道路管理センターの地図データ(ROADIS 道路データ)の 世界測地系への変換方法の調査検討 道路管理システム研究所 1.はじめに 道路管理システムは当センターと道路管理者(国、東京都、23特別区、11政令指定都市)、 関係公益事業者(水道、下水道、通信、電力、ガス、地下鉄など)により構成される官民共同シ ステムであり、現在は東京都23特別区と11政令指定都市の区域にセンター支部を設けている。 (図-1) 図‐1 道路管理システムの運用地域 地図データの取得については、その基本に測量法があるが、この測量法の改正(H14.4.1)によ り基準となる座標系が日本測地系から世界測地系に変更された。 道路管理センターの地図データ(以下、「ROADIS 道路データ」という)は、日本測地系で取得 された道路法第28条に基づく道路管理者の道路台帳図がベースとなっており、近年、道路台帳 図の世界測地系への移行が進んでいる状況にあって ROADIS 道路データも世界測地系への移行対 応が近い時期に必要となることから、システム参加者の現状調査を行うとともに、既存地図デー タの世界測地系への変換方法、変換に伴うデータのずれの検証及びシステム対応等の諸施策につ いて検討を行った。 2.日本測地系と世界測地系 地球上の位置を経度・緯度で表すための基準を「測地基準系(測地系)」と言っている。 「日本測地系」はベッセル楕円体(地球を近似的に楕円体として表したもの)を使用した日 -1- 本固有の測地系である。我が国では、この日本測地系を明治時代(1841年)に定めこれまで 使用してきた。 「世界測地系」は世界共通となる測地系で地球を扁平な回転楕円体として、その中心が地球の 重心と一致するものであることやその短軸が地球の自転軸と一致するものであることなど、国際 的に決められた基準を満たすものとなっている。 近年、日本測地系では人工衛星を使った地球規模的な測量法であるGPS(全地球測位システ ム)や広域な位置情報を高精度で必要とするGIS(地理情報システム)などに対しては十分に 対応できない問題が生じてきた。 そこで、これらの問題を解決し世界基準に準拠した新たな国家基準点体系(「世界測地系」)に 再構築するために、平成13年6月に公布、平成14年4月1日に施行された測量法の改正によ り適用が始まったのが「日本測地系2000」であり、これに基づいて作成された地図などの成 果が「測地成果2000」である。 ※ここでは、日本測地系2000及び測地成果2000のことを世界測地系と呼称する。 ※日本測地系の経緯度原点の位置(東京都港区麻布台 2 丁目 18 番1)において世界測地 系の経緯度と比較すると、経度で西に約 12 秒、緯度で北に約 12 秒、距離にして北西 方向へ約 450mずれることになる。 (図-2) (表-1) 詳細は国土地理院 HP(http://www.gsi.go.jp/LAW/G2000-g2000-h3.htm) 図-2 日本測地系と世界測地系の違い -2- 表-1 測地成果2000(世界測地系)に係る諸規程類の制定 日本測地系を世界測地系に比べると ①測量法の改訂 →北西方向に約 450m ずれる(東京付近) 平成 13 年度法律第 53 号(H13.6.30) 平成 19 年 5 月 23 日最終改正 ・日本測地系:ベッセル楕円体 1841 制定 ・世界測地系:GRS 楕円体 1980 制定 ITRF94 座標系) ②上記法に係る国土交通省告示の改正 平成 14 年度国交省告示第 9 号(H14.1.10) 平成 18 年1月 31 日最終改正 平面直角座標系(19 系)の変更 3.ROADIS道路データの世界測地系への移行について (1)システム参加者へのアンケート調査(平成 19 年度にアンケート調査実施) 各支部の道路管理者、占用企業者に対して、世界測地系の導入に関するアンケート調査を実施 した。 アンケートは、118 の道路管理者、占用企業者に配布し、94 の事業者から回答があった。 (回収率約 80%)(表-2) 表-2 アンケートの回収状況 区分 事業者分類 道路管理者 政令市、特別区の道路管理者 占用企業者 事業者数 27 国道事務所 8 ガス事業者 12 水道事業者 14 下水道事業者 10 通信事業者 9 電力事業者 10 交通事業者 2 その他 2 合 計 94 (2)システム参加者の世界測地系移行への対応状況 システム参加者の道路台帳図、施設データ等の世界測地系への切り替えについて意向調査を行 った。 