故障診断整備のページ 整備工場における 故障診断整備 ススメ の 故障診断料を取らなくては生き残れない 日夜スキャンツールを駆使し、故障診 一連の流れから分かるように、診断 ゲなどから精密検査に移行し、重大な 断を行っている工場は多い。しかし、診 結果が紙で出ることで、事実と信憑性 腫瘍を取り除くことが出来、一命を取り 断料をいただいている工場は少ない。こ がマッチするのだ。もちろんユーザーに とめる。こういった経験を持っている人 の問題はいつしか肥大化し、自社の首 は車検時ではなく、予約時に提案する は少ないと思うが、ケースとしてはあり を絞めることになると、今回は啓蒙して ことで信頼感も高くなる。 うる話である。その際にレントゲン代を いきたい。 診断結果を紙で見せる利点 ケチる人がいるだろうか。だからこそ、 工賃というレパレートに換算できるもの 入庫時スキャンツール繋いでいますか? 目先の利益として、診断料をいただく ならば、いただくべき対価なのである。 多くの工場で診断料をいただけない のではなく、先の利益を見越して診断 実際に作業工賃をいただいていない工 のは何故だろうか? サービスするのが 料をいただく、と考えていただきたい。 場など見たことがない。ならば、診断料 当たり前になっていることも一因だが、 入庫時の診断状態を逐一、ユーザーに をいただくことに何のためらいもないは 最初からいただけないと思い込んでい 報告することで、ユーザーから、信頼感 ずだ。モノを売るのではなく、コトを売 ないだろうか。例えば一部のディーラー を得られることは先述の通りだが、 「こ る時代に突入しているのは、自動車業 であれば既に診断料をいただき、なお の会社は凄い!」と思わせる行為として 界も同じことと言える。トヨタやホンダ かつ診断結果を専用のシートとしてお も重要になってくる。この診断書にユー の売り方とベンツやBMWの売り方の 渡している。さながら病院のカルテのよ ザーの名前や車種なども入っているとよ 違いを見れば明白である。 うだ。仮にそのディーラーでは入庫車両 り効果的である。さらに言えばデータベ 全てにスキャンツールを繋いでいたとし ース化しておくことで、今後の営業材料 よう。その場合、潜在的な故障も割り出 にもなる。 すことが出来る。来月に車検を控えたユ ーザーに結果を見せたとして、 「なるほ 技術に対する対価 見せる(魅せる)整備分かり易い 説明を行うことが求められる だからといって、一昔前にカリスマ美 容師などという言葉が流行ったが、別に ど、ここの修理をしないと、いずれこん 前のディーラーの話ではないが、病 そこまでする必要はない。スキャンツー な問題が出るのか、じゃあ車検と一緒 気の場合は心電図やレントゲンを見な ルを使って実際に診断を行っている風 に修理しておいてもらおうかな」という がら医者と話した経験を、大体の人が 景を見せるだけでも違ってくる。もちろ 言葉が出てくる。 持っていると思う。レントゲンを見てカ んコードリーダーのような安っぽい機械 せいび界 APRIL 2015 vol.590 01 SEIBIKOHOSYA せいび広報社 故障診断整備のページ 診断レポートのサンプル ではなく、パソコンを使うような無線タ ことはもちろん、研修会などへの参加、 の心境としては、出来るだけ壊れないで イプだと効果的といえる。それなりの機 メーカーを呼んで勉強会を開くなど、積 あって欲しいところだろう。仮に修理と 械を使ってエラーコードを直接見せるこ 極的に動かなくてはいけない。もちろん ならなくても、代替となる場合もある。 とで危機感を与えると共に、 「わが社で それなりの機種を持っていない会社はま 診断料をいただき、今後のユーザーの 直せます」と一言添えるだけで魅せるこ ずは揃えるべきである。1台持っている カーライフを支えていくパートナーとし とが出来る。 から大丈夫などとは思わない方がいい。 て整備工場にあり続けていただきたいと もちろんその時に必要になってくるの が、分かり易い説明だ。専門用語を使っ 切に願う。 診断料の取り方 て難しく解説したところで、ユーザーは ここまで、読んでいただければご理解 お客さまが喜ぶものは何か クルマの知識は無いに等しい。 「O2 セン いただけると思うが、ユーザーを納得さ 結果として、喜ばれることをした整備 サーが壊れているのはインジェクターに せる材料さえあれば、診断料をいただけ 工場が生き残れる。今後マーケットはさ 原因があり、それにより触媒が…」など る。診断料をいただける努力や工夫が らに狭くなる。免許人口も減り、保有台 と言っても、およそ伝わらない。専門用 足りないから診断料を取れないでいる。 数も減ってくる。もちろん整備工場が淘 語は御法度である。 例えば紙一枚でも渡してしまえば、そ 汰されることは目に見えている。どれだ ならば、専門家として噛み砕いて説明 の結果が、良いにしろ、悪いにしろ、効 け車検を取っても、どれだけ車販に力を すべきではないだろうか。部品の名前で 果を持つことになる。太鼓判を押されて 入れても、選ばれる努力をした整備工 はなく、診断結果と一緒に実車を見せ 問題なかった、問題を指摘されて解決 場こそが生き残れる。診断料をいただく ながら症状を確認させる。 「しゃべりた 方法を提示してくれた。この2つの結果 ということは、ユーザーに対価を支払っ くないからメカニックをやっている」とい こそが真の需要と言える。整備工場はク てもらうことになる。100 万円のモノに う時代は最早終焉を迎えている。実際 ルマのお医者さんなのであって、車を直 は100 万円の価値があり、100 円のモ にクルマを整備しているメカニックだか すだけではない。医者は問題を指摘し、 ノには100 円の価値がある。診断料を らこそ、説得力があると言えるのだ。 改善に努めようと患者と歩調を合わせ いただくことの価値を与える、これが重 しかしながら、このような対応をする てくれる。もちろんクルマはモノを言うこ 要なのだ。 にはそれなりの機種と知識が必要にな とはなく、壊れるものは壊れるし、壊れ ることを考えると、自分自身で勉強する ないものは壊れない。しかし、ユーザー せいび界 APRIL 2015 vol.590 02 監 修:ボッシュ株式会社 長土居大介 SEIBIKOHOSYA せいび広報社
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