Mentoring Handbook for Faculty

Mentoring Handbook for Faculty
at The University of Texas M.D. Anderson Cancer Center
日本語版
ver 1.2
目次
序文
i
日本語版序文
ii
序論
1. 本書の目的
2
2. Mentoringの定義
2
3. Academic Medicineの最近の傾向
2
4. なぜfacultyにはmentorが必要なのか
4
Mentor達へ
5. Mentoring は faculty にどのような利益を生むのか?
6
6. Mentoringの過程
6
7. なぜmentorになるのか?
8
8. Mentorにとってのmentoringの利点
9. 良い mentor の特徴
10. Mentoringの基本要素
8
8
9
11. Mentor が実践すべきこと、やってはならないこと
10
12. Mentoring 関係の醸成:信頼関係の構築
11
13. フィードバックを与えること、うけること
11
14. 良くないmentoringの経験を避ける
12
15. Mentor のためのミーティングチェックリスト
15
16. Mentoringミーティングの基本
15
17. ディスカッションのために推奨される質問や話題
16
Mentee達へ
18. Mentoringの目標
20
19. よいmenteeの特徴
20
20. 主体的なmenteeであること
21
21. Mentorをみつける
22
22. Menteeが実践すべきこと、やってはならないこと
23
23. Careerを計画することおよびmentorを見つけること
23
24. M.D.AndersonのfacultyのためのIndividual Development Plan
24
25. Mentoringワークシート
31
Facultyのリーダーのためのツールと資源
26. Mentoring概論
33
27. Mentoringプログラムのモデル
35
28. Mentoringプログラムの作成にあたって
37
付録1 Facultyのためのmentoring 計画
38
付録2 Mentoring Competency Categories
40
付録3 部署ごとのFaculty Mentoringプログラムの一例
42
格言集
44
引用文献
46
その他の推薦書
47
序文
Facultyの皆さんへ
Academicな成功には、本質的に、繰り返しや行き詰まりによって現在進行中の発見が妨げられないよ
う、常に学習と見聞を広めることが必要である。アカデミアにおいてmentoringは、知識の共有と形成の
ために以前から重要とされてきたが、医師や科学者の役割が、他人の管理業務、複雑な施設の施策や手
続きをやりくりすること、multidisciplinaryな全世界的協力プロジェクトに参画し、高性能なチームを
率いていくことなどを含む実に多種多様な領域に及ぶようになってきた現代において、以前にもまして
その重要性が認識されつつある。
Academic medicineの分野が進化し続け、知識の遂行に献身的に挑んでいる人々に新たな挑戦をもたら
し続けるにつれ、各教育機関が自分たちのfacultyが何を必要としており、それぞれのcareerの各段階に
見合った支援を提供するよう注意し続けるということがこれまでになく重要なこととなってきている。
副総長として私はM.D. Andersonで働くすべてのfacultyに、彼らが全面的にサポートされており、実
りある、成功したcareerを築くために必要なツールと資源があることを知っておいてほしい。医学研究と
臨床は独立したものではなく、我々のこの施設においてはこれまでに細心の注意を払って蓄積した知識
が共有され、共通のMaking Cancer Historyという目標の遂行のために積み上げられていくよう、すべて
のドアが開かれた状態であるように皆で協力し続けてほしい。
本マニュアルが若手、年長のfaculty双方にとって役に立つ資材であり、長きにわたって継続されてい
く、専門家としてあるいは個人的なつながりを築くにあたって有用な資源となることを切に願っている。
Academic careerのどのような段階にあったとしても常に何か学び、そして何か教えることがあるのだか
ら、皆さんそれぞれがmentorshipや誰かからの導きを求め、また同じことを他人にも与えていくよう強
く勧める。
Raymond N. DuBois, M.D., Ph.D.
Provost and Executive Vice President
i
日本語版序文
本書は米国テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターにおいて実践されているMentorship
Programの一環として作成されたMentoring Handbook for Facultyを日本語に翻訳したものである。翻
訳版の作成に至った経緯をまず簡単に紹介させていただきたいと思う。
この翻訳版の作成に携わったのは米国テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンター、聖路加国際病院、
慶應義塾大学大学院医学研究科の3施設が共同で実施しているがんプロフェッショナル養成コースの一
プログラムとして始まったAcademy of Cancer Experts (ACE) Programのメンバーである。ACEはがん
医療のエキスパートの養成を目的とし、特に以下の3つの目的を掲げている。
1. 臨床と基礎の架け橋を担える人材の育成
2. がんプロフェッショナルリーダーの育成
3. 将来の日本の医療を担う倫理観の高いリーダーの育成
このような目的のもと集ったがん医療に携わる様々な施設、職種の人々が現在ACEのメンバーとしてリ
ーダーシップについてなど様々な研修を受けながら、互いに交流し、学び合いながらそれぞれの施設に
おいても研修し、活動をしている。今後ACEがどのような存在となっていくか、それぞれがどのように
活躍していくかについてはまだ模索段階ではあるが、このプログラムの中での学びの一つとして我々が
出会ったのがこのMentorshipという概念である。
そもそもMentorshipとはどのようなもので、どのように役に立っていくのか。詳細は本文をお読みい
ただければと思うが、ここでひとつ強調しておきたいこととして、我々編集者がこの翻訳版の作成を通
じて何を伝えたいのかということがある。我々医療者の共通の概念として、すべての活動は「患者の利
益のためにある」ということがあるが、その一つのコンポーネントとして、個々の患者さんの幸福を追
求するためには、そのためにまず我々医療従事者自身の個人として、あるいはプロフェッショナルとし
ての達成感、充実感、幸福が必要であるということ。そのためにこのmentorshipという概念の導入が大
きな一助となるのではないかという思いが根底にあるということである。
日本と米国の間には、医療保険制度をはじめとした医療制度の違いのみならず、医療関係の職種の多
様性、患者教育、医学教育を含め医療の現場に関する実に多くの相違点が存在する。そのような状況下
において、米国で活用され、成果が得られている制度を日本に単に移植してくるだけでは十分な効果が
得られないことは明白である。一方で、mentorship というのは一つのツールであり、この道具をどのよ
うに用いていくか、その道具の力を 100%、あるいは 200%引き出せるかどうかというのは使い手次第で
あり、この概念を今後さらに日本の制度に適した形に変化させていく必要があると考えている。このた
めの第一歩としてまず我々はこのハンドブックの翻訳版の作成に着手した次第である。
原文に忠実に翻訳したため、読みづらい部分がある、あるいは M.D. アンダーソン内部での状況に限
られている部分があるかもしれないが、本ハンドブックをお読みになった皆様からの意見をもとにさら
なる改良を加えていきたいと考えており、読者の皆様には日本版 mentorship handbook の作成にも是非
ご協力していただきたい。Mentorship はそこに携わるすべての人の努力があってこそ初めて成り立つも
のであり、誰かが一方的に与えるだけの関係ではないということ、このような双方の努力を要するもの
であるが、その努力に応じた分の成果が双方に得られるということをまず付け加えさせていただきたい。
と同時に、従来の師弟関係にありがちな、一方的に師匠が弟子に教え、弟子は師匠の教えに決して逆ら
ってはならないという関係とは異なり、互いの関係性の中にも流動的な変化があり、また mentor が時に
mentee にもなりえるという相互作用の中で従来の師弟関係を上回る、より効果的な手法であると考えて
おり、本ハンドブック日本語版を通じてこの mentorship について学んでいただき、皆様の日々の実務に
ii
何らかの助けとなれば幸いである。
最後になるが、本ハンドブックの翻訳版の作成を許可いただいた Dr. Raymond N. DuBois に感謝の意
を表するとともに、翻訳版の作成を指導、補助いただいた Ms. Janis Apted(M.D. Anderson Cancer
Center), 上野直人先生(M.D. Anderson Cancer Center)、佐谷秀行先生(慶應義塾大学医学部医学研究科
先端医科学研究所遺伝子制御部門)、中村清吾先生(昭和大学病院
ブレストセンター)をはじめとする
ACE committee member の先生方、また笛木浩様にこの場を借りて謝辞を述べさせていただきたい。加
えて、翻訳版の作成にご協力いただいた ACE member 全て、特にそれぞれに尽力いただいた編集委員の
皆様にも厚く御礼申し上げたい。
Mentoring Handbook for Faculty 日本版作成プロジェクト 編集長
松木 絵里
iii
ACE Members are …
東
瑞智
*石澤 丈
今村 知世
内山 伸
大畑 美里
岡林 剛史
*甲斐 千晴
風間 郁子
神谷 尚宏
*國本 博義
*オルテア サンペトラ
*信濃 裕美
*嶋 晴子
杉山 直子
種瀬 啓士
千葉 悦子
中島 貴子
中野 絵里子
中村 直樹
中村 美波理
野木 雅代
長谷川 久己
*日比 泰造
福田 桂太郎
藤澤 大介
細川 恵子
堀之内 秀仁
*松木 絵里
森 信好
*森 美樹
森谷 弘乃介
矢ケ崎 香
山内 照夫
*山内 英子
*山口 典宏
*吉原 宏樹
(五十音順、敬称略)
* Mentorship Handbook 日本版作成委員
iv
序論
1
1. 本書の目的
このマニュアルは、M.D. Anderson Cancer Center (MDA)で働く全ての地位、役職の教職員に向けて
書かれたものである。本書に記載されている内容は、現在、mentorの指導を受けている人、mentorを探
している人、そして、mentor自身の役に立つようまとめられている。MDAは常に、最良かつ最も優秀な
臨床家や研究者にとって魅力的な施設であろうと努力し続けてきた。そしてこれら全ての人の努力を全
academic careerを通じて、支援することに精力を傾けている。各Facultyにはこのマニュアルを利用す
ることに加え、Faculty Development Program aを通じて行われる、Mentee and/or the Mentor
Development Sessionsに積極的に参加していただきたいと思っている。そこで提供される研修は、あな
たが自分のcareerを歩んでいく全ての過程において、生産的かつ満足のいく人間関係を築き、維持する上
で役立つだろう。更にその先においては、あなたが、他の人たちのプロフェッショナルとしての道筋を
支援するのに役立つだろう。
もしあなたが、M.D. Andersonに新たに来た方なら、私たちはあなたを大いに歓迎している。そして、
あなたのcareerを成功させ、充実したものにするために役立つ多くの資源がここにあることを保証しよう。
もしあなたが、現在指導する立場にいたり、他のfacultyにとってのmentorになりたいと思い本書を読ん
でいるのなら、私たちは、あなたの、同僚の研究者たちに対する尽力に感謝したい。
あなたのmentoring関係に役立つ、さらなる資料や資材がFaculty Developmentaのホームページにあ
るので、今後の予定に関してやjunior facultyに関する情報は左上のJunior Faculty Development
Programのリンクを、facultyの各職務に関連するビデオやmentorのパネルについては、Mentoringのリ
ンクを、それぞれ辿ってみてほしい b。
2. Mentoringの定義
Mentoring とは支援と意見や知識の交換という人間関係に基づき、個人の発展と学習を目指した、自
発的な支援の一つである。そこでは、相対的に経験豊富な専門家が、自分たちが得た叡智と専門性を注
ぎ込み、他の人の専門家としての成功を促すために精力を尽くすのである。
3. Academic Medicine の最近の傾向
なぜ mentoring が今までより重要とされているのか...
