ヵ月時に比べ効果は 1~2kg 低下した。また、6 ヵ月時は低炭水化物食の減量効果が相対的に大きかったが、低脂肪 食との間には明確な差はなく、12 ヵ月時には低脂肪食のほうがむしろ減量効果が大き かった。 すなわち、ダイエットを行わなかった群に比べ低炭水化物食の群は、6 ヵ月時に中央 値で 8.73kg(95%確信区間[credible interval:CI]:7.27~10.20kg)、12 ヵ月時に は 7.25kg(同:5.33~9.25kg)の減量が達成され、低脂肪食ではそれぞれ 7.99kg(同: 6.01~9.92kg)、7.27kg(同:5.26~9.34kg)の体重減少が得られた。中等量主要栄養 素食の減量効果は 6 ヵ月時が 6.78kg(同:5.50~8.05)、12 ヵ月時は 5.70kg(同:4.14 ~7.35kg)だった。 一方、個々のダイエット法の減量効果の差は小さかった。たとえば、低炭水化物食 を用いるアトキンス式は、同じ低炭水化物食のゾーン(Zone)式よりも 6 ヵ月時の減 量効果が大きかったが、その差は 1.71kg だった。 行動支援(カウンセリングなど)により、6 ヵ月時には 3.23kg(95%CI:2.23~4.23kg) と有意な減量効果が得られたが、12 ヵ月時には 1.08kg(同:-1.82~3.96kg)と有意 差は消失した。また、運動(ジョギングなど)の減量効果は 6 ヵ月時には 0.64kg(同: -0.35~1.66kg)と有意ではなかったが、12 ヵ月時には 2.13kg(同:0.43~3.85kg) と有意な改善が達成された。 著者は、 「低炭水化物食と低脂質食による減量効果は 1 年にわたり良好で、行動支援 や運動はその効果を増強する」とまとめ、 「ダイエット法の違いは大きな問題ではなく、 理想的には個々人が最も実行しやすく、長期に継続可能な方法を選ぶことが重要であ る」と指摘している。 (菅野守:医学ライター) 原著論文 Lagerqvist B, et al. JAMA. 2014; 312: 923-933. -23- ケアネット 唐辛子をほぼ毎日食べると死亡リスク低下/BMJ 2015/08/17 香辛料入り食品を習慣的に摂取すると、あまり食べない集団に 比べ、全死因死亡のほか、がん、虚血性心疾患、呼吸器疾患によ る死亡が減少することが、China Kadoorie Biobank collaborative group の Jun Lv 氏らの調査で示された。香辛料 は、世界の食文化に不可欠の要素であり、食品の味や風味付け、 彩り、保存食のほか医療用としても長い歴史を持つ。最近は、と くに味付けのための使用が増加しており、中国では全国的に唐辛 子の消費量が多いという。一方、カプサイシンなど、香辛料の主要な生理活性成分は、 種々の慢性疾患において有益な役割を果たすことが、実験的研究や地域住民研究で報 告されている。BMJ 誌オンライン版 2015 年 8 月 4 日掲載の報告より。 約 49 万人を約 350 万人年追跡した前向きコホート研究 研究グループは、香辛料入り食品の習慣的な摂取状況と、全死因および原因別の死 亡との関連を評価する地域住民ベースの前向きコホート研究を実施した(National Natural Science Foundation of China の助成による)。 2004~2008 年に、中国の地理的に多様な 10 地域で 50 万人以上の参加者の登録を行 った China Kadoorie Biobank のデータを用いた。ベースライン時にがん、心疾患、脳 卒中に罹患していた参加者を除く、30~79 歳の 48 万 7,375 人(男性 19 万 9,293 人、 女性 28 万 8,082 人)が解析の対象となった。 ベースライン時に、参加者は「前月に、香辛料入り食品をどのくらい食べましたか」 と質問され、 「まったくあるいはほとんど食べない」 「数日のみ」 「週に 1~2 日」 「週に 3~5 日」「週に 6~7 日」の中から 1 つを選んで回答した。 「週に 1~2 日」 「週に 3~5 日」 「週に 6~7 日」と答えた者は、さらに「あなたが食 べた香辛料入り食品に使用された香辛料の主な原料は何ですか」との質問に対し、 「生 唐辛子」 「乾燥唐辛子」 「唐辛子ソース」 「唐辛子油」 「その他」 「不明」の中から回答し た(重複回答可)。 香辛料入り食品をほぼ毎日(週 6~7 日)摂取している集団は、それ以外の集団に比 べ、農村地域居住者や喫煙者、アルコール摂取者が多く、赤身肉や野菜、果物の摂取 頻度が高かった。