1)道路台帳図、施設データの世界測地系への移行状況 2)世界測地系への移行方法 3)道路管理センターへの図面の提供方法 -3- アンケートの結果、占用事業者が個別に持っている管理図は、世界測地系へ移行済み又は移行 予定が回答のあったうちの 1 割程度であり、世界測地系への移行があまり進んでいない状況であ った。しかし、道路管理者は回答のあったうち世界測地系への移行済み又は移行予定が 43%に上 っており、道路管理者の道路台帳図は世界測地系への移行が進んでいる状況にあることが明確に 窺える。 (表-3) ROADIS 道路データは道路管理者の道路管理図をベースとしてデジタル化したものであり、現 時点でシステム参加者である道路管理者の半数近くが世界測地系へ移行済み又は移行予定である ことは、近い将来には ROADIS 道路データの世界測地系への移行が必要であることが実態として 把握できた。 表-3 アンケートの結果 No 調 査 項 目 道 路 管 理 者 占 用 事 業 者 1 世界測地系への移行状況 移行済:約32% 計画中:約11% 未対応又はその他:約57% 移行済:約9% 計画中:約0% 未対応又はその他:約91% 2 移行方法 紙図面(四隅座標値修正) :32% デジタルデータ(TKY2JGD) :26% その他:42% 紙図面:― デジタルデータ(TKY2JGD) :67% その他:33% デジタルデータ変換方法 1点で平行移動:17% 代表点変換:17% 全点変換 :25% 1点で平行移動:― 代表点変換:25% 全点変換 :50% 3 4.ROADIS 道路データの世界測地系への変換における課題 全点変換、並行移動等の世界測地系へのデータ変換方法を調査し、図郭の取り扱い、基準点と の関係等のデータ変換にかかわる課題を整理した。 道路管理システムデータの移行方法(一度に世界測地系データへ切り替え、世界測地系データ・ 日本測地系データの平行運用を行う等)のパターン、課題を整理した。また、システム参加者デ ータとの関係(参加者が先に世界測地系への移行を実施、道路管理システムが先に世界測地系へ の移行を実施等)のパターン、課題を整理した。 -4- (1)地図データ変換の方法 1) 日本測地系から世界測地系への変換方法(以下、「順変換」と略称する)については、デ ジタルデータを用いる場合であれば、国土地理院から地図データ変換に必要なソフトウェア (座標変換プログラム“TKY2JGD”)が提供されている。 ※TKY2JGDは地域ごとの変換量を定めた変換パラメータを使用し座標値の変換を行 うものであるが、このパラメータは国家三角点の平成成果(注1)と測地成果2000を 基に作成されている。したがって、平成成果の国家三角点を基に作成されたデータ(座標 値)であればTKY2JGDで変換する事ができるが、明治成果(注2)の国家三角点を 基に作成されたデータ(座標値)は、測量技術や計算処理また地殻変動の影響などにより、 およそ北海道で 9m、九州で4mの歪みが生じているため、TKY2JGDで変換する事 ができない。そこで、明治成果の国家三角点を基に作成されたデータ(座標値)を、一旦 平成成果に変換する必要があり、そのための方法としてヘルマート変換やアフィン変換と いう座標の変換方法が用いられる。 (注1)平成成果:平成2年に改定された国家三角点成果 (注2)明治成果:平成2年以前の国家三角点成果 ※なお、道路管理センターで検証に使用した道路データは平成成果に基いて作成されたデ ータである。 2)国土地理院から提供されている座標変換プログラムには以下の3通りの方法がある。 ① 図郭の代表点を座標変換する方法(図-3-1) 図郭を代表する1点(図郭四隅のどれか1つもしくは図郭の中央等)の座標変換補正量 を求め、図郭内の全ての地図データについて一律に平行移動する。 (旧) (新) 図-3-1 図郭の代図点を座標変換する方法(イメージ) ② 図郭四隅を座標変換する方法(図-3-2) 図郭四隅の座標のみを座標変換し、図郭内の地図データについて図郭四隅の座標変換補 正量から直線補間して個々の地図データの座標変換を行う。 (旧) (新) 図-3-2 図郭の代図点を座標変換する方法(イメージ) -5- ③ 数値地形図の全座標データを座標変換する方法(図-3-3) 数値地形図の全てのデータについて、座標変換を行う。 (旧) (新) 図-3-3 図郭の代図点を座標変換する方法(イメージ) (注)補正量:近傍三角点の補正量が国土地理院から示されている。 3) 世界測地系から日本測地系への変換方法(以下、 「逆変換」と略称する)についても、デ ジタルデータを用いる場合は国土地理院から提供されているソフトウェア(前項①③)が利 用できる。 どの変換方法を採用するかについては、①~③の変換方法の中からずれ・変換費用等を考慮 して検討・確定する必要がある。 (2)地図データ変換方法と誤差の検証(座標変換プログラム“TKY2JGD”を利用) 国土地理院が提供している世界測地系への変換プログラム TKY2JGD の利用方法や利用条件、 また、その使用事例の調査を行った。 データ変換方法と誤差の検証では、同時期にシステム参加者であるA市において道路管理 台帳電子化の作業が進められていたことから、関係者のご協力を頂き市域全体の複数個所で 検証を行った。その結果、変換方式によっては一部の地域では許容誤差以内であっても他の 地域では許容誤差を超えてしまう場合があることが判明するなど、データ変換方式を選択す るうえで参考となる成果が得られた。 〔検証条件〕 ①検証データ:A市域(面積:約 300km2)で、日本測地系図面(道路台帳図)からデジタ ル化した ROADIS 図面と、世界測地系図面(道路台帳図の四隅座標を世界測地系で表示) からデジタル化(図郭四隅から直線補完方式)したA市道路台帳データ ②検証箇所:上記2方式のデジタル化時点間で、現地道路・地形に異動がない箇所から地 域毎に数図郭(中央及び東西南北の各地域)を選定 ③変換方法:世界測地系データを2方式(代表点変換方式及び全点変換方式)で逆変換 ④検証方法:ROADIS 図面と逆変換後の世界測地系図面を重ね合わせて、差異を図上計測 -6- 〔検証結果〕 全点変換方式:全地区において許容誤差(1/500 図上 0.5mm 以内、実寸で 25cm 以内)範囲 内であることを確認 代表点方式:2つの地区では許容誤差以内であるが、3つの地区で許容誤差をオーバー 表-4 変換方式と誤差の検証結果 検証箇所 a区 ① ② ③ ④ b区 ① ② ③ ④ c区 ① ② ③ ④ d区 ① ② ③ ④ e区 ① ② ③ ④ 代表点方式とROADIS 21.3 15.5 22.0 12.4 17.6 2.5 10.2 12.6 34.8 38.3 36.4 39.9 55.5 37.6 45.5 52.8 44.3 44.3 50.0 40.0 単位:cm 全点変換方式とROADIS 12.7 4.3 12.5 6.0 16.5 1.3 12.4 14.0 9.4 13.5 12.6 14.8 15.7 18.4 5.1 11.4 21.2 12.2 24.7 13.1 検証の結果(上記表―3)、代表点方式の場合はc区、d区、e区では ROADIS 道路のデータ と34.8cm~55.5cmと大きくずれが発生していることが判明した。一方、全点変換方 式の場合は ROADIS 道路データとのずれは許容範囲(測量法で定められた1/500で25cm 以内)に収まっている。このことから全点変換方式を採用することによりデータ変換に伴う誤差 の懸念は大きな問題とはならないと判断できる。 (表-4) ※なお、A市以外でデータ変換を行う場合はその都度変換法と誤差の検証を行う必要がある。 -7- 5.ROADIS 道路データの世界測地系への変換時期の検討 (1)道路管理者・占用事業者の世界測地系への移行のパターン ①国道の道路台帳図 基本的に国道の道路台帳図の世界測地系への移行は、道路工事の完成等に伴い新たに補 正がかかった箇所の図面について順次移行を進めていく方式がとられている。 ②政令市等の道路台帳図 政令市の道路台帳図を世界測地系へ移行には、2つのパターンが考えられる。 