米国 確定拠出年金導入企業調査

米国 確定拠出年金導入企業調査
Are We building DC Plans That Measure Up?
2012
U.S. Defined Contribution Sponsor Survey Report
退職に向けた十分な準備(Retirement Readiness)という問題
米国では、多くの事業主が今でも何らかの形で確定給付型の
同時に、確定拠出年金の導入企業は、退職準備の進展度合
企業年金制度を維持している。しかし、新入社員の多くは、確
いをプラン全体で測らなければならない。確定拠出年金がある
定拠出年金でカバーされるようになってきた。この確定給付か
おかげで社員は順々に退職していってくれるのか?それとも逆
ら確定拠出へのシフトの中で、「従業員は退職に向けた資金準
に、確定拠出年金への依存が高まったために、「職場にいるの
備ができているのであろうか?」という疑問が論点になってきて
に、あたかも引退したかのように、まともに働いてくれない高齢
いる。事業主は、自社の確定拠出年金が従業員に十分に活
社員」が出てくるリスクが増すのか?制度設計、運用商品の選
用・理解されているのだろうかという懸念も有している。
択肢、コミュニケーション方法の何をどう変えれば、適切な老後
資金の準備が進むのか?新しい施策について、いかにして事
業主は説明責任を果たすのか?
タワーズワトソンの「2012 DC Plan Sponsor Survey(確定拠出
年金導入企業調査)」では、確定拠出年金の4つの要素-制
度設計、運用商品、手数料、従業員コミュニケーション-につ
なお、退職準備については、Roth 拠出(税引き後拠出)や医療
いて分析を行った。サーベイでは、以下のような質問を投げか
貯蓄口座(注:医療費支出を賄うための個人口座)も含めて、
けている。「従業員は確定拠出年金をどのようなイメージで捉
総合的に考えていくことが大事で、そうすることで従業員は節
えているのか?」「確定拠出年金を通じて老後資金の積立がう
税効果を最大限享受しながら老後資金の準備ができるだろう。
まくいくために、企業はどのような支援策を実施しているの
か?」 さらに、確定拠出年金を提供する目的を尋ね、各企業
の目的に応じて、制度設計や従業員コミュニケーションの方法
がどう違ってくるのかを分析した。
自動的に貯蓄が進む仕掛けを導入したり、分散投資を促すよ
うな運用商品を提供するといった方策は講じられてきているが、
調査の結果、期待していたほどの効果は出ていないことが分
かった。「老後資金の積立に関して、従業員は十分な情報に基
づいて意思決定を行っている」と答えた企業は、わずか 5 社に
1 社(21%)であり、48%の企業が「高齢社員が退職時期を延
期するケースが増えていくだろう」と回答している。
従業員の退職準備を支援するために、確定拠出年金の導入
企業がとるべき方策はいくつかある。例えば、自動加入制度、
自動掛金引き上げ制度(事業主のマッチング拠出を最大にす
るように設計するのが肝要)、事業主掛金そのものの設計、自
動的に資産配分が変動するターゲット・デート・ファンド、ソーシ
ャルメディアなどのコミュニケーション媒体の活用、妥当な手数
料設定などである。
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主な調査結果
自動加入制度(automatic enrollment)および自動掛金引上制
度(automatic escalation)によって、確定拠出年金の加入率と
拠出率(deferral rate)が増加している。「加入率は 80%以上」
と回答した企業は、2010 年に 50%であったのに比べ、今回は
56%となっている。自動加入制度を取り入れた企業のほとんど
が、掛金が自動的に引き上げられる制度も取り入れており、拠
出率が加入時の低い水準に留まらず、順次上がっていくように
図られている。
従業員が十分な老後資産を準備できるよう配慮していると企
業は回答しているものの、制度設計はそれとは別の要因に基
づいて行っている場合が多い。確定拠出年金を実施する理由
として、「十分な老後資金を提供するため」と 74%の事業主は
回答している。しかし制度を設計するうえで最も重要な要因に