・ ヘルスケアの専門家に仕事の選択肢が増えてきたことと、ベビーブーム世代の退職が重なり、
academic medicine の多くの領域でこれまでにない欠員が生じると考えられる。最近の研究で、臨床
研修の過程において多くのレジデントが academic な生活を送ることに対する興味を失っていくこと
が示されている 1。
a
b
M.D. Anderson 内で faculty のトレーニングを担当する部署
M.D. Anderson 内でのみ閲覧可能
2
・ 仕事と組織的構造がより複雑に変化していることで、mentoring 関係を促進し形成する新しい方法を
模索する必要が生じている。伝統的なマンツーマンの師弟モデルは仕事や変化が比較的ゆっくりと進
むことを前提としている。いわゆる「賢い白髪交じりの中高年」が年単位の時間をかけて自分たちの
弟子(protégés)に知識を伝承する方法である。変化のペースが加速していることによってこのような
優雅な方法を変えなければならない必要に迫られており、このような変化に対応するには一人の
mentor では十分ではないことが明らかである。研修生たちは複数のスタイルや多様な選択肢に触れ、
自分たちの発展を促進していくものが何であるかを見ることで、それによる利益を得ることが多い 2。
・ 世代間の違いから、
年長者が若年者の mentoring をするための時間をとることに弊害が生じている。
若い世代の人々はワークライフバランスを求めていたり、研究や医学と「結婚」することを拒んでい
ることから academic career に求められる数々の障壁や要求から遠ざかる傾向にある。年長者は次世
代の人々の価値観を受け入れ、彼ら自身の価値観に見合ったよい career を共に探していくか、彼ら
に寄り添うことをせずに、より高給なあるいはそうでなくとも他の career を選び結果的に優秀な人
材を失っていくかを選ばざるを得なくなっている 3,4。
・ 研究や臨床現場の生産性を上げるような社会からの要求が増したことで、学ぶための環境が削減され
て し ま っ た 。 こ の た め 医 学 教 育 を 専 門 と し た 学 問 や ミ ッ シ ョ ン に 基 づ い た 管 理 法 、 faculty
development などの新しい組織的な構造を立ち上げることで教育のための環境を支援する必要が出
てきた 5。
・ 研究への支援の減少、臨床からの収益の増加を求める医学部への圧力、国民からの医療費削減を求め
る声、一方で人口の高齢化が進むことに伴う医療費の増大といった問題はすべて現在の academic
medicine に対する負担となっている 6。
Academic medicine の現状から、個々の faculty の能力を管理することはもはや必然となっている。彼ら
一人一人はこれまでその career に莫大な投資を行ってきており、また M.D. Anderson も彼らを誘致し、
雇用することに多大な投資を行ってきた。次のステップは彼らが成功し、満足してより生産的な career
を形成するために必要な支援と手ほどきを保証することである。Academic medicine の複雑性が増す一
方で、他の career がより魅力的な選択肢となってきた現在において、mentoring はこの目標を達成する
ために必須な手法である。
1.
Bickel, J and Brown, AJ. Generation X: Implications for Faculty Recruitment and Development in Academic Health Centers.
Academic medicine, Vol. 80, No. 3. March 2005.
2.
Ibid.
3.
Ibid.
4.
Berthold, J. Is the generation gap a growth opportunity? ACPInternist, April 2008.
5.
Irby, DM and Wilkerson, L. Educational innovations in academic medicine and environmental trends. J Gen Intern Med. 2003
May; 18 (5): 370-376.
6.
Andreoli, T. The undermining of academic medicine. Academe, 85(6): 32-37. Nov-Dec 1999.
3
4. なぜ faculty には mentor が必要なのか
・ 医学と研究科学は非常に複雑な事業であり急速に変化する。
・ 成功するための道は簡単には理解できず、“隠れた”ルールに満ちている。しかし“私は苦労してここに
たどり着いた。あなたにも同じようにできる。” と考えている余裕はない。
・ 成功のために今必要とされていることは、臨床や基礎の専門的知識はもちろんのこととして、それに
加え、技術的スキル、対人スキル、管理上のスキルそしてリーダーシップスキルに及ぶ。
・ 仕事に完全に没頭しておらず、また満足もしていない academic faculty は、多くの場合それほど生
産的ではない。どんな組織も faculty の能力を無駄にさせている余裕はない。
・ 世代間の違いは大きくなっている。新たに入ってくる若い faculty は彼らの年長者が行ってきた週
120 時間労働に興じたいと思っていない。彼らは仕事と生活のバランスを気にしており、自分たちの
プライベートな生活を満足し維持した上で、career へも投資するための支援を求めている。
・ 多職種のチームワークは高いこころの知能指数(emotional intelligence)を必要とし、それを得るため
には、mentor が提供する誠実で、率直なフィードバックが必要である。
・ 患者は幅広い人種、文化的背景から、素晴らしいケアを受けるという臨床的な課題を携えてやってく
る。
・ よりよい人々を academic medicine に引き付けることが難しくなっている。というのも、academic
work における長い労働時間や様々なストレス、不確実性というものが faculty 候補の人々にとって
の悩みの種となっていることが明らかになりつつあるからである。
4
Mentor 達へ
5
5. Mentoring は faculty にどのような利益を生むのか?
Faculty が新しく働き始める職場に対してその後長年持ち続ける印象というものは、雇用後 6 か月で形
成される。良い印象を築いてもらうためにも雇用側としてはその faculty を、病院全体というレベルだけ
でなく、各自の研究室などより小さなコミュニティーレベルでも、しっかりと歓迎し、差別なく相応に
接し、
組織に溶け込んでもらう必要がある。
雇用側から faculty それぞれに対する期待を明示することは、
各人の academic な成功をより確実にイメージしてもらうのに重要な行為である。Mentoring は以下に挙
げるような理由から、臨床面でも研究面でも専門的 career 形成に非常に大きな影響を及ぼす。これはこ
れまで蓄積された mentoring に関する様々な研究から明らかにされてきたことである。
・職場・組織の文化により馴染むことができる
・昇進、tenure 獲得のための基準,それに関する各人に対する雇用側からの期待が明確になる
・学術的取り組み(例えば,研究資金申請・プロトコール作成・論文執筆など)に対する指導・援助のおか
げでより生産性が高まる
・批判的思考方法・執筆能力の向上についてサポートが受けられる
・上達した点,達成した成果についての実直かつタイムリーなフィードバックがされる
・physician-scientist が学術活動に費やす時間をより多く確保できる
・やる気をなくし職場を退職してしまう(燃え尽き症候群)リスクをより小さくできる
・雇用側からのサポートに気付きやすくなる
・職務全体に対する満足度が上がる
・他の人へ紹介されることによって自身の所属機関,あるいは自身の専門分野についての視野が広がる
・faculty の間で共有されているより多くの情報(科学的,行政・運営的,あるいは戦略的側面で役立つ
情報など)を得ることができる
・専門的なこと,個人的なこといずれについても,career を積んでいく中で早期に困難に遭遇した faculty
に対する個人的なサポートが受けられる
・越えるべき目標となるような第三者の業績・成果をロールモデルとして設定できる
・政治的な展望や陥りがちな落とし穴についてよりよく理解できる
・関心を抱いている事・挑戦していることについてディスカッションできる部外秘な場が与えられる
・考えや意見を互いに交換できる
・リーダーシップやコミュニケーション能力が磨かれる
6. Mentoring の過程
以下の一般的な mentoring ガイドラインは、公的な 1 対 1 の mentoring 関係でも、より的を絞った
mentoring の状況(例えば、特定の研究助成金への助力、臨床コミュニケーションスキル開発の助力な
ど)でも利用できる。それぞれがお互い何を期待しているのかを、早い段階で見極めることが鍵である。
そうすることで、これらのガイドラインを各々の目的と状況に合わせて適応させることができる。Mentor
と mentee は組織的に構築された関係を保つことにより、お互いについて、あるいは合意が得られている
最終到達点について集中することができ、
「ばらばらに」ならずにすむ。
6
1.目標と互いに対する期待を設定する
Mentor と mentee の関係を作るにあたって、最初の仕事は目標と期待値を設定することである。互い
にその関係にどの程度の時間をかけるかについて合意を形成し、実現可能な範囲で mentee のゴールを確
立すべきである。Mentoring 関係が個人的かつ互いの専門的な関係から発展したものである場合は、協
働すべき事の本質と方向性を両者がともに理解していれば、この過程は必ずしも必要ないかもしれない。
しかし、ある特定の関係において mentor に時間と関心が求められているような場合には、このような基
本的なガイドラインによって両者の間で何が合意されているかを定義することにより、どちらも当初の
予想と異なる関係のためにいらだったり、がっかりすることがな
い 。
(付録 1. mentoring 契約の例 参照)
2.道筋からはずれない
特定のゴールとそれを達成するために必要な活動をリストしたdevelopment plan(27ページ以降に具
体例を示す)を定期的に更新することは、menteeにとっては集中を保ち続ける一助となり、mentorにと
っては、menteeの成功における自身の役割について戦略をたてるガイドとなる。各menteeには、MDA
の昇進基準(そしてtenure制度 cがある場合にはその応募内容)、応募可能なtenure(終身在職権:通常
associate professorに昇格すると取得できる)を確認し、自らのゴールの設定がこの基準に沿ったもので
あるかを確認しておくことを強く勧める。(Faculty Academic Affairsのウェブサイトで最新の昇進およ
び終身在職権基準を参照すること)Mentorはmenteeの履歴書を見直して、経歴において足りないところ
を補うアクションがとれるような助言をするとよい。何事もとりこぼしがないように、そして、mentee
が昇進/終身在職権基準に関連した適切な、達成可能なゴールを設定するために、会合は定期的に予定
されるべきである(少なくとも3カ月に1度)。
3.関係を評価する
Mentor、mentee 両者とも、この mentoring 関係が快適で、互いに利益があるかどうか、そして十分
な時間が確保され、守られているかどうかについて、注意を払うべきである。ゴールと期待は、mentee
の成長にあわせ、定期的に見直しが必要であろう。Mentee が成長し、独立性を得てゆくのに伴って、両
者とも満足感と達成感を得なければならない。定期的に考慮すべき質問としては、以下のようなものが
ある。1) Mentee にとって mentor は、必要な時に援助を求めやすい存在か? 2) 互いの信頼関係が成り
立っているか? 3) Mentee の career において、その時点でより適した他の faculty が存在するか?
4.フィードバック
Mentor と mentee 間のフィードバックは、定期的に、率直に行われるべきである。Mentor の役割の
一部は mentee の専門性の獲得と career の進展について、正直で有用なフィードバックを与えることで
あるが、両者とも互いの関係で何がうまくいっていて何がいっていないのかをフィードバックしあうこ
とも大切である。これは、権力に差がある場合や個人的な関係が近しいときには難しいかもしれない。
Mentee は自身の要求にあっていないときや、もっとも関心のある部分が理解されていないときを認識す
る必要があるし、mentor は自分の分野での強さや専門性を知っている必要があり、自分が適切に助けに
なれないと感じる分野についてはそれに取り組んでいる他の faculty を紹介する必要がある。
c
永久在職権。終身雇用制度ではない米国においては、その施設に終身雇用してもらうために、施設ごとに一定の規定を
満たさなければいけない。
7
7. なぜ mentor になるのか?