1番目は、既存の日本測地系道路台帳図(紙地図)を基にデジタル化したデータをプロ グラム処理で変換する方法である。 2番目は、既存の道路台帳図を破棄して、世界測地系に対応した道路・地形データを新 たに取得(測量)し道路台帳図を作成するパターンである。 ③占用物件データ 現在、世界測地系に移行済みの占用物件データは、ROADIS 道路データとは別の背景図 データを利用していると考えられる。 (2)道路管理システムにおける当面の対応方法の考察 ①国道の道路台帳図が世界測地系へ移行された場合の対応 国道の道路台帳図の図郭体系は、路線にそった独自のものであり、世界測地系に移行し ても図郭の体系が変るものではない。国道の道路台帳図が世界測地系に移行されても従来の 紙ベース又は ROADIS 道路データのファイル形式であるMT交換方式の道路台帳図の提供 方法であれば、道路管理システムへの影響はない。したがって、国道の道路台帳図が世界測 地系に移行されても、道路管理システムでは、すぐに世界測地系への移行を行わなくても問 題はない。政令市での道路台帳図データの移行に併せて実施すればよいと考える。 (図-4) 図-4 国道の道路台帳図の図郭体系 -8- ②政令市等の道路台帳図が世界測地系へ移行された場合の対応 1番目のパターンである、道路台帳図を基にデジタルデータ化しているケースは、道路 台帳図が世界測地系に移行されても逆変換を行うことで、日本測地系の道路・地形データ と整合がはかれる。 2番目のパターンである、道路台帳図を作り直すケースは、ROADIS 道路データとは、 多かれ少なかれ差異が生じることになる。座標系の違いもあるが、道路形状や位置精度の 差異がより問題となる。これらは、道路・地形データだけでなく、施設データにも影響が 及ぶことになる。このパターンのときは、既存の道路・地形データとの差異の検証を行い、 センターと道路管理者及び占用事業者が世界測地系への移行方法、スケジュール等を検 討・協議する必要がある。 ③占用事業者の施設データへの対応 現在、世界測地系への移行済み又は移行中の占用事業者は、ROADIS 道路データとは違 う背景図データを利用していると考えられる。この場合は、もともとの背景図データが異 なるため、当面は、施設データを逆変換して道路管理システムに取り込めばよいと考えら れる。 6.各支部における測地系統一の運用方法 道路管理者及び占用事業者が同時に世界測地系へ移行することが理想的な方法であるが、 現実的には各々の事情もあって日本測地系を利用しているシステム参加者と世界測地系へ移 行済のシステム参加者が混在する支部が殆どである。したがって、実際には各支部別に下記 のような対応を検討する必要がある。 □ 各システム参加者の要望に沿って、ROADIS で順変換又は逆変換を行う。 □ ROADIS 内部の道路・地形及び占用物件データベースについては、システム参加者側の移行状況 を勘案し、必要な時期に世界測地系への移行を行う。 □ 各支部のシステム運用対象地域で、ROADIS 道路・地形データの基となる道路台帳図が電子化さ れ、デジタルデータで ROADIS に提供される場合、以下の課題への対応が必要となる。 ・関連道路管理者の世界測地系への移行方法が個々に異なる場合の対応方法 ・関連道路管理者境界における道路・地形データの接合方法等 -9- (1)各支部での測地系統一の基本的な運用方法(表-5) 表-5 測地系統一の考え方と運用方法 No 道路台帳 図データ 占用物件 データ 統一運用 の 測地系 1 旧測地系 旧測地系 旧測地系 2 旧測地系 新測地系 旧測地系 旧測地系 新測地系事業者の占用物件デー タを受入の都度、逆変換(注1) 3 新測地系 旧測地系 新測地系 旧測地系 旧測地系 新測地系の道路台帳図データは、 逆変換(注1) 4 新測地系 新測地系 旧測地系 新測地系 旧測地系事業者の占用物件デー 国道事務所、政令市の道路台 タを受入の都度、順変換(注2) 帳図が新測地系に移行 5 新測地系 新測地系 新測地系 対応内容 記事 ― ― 〃 旧測地系:日本測地系 新測地系:世界測地系 (注1)逆変換:世界測地系から日本測地系へデータ変換 (注2)順変換:日本測地系から世界測地系へデータ変換 (2)東京支部での測地系統一の基本的な運用方法 東京支部の場合は道路管理者が国、都、23特別区など多数であり、道路台帳図の世界測 地系への移行方法も道路管理者によって相違がある。