マスネ 《サンドリヨン》 初版・初期楽譜 (フランス初版とイタリア初版) 水谷 彰良 《サンドリヨン(Cendrillon)》4 幕と六つのタブローの (conte de fées en 4 actes et 6 tableaux) と六つのタブローの妖精物語(ペロー原作) ペロー原作) tableaux) (d’aprè (d’après Perrault) Perrault) 台本: 台本:アンリ・ケン アンリ・ケン(Henri Cain,18 Cain,1857 ,185757-193 1937) 原作:シャルル・ペロー(Charles Perrault,1628Perrault,1628-1703) 1703)の童話『サンドリヨン、または小さなガラスのスリ の童話『サンドリヨン、または小さなガラスのスリッパ スリッパ (Cendrillon ou la Petite Pantoufle de verre)』 (1667 年) 作曲:ジュール・マスネ 作曲:ジュール・マスネ(Jules Massenet,18 Massenet,1842 ,184242-1912 1912) 12) 初演:1 初演:1899 年 5 月 24 日、国立オペラ 国立オペラ= オペラ=コミック座 コミック座(Théâtre Théâtre National de L’ L’OpéraOpéra-Comique) Comique) メモ シャルル・ペロー(Charles Perrault,1628-1703)の『サンドリヨン、または小さなガラスのスリッパ(Cendrillon (1697 年)を原作とするマスネの《サンドリヨン》は、1896 年に総譜が完成し、翌 ou la petite pantoufle de verre)』 97 年に初演が予定されたが、さまざまな事情で 1899 年まで見送られ、1899 年 5 月 24 日、国立オペラ=コミック 座(オペラ・コミック座/サル・ファヴァール)の初演で成功を収めた。物語は比較的ペローの原作に忠実であるが、 第 4 幕に顕著な違いがある。 1) 初版楽譜( 初版楽譜(パリ、ウージェル商会 パリ、ウージェル商会、 ウージェル商会、1899 年) 初版楽譜(ピアノ伴奏譜) パリ、ウージェル商会、1899 年 プレート番号:H & Cie.18,421. Partition Partition Chant et Piano., Piano.,Heugel .,Heugel et Cie., Cie., Paris, Paris,1899. 899. [First edition, edition, first issue.]] * 1 vocal score ([8],366 p.) ; 27 cm, p.n. H. et Cie.18,421. issue. [Collezione privata di Akira Mizutani – Tokyo] タイトル頁記載: THÉATRE [sic] NATIONAL DE L’OPÉRA-COMIQUE / Directeur: ALBERT CARRÉ / CENDRILLON / CONTE DE FÉES EN 4 ACTES ET 6 TABLEAUX / (D’après PERRAULT) / Par HENRI CAIN / MUSIQUE De J.MASSENET / Partition Chant et Piano, prix net: 20 fr. / PARIS / AU MÉNESTREL, 2 bis, rue Vivienne, HEUGEL & Cie / Éditeurs-Propriétaires pour tous Pays / […] / TOUS DROITS DE REPRODUCTION, DE TRADUCTION ET DE REPRÉSENTATION RÉSERVÉS EN TOUS PAYS, / Y COMPRIS LA SUÈDE, LA NORVÈGE ET LE DANEMARK / Copyright by Heugel et Cie 1899 初版楽譜の概要 《サンドリヨン》の初版楽譜は、1899 年にパリのウージェル商会(Heugel et Cie.)の刊行したピアノ伴奏譜であ る。筆者所蔵のそれは背革装のハードカバーに再装丁され、外装 27.5×19 cm、楽譜部分は 27×17.5cm。プレー ト番号:H. et Cie.18,421. 楽譜に先立つ 8 頁は、[1]タイトル頁(東洋風の挿絵入り) [2]無地 [3]初演データと配役(DISTRIBUTION[但し初演データは 1899 年 5 月のみで、 初演日を入れるための空白あり] ) [4]挿絵(ガラスの靴)[5]-[7]目次(TABLE 第 2 幕と第 3 幕冒頭頁などノンブルに誤植あり)[8]挿絵(女性たちの踊る姿[下部に Devambez, Graveur, Paris.と記載] )。楽譜は全 366 頁(1-366)。 タイトル頁の挿絵は東洋風で、作者は画家・版画家アンドレ・ドヴァンベ[デヴ ァンベス] (André Devambez,1867-1944)で、初演時に制作されたポスターが原画に当 たる(右図)。後述するように、マスネは初演前後に第 4 幕を改訂し、ウージェル商 会はこれを反映させた第 2 版のピアノ伴奏譜を 1899 年または 1900 年に出版した。 初版楽譜(全 366 頁)は初刷しか確認できず、ただちに第 2 版と差し替えられたと 思われる。 1 《サンドリヨン》初版楽譜(1899 年。パリ、ウージェル商会。筆者コレクション) 外装 [6]: 目次の冒頭頁 [1]: タイトル頁 [3]: 初演データと配役 [9]:挿絵(女性たちの踊る姿) 第 1 幕冒頭頁(p.1) 初版楽譜と第 2 版との異同 《サンドリヨン》の初版楽譜は 1899 年 5 月 24 日の初演に先立って制作され たが、マスネは同年中に部分改訂し、これを反映させた第 2 版が 1890 年に出 版された(但し、第 2 版と称さず初版と同じプレート番号のまま作成し、初版初刷と差 し替え)。