フーテンの寅さん・釣りバカの浜ちゃんから学ぶこと 先年、筑波大学教授で心理学者の石隈利紀教授の講義を受講する機会がありました。そ の講義の中で、石隈先生がお話しされていたことを思い出しました。人と人とのかかわり についてのお話しです。 積極的に話しかけることが得意な人、自分から話しかけるより相手の話を聞く方が得意 な人、いわゆる聞き上手と言われる人。それぞれ自分の生き方にあった方法でコミュニケ ーション活動を行っています。私たちの日常生活でも、「話す場面」「聞く場面」が在りま す。例えば、教師は教える人,子どもは勉強を教わる人という関係のイメージが定着しす ぎてはいないでしょうか。 教師が「わかる授業」を構成していくには、教え上手な教師に終始するのではなく,聞 き上手な教師になる必要もあります。子どもたちは,自分に対して「分かりやすい授業」 をしてくれる教師に信頼感や親近感等を抱きます。しかし、それが小手先のものかどうか を鋭く見抜く力を備えています。そこで、一人ひとりを生かす学習指導を工夫することが 大切となります。その基となるのが、教師と子どもの「絆」です。培われた絆をもとに、 間違いや失敗をおそれずに、のびのびと意見や質問を出すことのできる温かい雰囲気づく りに努めることです。そのためには、先ず教師が、どんな発言に対しても、嘲笑したり、 黙殺したりしないで柔軟に受け止めることが必要です。ふざけ半分の発言は別として、ど のような疑問や意見であっても批判・評価することなく、まず、傾聴し、受容するように 心がけることが大切です。「あなたの意見は、∼という考えなんだね」と、発言者に返す ようにする。これによって、発言した子は、「受けとめられた」という満足感を味わうと ともに、再吟味の機会を持つことになります。自分の意見を的確に相手に伝えることがで きる子どももいれば、その反対に、思っていることの半分も伝えられない子どももいます。 そこで、より自分らしさを表現したいと思ったとき、フーテンの寅さんと釣りバカの浜ち ゃんというユニークな人間性を持った二人を例として取り上げていたのです。 渥美清さんが演じる寅さんは、自分の思いを伝えるために、相手が変わるたびにその相 手に合った話し方をし、その相手の気持ちになりきろうと努力していました。つまり、相 手と一心同体になろうと試みるのです。しかし、残念ながら思いを結実させることができ ずに話が終わってしまうと言うパターンです。 西田敏行さんが演じる浜ちゃんは、自分の思いを伝えるためには、相手が誰であれ自分 の持ち味を少しも曲げることなく、ひたすら一直線に突き進むパターンです。しかし、こ れが案外うまくいく場合が多いという設定です。その裏には、浜ちゃん独特の人とのつな がりがあるのです。少々強引、自己中心的とも思える相手との接し方が実は、浜ちゃんの 人間性によって正当化されていくのです。 寅さん、浜ちゃんいずれも根底にあるのは「人間愛」であり「絆」なのです。日常生活 の中で私たちは、時には寅さん的手法を使い、また時には浜ちゃん的手法を使ってコミュ ニケーションを図っていかなければならないと思っています。 (校 長 佐 藤 強 平)
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