Academic medicine において資金獲得のための競争は激化し続けており、faculty はより少ない資源か
らより多くの仕事をするように求められている。我々の施設で働く医師たちも、プロトコールの作成や
論文の執筆、そしてその他の研究といった業務や増え続ける臨床業務とともに施設における責務や定期
的な管理上の仕事を次々とこなさなければならない状況にある。そしてこれらはすべて膨大な量の時間
と献身的な態度を必要とする。我々の施設で働く基礎研究者たちは常に最新の研究成果を集め、資金を
集め、管理をし、次の公的資金獲得のための準備をし、論文を執筆し、研究室の運営を行っている。他
人の mentor となる責任を負わされるということは、この施設にいる誰にとっても時間を確保することが
できない、重大な重荷を背負わされるようなものである。
しかし、mentoring をすることはその人の専門家としての過程の中で重要な発展の場であるというこ
とを心に留めておくべきである。Mentor になることで、faculty は自身が従事しているまさにその専門
性を他人に伝える絶好の機会を得ているのである。あなた自身はこれまで自身の人生をそれほどまでに
academic medicine にささげたのであるから、次世代の若い研究者や医師たちを指導することで、彼ら
がこれから成功を求めてもがき苦しむであろう、巨大でしばしば分かりづらいアカデミアというものに
対する理解を大いに促進することができるはずである。彼らが全体像を見れるように助けたり、実現可
能な目標を設定したり、彼らが求めている結果を得るための最善の方法を提示することで、彼らが将来
成功する確率を高め、その分野に大いに貢献する可能性を高めることができるのだ。彼らの成功はあな
た自身の成功でもある。特にここ、M.D. Anderson においては皆が共通のゴール、“Making Cancer
History”に向かって取り組んでいるのだから。
8. Mentor にとっての Mentoring の利点
• 視野の拡大
• 仕事の質の向上
• career の成功と挑戦の共有
• 施設で同僚が直面する問題を新たに認識する
こと
• mentee との見識の共有
• リーダーシップの能力と満足感の拡大
• 自身の遺産の拡大
• プロフェッショナルとしての新しい関係やネ
ットワークの発展
• Mentee との交流を通じて新しい考え、技術、
展望へ接すること
• コーチングおよびカウンセリング能力の改善
• 評判の向上
• 個人的な成長
9. 良い Mentor の特徴
以下に挙げるような特徴すべてをもつ理想的な mentor はほとんどいない。これらスキルの多くは
mentoring ワークショップに参加することや mentoring 関係を実践していく間に発展、訓練できるもの
である。
親近感がある
ディスカッションのための心地よい環境づくりを積極的に行い、支援する。他
人からの質問やコメントを歓迎する。
会うことができる
mentee と会ったり話したりする時間があり、その機会を作る。
信頼がおける
mentoring の関係における機密保持を尊重する。
確信があり、安心感がある mentee の業績に誇りをもちそれを率直に表明する。
mentee の得意分野、能力、達成、業績を恐れない。
相談、指南役
career の形成や実力の発揮を阻害する問題点の相談に乗る。支援を提供し、
目標を達成するためのアドバイスを行う。
最新の知識を有する
自分の専門領域における最新の研究や新しい説、議論に対する知識を常に向
上させている。
8
導き手
正直
学習者
紹介の仲介を行う
敬意を持つ
手本となる
機転がきく
教師
信用に値する
理解がある
快く行う
10.
mentee を現実的なゴールの設定へと導き、それを達成させようとする。必要
に応じてアドバイス、励ましを与える。
はじめは聞き入れるのが(そして同時に伝えることが)難しいようなフィー
ドバックであったとしても、mentee を向上させるためのフィードバックを与
える。
常に新しい情報を得ようとしており、容易に批判やアドバイスを受け入れる。
mentee の専門的な関係を広げる事を助ける。
mentee の擁護者となる。
mentee が抱えている複数の仕事を理解し、不適切な仕事をさせることで
mentee の負担を増したり、働きづらい環境を作らないこと。
道徳的なリーダーシップ能力を発揮し、同僚から尊敬される。
建設的で役立つ方法で、困難な批判を言葉に表すことができる。
さまざまな領域で、特に mentee が案内を必要としている特定の領域で
mentee を教育する。
共同作業において、mentee にプロフェッシャナルとしての礼儀を払う。力の
差を理解し、適切な境界線を引く。
個性の違いを受け入れる。
興味を持ち喜んでアシストする。
Mentoring の基本要素
お互いに尊敬し、信頼しあうこと
Mentor は他者から成功者とみられる人物であることが多いため、彼らが以前そうであったほど個人的
な成功のために頭がいっぱいということはない。むしろ成長過程の同僚を育てることが、彼ら mentor
にとってもより大きな遺産となる。とはいっても、mentor と mentee の関係をうまくいかせるためには
お互いに尊敬し、信頼しあうことが必須である。
このことは mentor と mentee が異なる文化的背景を持つ場合に特に当てはまる。Mentee と交流する
際に、mentor は誤解や制限要素となりうる文化的違い、性別の違いを認識しなければならない。お互い
協力して配慮し、世界観やそれまでの経験の共通点や相違点についてオープンに議論することが、mentor、
mentee 双方にとって利益となる。
理解し、共感すること
たとえそれが mentor 自身のやり方と違ったとしても、
mentor は mentee の生活様式や決断を理解し、
尊重しなければならない。多くの若手スタッフは、たとえば小さな子供や病弱な両親などといった、家
族に対する義務を有することが多い。そういった状況は mentor が経験してきたものとは大きく異なるこ
ともあるだろう。
時間をさくこと
Mentor のもっとも重要な役割のひとつに、mentee のために時間を作ることがある。Mentor、mentee
が双方をよく知る機会を持つことができなければ、お互いに信頼し、尊敬しあうことは難しい。定期的
に会う機会を設けることは重要である。
Mentor にとって、mentee と会うことは新たに発生した問題について議論する機会でもある。Mentor
が何らかの警戒すべきサインを見てとった場合には、定期的に会うことで、mentee にアドバイスを行う
機会ができる。
9
励ますこと
なによりも、mentor は mentee の努力と向上心を絶え間なくサポートし続けなければならない。
Mentee が彼ら自身のアイディアや計画を遂行することを奨励し、それらが発展・改善するように援助し、
さらに知識と技術を向上させ目的を達成できるように励ますことが、mentor の役割である。
Mentor は、難局に直面してもあきらめないように mentee を励ますものである。
東ミシガン大学の Online Mentoring Module から改変して引用
11.
Mentor が実践すべきこと、やってはならないこと
実践すべきこと
やってはならないこと
耳を傾けること:問題点やアイディアの相談者と
経験から遠ざけること:mentee の問題を、彼らに
しての役割;賢明な助言を与える。
かわって解決してはならない。
援助し促進すること:ネットワークを作る経験を
脅すこと:脅迫 や抑圧によって、mentee のプロフ
提供する;組織の仕組みに関する知識を共有す
ェッショナルとしての人生を捻じ曲げてはならな
る;必要なときに援助の手を差し伸べる。
い。
範を示すこと:人生のあらゆる局面で最高の価値
自分の手柄にすること:mentee が行った仕事を自
観に忠実なモデルであり続ける。
分の手柄にしてはならない(例、mentee の論文の
職務上の利害の衝突を理解すること:直属の部下
筆頭著者を要求すること)
が、必要以上に自身について開示せずに、心を開
肩代わりすること:mentee 自身が実施しなければ
くことができる mentor を見つけられるよう、援
ならないことをかわりに行ってはならない(例、
助しなければならない。
代わりに論文や志願票の作成を行うこと)
励まし動機づけること:mentee が快適な環境から
強制する:mentee をある方向に強制してはならな
飛び出してチャレンジすることを助け、成功に喝
い。
采を送る。
不適切に影響力を行使すること:mentee がプロ
独立心を養う:自らの経験から学ぶ機会を mentee
フェッショナルとしての決断をする際に、強制さ
に与えなければならない。
れたと感じさせるようなことをしてはならない。
バランス感覚を養う:プロフェッショナルと個人、
厳密な注意を怠ること:親近感から誤った判断を
それぞれの欲求と義務について、バランスをうま
してはならない。
くとることのできるモデルとしてふるまう。
非難すること:正直に過ちを認めることが career
成功を喜ぶこと:mentee のなかには指導者よりも
の支障となるというメッセージを mentee に伝え
偉大なレベルに達する者がいるということを認め、
てはならない。
そのように成長してくれてうれしいと伝えなけれ
秘密を漏らすこと:若いスタッフの信頼を損なう
ばならない。
ことは、彼らの尊厳や career に破壊的な影響をも
たらす。
10
Singletary, S.E. 2005. Mentoring Surgeons for the 21st Century. Annals of Surgical Oncology, 12(11):
848-860. より改変して引用
12.
Mentoring 関係の醸成:信頼関係の構築
信頼関係の構築はあらゆる mentor、mentee 関係のもっとも重要な側面である。この土台無しには、faculty
は批評のために心を開いたり、懸案事項や不安材料、疑義を安心して共有することはないだろう。彼らは、も
っとも先進的な研究のアイディアをより経験を積んだ同僚からの重要なフィードバックや見識を分けてもら
う機会を失ったまま、心に閉じ込めたままにしてしまうかもしれない。
信頼を構築するふるまい
信頼を壊すふるまい
積極的な聞き手になる
話している内容に注意を払わない
他人と協力する
競争的態度を取る
率直に情報を共有し柔軟な態度を取る
情報共有を差し控え、他者を排する
言動が一致している
言葉と裏腹な行動をとる
受容的姿勢をもち、決めつけをさける
批判と否定の態度を取る
信頼が置ける、二心がない
隠れた意図に基づいて行動する
率直に失敗や誤解を受け入れる
過ちを他人の所為にする
積極的に異なった視点を求める
新しい意見に心を閉ざす
他者が成功するようはげます
リスクをとることをやめさせる
前向きな展望をもつ
後ろ向きな展望をあたえる
情報の機密を必ず守る
情報の機密をやぶる
他者のことを称賛する
他者の悪口を言う
与えられるのが当然の際、名誉を与える
他人の成果を横取りする
わかりやすい率直なフィードバックを与える
厳しい意見を避ける
学問的仕事への効果的な再考と批評を与える
他人の仕事に表面的な意見と再考しか言わない
UCSF Faculty Mentoring Program Toolkit より改変して引用
13.
フィードバックを与えること、うけること
Mentee には mentor からの正直で率直な意見が必要である。同様に重要なことは mentee が彼らの mentor
にフィードバックを与えることである。双方向の持続的な意見の交換はこの mentorship という協力関係に必
須の項目である。これはもし意見が前向きなものでない場合には難しいことであるが、そもそも発生した問題
を議論しなかったり、問題行動を指摘しないということは mentoring 関係をもつことの目的から根本的には
11
ずれてしまっているということを肝に銘じておきたい。前向きな意見ばかりを述べる mentor が助けになると
いう訳でもない。本当の成長は academic career を行き詰らせたり、臨床の場において後ろ向きな影響を与え
たりする問題に取り組み、それらを学ぶ機会に転換するところから生まれる(もし、難しい会話や他のコミュ
ニケーションスキルに関してトレーニングをしたいなら、Faculty Development のページにある I*CARE
program にオンラインのビデオ集があり、また Faculty のためのワークショップを定期的に開催しているため、
これらを参考にしてほしい)。
効果的なフィードバックとは:
・適切な時期に提案されること
・特定の行為に焦点を当てていること
・役に立つかもしれない外部からの要素を認識すること
・行動すること、問題解決手法と戦略を強調すること
Mentee からの効果的なフィードバックとは:
・得たアドバイスやガイドが有益であったか、問題を解決するのに役立ったか
・Mentor のコミュニケーションの手法や行動が前向きな mentoring を促進したかどうか
・Mentor のコミュニケーションの手法や行動が前向きな mentoring への障害となったか
Mentor からの効果的なフィードバックとは:
・Mentee の強みや長所を指摘する
・Mentee が成長、発展や補強を要する分野を指摘する
・Mentee 自身のためにならない行いや態度を指摘する
・Mentee が他人からどのように見られているかを伝える
UCSF Faculty Mentoring Program Toolkit より改変して引用
14.