この第 2 版には初演日を欠いた初刷と、 「24 日」と加えた後刷があり、 楽譜に先立つ部分も第 2 版の初刷は 10 頁、後刷は 8 頁と異なっている、楽譜 部分は共通である。 楽譜部分は初版が全 366 頁であるのに対し、 第 2 版は全 361 頁に減っている。 両版を比較すると、335 頁までは完全に一致し、336 頁以降の改版であること が判る。 異同は第 4 幕第 1 タブロー第 3 景アルティエール夫人のソロの途中(第 2 版 336 頁の 4 段目、テンポ・プリモの 2 小節目)で始まり、結論から言えば第 2 版は続く 24 小節分がそっくり削除されている(右図は初版楽譜の 336 頁)。削除 部分はアルティエール夫人のソロの続き「Enfin viendront quelques altesses …」に始まり、ノエミー、ドロテー、召使の男声合唱を交えた 5 頁分で、段組 みも変わったため改版が 343 頁まで継続し、初版の 344 頁と第 2 版の 339 頁 で再び一致する。以後第 2 タブローの末尾まで、音楽と段組みは同じである。 2 24 小節分の削除が初演の前なのか後なのか、後であればどの時点で行われたかについては、自筆楽譜、初演と 最初期上演の印刷台本(パリ初演に続いて同年 11 月 3 日にブリュッセル、12 月 15 日にジュネーヴで上演)を検証しなけ れば答えを出せない。しかし、12 月 28 日にミラーノで行われたイタリア初演のためにウージェル商会が作成し たイタリア語ヴァージョンの楽譜でカット済みであることから、1899 年中であるのは明白である。次に、イタリ ア語版の初版楽譜についても明らかにしておきたい。 2)イタリア初版( イタリア初版(ミラーノ、エドアルド・ソンゾーニョ、 初版(ミラーノ、エドアルド・ソンゾーニョ、1899 ミラーノ、エドアルド・ソンゾーニョ、18991899-1900 年) イタリア初版楽譜(ピアノ伴奏譜) ミラーノ、エドアルド・ソンゾーニョ、1899-1900 年 プレート番号:H. & Cie.19,654. Spartito riduzione per canto e piano.,Edoardo piano.,Edoardo Sonzogno., Sonzogno.,Milano .,Milano, Milano,190 1900. [First edition, edition, first issue.] issue.] * 1 vocal score ([8],363 p.) ; 28 cm, N. di lastra: H. & Cie.19,654. [Collezione privata di Akira Mizutani – Tokyo] タイトル頁記載: CENDRILLON / FIABA IN QUATTRO ATTI E SEI QUADRI / (da PERRAULT) / PAROLE DI / ENRICO CAIN / MUSICA DI GIULIO MASSENET / Traduzione ritmica italiana di AMINTORE GALLI / Riduzione per CANTO e PIANOFORTE / Prezzo L. 20 / [左] MILANO / EDOARDO SONZOGNO / Via Pasquirolo, 14. / [右] PARIS / HEUGEL & C.ie / Rue Vivienne, 2 bis. / [下部記載] Copyright by Heugel & C.ie,1899. イタリア初版楽譜の概要 イタリア初版楽譜の概要 《サンドリヨン》のイタリア初版楽譜は、この作品の版権を持つウージェル商会と提携するミラーノのエドアル ド・ソンゾーニョ社(Edoardo Sonzogno)が刊行したピアノ伴奏譜である(刊年は 1899-1900 年、歌詞はイタリア語訳 のみ。総譜は貸譜として制作)。プレート番号「H. & Cie.19,654.」から、楽譜原版がウージェル商会の制作と判る。 題名・役名ともにフランス語の「Cendrillon(サンドリヨン)」のままで、Madama de la Haltière(ド・ラ・アルテ ィエール夫人。人物表では Haltiére とアクサン誤植)もフランス版と同じである。筆者所蔵のアイテムはワニ革のハー ドカバーに再装丁され、外装 28.2×20.5cm、楽譜部分は 27.5×19 cm。プレート番号:H. & Cie.19,654. 楽譜に 先立つ 8 頁は、[1]:ハーフタイトル [2]:無地 [3]:タイトル頁 [4]:出版社クレジット [5]:登場人物(PERSONAGGI) [6]:無地 [7]-[8]:目次(INDICE DEI PEZZI) 楽譜は全 363 頁(1-363)。 タイトル頁と楽譜冒頭頁に「Copyright by Heugel & C.ie,1899.」とあるが、ソンゾーニョ社の出版データは[4] の出版社クレジット最下部に示された「Milano,1900. – Stabilimento della Società Editrice Sonzogno.」である。 このエディションは 1899 年 12 月 28 日にミラーノの国際リリコ劇場で行われたイタリア初演に先立って制作さ れ、同年末もしくは翌 1900 年に刊行されたが、これに続く第 2 版の楽譜は確認できず、初版のみの刊行で終わっ たようだ。すでに述べたように、第 4 幕の音楽はウージェル商会の初版ではなく第 2 版と一致しており、ウージ ェル商会の第 2 版が 1899 年中に成立し、それに基づくイタリア語版として作られたことが判る。 《サンドリヨン》イタリア初版楽譜(1900 年。ミラーノ、エドアルド・ソンゾーニョ社、筆者コレクション) 外装 第 1 幕冒頭頁(p.1) タイトル頁 (2013 2013 年 1 月作成。水谷彰良) 月作成。水谷彰良) 3
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