また、全体で最も摂取頻度の高い香辛料のタイプは生唐辛子(約 8 割)であり、次いで乾燥唐辛子(約 6 割)であった。 フォローアップは 2004~2013 年に行われ、フォローアップ期間中央値は 7.2 年(350 万 4 人年)であった。この間に、男性 1 万 1,820 人、女性 8,404 人が死亡した。 ほぼ毎日食べると全死因死亡のリスクが 14%減少 香辛料入り食品の摂取頻度別の絶対死亡率は、週 1 日未満の群が 1,000 人年当たり 6.1 であり、週 1~2 日の群が 4.4/1,000 人年、週 3~5 日の群が 4.3/1,000 人年、週 6 ~7 日の群は 5.8/1,000 人年であった。 既知のリスク因子や可能性のあるリスク因子で補正後の全死因死亡率は、男女とも に摂取頻度と強い逆相関の関係を示した。全体では、週 1 日未満と比較した死亡の補 正ハザード比(HR)は、週 1~2 日が 0.90(95%信頼区間[CI]:0.84~0.96)、週 3~5 日が 0.86(95%CI:0.80~0.92) 、週 6~7 日は 0.86(95%CI:0.82~0.90)であった。 -24- 香辛料入りの食品を週に 6~7 日食べる集団は、週に 1 日も食べない集団に比べ、全 死因死亡の相対的リスクが 14%減少した。 また、全体では、香辛料入り食品を週に 6~7 日食べる集団は、週 1 回未満の集団に 比べ、がん死、虚血性心疾患死、呼吸器疾患死のリスクが有意に低かったが、脳血管 疾患死や糖尿病死、感染症死には差がなかった。感染症死は、女性では週に 6~7 回食 べる集団で有意にリスクが抑制されていた。 週に 6~7 日食べる集団で、生唐辛子とそれ以外(乾燥唐辛子、唐辛子ソース、唐辛 子油、その他の香辛料)に分けてリスクを比較したところ、生唐辛子で有意なリスク 抑制効果がみられ、それ以外では有意差のない項目として、がん死、虚血性心疾患死、 糖尿病死が挙げられた。全死因死亡と呼吸器疾患死は、生唐辛子とそれ以外の香辛料 ともに、リスク抑制効果が有意だった。 摂取頻度と全死因死亡の逆相関の関係は、アルコール摂取者よりも非摂取者で、よ り強力であった(交互作用検定:p=0.033)。 著者は、 「観察研究であるため、因果関係は確定できない。これらの知見の一般化可 能性を示すには、別の集団においてさらなる前向き試験を行う必要がある」とし、 「エ ビデンスが蓄積されれば、推奨食品に加えられたり、ハーブ系の補助食品などの機能 性食品の開発につながる可能性がある」と指摘している。 (菅野守:医学ライター) 原著論文 Lv J, et al. BMJ. 2015;351:h3942. ケアネット 糖尿病の受診勧奨で受診割合が倍増―埼玉県 HealthDay News 2015/08/19 埼玉県の糖尿病腎症重症化予防対策事業で、糖尿病の治療を 放置していた人に受診勧奨を行ったところ、勧奨前に比べて受 診者の割合が倍増したことが報告された。 同県では、糖尿病重症化高リスク者が人工透析に移行するの を防止するため、特定健康診査やレセプトのデータを活用した 糖尿病腎症重症化予防対策事業を開始。医療機関未受診者や治療中断者への受診勧奨 や、通院中の患者への生活指導を行っている。 今回、レセプトデータ等から糖尿病の重症化リスクが高い人を抽出し、医療機関未 受診者と治療中断者に文書で受診を勧奨。さらに、重症化が進んでいると思われる人 には電話や訪問による勧奨も実施した。 その結果、2015 年 1~3 月に 18 市町で対象となった受診勧奨者 3,283 人のうち 698 人(21.3%)が医療機関を受診していた。内訳は未受診者 2,741 人では 611 人(22.3%)、 治療中断者 542 人では 87 人(16.1%)。1 カ月当たりの受診者の割合は、勧奨前 6 カ 月間の平均 4.1%に比べて、勧奨後 3 カ月間では 8.2%に上昇したという。 同県では、18 市町村の 698 人が受診により症状が維持された場合、未治療のまま合 併症が進行した場合に比べて、将来 20 年間にわたる医療費適正化の効果を約 10 億円、 年平均で約 5,000 万円と推計している。 -25- ケアネット がんを疑う症状があっても気付きにくいのは? 2015/08/19 社会経済的地位(SES)が低い人々では、がんが後期のステー ジで診断されるリスクが高い。これに対してはさまざまに解釈さ れているが、最近注目されているのは、がんが疑われる症状に関 する患者の知識の低さであり、これが治療の遅れにつながるとい う。英国・サリー大学の Katriina L Whitaker 氏らは、実際にが んの典型的な症状を経験している人々における「がんを疑うこ と」の差を調査した。