良くない mentoring の経験を避ける
良くない mentoring 関係は深刻な結果をもたらすことがある。Mentee は仕事上でより多くのストレス
にさらされているだろうし、自尊心も失っていることが多い。結果として、働いている施設をより退職
しやすい傾向にあるかもしれない。Mentor は他の faculty を指導することはあまりなく、また mentee
に対してより厳しい感情を抱くかもしれない。もし、研究アイディアを盗んだり、不当に名誉を奪うな
どの深刻な非倫理的侵害が負の mentoring 関係の中であった際には、全体に対しての不信感へとつなが
りうる。このようなことが繰り返されると、他の faculty に対して自分の時間やアイディアを共有するこ
とに恐怖を与えてしまう。このような隠れた落とし穴にはまらないようにするために、mentoring の関
係に常に注意を払い、フィードバックできるようにしておくことが非常に重要である。
全ての mentoring 関係が上手くいくとは限らない。実際、一対一のパートナーシップが実りある結果
12
につながらないことが多いのには複数の理由がある。以下に述べるような問題が生じる可能性があると
いうことを常に心に留めておくことで、あなたの mentoring をするという努力が望ましい結果、すなわ
ち、より若い faculty が専門家として成功できるように手伝うこと、を達成する可能性を高めてくれるだ
ろう。
ペアのミスマッチ
Mentor と mentee の間には、互いに似た、または互いを補完するような価値観、ワークスタイルや性
格が存在することがとても重要である。もしそのような共通点がない場合には、意識して互いの相違点
に敬意を払って働くことが必要である。例えば、厳しい批判をする mentor は、そのような直接的なフィ
ードバックをすることに慣れていない faculty を怯えさせることになるかもしれない。(仮にそれぞれの
仕事は好きな時間にしてよいような職場において) “朝型”ではないが、夜遅くまで仕事をすることも苦痛
でないような mentee は、朝早くに仕事場に到着する mentor にとっては責任感のない人に見えるかもし
れない。そのような違いに注意を払い、自由に議論することが、相手を苛立たせたり、誤解を与えたり
しないようにすることに役立つだろう。
Mentor の専門知識の欠如
年長の faculty が必ずしも良い mentor であるとは限らない。自分より若い faculty の目的を達成する
ために本当に必要な対人能力や技術的な能力を持ち合わせていない人もいる。誰かを mentoring する関
係となった際には、mentee が実際にその関係から何を得ようとしているのかを把握し、その目的を達成
するために果たしてあなたが手助けできるかを確認する必要がある。己に正直であれ。すなわち、もし
あなたが役割を果たすことができなければ、他に援助することができるかもしれない faculty を勧めるよ
うにしよう。
互いの関係がそもそもほとんど機能していない
Mentor もしくは mentee のどちらかがそもそも全くその関係をうまく機能させていない場合、
mentoring が有効である可能性はほとんどない。これにはそれぞれの態度が良くなかったり、対人関係
が効果的でなかったり、解決できそうにもない個人的な問題などが含まれる。このような気配や状況は
通常すぐに見て取れるものであり、最悪な結果を防ぐためには適切なフィードバックで解決したり、コ
ーチングを取り入れたり、関係の発展のための提案をしていくことが最も効果的であろう。
距離をおく
Mentoring 関係を無視することは、最も一般的な負の態度である。それが時間的な制約によるもので
あったり、互いの関係に行き詰ってしまっていたり、個人的な理由で相手を嫌っているとか、その他ど
のような理由であったとしても、一方が積極的に関係を断ってしまうことで多くの mentoring 関係は行
き詰ってしまうのである。もしそれが mentee からのものであれば、あなたは回避できる状況かどうかを
議論したいと思うかもしれない。彼らの行動に影響を与えている、あなたが認識していない要因がある
かもしれない。もし、あなた自身が関係を離れようとしているのであれば、なぜ関係を続けようと思っ
ていないのか、
と考える時間をとったり、
mentee と上手くやれるように何ができるかを考えたり、
mentee
13
を手伝ってくれるような他の mentor を真摯に見つけるなどしよう。
操作的行動
Faculty はある人の能力や努力を自分の好きに使いたいがために誰かの mentor になってはいけない。
Mentee に任される仕事はその人自身のためになるものでなければならない。同じように、学術的な努力
に対しても、適切な功績を与える必要がある。Mentor はいついかなる時も、mentee が行った仕事の業
績を捕ってはならない。論文の著作権やその他の詳細は、研究や論文が完成して何ら驚くことがないよ
うに、前もって計画しておかなければならない。
Mentor の役割の不一致
直属の上司(例えば学科長や部長)に必要とされる役割と mentor として必要とされる役割が食い違っ
てしまう可能性がある。部長や年長の faculty は力関係が mentoring 関係に影響を与えるかもしれない
ということを認識しておかなくてはならない。直接上司の欠点を指摘することは明らかに気持ちが良い
ものではない。給料や昇進その他の褒章を決定するのはその上司である。上司と部下という構造の中で
多くの目的を持った mentoring 活動が行われるが、複数の mentor を探すように勧めることを忘れずに
おこう。そして、そのうちの一人は少なくとも何らかの報告の義務のない人であるよう推奨する。
UCSF Faculty Mentoring Program Toolkit より改変して引用
M.D. Andersonには苦労しているfacultyが参考にできるたくさんのリソースがある。もし問題があれ
ば、あなたのmenteeにも以下のツールを紹介しよう。 d
・Faculty assistance program
http://www.inside.mdanderson.org/faculty-resources/faculty-assistance-program/index.html
・Ombuds Office
http://www.mdanderson.org/about-us/for-employees/employee-resources/ombuds-office/
・Faculty Development
http://www.inside.mdanderson.org/faculty-resources/faculty-development/index.html
・Women Faculty Programs
http://www.inside.mdanderson.org/faculty-resources/wfp/index.html
・Institutional Diversity
http://www.inside.mdanderson.org/departments/oid/index.html
d
I*CARE を除きすべて M.D. Anderson 内でのみ閲覧可能
14
・I*CARE(Communication skill training)
http://www.mdanderson.org/icare
15.
Mentor のためのミーティングチェックリスト
□ ミーティングのために十分な時間をとっておく。
□ Mentee の履歴書、Individual Development Plan(もしすでに作成していれば)をもらい、ミーテ
ィング前に目を通しておく。
□ Mentee があなたに何を期待しているのか、またあなたが mentee に何を期待しているのかを明確に
する。
□ Mentee の短期、長期目標を見直す。
□ あなたの mentee の職務と地位における最新の正確な昇進、昇格方針を確かめておく。Mentee が何
に焦点を当てるべきか理解するために役立つからである。昇進や tenure に結びつかない活動やエネ
ルギーの消費は制限するべきである。
□ もしあなたが、mentee の上司でありかつ mentor である場合は潜在的に利益相反がありうることに
注意する。
□ Career の適切な段階で Career development に役立つような委員会や専門団体への参加を推奨する。
□ Mentee が病院の内外で他の mentor を見つけるのを援助する。E メールでも良いので人を紹介する
ことでネットワーク作りのきっかけを援助して行く。
□ あなたの mentee が臨床医であれば、彼らが病気や死にゆく患者、家族とともに送る日常の仕事のス
トレスにどう感情的にコーピングしているかそれとなく聞いてみる。フラストレーションや怒り、悲
しみが吐き出せる安全な場所を確保する。もし、抑うつや燃え尽き症候群の兆候を見つけたならば、
カウンセリングを受けることを勧め、そのような反応は専門家の間でも正常な反応であることを強調
して伝える。
□ 論文や助成金申請の作成を支援しているのであれば、校閲や先に提示したアドバイスについてフォロ
ーアップをする。通り一遍の見直しやフィードバックをしないように。もし充分な見直しができない
のであれば、誰か他に援助をしてもらえる人を探す。
16.
Mentoring ミーティングの基本
以下の概要は、新しい faculty が mentor 及び mentee となる際の mentoring の過程を促進するように
構成されている。Mentor はこれを mentee への働きかけのきっかけとし、また mentoring の議論の焦点
を絞るのに活用できる。
最初のミーティングでは:
1.どこでどのくらいの間隔でミーティングをするか決める。カレンダーに記載し、できるだけスケジ
15
ュールを守るようにする。新しく赴任してきた人の場合は、より多くの時間と注意が必要な場合がある
ため、隔週でのミーティングや月 1 回のミーティングが適切であろう。他の faculty や職場になじむにつ
れ、必要な時間が減ってくるであろうから、それに合わせてスケジュールを調整すればよい。
2.この関係についての全般的な期待を概説し、コミュニケーションのとり方について要望があれば話
し合っておく。例えば、mentee が何か疑問に思った場合、その都度 E メールで聞いてもよいのか?定期
的なミーティングで mentee が何について話し合いたいのか、事前に知っておきたいのか?あなたの携帯
電話に電話してもよいのか?事前に期待される内容や境界線を設定しておく。
3.Mentee の Individual Development Plan を見直しておく。それが mentee の地位や進路における昇
格基準に沿ったものであるか確認しておく。それぞれの基準については Faculty Academic Affairs のホ
ームページで概要を見つけることができる。彼らの時間の大部分は昇進と tenure のための活動に専念す
べきである。Academic な仕事を優先させるよう導いていかなくてはならない。Individual Development
Plan は常に最新のものにし、定期的に見直しを行うべきである。このリストの最後のページに記載され
ている現在の活動の要約はこれまでの彼らの進歩を振り返るよい材料となっているはずである。
Faculty Academic Affairs Promotion and Tenure Guidelines website e:
http://inside.mdanderson.org/departments/faa/guidelines-appendices.html
Faculty Develoment Mentoring websitee:
http://inside.mdanderson.org/faculty-resources/faculty-development/mentoring.html
新しい faculty としての最初の 12-18 ヶ月は以下の 4 つに焦点を当てることが大切である。
1)臨床や研究などにおける自分の立場を明確にする。
2)施設の中や、専門家の集まりの中での、専門家としてのネットワーク作り。
3)アカデミアで成功に必要なスキル(学校で教えられることではない)を身につける。
4)現実的な仕事と生活のバランスを維持する。
17.
ディスカッションのために推奨される質問や話題
臨床もしくは研究における自らの居場所を明確にすること
・ Mentee は自分自身が専門としたい領域を既に特定したか。もしそうであれば、すでに論文によって
e
M.D. Anderson 内でのみ閲覧可能
16
その領域はどの程度解明されているか。
・ この領域は既にその分野の著名な研究者たちによって研究しつくされていないか。もしそうであれば、
その中のどこか特定の狭い領域で専門性を発揮できそうか。
・ Mentee がまだ専門領域を特定していないのであれば、2,3 の異なる領域を検討するために何かプロ
トコルや研究を計画することができるか。Mentee は何に最も興味があるか。
・ Mentee は部門長や mentor から科学的に独立した方向性を持つ業務や研究を展開していくことがで
きるか。
専門領域での人脈を築くこと
・ Mentor は部署や施設内外の faculty に mentee を引き合わせる手助けとして、いったい何ができる
だろうか。あなたの mentee が決めた領域の中で、mentee と引き合わせるべき人物を知っているか。
・ Mentee は引き合わせてもらった後に、何をしていくべきか。
・ MenteeはM.D. Andersonの様々な委員会を知っているだろうか。Mentorがmenteeに委員会への参加
を勧めることで、特定の知識を得、また強い人脈を築くための絶好の機会を提供することとなる(参
考までに、M.D. Anderson のホームページにリンクされているFaculty Resources に全ての委員会
。
のリストが掲載されている f)
・ Mentor は mentee に他の研究者の論文や研究助成金申請書を査読する機会を提供できるか。これに
より mentee は自分の名前を広めることができ、同時に他の研究者の文書を読むという良い機会が提
供される。
・ Mentee はどのような専門領域の集会や学会で活動すべきか。これらへの参加は、人脈を築き同じ領
域の研究者たちと知り合いになる良い機会となる。
・ Mentor は、mentee が他の施設での講演に招聘されるのを支援する立場にあるか。このことは昇格
の要件を満たすといった点で重要であり、mentor が様々な機会を設定することで mentee の昇格の
支援につながる。
専門的な技術を磨くこと
・ あなたの mentee の Individual Development Plan の最初のページにある Skills Assessment をよく
読み、mentee が向上しなければならないと既に気付いている領域を把握すること。
・ あなたの mentee は、Faculty Development、Faculty Academic Affairs、Women Faculty Programs
や Diversity Office を通して提供されている様々な学習機会 f を認知しているか。定期的に案内のあ
るセミナーやワークショップ、修養会などに適宜参加するよう mentee に勧めよう。
・ あなたの mentee は既に論文が雑誌に掲載されたり、研究助成金を獲得したりしているだろうか。こ
のことで、もしあなたの援助が必要だと思うのであれば、早くから学術雑誌の編集者と一緒に仕事を
するよう勧めよう。書く技術を向上させることは academic な分野において成功するために必須な条
件である。
・ 前述のことではあるが、委員会の委員を務めることは新しい faculty や若手の faculty にとって、様々
f
M.D. Anderson 内でのみ閲覧可能
17
なことを習得し、ある領域で何が彼らに期待されるのかを理解するという点において役に立つ。ホー
ムページから委員会のリストを見て、あなたの mentee にふさわしい委員会があるかどうかを検討し
てほしい。
仕事と生活のバランスを維持すること
・ Academic career には、高い水準が要求される。しかしあなたの mentee に、プライベートな人間関
係にも気を配るよう、そして自分に近しい人達を無視しないよう、促してほしい。人としての充実し
た生活は、決して平坦ではないアカデミアの日常に対する緩衝材となりうる。論文や研究助成金申請
が不採択となっても、この結果はできる限り前向きに受け取るべきものである。もしアカデミアだけ
が生きがいでないのならば、
これらの不採択は career の早い段階での決定的な打撃とはなりにくい。
・ Academic career の要求水準に対応するための方策を共有してほしい。もしあなたの生活スタイルが
あなたの mentee と大きくかけ離れていたら(例えば、結婚、子供の有無、高齢の両親の存在、文化
背景など
)、mentee とより近い関心を持っていたり、複数の事項を処理しなければならない状況下で
どのように優先順位をつけていくかについて助言をしてくれるような別の faculty を紹介するのも良
いだろう。
もしあなたに mentoring relationship が割り当てられ、あなたが mentee にとってここ M.D. Anderson
での初めての mentor であるならば、あなたの mentee がいずれは別の mentor と仕事をするために去っ
て行く可能性が非常に高いことを理解しておいてほしい。このことは、career が進んでいく過程におい
て良くあることで、成長していくとともに必要なもの、優先順位が変化し、特定の要求を満たすために
別の faculty を見つけることが必要となってくるかもしれない。もしくは、単に別により相性の良い
mentor を見つけることもあるだろう。したがって、あなたの一番の役割は、mentee が faculty の立場に
おいて何を要求されているかを理解し、昇進に不可欠な活動に専念し、組織になじんでいくように手助
けすることなのだ。このためには必ずしも個人的な、親密な関係を築かなくても良いのだが、一般的に
は友好的な関係を築いたときには、互いの関係はより長続きするものであり、双方が得るものはそれだ
け大きくなるものである。
18
Mentee 達へ
19
18.