ついて質問したところ、「従業員が十分な退職準備ができるよ
うにすること」は 5 番目であり、回答企業の 46%がこの項目を
選択した。それよりも上位の回答には、「他社よりも競争力の
ある退職給付制度を提供すること(69%)」、「退職給付制度の
コスト(63%)」、「従業員の惹きつけ、つなぎ留め(55%)」、「法
令遵守(47%)」といった項目が並んだ。
定額のレコードキーピング費用を加入者に直接負担させる企
業が増えている。レコードキーピング費用をもっぱらレベニュ
ー・シェアリング方式(revenue sharing、後述)でまかなう企業は
3 分の 1 しかなく、37%の企業はレベニュー・シェアリング方式
と費用を直接支払う方式(direct fee=直接費用)の組み合わせ
44%は直接費用を加入者に負担させている。
提供される運用商品の平均数は減りつつある。回答企業の多
く(69%)は、10~19 種類の運用商品を提供している。20 種類
以上を提供する企業の数は、2010 年から8%減少しており、1
~9種類の選択肢を提供する企業の数は3%増加した。現在、
ほぼ半数の回答企業がブローカレッジ・アカウント(brokerage
option、後述)を提供しており、おそらくこれを通じて運用商品
の減少を補ったり、商品選択の柔軟性を提供しているのであろ
う。
事業主による拠出は徐々に増加している。現在、事業主の約
4分の1(24%)はマッチング拠出ではないタイプの事業主拠出
(後述)をおこなっている。過去 5 年間のトレンドをみると、回答
企業の 16%はマッチング拠出を増やしており、5%は非マッチ
ング拠出を増やしている。確定給付型の企業年金を凍結させ
た企業の多くが、金融危機発生以降、事業主拠出を増やして
いる。金融危機により事業主拠出を減少または中止した企業
の 79%は、全部または一部の拠出を復活させている。
終身年金の活用はきわめて少ない。現在、終身年金を提供す
る回答企業は、わずか6%である。そのうち 82%の企業は「終
身年金を選ぶ加入者は 5%未満」と答え、確定拠出年金制度
の中で終身年金のオプションが提供されている場合は、45%
の企業が「退職時にのみ終身年金を選択できるようにしてい
る」と答えている。
によって、レコードキーピング費用を支払っている。この組み合
わせを使う企業のうち、37%は直接費用を企業が支払い、
その他の調査結果:退職準備に向けた自信のなさ
「確定拠出年金に関し、従業員は十分な情報に基づいて意思決定を行っている」と答えた企業はわずか 22%であり、「確定
拠出年金で何ができるのかといった問いについて、従業員は何らかの現実的な期待を有している」と考える回答企業は
26%でしかなかった。「従業員は退職後の所得目標を設定している」と考える企業は9%しかいない。
退職準備に向けた自信のなさは、従業員側にも見てとれる。タワーズワトソンの 2011 Retirement Attitude Survey による
と、確定拠出年金に加入している個人回答者のうち、「老後資金は退職した後 15 年間はもつだろう、という見通しを若干な
りとも持っている」者は、わずか 63%であった。「退職後 25 年間もつ見通しだ」と答えた人は 42%に減っている。
事業主にとって、これは従業員が退職を先延ばしするリスクが生まれつつあることを意味する。多くの高齢社員が退職を延
期することになるだろうと予想する事業主は 48%にのぼる。退職時期の延期によって、高齢社員は金融危機で喪失した貯
蓄を回復するチャンスを得るものの、事業主としては問題を抱えることになる。多くの事業主は、職場が停滞せず若い社員
が昇進昇格できるように、高齢社員が自ら退職していくことに期待している。多くの高齢社員を雇っている事業主は、報酬の
高額化、医療費の増大、報酬にひもづいた福利厚生制度のコスト増に直面する可能性がある。
2012 U.S. Defined Contribution Sponsor Survey Report 2
事業主が確定拠出年金を提供する理由
ほぼ 4 分の 3(74%)の回答企業は、確定拠出年金を提供す
しかし「それ相応の年齢に達したとき十分な給付を提供できる
る主たる理由として「従業員がそれ相応な年齢に達したときに、 ように制度設計した」と答えた企業は、わずか 46%だった(図
