英国「EU 離脱」優勢か! 国民投票まで残り 2 週間

【2016年6月8日公開】
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
~丸わかり! ロンドン発★欧州経済事情~
「松崎美子」が注目テーマを一刀両断!
『英国「EU 離脱」優勢か!
国民投票まで残り 2 週間』
執 筆 者 : ( ロ ン ド ン 在 住 /元 為 替 デ ィ ー ラ ー )
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
英国の EU 離脱の是非を問う国民投票まで、あと「2 週間」となった。最近発表される世論調査を
見ると、やけに離脱支持が伸びていて、それを受け英ポンドが下落している。
どうして急に離脱支持が増えたのか?今回はそのことについて、現地イギリスから自分の考えを
伝えたい。
●最新世論調査結果
過去 3 週間の間に発表された世論調査結果を表にまとめてみた。調査手段は電話とオンライン
にわかれているが、今までずっと、「電話調査の場合は、残留>離脱になりやすい」傾向があった。
しかし、赤丸をつけた ICM 社の電話調査では、「残留<離脱」となった。
●離脱支持が増えたのは、移民問題がきっかけ
上の表で赤丸をつけた ICM 社の世論調査結果が発表されたのは 6 月 1 日であるが、これは 5
月 26 日に英統計局が発表した 「移民に関する四半期報告書」の内容が大きく影響していた。
(参照:英統計局 「移民に関する四半期報告書」 2016 年 5 月)
https://www.ons.gov.uk/peoplepopulationandcommunity/populationandmigration/internationalmig r
ation/bulletins/migrationstatisticsquarterlyreport/may2016
簡単な表にまとめたが、2014 年から 15 年にかけて、英国の移民数は 313,000 人から 333,000 人
に増えている。単純計算で、2 万人の増加となる。しかし、内訳を見ると、英国に入国した移民数
の差は 2,000 人の減少で、1 年で 2 万人増えた理由は英国から国外に出て行った人数が 22,000
人減少していたからだと判った。
しかし、統計局の発表があった翌朝の朝刊各紙は、「英国への移民、大幅増加!」というセンセー
ショナルな見出しをつけて報道し、それを目にした国民の多くは「EU に残っている限り、移民がど
んどん英国に入ってくる」と思い、離脱支持が増えたと考えられる。
●移民問題が重要な訳
離脱の判断理由の上位を占めているのが、「難民/移民問題」であることは間違いない。どうし
てこの問題がここまで重要視されるのだろうか?
主に 3 つの理由が挙げられるだろう。①移民に自分の仕事が奪われるかもしれない ②公営住宅
に入る順番が遅れるかもしれない ③難民/移民への補助金のおかげで、財政が苦しくなる (自
分の貴重な税金を、移民のために使われたらたまらない) 。
先週放送された国民投票に向けた TV 討論会では特に、②公営住宅に入る順番についての不満
が問題視された。英国の住宅不足は今に始まったことではないが、公営住宅の不足は著しい。そ
んな現状で、就職が難しくお金がない移民や難民達が、とりあえず寝るところを確保するという目
的で、公営住宅への入居が優先される。つまり、それまでずっと今か今かと自分の順番を待って
いた低所得層の英国人にとっては、いきなり割り込みされて順番を取られたことになる。
英労働年金省が毎年発表している「平均所得よりも低い収入の世帯調査」を見ると、英国の平均
収入額より 60%かそれ以上低い所得の世帯割合は、全体の約 35%となっている。これだけ多くの
低所得世帯が国の提供する公営住宅の順番を待っているのであれば、そこに他国の移民が割り
込んで順番を横取りされとなると、彼らの怒りは相当なものだろう。
(参照)
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/437246/households -belowaverage-income-1994-95-to-2013-14.pdf
●その他「離脱支持」の理由
1) EU 予算の不足
EU は今年度、約 200 億ユーロの赤字となる可能性が指摘されている。離脱支持派のボリス・
ジョンソン前ロンドン市長は、この問題を大きく取り扱い、英国が EU 残留を決めたらすぐに、
EU は英国に割り当てられた不足分の負担金支払いを迫ってくるとキャンペーンしている。
私の記憶違いでなければ、EU 予算の不足に関する負担は加盟国の合意が必要なはずで、
英国は「棄権」する権利を要しているため、キャンぺーン内容は 100%正しいとはいえない。
2) ユーロ危機に対する負担
ボリス前ロンドン市長はさらに、もしまたギ リシ ャ危機が起きた場合、それに対して英国が再
度財政負担を迫られるとアピールしている。
この点に関しては、ボリスは間違っている。今回の国民投票に向けた最終条件で、「今後いか
なるユーロ圏危機が起きた場合も、英国は金銭的負担をする義務は、一切ない」という約束を
取り付けている。
こう考えると、国民投票の投票権があるイギリス国民が、自分達の権利や条件をきちんと理解し
ておらず、キャンペーンの言葉を鵜呑みしていることになる。
●ここからの「英ポンド」
今週は、民放:ITV 局が 2 回、国民投票に関する TV 討論会を放映する。特に木曜日は、残留・
離脱それぞれ 3 から 4 人の政治家が登場し、同じ壇上で議論するようだ。ボリス・ジョンソン前ロン
ドン市長が離脱代表者の一人に選ばれれば、彼の発言内容には注目が集まることは間違いない。
もし彼の発言が国民の心を揺さぶることに成功すれば、その後発表される世論調査が「離脱、大
きくリード」となることも夢ではないだろう。
最後に、ここでは「英ポンド/米ドル」(日足)を取り上げたが、黄緑の上昇トレンドの下限ギリギリま
で下落し、今週はピンク色の下落トレンドに移る可能性が出てきた。ただし、IMM 先物では最後の
調査日である 5 月 31 日以降、英ポンドのショートがさらに増加していることも十分に考えられるた
め、ピンク色の下降トレンドの下限である 1.42 ドル台 Low を下抜けて急落するリスクは、TV 討論
会で残留支持グループの失言などがない限り、今週は考えていない。
-------------------------------------------------------------------------------【執筆者:松崎美子氏( ロンドン在住/元為替ディーラー)プロフィール】
東京でスイス系銀行 Dealing Room で見習いトレイダーとしてスタート。18 カ月後に渡英決
定。1989 年よりロンドン・シティーにあるバークレイズ銀行本店 Dealing Room に就職。1991
年に出産。1997 年シティーにある米系投資銀行に転職。
その後、憧れの専業主婦をしたが時間をもてあまし気味。英系銀行の元同僚と飲みに行き、
証拠金取引の話しを聞き、早速証拠金取引開始。
-------------------------------------------------------------------------------【本レポートの趣旨】
本レポートは松崎美子氏より発行されているレポートであり、情報提供のみを目的として
おります。
本レポート中のコメントは独自の見解に基づいたものであり、松崎美子氏、およびワイジ
ェイFX株式会社共にレポート中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明
示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。
また、本レポート内のコンテンツ、データに関する著作権はワイジェイFX株式会社に帰属
しております。
コンテンツ、データ等は私的利用の範囲内で使用し、無断転載、無断コピー等はおやめく
ださい。
さらに、かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、松崎美子
氏、およびワイジェイFX株式会社は一切責任を負いません。
最終的な投資判断は、他の資料等も参考にしてご自身の判断でなさるようお願いいたしま
す。