Mentoring の目標
アカデミアにおける mentor を探すための主な目標を以下に示す。これらを読むに際し、これらすべて
の領域において指針を示したり、積極的に mentor としての機能を発揮することができる能力と時間を兼
ね備えた mentor はほとんどいないということを覚えておくこと。Mentee は施設内外を問わず、自分が
必要とする特定の分野について 2 人あるいはそれ以上の faculty を mentor として探すことを推奨する。
・学術的業績(すなわち投稿前の科学的論文の校正を行ったり、作成途中のプロトコールの吟味をした
り、研究助成金申請の目的を評価することなど)に関して相談し、支援することによって生産性を高め
る。
・昇格や tenure の基準や目標を明確にする。
・組織の文化に馴染むよう促進する
・率直にかつ適切なタイミングでその mentor が支援している業務の中での mentee の進展や達成した内
容についてのフィードバックをする。
・Faculty の career の満足度をあげる。これによって燃え尽きてしまう可能性を下げ、予防することが
できる。
・施設が提供しているさまざまな支援システムについての知識や利用方法を教える。
・他の人に紹介することで施設内や専門分野内における周知度を上げる。
・Faculty の間で共有されている情報(科学的なもの、戦略的なもの、管理上のものなど)の量を増やす
・Career の初期段階で困難に直面した場合、個人的かつ、あるいは専門家としての支援を提供する
・Mentee に対してのロールモデルとなる
19.
よい mentee の特徴
Mentor となりうる人物からしてみると、よい質問をし、返答を良く聞き、アドバイスや相談を切望し
ていることを明らかにしている人を好む傾向がある。よい mentee は積極的に mentor を探し、連絡をと
り、mentor からの指導、知恵および支援から学び、そして称賛も批判もどちらも真摯に受け入れる。
感謝の心を持つ
Mentor の時間や努力に対して感謝の意を示す。
時間を割くことができる 定期的に mentor と会う。
腹心の友である
忠誠心や信頼を mentor に示す。適切な方法で秘密を守る。
最新である
専門分野の研究や理論についての情報を常に最新のものにし続ける。
信頼できる
計画や責任ある仕事を適切なタイミングで行う。
積極的である
積極的に活躍する機会を探す、委員会や特別委員会で働く機会を求める、特
定の内容に関するアドバイスやフィードバックを得ようとする、自分の興味
や技能を積極的に他人と共有する。
20
学習者である
成功や失敗や mentor の指導から学ぶ。質問をし、既存の考えや概念に対する
疑問を抱く。
傾聴する
Mentor からのアドバイスや指導を理解すべく、積極的に聞く。
前向きである
失敗を恐れない。楽観的な mentee ほど難しい問題に取り組み、成功に通じる
道を進み続ける傾向にある。
積極的である
個人の目標をかなえるため、パートナーシップを継続することに責任を持つ。
現実的である
Mentor と mentoring 関係に対する現実的な期待をもつこと。賞賛と批判を同
じように受け入れる。
受容する
建設的な批判を受け入れ、mentor に指摘された改善点を直すよう努力する。
報いる
Mentor の専門家としての発展を助けるような立場になった際には、人を紹介
したり、手伝いを申し出たり、アドバイスを提供する。
機知に富む
問題を解決するための創造的で新しい方法を見つけることができる。複数の分
野において助言や指南を活用することができる。
自己認識、反省ができる 自分の専門性、career そして mentorship 関係の発展のための目標を熟考し、
決定する。
信用がおける
目標を達成することにおいて、自分自身そして mentor に対し誠実であること。
共同作業において mentor に専門家としての礼を尽くすこと。
自発的である
自らが必要としているもの、希望、期待を進んで人に伝えようとする姿勢があ
り、快くフィードバックを受け入れる。
20.
主体的な mentee であること
最もよい mentoring 関係とは、mentee がイニシアチブをとって二人の関係を真に推し進めていく場
合に出来上がる。Mentee が主導していく関係では、mentee がペースや経路、目的地を決定する。そう
することで mentor は mentee の目標に見合った見解や助言を提示することが可能となる。
Mentoring 関係に携わり始めるときには以下の点を確認するようにしよう。
・ 自分の目標は明確で、きちんと決まっているか?
・ 自分の目標は現在の状況を鑑みて、実現可能か?
・ 時間設定は現実的か?
・ 自分が欲しいものや必要なものを気楽に要求できるか?
・ 新しい発想や展望を素直に聞くことができるか?
・ 他人の意見を受け入れられるよう開かれた状況にあるか?
・ 建設的なフィードバックを受け入れられるか?
・ 自分がフィードバックを重んじ感謝しているということを示せるか?
・ 適切な時にフィードバックを言うことができるか?
21
・ すすんで自分の態度をあらためることができるか?
・ 約束を常に果たすことができるか?
・ 信頼を得るための努力ができるか?
・ 素直に感謝の気持ちを示すことができるか?
UCSF Faculty Mentoring Program Toolkit より改変して引用
21.
Mentor をみつける
若手の faculty にとって、academic な迷宮における水先案内人となる mentor をみつけることは、脅
威的なものであり、時間のかかるものであるかもしれない。国際的に認知された専門家に打診し支援と
指導をお願いするのは気まずく感じるかもしれない。あなたが自身の career におけるある重大な局面で
奮闘している最中であり、自分の career における重要な決定において彼らの助言をもらいたいというこ
とを示すことは容易ではないかもしれない。いくつかの点においては、自分よりもほんの 1 あるいは 2
ランク上の mentor をみつけるほうがずっと現実的だろう。彼らはあなたが直面しているであろうことを
より最近に経験しており、あなたのために割ける時間もたくさんもっているだろう。一体 mentor をみつ
ける際に考慮しなければならないことは何だろうか?
あなたが本当に助けを必要としている具体的な領域に関して考えてみてほしい(あなた個人が必要な
ものを特定するために 31 ページにある Mentoring Worksheet を参考にしてほしい)。あなたは、自分の
施設においてその領域で特に優秀だとされる人物が誰であるかを周囲の人達に訪ね歩いてみたいと思う
かもしれない。
あなたが mentor になり得る人物と最初に関わる時には、あなたが現在直面している問題を解決する手
助けを頼むのではなく、必ず彼らの経験について聞くようにしよう。その mentor に専門家としての興味
を抱いていることを示すには、彼らの仕事について話題を振ればよい。あなたが mentor の成功談を学ぶ
ことに心から興味があることを示そう。効果的な mentoring 関係というものは、お互いを段階的に深く
知るにつれて、時間をかけてゆっくりと育っていくものである。
見返りは必ずしも必要ではなく期待されているものではないが、可能な 範囲で、バラン スを保ったり、
何らかの取引ができるよう努力しよう。Mentor はあなたの研究助成金申請書や論文を一字一句まで読ん
で、洞察力のあるフィードバックをくれるかもしれない。臨床医としてあなたは、mentor の研究にその
背景にある患者の情報を提供することができるかもしれない。研究者としては、あなたの研究計画書や
論文に mentor を共同研究者あるいは共著者として加えることができるかもしれない。どのような合意に
到達するにしても、あなたのために mentor がしてくれた努力に対し適切な名誉を与え感謝を示すように
しよう。
22
22.
Mentee が実践すべきこと、やってはならないこと
実践すべきこと
やってはならないこと
イニシアチブをとること:Mentoring の必要性を
困難を避けること:あなたの問題の解決を全て
認識し、そのような関係を探すこと。
mentor がしてくれると期待しないこと。
完璧主義を避けること:人は間違いを犯すものだ
仕事を避けること:あなたがすべき仕事を mentor
ということを受け入れ、その失敗から学ぶこと。
にやってもらおうとしたり、やってもらったりし
バランスを保つこと:家族や友人との時間を守る
ないこと。
こと。
楽をしないこと:新たな経験に対してしり込みし
一生懸命に働くこと:最大限の努力をすること。
ないこと。
Mentor の時間を尊重すること
感情を封じ込めること:自分が完璧ではないと思
同僚をサポートすること:同僚と個人的かつ専門
われるからといって、問題や不安、悲嘆について
的な支援をし合うこと。
話すことを避けるべきではない。誰もがこうした
経験を喜んで受け入れる:あなたの得ることがで
経験や感情を持っているということを認識すべき
きる最も広い範囲の専門的な経験を追究すること。
である。
カウンセリングを求めること:あなたが抑うつや
見栄を張ること:誰からでも(faculty, 研修生、看
薬物乱用あるいは燃え尽きといった問題を経験し
護師や患者)学ぶことがあると認識しなさい。
た場合には、助言やカウンセリングを求めること。
仕事を楽しめないこと:仕事の厳しさにとらわれ
あなたの履歴書や個人の career 開発計画書を更新
るあまり、あなたの大好きな分野で働くというこ
しておくこと。
とから来る喜びを感じられなくなってはならない。
23.