H19 年度のアンケート結果でも世界測 地系への移行方法として次のような数例の変換方法の回答が得られている。 (表-6) 表-6 道路台帳図データの新測地系への変換方法例 道路管理者 変換方法 イ 独自のパラメータを設定 ロ 国土地理院の変換プログラム(TKY2JGD)を使用 ハ 実測により作成された白地図データベースを基に再作成 ニ アフィン変換+国土地理院の変換プログラム(TKY2JGD)を使用 ※アナログで図面四隅の座標を修正している場合は除く ※アフィン変換:縮尺・回転・原点移動・斜め歪みのための変換 東京支部の場合は、全道路管理者が道路台帳図のデジタル化と世界測地系への移行を終える には時間がかかると予想されるため、測地系変換の対応として以下の手法が考えられる。 ① ROADIS 道路データを世界測地系に変換する。 ② 世界測地系で道路台帳図データが作成されている区については、道路データとし て、道路台帳図データをそのまま受入れる(①で変換した道路データと道路台帳 図データを置き換える) 。 - 10 - ③ 紙図面(日本測地系、世界測地系)の道路台帳図で提供される場合は、従来どお りの方法で ROADIS 道路データを更新する。 この方式を用いることで、道路管理センターとシステム参加者間の協議等により移行する時 期を調整することにより、ROADIS 道路データの世界測地系への計画的な移行が行えると考え られる。 7.まとめ ROADIS 道路データを世界測地系へ変換するには、A市での検証結果から技術的には国土地 理院から提供されている座標変換プログラム“TKY2JGD”の全点変換方式を採用することで 許容誤差の範囲に収まることが確認できた。しかし、A市以外で ROADIS 道路データを世界測 地系へ変換する場合は、対象となる道路台帳図の世界測地系への移行方式によっては必ずしも 今回の検証結果と同様に許容誤差の範囲に収まるとは限らないので、その都度実際の状況に応 じた適確な変換方式を取り入れることが必要である。そして、ROADIS 道路データの世界測地 系への移行時期については、国道、都道、市道、区道など複数の道路管理者が存在しているこ と、及び ROADIS 道路データの元データである道路台帳図の世界測地系への移行状況が各道路 管理者よって相違していることなどから、支部毎に各道路台帳図の世界測地系への移行状況を 把握し、移行作業の効率性、システム参加者への影響などを考慮して、それらの実情に応じた 測地系の移行スケジュールを立てる必要がある。今回、想定される移行ケースを設定し測地系 統一の基本的な運用方法を検討した。実際に各支部で移行対応を行うにあたって本業務の成果 資料を活用していただければ幸いである。 GPS をめぐる情勢については、2010年代の中頃には次世代の測位衛星を世界各国が打ち 上げる計画があるとのことである。また、日本が近い将来計画している準天頂衛星が打ち上げ られれば、都市部でもビル等に邪魔をされずに正確な位置情報を取得することができるように なる。このようにGPS技術が進展することによって、電子基準点を利用するRTK-GPS 測量(電子基準点で受信したGPS信号を無線通信等で測量現場に送り、位置の補正計算に利 用することによりリアルタイムで高精度の位置決定を行う測量方式)が普及し、それによって 迅速で正確な各種地図データが低コストで取得できるものと期待される。 GPS 測量の成果は、世界測地系であり、GPS の利用にあたっては世界測地系に基づく値を使 用することが最も便利である。逆に座標値をわざわざ日本測地系へ変換することは大変わずら わしく経済的にも不利である。将来的には、ROADIS 道路データが世界測地系のデータに統一 されれば、縮尺1/500のデジタル道路マップを地理空間情報のベースマップとして、道路 地下埋設物件の管理だけでなく様々な業務でのデータ利活用につながるものと大いに期待され る。 - 11 -
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