その結果、今回対象とされた集団では、全 体的にがんを疑うレベルが低かったが、なかでも低学歴の人々でより低かった。この ことから著者らは、初期症状の見逃しが診断時のステージの差につながっている可能 性があるとしている。European journal of cancer 誌オンライン版 2015 年 8 月 8 日号 に掲載。 50 歳以上のがんと診断されていない 9,771 人に、長引く咳や嗄声など、がんを疑う 症状 10 項目を含む症状のリストと共に健康調査票を送付した。回答者に、過去 3 ヵ月 間にいずれかの症状を経験したかどうかを尋ね、もし経験していた場合には「何がそ れを引き起こしたと思うか?」と尋ねた。回答として、がんを挙げた場合には「がん を疑った」として点を付けた。SES は学歴により分類した。 主な結果は以下のとおり。 ・半数近くの回答者(3,756 人中 1,790 人)ががんを疑う症状を経験していたが、考え られる原因として、がんを挙げたのは 1,790 人中 63 人(3.5%)だけであった。 ・学歴の低さは、「がんを疑うこと」の低さと関連していた。考えられる原因として がんを挙げたのは、大学教育を受けた回答者で 7.3%、大学未満の回答者では 2.6%であ った。 ・多変量解析によると、低学歴は「がんを疑うこと」の低さと関連する、独立した唯 一の人口統計学的変数であった(オッズ比 0.34、信頼区間:0.20~0.59)。 (ケアネット 金沢 浩子) 原著論文 Whitaker KL, et al. Eur J Cancer. 2015 Aug 8. [Epub ahead of print] 臨床ニュース ファストフードはレストランより悪いとは限らない 塩分やコレステロールの量はレストランのほうが多い HealthDay News 2015 年 7 月 31 日(金) 慌ただしい食事は必ずしも悪くないかもしれない。ファストフード店よりも、普通 のレストランで食事をするほうが塩分やコレステロールの摂取量が多いことが、新た な研究で明らかにされた。研究著者で米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校助教 授の Ruopeng An 氏は、「ファストフードは悪者にされがちだが、それはあくまでも家 での食事と比較した場合のこと」と指摘している。 -26- 「European Journal of Clinical Nutrition」に 7 月 1 日に掲載された今回の研究 では、2003~2010 年に全米健康栄養調査(NHNES)により収集されたデータを調べた。 約 1 万 8,100 人の成人に、 24 時間以内に摂取した食事を 2 回記述してもらったところ、 3 人に 1 人弱がファストフード店で食事をし、4~5 人に 1 人がフルサービスのレスト ランで食事をしていた。 調査の結果、一部の主要なビタミン類(B6、E、K、銅、亜鉛)、カリウムおよびオ メガ 3 脂肪酸の含有量の面でみると、ファストフードや家で作る食事に比べ、フルサ ービスのレストランが最も健康的であった。しかし、レストランの食事には家での食 事に比べて 1 日あたり 58mg の余分なコレステロールが含まれていたのに対し、ファス トフードは 10mg にとどまることがわかった。1 日あたりの塩分含有量は、レストラン は家での食事に比べて 412mg 多かったのに対し、ファストフードは 300mg であった。 一方、飽和脂肪や砂糖の含有量の面ではファストフードが最悪であり、繊維質、ビ タミン A、D、C、マグネシウムも著しく乏しかった。外食する場所にかかわらず、肥満 の人はカロリー摂取量が多い傾向があり、黒人は白人やヒスパニック系よりもカロリ ー、脂質、塩分および糖分の摂取量が多かった。 また、通常のレストランで注文した食事を自宅で食べた場合、外食よりも健康的だ ったという。この理由はおそらく、外食は社交的イベントであることが多く、食事に 費やす時間が長いためだと An 氏は指摘している。 いずれにせよ、できる限り家で料理した食事を摂るほうがよいと An 氏は付け加えて いる。それが難しい場合のヒントとして、米テキサス大学サウスウエスタン医療セン ター助教授の Lona Sandon 氏は、油を使わず調理した野菜と脂肪の少ない肉のメニュ ーを選び、ハーフサイズやキッズサイズなど、なるべく少ない量を選択することを勧 めている。 -27-
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