平成26年度入学式式辞 宮崎市長戸敷正様、御来賓の皆様、御出席の皆様とともに、本日ここに、平成26年度宮 崎公立大学入学式を挙行できますことに、心から感謝を申し上げます。選び抜かれた211名 の新入生・編入生の皆様、ご入学、誠におめでとうございます。保護者の皆様にも心から お慶びを申し上げます。 1993年に建学された宮崎公立大学は、人文学部国際文化学科を開設し、グローバル化が ますます進む時代を予見して、語学・教養・少人数ゼミ教育を重視し、外国語の優れたコミ ュニケーション能力と豊かな教養、グローバルな知識を身につけた地域社会と国際社会に 貢献できる優れた人材を育成することを目標にしてまいりました。その成果は、97%とい う高い就職率に結実しております。特に中学校、高等学校の英語教員免許の取得と採用に つきましては高い実績を残しています。 本学は昨年、開学20周年を迎え、6月1日には開学20周年記念式典を挙行して、英国ス コットランドのスターリング大学との学術交流協定の締結や本学独自の奨学金制度の設立 を行い、11月には、広く市民の皆様にご参加いただいて20周年記念講演会を開催いたしま した。 ところで、ここ数年、全国的に国際系の学部・学科の新設や教養教育の見直しが進んで おります。本学でも将来を見据えて、これまで培ってきた教育をさらに押しすすめるため に、本年4月より新しいカリキュラムを導入いたしました。本日、ここに出席しておられる 新入生の皆さんは、この新カリキュラムの第1期生となります。 新カリキュラムの第1の特徴は、専門教育の充実です。専門課程を①言語・文化、②メ ディア・コミュニケーション、③国際政治経済という3つの専攻に分け、皆さんは選択し た1つの専攻を体系的に学ぶと同時に、他の2つの専攻科目も横断的に学ぶことができま す。専門ゼミにおいて、卒業論文の課題探究を通じて、自分の研究を発表したり、仲間の 研究に関して意見を交換しあう論理的思考力を養うとともに、コミュニケーション能力と プレゼンテーション能力を磨くことができます。 第2の特徴は、専門教育を支え、活かすための実践的なスキルの修得プログラムの充実 です。グローバルな社会で活躍するために必要な語学力やICT(Information and Communication Technology)、つまり情報通信技術などの実践的なスキルの修得です。高 い語学力に加えて、パソコン操作スキルにとどまらない情報収集スキルやプレゼンテーシ ョン・スキルなど現代社会で求められる実践的なスキルを皆さんに身につけてもらうため のプログラムをカリキュラムに組み込んでいます。 さて、現在、グロ-バル経済は、富める者と貧しい者、富める国と貧しい国の格差を拡 大しており、これが新たな国際的な紛争の火種となっています。また、文化的摩擦や文明 の衝突、さらには歴史的あるいは宗教的な問題が世界各地で対立や深刻な紛争を引き起し ています。このような国際情勢に対して、皆さんの国際性を養うことは大学の重要な役割 です。国際感覚を養うためには、単に外国語ができるということではなく、内外の歴史を 学び、日本の文化を理解した上で、論理的な思考能力、発信能力、自分の意見を持つ積極 性や自主性を養成することが不可欠です。 宮崎公立大学では、多くの学生が1年生から2年生にかけて、約1カ月間の短期研修プ ログラムに参加し、その後も多くの学生が3・4年次に公費派遣留学等で海外研修に出か け、学生の半数以上が在学中に海外渡航を経験しています。在学生の海外渡航の比率の高 さは、全国の大学の中でも注目されています。大学は、皆さんの国際交流を応援するため に、中国、韓国、カナダ、ニュージーランド、スコットランド等の大学との交換留学制度、 異文化実習制度など様々なプログラムを支援しています。 “Seeing is Believing.”、見 ることは信じること、 つまり、百聞は一見に如かずです。是非、皆さんも在学中に海外渡 航にチャレンジして異文化を自分の目で見て国際交流を体験してください。 教育は、人生における最も重要な投資です。今日から始まる4年間は、皆さんにとって 本当に貴重な人生の時間です。この4年間をどのように過ごすか、何を学ぶかが皆さんの今 後の人生を決定的にするといっても過言ではありません。しかし、授業に関連する1週間 当たりの大学生の学修時間の日米比較調査では、1週間に11時間以上勉強しているアメリ カの学生が58.4%もいるのに対して、日本の学生は14.8%です。1週間にまったく勉強し ない日本の学生の比率は9.7%、約1割にも達しています。さらに、日本の大学生の4割が 1日の読書時間ゼロ、1日の平均読書時間が26.9分という驚くべきデータが最近出されて います。勉強しない大学生が増え、大学生の本離れが急速に進んでいるということです。 孔子の言葉に「学びて思わざれば則ち罔し、思いて学ばざれば則ち殆うし」という言葉 があります。学ぶだけで考えなければ、道理が分からない。その反対に、考えるだけで学 ばなければ、独断に陥ると説いています。受け身で学ぶだけではなく、能動的に考えるこ とが大切だということです。信頼できる自分自身を確立するために、読書は欠かせません。 大学では、英語をはじめ、中国語、韓国語などの外国語を修得するとともに、是非日本語 を改めて勉強することも目標にしていただきたいと思います。 日本語を母国語とする者にとって、あらゆる語学の基礎は日本語です。日本語以上に外 国語が上達することはありません。逆に、外国語を学べば、日本語がさらに上達します。 語学のみならず人文科学、社会科学、自然科学等についても広く学んで教養を高めなけれ ば、たとえインターネット時代の世界共通言語としての英語をしゃべることはできても、 内容のない会話しかできません。グローバル社会では、通用しません。 入学後は、できるだけ沢山の本を読むこと、日本語と英語を始めとする外国語のボキャ ブラリーを増やすこと、つまり言葉の引き出しを豊富にするために時間をかけていただき たいと思います。辞書を引くあるいは調べる習慣は、一生役に立つ貴重な習慣です。さら に、勉強のみならず、大学生活は、また、出会いの場でもあります。課外活動、ボランテ ィア活動、地域活動その他の活動を通じて、大学内外の多くの人々との豊かな人間関係を 築いてほしいと思います。 本日の入学式は、皆さんが充実した4年間を過ごされるための新たな出発の日です。皆 さんが1日も早く、新しい生活と環境に慣れて、この人生の大切な時間を、自分という船の 舵を自分でとりながら夢と目標に向かって進んでいただきたいと思います。 良き先生、良き先輩、仲間との新しい出会いが沢山あると思います。この新しい出会い を通じて、皆さんの大学生活が、すばらしい人生の土台となることを心から祈念して、ご 入学のお祝いのご挨拶とさせていただきます。 平 成 26年 4 月 3 日 宮崎公立大学 学長 林 弘子
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