【2016年2月24日公開】 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ ~丸わかり! ロンドン発★欧州経済事情~ 「松崎美子」が注目テーマを一刀両断! 『ボリス・ショックで英ポンド急落』 ~「ユーロ/英ポンド」にも注目!~ 執筆者: (ロンドン在住/元為替ディーラー) ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 英ポンド相場がえらい事になっている。今週月曜日早朝に大きく窓明けしてオープンしたが、そ の後欧州時間に更に下げ足を速め、英ポンド/米ドルは 1.40 ドル台に突入した。この 1.40 ドル台と いうのは、2009 年 3 月以来のレベルであると同時に、2010 年にキャメロン首相が就任して以来の 安値である。当然かもしれないが、この日の英ポンドは主要 31 通貨全てに対して下落する深刻な 事態となった。 この急落の発端となったのが、英国で一番人気がある政治家として知られている現職ロンドン市 長のボリス・ジョンソン氏が「Brexit1(ブレクジット)支持」を表明したことである。 1 英国の EU 離脱のこと。British と exit の造語。 ●ボリス・ジョンソンとは、何者? アメリカのニューヨーク生まれで、ベルギー育ち。奨学金を貰い、英国のエリート校として有名な イートン校で学び、その後オックスフォード大学へ進学。卒業後、世界最古の日刊紙である英タイ ムズ紙に就職し、テレグラフ紙欧州特派員として転職。その後、スペクテイター誌の政治記者に転 進したため、私の中では政治家というよりも「ジャーナリスト」という印象が未だに強く残っている。 2008 年にロンドン市長に当選し、現在 2 期目であるが、今年 5 月に任期が切れるため、キャメロン 首相の後任として次期首相候補としての呼び声が高い。 ボリス (英国では皆がこう呼んでいる) は、2015 年に調査会社 ComRes 社が実施した「有権者 が選んだ最も人気の高い政治家」で堂々トップに躍り出たり、その 2 年前のインディペンデント紙 の世論調査でも、支持率が 44%と、キャメロン首相の 23%の 2 倍近くの人気を集めている。 うちの近所の辛口イギリス人でさえ、「僕はボリスのファンだ!」と公言して憚らない。彼は持って 生まれたカリスマ性に加え、ユーモアのセンスが非常に高い。どんな難しい問題が起きても、いつ もポジティブな言葉を使い、ジョークを連発して笑いを交えたスピーチをしている。たぶん英国の有 権者は、彼の言葉で慰められ、安心を受け取っているのだろう。 ●少しやり過ぎの英ポンド? しかし、いくらカリスマ政治家といっても、たった一人の人間の「Brexit 支持」だけで、ここまで英 ポンドが反応するものなのか?これについては、ロンドンのトレイダー達の間でも、「少しやり過ぎ だ」という意見が多いようだ。 ここで問題となるのは、いくらやり過ぎといっても、英ポンド/米ドルの最も重要なサポートである 1.40 ドル台まできてしまったのだから、落ち着いてはいられない。私のチャート・システムの英ポン ド/米ドル月足(1991 年夏からのデータ)で見ると、ヒゲでは何度か下抜けしているが、終値ベース で 1.4000 ドルより下で終わったことは一度もない。 ●「ユーロ/英ポンド」に注目したい! 英ポンド/米ドルの月足が 1.40 ドルを下抜けて終われば、売っても面白そうであるが、それ以外 の英ポンド・クロスのチャートを眺めていて、目に留まったのが「ユーロ/英ポンド」である。まず月 足をみると、チャート上で引いたピンクの下降チャネル内での推移となっており、大きな流れはま だ下向きのようだ。ここからのチャネル上限は、★印をつけた 0.8060/70 ポンドレベルとなっていて、 ちょうど 61.8%戻しと重なる。 次に「ユーロ/英ポンド」チャートを週足ベースに変えてみると、違った景色が見えてきた。それは、 黄色いハイライトを入れた 0.7770 ポンド近辺から 0.8060/70 ポンドにかけての「300 ポイント」のレ ンジ内での動きである。2007 年から 3 度に渡り (チャート上の青い丸の部分)、このレンジ内でい ったりきたりの動きとなっている。つまり、今回もこのレンジ内での行って来いの動きとなる可能性 もある訳だ。 そして、チャート上の黄緑の四角の部分をダブル・ボトムとみなすと、ターゲットはやはり 0.80 ポン ド High となり、現在の「ユーロ/英ポンド」の上昇ターゲットとも重なることを考えると、このレベルが 非常に重要なのがわかる。 ●まとめ いくらカリスマとはいえ、英国のたった一人の政治家の言動で、英ポンドはここまで過激に動き 始めた。6 月 23 日の投票日まで、果たしてどのような要人発言や世論調査結果が出てくるかわか らないが、Brexit 支持が増えれば増えるほど、ジェットコースター相場になる可能性が出てくる。 今年は年間を通じて、6 月の英国の国民投票や 11 月の米大統領選、そして春以降本格化するで あろう欧州難民問題、シリア情勢とトルコ・ロシアとの関係などの地政学リスクと材料がてんこ盛り の状態だ。トレードをする時には、感情的にならずリスク管理にだけは気をつけたいと思う。 -------------------------------------------------------------------------------【執筆者: 松崎美子氏(ロンドン在住/元為替ディーラー)プロフィール】 東京でスイス系銀行 Dealing Room で見習いトレイダーとしてスタート。18 ヶ月後に渡英決 定。1989 年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店 Dealing Room に就職。1991 年に出産。1997 年シティーにある米系投資銀行に転職。 その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、 証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。 -------------------------------------------------------------------------------【本レポートの趣旨】 本レポートは松崎美子氏より発行されているレポートであり、情報提供のみを目的として おります。 本レポート中のコメントは独自の見解に基づいたものであり、松崎美子氏、およびワイジ ェイFX株式会社共にレポート中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明 示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。 また、本レポート内のコンテンツ、データに関する著作権はワイジェイFX株式会社に帰属 しております。 コンテンツ、データ等は私的利用の範囲内で使用し、無断転載、無断コピー等はおやめく ださい。 さらに、かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、松崎美子 氏、およびワイジェイFX株式会社は一切責任を負いません。 最終的な投資判断は、他の資料等も参考にしてご自身の判断でなさるようお願いいたしま す。
© Copyright 2024 Paperzz