十分な老後資産を持てるようにするため」と回答した。「従業員
表2)。制度を設計する際に焦点となるのはむしろ、「同業他社
の採用に有利となるよう競争力ある給付を提供するため」と答
に引けを取らないこと」、「退職給付制度のコスト・コントロー
えた企業は 24%しかなかった(図表1)。
ル」、「従業員の惹きつけ、つなぎ留め」であった。このギャップ
を考えると、事業主は長い目で見て退職後の収入が十分とな
ることに配慮する一方で、目先のコスト圧力もあり、その両者
のバランスをとろうしていることが分かる。
図表1.確定拠出年金を提供している理由
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
従業員がそれ相応の年齢に達したときに、
十分な老後資産を持てるようにするため
80%
74%
従業員の採用に有利となるよう
競争力ある給付を提供するため
24%
その他
2%
n=371
図表2.現在の制度設計において重視した点
0%
n=370
10%
20%
30%
40%
50%
60%
同業他社に引けを取らないこと
63%
従業員の惹きつけ、つなぎ留め
55%
法令遵守
47%
それ相応の年齢に達したとき、十分な給付を
受け取り、引退できるようにすること
46%
従業員からの要請
9%
就業者数の問題
5%
その他
4%
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80%
69%
退職給付制度のコスト・コントロール
n=370
70%
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制度設計
加入自動化による影響
「従業員の加入率は 80%以上」と答えた企業は、2 年前に
50%だったのに比べ、今回は 56%だった(図表3)。確定給付
年金を新入社員にも提供している企業は、従業員の老後資金
の準備のためにより多くの支援を提供しており、加入率が増え
た理由は、こうした企業が確定拠出年金への加入を促したた
めであろう(図表4)。
図表3.確定拠出年金の加入率
40
35
2010
n=298
2011
n=369
36
30
30
25
24
22
20
20
20
15
10
11
9
0
8
7
5
3
1
1%-20%
4
4
21%-40%
41%-61%
61%-70%
71%-80%
81%-90%
91%-100%
図表4.確定給付年金を新入社員に提供しない企業での加入率の低さが懸念される
加入率
確定給付年金また
確定給付年金または
はハイブリッドプラ
ハイブリッドプランを新
ンを新入社員に提
入社員に提供している
供していない
企業年金制度を提
供していない
1%-20%
2%
0%
2%
21%-40%
0%
4%
7%
41%-61%
8%
6%
16%
61%-70%
0%
9%
7%
71%-80%
24%
21%
20%
81%-90%
45%
35%
36%
91%-100%
21%
25%
11%
n=311
2012 U.S. Defined Contribution Sponsor Survey Report 4
自動加入制度と自動掛金引上制度
2011 年末の時点で、65%の企業が自動加入制度を取り入れ
掛金引上制度のおかげで従業員は老後資金の積立を増やし
ていた(図表5)。そのうち 71%は自動掛金引上制度を導入し
ていけるし、事業主によるマッチング拠出も増えるという恩恵も
ている。数年かけて加入者掛金を徐々に引き上げていく自動
享受できている(図表6a と 6b)。
図表5. 確定拠出年金における自動加入制度の対象者
60
2009
n=124
2010
n=300
2012
n=371
50
48
40
43
42
41
39
35
30
23
20
18
10
10
0
全従業員
新入社員のみ
自動加入制度未実施
図表6a. 全従業員を自動加入制度の対象とする場合、自動掛金引上制度が一般的に導入されている
自動掛金引上制度の導入割合
0%
10%
20%
掛金の自動引上をデフォルト・
オプションとしている
30%
40%
50%
45%
80%
70%
71%
60%
59%
掛金の自動引上を加入者単位で
選択できるようにしている
26%
50%
50%