Career を計画することおよび mentor を見つけること
1.以下のページにある Individual Development Plan (IDP)を使うことによって来年のあなたの優先事
項や目標を明確にしなさい。できるだけ多くの情報を書き込むように(IDP のワードドキュメント
は Faculty Development のウェブサイトにある“Mentoring Tool”から入手できる)
。記入 するにあた
り、何が可能で、何が現実的であるかということを注意深く考えなさい。さらにその先の目標まで
視野にいれなさい。これはあなたの career プランであり、あなたがリストアップしたものを達成し
ようがしまいが、リストを作成し、定期的に参照することで、自分が進むべき方向性が維持される
だろう。
2.IDPの次にあるMentoring work sheet上で、そこに列挙されている知識やスキルのレベルを評価し
なさい。自分に正直になりなさい。この表は他人に見せる必要はないのだから。あなたにとって
mentorが必要だと思う分野を決めよう(あなたが弱点と感じたりまだ努力が必要と感じる分野につ
いて)
。そしてあなたの部門の部長のほかにあなたをmentorしたりあなたに助言をくれそうな人を考
23
えてみよう。あなたの部署または施設で特にその点において極めて優秀な人がいるだろうか?自分
で分からなければ、周囲の人に尋ねてみよう。部長に適切な人を推薦してもらったり紹介してもら
おう。自分の部署の責任者にも聞いてみよう。もしくは付録4にリストアップされているResearch
and Clinical Career Contactsを利用してみよう g。彼らは快く、あなたに適切な資料を紹介してく
れるだろう。
3.助言やガイダンスのためには M.D. Anderson の内外問わず faculty に突然の電話やメールをするこ
とを恐れずに連絡しなさい。彼らの career での個人的な成功を評価することが、この際役に立つで
しょう。もしあなたがまったく知らない人に連絡を取る際には、事前に彼らのことを良く調べ、そ
の人の仕事を熟読し、その人に連絡を取った理由として、その人が過去になした仕事を引用できる
ようにしよう。また、頼めるのならば部長に紹介してもらえるよう頼みなさい。もしメールや電話
をして返事がなかった場合、自分の部長や年長のだれかに相談し、口添えしてもらいなさい。そし
て最終的に何らかの理由で返事がない場合でも、個人的な問題と思ってはいけない!皆忙しく、時
には忘れたり、見落としたり、なくしてしまったり、あるいは単にわからなくなってしまったりす
るものである。
4.その人に実際に会ったとき、あるいは返事がきたときには、カレンダーのリマインダー機能をセッ
トしておき、引き続き連絡を取り合うようにしなさい。その後のあなたの進捗状況を伝えたり、単
に挨拶をするだけでも構いません。これらのことを人は覚えているものなのである。もちろん、時
間を割いてもらったことに感謝を示すことを忘れずにいること。
5.Career に関することで何か質問や問題があれば、いつでも遠慮なく Faculty Development Office
まで連絡をするように。電話番号は(713)792-8061 である。
24.
M.D. Anderson の Faculty のための Individual Development Plan
Individual Development Plan (IDP)は、faculty の academic な進歩、専門家としての発達のために必
要なもの、career の目的を明確にするための計画の過程を提供する。また IDP は若い faculty と彼らの
mentor との間のコミュニケーションツールとしても役立つものである。この表を完成させることにより、
faculty は、短期・長期の career の目標を系統的に計画することができ、そして進展状況のフィードバッ
クを得ることができる。IDP のワードドキュメントは Faculty Development のウェブサイトにある
“Mentoring Tool”から入手可能である。
Part 1 : 技能評価
あなたの技能と能力を以下の分野について評価する(5=非常によくできる、3=平均的にできる、
g
M.D. Anderson 内部のシステムであるため本書では詳細は割愛
24
1=全くできない)
。自分の技能を評価する基準として、その分野で非常に秀でた faculty を参考にしよ
う。自分の career にそぐわない技能はとばし、自分に特に重要と思う項目を付け足すようにしなさい。
技能評価
一般的研究技能
臨床試験やプロトコールのデザイン
1
2 3 4 5
分析力
1 2 3 4 5
問題解決力
1 2 3 4 5
創造性/新たな研究の方向性の開発力
1
2 3 4 5
臨床診断能力
1
2 3 4 5
治療法選択
1
2 3 4 5
患者やその家族とのコミュニケーション力
1
2 3 4 5
1対1での指導力
1
2 3 4 5
小グループの指導力
1
2 3 4 5
集団に対するプレゼンテーション能力
1
2 3 4 5
研究助成金申請書の執筆能力
1
2 3 4 5
口頭でのプレゼンテーション能力
1
2 3 4 5
論文執筆力
1
2 3 4 5
Mentoring の技能
1 2 3 4 5
Mentor と仕事をする能力
1
2 3 4 5
他者を導き動機づけること
1
2 3 4 5
予算を管理すること
1
2 3 4 5
プロジェクトや時間を管理すること
1
2 3 4 5
組織化する能力
1
2 3 4 5
他者とうまくやっていく力
1
2 3 4 5
文書で明確に意思をやりとりする力
1
2 3 4 5
会話で明確に意思をやりとりする力
1
2 3 4 5
Conflict を解決する力
1
2 3 4 5
1
2 3 4 5
1
2 3 4 5
一般的臨床技能
指導能力
専門的技能
統率力、マネージメント技能
対人関係技能
その他の技能
25
この自己評価について mentor と共有し議論することで、現在最も向上させる必要のある技能に集中する
のに役立つだろう。
Part 2 : Individual Development Plan をたてること
以下に示すのはあなたが自分の career の目標やあなたが選んだ分野において成功するために必要なス
テップに集中することに役立つような表である。自分に当てはまらない分野は無視してよいので、この
表を完全に記載する時間をとるようにしよう。他の分野を追加する必要があるのならば、もちろんそう
してほしい。この IDP はあなたの必要なことあるいは目標が変わるとともに変化し、あなたが専門分野
において成長してくとともに発展していく、生きている書類である。この表を用いる目的というのは
career の目標をはっきりと設定し、それを達成するための方法を確立することである。
年に 1 回 IDP を記載する目的とは:
・一年ごとの計画を作ることによってあなたの長期の career の目標を得やすくすること
・様々なトレーニングや技能を向上する機会を達成する期日を設定すること
・どのように自分の時間を使うかを含め、次年度に向けての目標や副次的な目標を設定すること
・あなたが必要な特定の技能や能力を身につけるための具体的な方法を決めること、と同時にそれを達
成するのに必要な時間軸を設定すること
・あなたの mentor がより効率的にあなたを指導できるように、あなたの目標をわかりやすくすること
26
年の Individual Development Plan
(氏名)
日付:
現在の academic な職位、称号:
部署:
自分の career と専門職としての目標:
来年のあなたの専門家としての目標は何か?
あなたの長期的(3-5 年間)な career の目標は何か?
これらの目標を達成するための動機となる要因は何か?
来年の目標を達成するのを難しくするような特殊な状況や障害は何か?
去年のあなたの主な目標は何であったか?
これらの目標のうち達成できたものはどれか?達成出来なかった場合は、なぜ出来なかったのか?
27
時間調整
一番多く見積もって、昨年どの程度の時間を下記の各項目に割いたか?
もし変えるとしたら、来年はどのように変えようと思うか?
今年
来年
誰かを教育・訓練・mentoring することに費やした時間(%)
研究や独創的な仕事に費やした時間(%)
患者治療に費やした時間(%)
管理業務やその他の日常業務に費やした時間(%)
100
計
100
一般研究能力の向上
現在の career においてあなたが更に必要としている研究に関する技能は何か? また、次の段階で必
要な技能は何か?来年、研究能力を向上させるために何を行うか?
教育能力の向上
現在の career においてあなたが更に必要としている教育に関する技能は何か? また、次の段階で必
要な技能は何か?来年、教育能力を向上させるために何を行うか?
専門家としての能力の向上
研究資金申請書を書いたり、自分の研究の口頭発表をしたり、論文執筆、mentoring、あるいはよき
mentee であるために更に向上させる必要がある分野はどこか?また、そのために来年何を行うか?
統率力、マネージメント能力の向上
統率力や予算、時間管理、プロジェクトの管理および計画において、更に向上させる必要がある分野
はどこか?また、そのために来年何を行うか?
対人関係能力の向上
対人関係能力において、更に向上させる必要がある分野はどこか?また、そのために来年何を行うか?
28
履歴書の改善
履歴書を更新し、それをこの IDP につけておくこと。そうすることで、あなた自身も、mentor も、
進展状況をより正確に把握することができる。
最終目標の設定および順位付け
総合的に考えて、来年最も優先度の高い目標は何か?各目標を達成する月次予定表を作り、それをこ
の個人向上計画書につけておくこと。また、その達成目標から遅れないよう、定期的に目を通すように
すること。
現在の活動内容及び学術活動のリスト
あなたがどんな仕事をしており、何を成し遂げたのか、mentor が短時間に概要を把握できるよう、こ
のリストを更新し続けてほしい。それぞれの活動内容の中で、今どこにいるのかを記すことは、それが
簡単な記述であっても役に立つだろう。この他の領域の仕事をしている場合も、自由にこのリストに追
加記載して役立ててほしい。
論文
・
・
・
プロジェクト
・
・
・
研究支援資金申請
・
・
・
専門医資格更新
・
・
・
29
委員会活動
・
・
・
発表
・
・
・
会議
・
・
・
社会奉仕活動
・
・
・
Part 3: 計画の実行
Individual Development Plan を作成することは career 形成の初歩に過ぎず、あなたのロードマップ
として役に立つだろう。それをどこかにしまったままにしないように。Academic career を管理していく
ことは日々難しくなってきており、あなたの目標の中間点を意識し、努力が正しい方向を向いているこ
とを確認することが、career の成功に役立つだろう。
この計画は必要に応じて改訂・修正してほしい。計画書は堅固としたものではなく、その時々の状況
や目標の変化に応じて更新する必要がある。目標を達成するための挑戦は常に柔軟に変化しうるべきで
ある。
毎年 1 回(また必要な場合は数回)
、mentor と会い、IDP を見直し検討する機会を設けよう。その際
には、議論したい事柄の優先順位を書いていくなど、議論の概要について紙に書いたものを用意するよ
うにしよう。
また、自分の職位や進路に応じた昇格の基準について定期的に確認するようにしよう。
主にこれら
の基準に沿うように自分の努力を進めていくべきである。これらの基準は、Faculty Academic Affairs
のウェブサイトで閲覧できるので参考にしてほしい。
UCSF Faculty Mentoring Program Toolkit より改変して引用
30
25.
Mentoring ワークシート
下記各項目におけるあなたの知識や技能レベルについて、強い・普通・弱いのどれかに×をつけてほし
い。あなたがmentoringやコーチングを必要と感じる分野(普通~弱いにあたる分野)については、それ
ぞれmentorとなる可能性のある人を挙げてみよう。もし誰が良いか分からない場合は、あなたの所属長
や部門管理責任者に相談してみてほしい。または、付録4に挙げられているClinical Career Contacts hに
相談してみてほしい。あなたが向上させる必要があると思っている知識や技能についても自由に追加記
載してほしい。
知識・技能
強い
普通
管理業務
Career 計画
臨床業務
共同研究
コミュニケーション能力
Conflict 管理
研究アイディアの作成
投稿すべき雑誌に関する知識
実験室管理
人的ネットワーク形成
組織力
研究支援申請の準備
プレゼンテーション能力
昇格や tenure について
科学的な論文の書き方
ストレス管理
技術的な専門能力
時間管理
ワーク/ライフバランス
看護師と働くこと
スタッフと働くこと
研修医と働くこと
h
M.D. Anderson 内部のシステムであるため本書では詳細は割愛
31
弱い
Mentor の可能性のある人
Faculty のリーダーのための
ツールと資源
32
26.
