【 学校便り 8月号 NO

『素直な子供は伸びる』 -素直な姿勢は学びの基本-
尾道市立三成小学校
校長
武田
義治
親は子供を教え,導く存在です。そのためには小さい頃から,親の言うことを
素直に聴く習慣を身につけさせなければなりません。
「親は自分の思うようになら
ない強い存在である」と子供に認識させる必要があります。
民主的な親というのは,子供を甘やかし,機嫌を取り,言い分をそのまま受け
入れる親ではありません。親は子供を説得し,納得させることは必要ですが,お
もねる必要はないのです。子供に好きなことだけさせていると,自己中心的で,
我慢する力の弱い,謙虚さのない子供が育ってしまいます。
一方,親があまりにも専制的で居丈高な態度で子供に接していると,愛情に飢
えた状態となり,自己肯定感が十分育ちません。おどおどして大人の顔色をうか
がう子供,または家と学校での生活態度が大きくちがう子供が育ってしまいます。
このように,わがままに育ち,あまり厳しく叱られた経験がない子供の場合,
あるいは,ほめられることがあまりなく,威圧的な指導を受け続けた子供の場合,
学校でひとたび教師から叱られると,教師の言葉を素直に受け入れられないこと
が起こります。言い訳をして叱られた原因を自分以外のものに求めがちです。
叱ることがいい結果を生むかどうかは,受け止められ方によって大きな違いが
生じます。伸びていく子供は間違いなく素直な性格の子供です。耳に痛い苦言も
謙虚に受け入れます。一方,素直でない子供は他者の言葉を拒否します。丌遜な
態度で乱暴な言葉を発し,現状に安住するだけになってしまいます。
叱られたことが伸びるチャンスになるかどうかは,受け止める側が素直な心を
持っているかどうかで決まります。それは親の養育姿勢や家庭環境等によって左
右されますが,学校の教師に求められるのは愛情のある叱責です。素直さを育む
ようにかかわることです。そのためには,保護者との連携と価値観の共有が大事
になってきます。
教師が,掃除をさぼってばかりの子供を指導しても改善が見られないので,親
に連絡するとします。親が「先生が叱るのはもっともだ」と言えば,素直に指導
を受け入れるでしょう。反対に子供の勝手な言い分を鵜呑みにして怒ったり,
「家
では親の言うことをよく聞く,先生の指導に問題がある」と批判したりすると,
子供は自ら省みるでしょうか。教育者としての資質にかなり問題がある場合や指
導が理丌尽な場合は別として,親が子供の前で教師の悪口を言っていい事はあり
ません。親が教師に敬意を持っているからこそ,子供も教師を信頼して学ぼうと
するのです。
学校では,「教える者」と「学ぶ者」という教師と児童の立場を明確にし,「目
上の者」と「目下の者」という上下関係の中で一定の緊張感を保ち,お互い相手
を敬う関係があってこそ集団の秩序が保たれ,授業が成立します。
人の言葉に卑屈にならず,うぬぼれず,真っ直ぐ受け止める素直な姿勢は学び
の基本です。先生をはじめ,親や地域の方より指導されたことを素直に聞いて自
分を振り返ろうとする謙虚な態度を身につけさせたいものです。