40%
2013年度末までに
導入を計画している
2%
30%
検討しているが、
計画はまだしていない
20%
13%
10%
14%
検討していない
0%
2009
n=64
2010
n=170
2012
n=242
図表6b. 全従業員を自動加入対象としている場合、自動掛金引上制度の導入は一般的
自動加入
掛金の自動引上を
掛金の自動引上をデ
加入者単位で選択
フォルト・オプションとし
できるようにしてい
ている
る
自動掛金引上制度
は未導入
全従業員
58%
21%
21%
新入社員のみ
37%
29%
33%
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多くの企業では確定給付年金を閉鎖・凍結した後、確定拠出
加により幅広い従業員ニーズに応えることができるようになる。
年金の自動加入制度を導入している。その結果、確定給付年
具体的には、年齢や給与の高い加入者が、確定拠出年金へ
金を現在も運営している企業や、同制度をもともと持たない企
の拠出をより柔軟に行うことができるようになるといわれる。し
業に比べて、同制度を閉鎖・凍結した企業の方が自動加入制
かしながら、全回答企業の 46%が確定拠出年金で Roth オプ
度の普及が進んでいる(図表7)。
ションを提供しているにもかかわらず、57%の企業が「この選
択肢を活用する加入者は5%未満」と答えている。さらに、給
Roth オプション
与の高い従業員の方が Roth オプションをより活用するという
Roth オプションによって、加入者は確定拠出年金に課税後の
傾向は見られなかった(図表 8a と 8b)。
給与からも拠出することができる。企業は Roth オプションの追
図表7.確定給付年金を閉鎖/凍結した企業において、確定拠出年金の自動加入制度の導入割合が高い
全従業員を自動加入
としている
新入社員のみを
自動加入としている
自動加入制度は
未導入
確定給付年金(伝統的な最終給与比例またはハ
イブリッドプラン)
26%
45%
29%
確定給付年金を新入社員に提供している
19%
40%
40%
29%
49%
22%
27%
45%
27%
18%
16%
67%
確定給付年金を閉鎖している
(=新入社員は確定拠出年金)
確定給付年金を凍結している
(=在籍者の将来分は確定拠出年金)
確定給付年金なし
n=371
%を四捨五入表示しているため、合計は100%になりません。
図表8 a . 約半数の企業がRothオプション(税引き後拠出)を提供している
Rothオプションを提供
している
Rothオプションを提供
していない
n=369
46%
54%
図表8b.Rothオプション(税引き後拠出)の活用率
高額所得の従業員
高額所得でない
従業員
5%未満
57%
57%
5%以上10%未満
29%
30%
10%以上
n=162
14%
12%
Rothオプションの活
用率
2012 U.S. Defined Contribution Sponsor Survey Report 6
拠出年金で終身年金を提供する企業は6%しかない(図表
事業主掛金の拠出
ほとんど全ての回答企業は事業主掛金を拠出している。その
うち 91%はマッチング拠出(注:加入者掛金額に比例して増減
するタイプの事業主掛金)をおこなっており、24%は非マッチン
グ拠出(加入者掛金額に関わらず一定額などを拠出するタイ
プの事業主掛金)をおこなっている(図表9)。マッチング拠出を
提供する理由の上位 3 項目は、「競争力のある給付を提供す
るため」「従業員を惹きつけ、留まらせるため」「加入者拠出を
10)。この選択肢を提供する企業のうち 82%が「終身年金を選
ぶ加入者は5%未満」と答えた。終身年金の選択肢を提供す
る企業のうち 45%は「通常退職時点(65 歳など)でのみ提供
する」「終身年金の提供には企業が責任を負う」と答えた。この
選択肢を提供しない企業において、提供しない主な理由は「加
入者からのニーズがない(60%)」「管理面の煩雑さ(49%)」
「受託者責任リスク(34%)」であった。
促すため」。非マッチング拠出をする企業の場合、理由の上位
確定拠出年金の提供理由が異なると、制度設計
3項目は、「競争力」「惹きつけ、留まらせ」「確定給付年金の閉
も異なる