Mentoring 概論
各部局や部門で Mentoring プログラムを作成するに当たって
米国では、20 年以上にわたり職場における mentoring の研究が行われており、アカデミアでも
mentoring に関する関心が高まっている。なぜこのように関心が高まっているのか?最も端的な答えと
しては、どの大学や大学病院、ビジネスの場においても、能力のある人を雇っておきながら、その人た
ちが成功するための投資をしないという無駄をするだけの余裕はないということがある。
Mentoring の研究では、mentoring を受けた人達は主観的にも客観的にも career において明らかに成
功することを示している(客観的評価としては報酬、昇給、自己申告による昇進を用い、主観的評価は
仕事への満足度、出世・昇進への期待、仕事の充実度、組織への残留意思を用いた)。特筆すべきこと
として、mentoring のもっとも確実な効果とは、人間関係が構築された結果、自身の career に前向きな
気持ちを持つようになることであろう。(Kram, p. 73)
最近の主なmentoringについて書かれた総説については、Belle Rose RaginsとKathy E. Kramによっ
て監修された、The Handbook of Mentoring at Work: Theory, Research, and Practice (Sage, 2007)を
参照してほしい。この本はぜひ一冊持っておくべき本である。著者らも指摘しているように、mentoring
とは、複雑できわめて重要な人間関係の構築である。
Mentoringは、年上の経験を積んだmentorが若い弟子のcareer開発を助けることであると伝統的に定
義されてきた。多くの人はいまだにこの伝統的な型にはまったmentorを持っているが、この他にも
mentoringの定義は拡大しており、仲間内、あるいは部署内のグループ単位で、あるいはmentorのチー
ムによるもの、更にはJunior Faculty Development ProgramやWomen Faculty Programなどのグルー
プ単位でのものも行われるようになってきている。
Mentoringのすばらしい特徴は、careerという視点に基づいて形成される、発展を遂げていく人間関係
であるということである。Mentoring関係の主眼はcareerの開発と成長である。
Mentorがもたらす2種類の機能
Career面 - 新人が「コツを学ぶ」ことを助け、昇進や昇格、careerにおける成功に導くこと。典型
的には、mentorはコーチングとアドバイスを行う。すなわち、各個人の研究資金申請書や論文の見直し
を行うこと、career開発プランの作成を手伝うこと、その専門領域の仲間や同窓生などを紹介することな
どを含んだ支援を行うのである。
精神面 - 各個人の成長、自己実現力、自尊心、複雑な組織の中で成功するための能力について相談
するために、正直で隠し事のない信頼関係を構築すること。
Mentoring は、さあ始めよう、と言って始まるものではない。Mentoring プログラムを発足させるこ
とは難しいと思うかもしれない。Mentor と mentee をうまく組み合わせなければいけないのだろうか?
もしそうであれば、どのようにやればいいのだろうか?実際にそれぞれがちゃんと面談をしているかど
33
うかをどのように把握すればいいのだろうか?Mentor は何を議論しなくてはいけないのだろうか?
Mentee の責任とは何だろうか?
これら疑問点に対する回答はすべて、各部署の構造および性質、そして各々の faculty ごとに必要とし
ている物、好みによって異なってくる。自然発生的に築かれたのではなく、何らかの客観的基準をもっ
て伝統的な年長者と若年者という組み合わせで mentoring のペアを作った場合には、あまり効果があが
らないことが文献的に報告されている。このような関係が一緒に働きたいという相互の強い希望によっ
て有機的に築かれた時、最も強力で、最も生産的な mentoring 関係となる。一方でこのような化学反応
が起きることなく、特に年長の faculty が単に「やらなければならないことの一つ」と感じた場合、双方
ともに結果について失意と不満を抱いてしまうだろう。
これは、
年長の faculty と若年の faculty を何らかの客観的な基準によってペアを組ませてはいけない、
ということではない。しかしこのような経緯でペアを組ませるのならば、最初からその関係によって期
待している成果を示し、mentor と mentee が共に自分たちの役割を果たしていることを確認するために
外部から監視すべきである。付録1に、mentoring に関する規約の例がある。それぞれの状況にあわせ
て編集して使ってほしい。
Faculty への mentoring は明確な目的があってもよい。例えば、特定の研究資金申請のため、または
科学論文の投稿にあたってなどのように。あるいは、若手の faculty の専門家としての生涯、場合によっ
ては個人の人生の側面に触れるような、より網羅的で情熱的なものであっても良い。早期から期待され
る成果を決めておくことで、mentor が力を注ぐべき点を明らかにし、また自分の専門外の分野について
は mentee に別の mentor を探してもらう必要があることを明らかにすることができる。
研究に従事している faculty が絶対的に必要とする mentoring は、全ての研究資金助成の申請に対す
る徹底した審査と批評である。研究を支援している部署はすべて助成金申請が提出される前に注意深く
申請書を吟味すべきであり、これを行うためには様々な方法がある。部長が自らの時間を割いてもよい
し、または他の faculty に、特定の faculty からの申請書を見直すよう指示してもよい。明確な目標をも
った再審理委員会を定期的に招集することですべての助成金実績を見直すのも便利な方法である。ある
いは、部署全体で定期的に会合し、faculty がそれぞれの目標を発表しグループ全体にフィードバックす
るのもよいだろう。
一般的に、部局長は自分の部署のすべての若手の faculty の mentoring を引き受けるべきではない。
そこには厳然たる権力の違いがあり、苦悩している faculty が、自分の“上司”にそのような弱点や懸念
を明らかにすることが難しいことがあるからである。一方で部長は当然、各 faculty が部署内、施設にな
じめるよう手助けをするべきであり、アドバイスを与え、仕事、文書の見直しをするべきである。この
他にも、faculty が施設内で他の mentor を見つけられるように働きかけるべきである。この際 mentor
は、その faculty が恐れていることを正直に話すことができ、どのように見られるかを心配することなく
質問できるような相手がよい。適任者としては、他の若手の faculty であったり、あるいは同じような問
題にごく最近直面して苦悩した直上の先輩 faculty などがあげられる。下記に示す mentoring プログラ
ムのモデルは、部長が様々な組み合わせで自分の部署内でも用いることができる。Mentoring プログラ
ムには柔軟性が必要であり、様々な faculty の必要とするものに合わせて仕立て上げる必要がある。臨床
用の mentoring プログラムと研究用の mentoring プログラムは、それぞれに所属する faculty が非常に
異なる技術や知識を身につけなければならないため、大きく異なるだろう。
34
27.
Mentoring プログラムのモデル
ここでは若手が年長者よりもはるかに人数が多かった場合でも,若手が年長者から確実に mentoring
を受けられるようにするためのモデルを紹介する。従来からの若手と年長者の 1 対 1 のペアは一見理想
的に思えるが、互いの組み合わせが自ら意図したものではなく強制されたものであったり、mentor と
mentee の間で自然発生的な人間関係がないとうまくいかないことが多いといわれている 7 。若手の
faculty が積極的に個人的な mentorship を求めていくべきなのはもちろんであるが,小さなチームやグ
ループの中で mentoring を促す効果的なやり方もいくつか存在する。Faculty Development では,ある
部門の人々とその部門の責任者と一緒に,どの種類の mentoring モデルが最も効果的かを探す手助けを
している(付録 3 にも mentoring 計画の見本をのせてあるので参照してほしい)。
1.
従来からの若手/年長者の組み合わせによる mentoring
2.
Peer mentoring
3.
Group mentoring
4.
その部門における academic advisor
5.
年長者による履歴書の審査 - scientific mentor への紹介
若手/年長者の組み合わせによる mentoring モデル(1 対 1 あるいは伝統的な mentoring)
若手/年長者の組み合わせによる mentoring は従来からある mentoring モデルであるが,若手が複数の
mentor とネットワークをつくることで,その人の専門的なサポートについて 1 人の mentor にすべて依
存しないようにすることが大切である。Mentor は自分が十分に mentoring することができない分野に
ついては、若手に他分野の専門科や支援をすすんで紹介するべきである。
・ 部門による mentoring のための委員会を招集すること
・ 研究内容と個性の相性に基づいて若手と年長者のペアをつくる
・ 若手、年長者双方とも自主的に mentoring に参加すること
・ Mentor/mentee の相性、成果を見極めるため mentoring 委員によるチェックを定期的に行う
・ Faculty Development Program を通じて、mentor と mentee が利用できる mentoring の訓練と支
援のための教材が用意されている
・ このモデルは年長者が若手と同じくらいの人数あるいは多いような小規模の部門に特に適している
7 Pololi, L and Knight, S., Mentoring faculty in academic medicine: A new paradigm? J Gen Intern Med 2005; 20:
866-870.
Peer Mentoring (同輩同士の mentoring) モデル
同輩同士の mentoring には様々な形式がある。同輩同士の mentoring は、若手が対等な関係でお互い
に気兼ねなく交流し、彼らの専門分野の知識や見識を共有する場を作ることが目的である。例えば、講
35
師全員を集め、彼らが career development の中で遭遇した障壁について話してもらい、若手が自分たち
の数年先の姿としてそれを通して学んでいく会を設定するなどといった方法がある。
社交行事などのイベントは若手が一緒になって気兼ねなく議論できる雰囲気をつくることができ自然
と“mentoring”が成立する理想的な場となりうる。バーベキューパーティーを開催したり施設外で初対
面の人を集めた会を企画することは faculty 同士が話し合うのにとても役に立つ。このような場を利用し
て faculty は施設内で自分に役立つシステムを作りだすことが多い。部長やその他の mentoring のリー
ダーは年に数回このような機会をもうけ、faculty に専門家としての成長の一環として参加するよう促す
べきである。
・ 部門全体で、あるいは Faculty Development Program を通じて企画する
・ イベントを企画したり開催場所を準備する専門の委員会を立ち上げる
・ 若手がお互いに交流し、ここ MDA における自分たちの career の様々な側面を比較する機会を設け
る
・ 若手が様々な人々と交流をもつことで得られるメリットとして
- 社会的なサポート
- 施設についての認識の共有
- 仲間であるという意識を強くする
- 施設内でのネットワーク作り
などがある
・ 大規模な部門、特に年長者が若手より少ないところに適している
Group Mentoring (集団での mentoring) モデル
集団での mentoring の主な目的は、一名ないし二名の年長の faculty が、同時に多数の若手の faculty
と交流することで、年長の faculty の時間の負担を減らすと同時に、若手の faculty が年長の faculty は
もちろんのこと、若手 faculty 同士と交流、質問し合うことでお互いに学んで行くことができる場を提供
することにある。このような交流の場では、faculty が積極的に参加することが推奨される、質疑応答の
時間を設けることが重要である。このような活動は、各部署で行うべき活動の1つとして認識されるよ
うになるために、定期的に開催されるべきである。散発的に開くようであれば、これらの集まりを効果
的にするための大きな動きを生み出すことができないからである。Faculty Development では、
「昇進と
tenure について」、
「Conflict 解決法」
、
「仕事と生活のバランス」、
「異文化に対応する能力」やその他、
academic な分野で成功を収めるために重要なトピックについて、招待講演者としてふさわしい人物を紹
介するという形で協力することができる。
・部門全体で、あるいは Faculty Development Program を通じて企画する
・複数のアドバイザーを招集し、3 か月ごとに会合を開いて予定、課題、依頼する講演者・ゲストを決定
する
・様々な形で開催することができる
① 歓迎会
② 招待講演(ある特定のテーマの専門家、年長の faculty を呼ぶなど)
36
③ 朝食を囲んでの円卓会議
・ 大規模な部門、特に年長者が若手より少ないところに適している
28.
Mentoring プログラムの作成にあたって
Departmental Mentoring Program の実施に向けての各段階の提案
1. 目的、照準、対象集団を定義する。
2. 成功と考えられる事項 (例えば助成金の獲得、論文の出版、昇進、ネットワーク作り、共同研究、個
人満足度など)を見つけ、定める。可能なら、ベースラインを設ける。
3. Mentor や mentee の役割・責任をはっきりと伝えることで、互いの期待をわかりやすく現実的なも
のにする。
4. 伝統的な mentoring 関係を実施するのならば、
組み合わせを決めるためのプロトコールを作成する。
どのようにして、いつ、そして誰が組み合わせを決めるのかについて明確に定めること。
5. プログラム実施にあたり、運営・監督・調整について説明責任を与える。
6. 所有権を培い、潜在的に障害や問題となりうる因子を同定し、プログラムを強固にかつ高めるために、
絶え間なくフィードバックがなされるような関係を築く。
7. 全ての参加者に対し何らかの報奨、表彰、祝賀会の企画を設ける。
8. 障害となりうるものが問題になった場合に対処すべく、不測の事態に備えたプランを綿密に計画して
おく。
9. 計画を広く行きわたらせ、そして計画が完全に実行されるようにする。大きな部署では、指導者がい
た方が好都合かもしれない。
10. 話や最高の診療経験を集めそして皆に共有する。
Creating a Mentoring Culture: The Organization’s Guide, Jossey-Bass, 2005 より改変して引用
37
付録 1
Faculty のための mentoring 計画
The Mentor
The Mentee
名前:
名前:
部署:
部署:
身分/称号:
身分/称号:
電話番号:
電話番号:
署名
日付
署名
日付
Mentor と mentee 両者の同意:
守秘義務
mentor と mentee で共有された情報は、守秘義務があり許可なくして他の誰とも共有してはいけない。
予定されたミーティングには、定期的に参加する
両者は定期的に会う事に同意し、少なくとも
ヶ月に
回は会い、互いが可能ならば、臨時
ミーティングも行うこととする。
お互いが正直に、率直に、そして互いを尊重したフィードバックをする
mentoring 関係の中で何が上手くいっているのか、また、どのような障壁にぶつかっているのか、互
いに知らせることに同意する。
Mentee の Individual Development Plan (IDP)を定期的に更新し、振り返る
Mentee は、Individual Development Plan (IDP)を全て記載し、最初のミーティングで mentor へ提
示する。Mentor は、mentee の進歩を振り返り、昇進(また当てはまる場合には tenure)に対する努力
に対し抜けがないかどうか模索する。
特に Mentee が協力してほしい分野:
1.
2.
3.
Mentee へ:
上記に加え、以下の事に同意する:
・ Mentor の時間に配慮する
・ 適切な目標を達成するために、mentor と共に作業していく
38
・ 自分で決定した事柄について mentor に知らせ、アドバイスを求める
・ 批評、提案、振り返りを注意深く聞く
・ 秘密を守り、倫理的な態度を貫く
・ 定期的に、自分達の mentoring 計画について見直す
Mentor に以下の事を期待しません:
・ 昇進に関する準備を手伝わせる
・ 個人的な問題について全面的に手伝わせる
・ 自分のために限りなく膨大な時間を費やす
Mentor へ:
上記に加え、以下の事に同意する:
・ 希望に応じて、mentee に career に関することやその他のアドバイスをする
・ Mentee の目標に向けて一緒に作業していく
・ 責任を持って物事を進めていき、約束を守る
・ Mentee の言うことをよく聴き、必要なことを考える
・ 彼らの人脈が広がるよう、他の faculty やスタッフを紹介する
・ 秘密を守り、倫理的な態度を貫く
・ 定期的に、自分達の mentoring 計画について見直す
39
付録 2
Mentoring Competency Categories
若手の faculty に対する mentor を選ぶ際に考えるべき資質を以下の Mentoring Competency
Identification Table (Mentoring 適正能力確認表)に列挙した。全ての項目が全ての若手の faculty に必要
ではないかもしれないし、特定の状況下で必要とされるようなそれ以外の各人の適性があるだろう。更
にその下に示した Career Development Competencies は、M.D. Anderson の faculty に対するグループ
講義などで調査を行った際に faculty から要望のあった資質の一覧である。適宜テンプレートに付け加え
て利用して欲しい。
一般的能力
機能的能力
最低限必要なこと
組織のノウハウ
科学的専門能力
時間があること
Mentoring のノウハウ
研究助成金申請書作成の経験
話しかけやすい
統率力
科学的論文発表の経験
専門家としての誠実さ
管理能力
研究室の立ち上げと運営能力
他人に尊敬されている
その分野で著名である
臨床能力
他人に対して主張できる
臨床コミュニケーション能力
時間管理能力
M.D. Anderson の faculty から mentoring に関して提案されている領域
Career Development Competency
ストレス管理
仕事と生活のバランス
昇進と tenure のための振り返り
Career の進路の築き方
Conflict の管理
異文化に対する感受性
組織的能力
プレゼンテーション能力
政治的調査力
40
Mentoring Competency Identification Table 用テンプレート
能力と必要条件
年長の faculty
B
○
年長の faculty
D
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
いる
○
位
他人に尊敬されて
○
専門家としての品
付き合いやすさ
○
と管理スキル
知識
助成金申請書作成
科学的研究の専門
管理能力
統率力
○
○
C
年長の faculty
ノウハウ
○
最低限必要なこと
時間がある
A
機能的能力
臨床スキル
年長の faculty
Mentoring の
Mentor
組織的ノウハウ
Faculty
一般的能力
の専門知識
研究室の立ち上げ
地位
○
○
○
○
○
○
○
○
Creating a Mentoring Culture: The Organization’s Guide, L.J. Zachary, Jossey-Bass, 2005. より改変
して引用
41
付録3
部署ごとの Faculty Mentoring プログラムの一例
目標:
(1)若手の faculty メンバーに対して career の目標設定をするためのセルフガイダンスを提供する
(2)若手の faculty メンバーの目標達成の支援をするために年長の faculty からの mentorship を提供
する
(3)具体的な mentorship プログラムの内容については将来の Institutional plan に準拠する。
必要要件:
Mentorship プランは教授以下、全ての academic な職位についている faculty に必要とされるもので
ある。
ガイドライン:
(1)Mentor(s)
a. 完全に研究あるいは臨床のみに従事している faculty メンバーに対しては一人の mentor(少なくとも
mentee より一段階は上のランクの人)をつける
b. 研究の時間が確保されている(または研究室での仕事に活動的に従事している)医師に対しては二人
の mentor(基礎科学者と臨床医を一人ずつ)をつける
c. Mentor は faculty が自分で選定する、ただし、
d. 部長は mentor になることはできない
(2)若手の faculty はそれぞれが次のような mentoring 計画を立てなくてはならない:
a. 各部署の責任者の承認を得ること
b. mentor が 3 ヶ月ごとに進捗状況を評価すること
c. 目標をどうしたら達成できるかに焦点が当てられており、昇進に向けての努力がなされていること
d. mentor は年に 1 回部長に対して簡単な評価表としてまとめて提出すること
Mentorship 計画:
(1)原則:
a. 役に立つ建設的なガイダンスを提供しなくてはならない
b. 部署、Koch Center、施設に対する説明責任を備え持っていなくてはならない
c. わずらわしいと思ってはならない
(2)正式な計画:
2 ページ以内で、mentor と一緒に作成したもので、以下の内容について盛り込む:
a. 短期目標(faculty が次の 6 ヶ月間に実際に成し遂げようと思っていることをおおよそ 5 つ)
b. 中期目標(faculty が次の 2~3 年の期間に成し遂げたいと思っていることを、大まかにでよいのでお
およそ 5 つ)
42
c. 長期目標(faculty が career に基づいていると思う点について、おおよそ 2 つ)
d. mentorship に必要なこと(mentorship プログラムが自分たちの目的にどのように役立つかというこ
とについての簡潔な要約)
全体における所属部署の責任者の役割:
(1)計画が機能しており、手順が順守され、AA の支援により進捗状況が観察されていること(すなわ
ち、全ての書類仕事がつつがなく処理されていること)を確認する
(2)必要とされれば、mentoring 問題において所属部署のすべての人にどんな支援も施すこと
43
格言集
・よい mentor は自分の mentee に成功だけではなく、失敗からも学ばせるのだ。
・Mentor は mentee の成功と幸せのために短期および長期にわたって“考えうる最善のアドバイス”を与
えるよう期待されている。
・“多忙に働くだけでは十分ではない。正しいことに対して働くことが必要である”
Eva Singletary, M.D. Professor, Surgical Oncology
・“大体において、これまでの私の mentor というものは、科学的な career というものがどういうもの
であるかということを分かっていたように思う。過去の mentor に教えられたこと、そしてこれは現在
の私の mentor 自身も強調していることだが、は私の研究に対する「強いこだわり」はあまり上手く機
能していないということ、そして秘密主義でいることが私を孤立させているということだ。”
Willem Overwijk, Ph.D.
Assistant Professor
Melanoma Medical Oncology Department
・“自分に似た mentor を探す必要はない。むしろ、自分を見つめさせてくれる mentor を探すべきだ。”
Harry Gibbs, M.D.
Vice President, Office of Institutional Diversity
・“今日の状況においては、mentor は mentoring を通じて mentor 自身が新しい技術や能力を学ぶこと
ができる。Mentoring は自分自身の学習意欲を生き返らせるチャンスである。”
・個人的な成長
“若い女性と働くことで、今日の彼らを取り巻く心配事や問題がいまだ同じであり、ただ少し近代的で
あることに気づかされた。 私は女性達にバランスを保つように奨めている。そうすることで結果的に
career および家族の双方をより豊かにすることができる。どのような時でもこのような決断をするの
は困難を有するが、若い女性達とこれらの問題を議論することによって、バランスが鍵であることに
気づかされる。”
Elizabeth Grimm, Ph.D
Professor, Experimental Therapeutics
・“よき mentor は、正直に過ちを認めることが学びの機会であり、誰もが気軽に助言を求めたり質問す
ることができる、そういった環境を作り出すことができる。”
Eva Singletary, M.D.
Professor, Surgical Oncology
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・“Mentor を探すときには、ネームバリューで選んではいけない。彼らはとても忙しく、本当にあなた
の目標をともに共有するだけの時間がほとんどない。あなたのために時間を割くことができ、あたな
の状況を理解してくれるような、若く、熱心な faculty を選ぶべきである。まず自分にあった faculty
をみつけ、その人と会う時間を作りなさい。どのような人かを探るのだ。複数の人と会ってみるべき
である。ある人はあなたにすぐにアドバイスをしてくれたり、見識を提供してくれたりする、仕事や
生活の mentor となるだろう。また別の人はある特定の分野で、あなたの mentor となるかもしれない。
そして自分の施設や部署の中にとどまらないこと。自分の部門長なら誰を薦めるかを聞いてみなさい。
人を紹介してもらいなさい。あなたの mentor から紹介をしてもらうようにし、施設の外の人とも話が
できるようにしてもらいなさい。もし誰かの名前が挙がるようであれば、直接その人と連絡をとりな
さい。もし何の反応もなければ、あなたの mentor にその人と連絡が取れるよう仲介を頼みなさい。こ
の過程においては個人的要素をのぞかなければならない。もし最終的に何の反応も示さなければ、恐
らくあなたとは縁のない人だと思われる。その人とアポイントメントがとれるように努力し続けなさ
い。もしあなたが mentor になる可能性があると思える人に出会ったら、事前にその人の情報を得てか
ら会いに行くようにしなさい。彼らが出した論文を読んだり、彼らが所属している委員会を前もって
調べておきなさい。そしてあなたが特別な理由があって興味を抱いていることを示しなさい。
1 人以上の mentor を持つことは、有益なことである。あなたは両者あるいはかれらすべてからのア
イディアを得ることができる。そして常にあなたの活動があなたにとって有益であることを確認しな
さい。”
Eugenie Kleinerman, M.D.
Division Head
Pediatrics – Patient Care
・Mentor となり得る人物の同僚や部下に意見を聞いてみよう。その人があなたの mentor となったとき
に何が期待できるのか、どのように人と接するのかを調べよう。試しに mentor となり得る人物に助言
を求めてみよう。この際にはあなたが必要としているのはどのような援助なのかを明確にしなければ
ならない。
・
“Mentor は自分に少しでも似ているところがある者に対して最も援助をする可能性が高い。だからこ
そ、自暴自棄あるいは絶望しているような mentor に接触するべきではない。数回のやりとりの後に、
その関係が mentoring relationship として適切なものかどうかの感触を得ることができるだろう。そ
の時点でその人物があなたの mentor にふさわしいと思えば、その人物に mentor になってもらうよう
にはっきりとお願いしてもよいし、その人物からこれまで授かった知恵によりあなたがどれほどの恩
恵を受けてきたかということと、これからも継続して知恵を分け与えて欲しいということを、単にそ
の人物に告げるだけでもよい。”
The Value of a Mentor, Katharine Hensen, Ph.D., Quintessential Careers
http://www.quintcareers.com/mentor_valun.html
・“新米 faculty が成功するにためには膨大な助けが必要である。”
Gordon Mills, M.D., Ph.D.
Professor and Chair of Systems Biology
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Pololi, L.H., Knight S. Mentoring faculty in academic medicine: A new paradigm?
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原文は英語。2010 年 12 月 Web サイト「チームオンコロジー.Com」掲載
(C)The University of Texas MD Anderson Cancer Center, Academy of Cancer Experts (ACE)
Program
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