鎖・凍結の影響を和らげるため」であった。
確定拠出年金を提供する理由は企業ごとに異なるため、制度
終身年金
設計も企業によって違う。「それ相応な年齢で十分な老後資産
を提供する」ために確定拠出年金を提供する企業では、自動
今日では、より多くの人々が退職後の主な収入源として確定
拠出年金を頼りにしている。そのため、資産運用収益の変動を
緩和したり、長生きのリスクから加入者を守るために、終身年
加入・掛金引上制度、マッチング拠出、非マッチングの事業主
掛金、Roth オプションが導入されている事例が多い(図表 11)。
金(退職後、生涯にわたり保証される年金)を認めるべきかどう
図表11.退職給付制度の目的に応じて確定拠出年金の設計は異なる
か、盛んに議論されている。とはいうものの、確定
従業員がそれ相応な
年齢に達したときに、
十分な老後資産を持て
るようにするため
従業員の採用に有
利となるよう競争力
ある給付を提供す
るため
全従業員対象
26%
16%
非マッチング拠出(加入者掛金に比例しない
掛金)
新入社員のみ対象
47%
26%
自動掛金引上制度
72%
65%
全従業員を対象
17%
事業主掛金
新入社員のみを対象
7%
マッチング拠出のみ
68%
76%
その他
11%
3%
1%
事業主掛金なし
n=371
2%
非マッチング拠出
マッチング拠出/非マッ
チング拠出ともにある
Rothオプション
n=363
23%
17%
47%
41%
図表9.提供している事業主掛金の種類
マッチング拠出(加入者掛金に比例する掛
金)
全従業員を対象
90%
新入社員のみを対象
1%
自動加入制度
図表10.終身年金の提供
0%
10%
現在、終身年金を提供している
2013年度末までに導入予定
検討しているが、導入予定は未定
検討していない
20%
30%
40%
50%
60%
70%
6%
1%
31%
63%
n=367
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資産運用オプション
運用商品ラインナップは、プランごとに異なる。もっとも、ほとん
現在、35%の企業はターゲット・デート・ファンドの他に、アクテ
どの企業(90%)は運用商品の選択肢の1つとしてターゲット・
ィブ運用の株式ファンドとパッシブ運用の株式ファンドを提供し
デート・ファンドを提供している(図表 12)。ターゲット・デート・フ
ている(図表 13)。パッシブ運用商品の採用は次第に広がりつ
ァンドの選定基準のトップは、資産配分の変動パス(どのように
つある。従業員がより低い投資コストで、多様な資産に分散投
将来的に資産配分を変化させていくかの道筋)であった(58%
資できるのが、パッシブ運用の魅力である。企業の 5 社に 1
の企業)。
社(19%)は、現在パッシブ運用のみの株式ファンドを提供して
いる。
図表12. パッシブ運用商品の提供が広がる一方、アクティブ商品
の採用も一般的
0%
米国の大型株ファンド
20%
40%
24%
60%
80%
また、多くの事業主は運用商品の数を絞ってきてい
100%
42%
る。20 種類を超える選択肢を提供する確定拠出年
金は 2010 年の 32%から 2012 年には 24%に減少
34%
した。10~19 種類の選択肢を提供する確定拠出年
債券ファンド
32%
海外株ファンド
23%
米国の小型株ファンド
23%
米国の中型株ファンド
23%
50%
17%
55%
金は、2010 年の 64%から 2012 年には 69%に増加
した(図表 14)。提供される選択肢の数は減少傾向
19%
58%
にあるものの、多様な選択肢を提供するためにブロ
ーカレッジ・アカウント(加入者が証券会社経由で個
16%
別証券・投信に投資する手段)を追加する事業主も
52%
提供している。
ターゲット・デート・ファンド
またはライフ・サイクル・ファンド
34%
ステーブル・バリュー・ファンド
バランス型ファンド
53%
3%
26%
59%
2%
14%
41%
2%
MMF
50%
自社株
49%
2010
n=300
2012
n=369
69%
64%
60%
32%
不動産ファンド 6%
50%
40%
17%
2%
30%
GIC 8%
32%
パッシブのみ提供
アクティブのみ提供
パッシブ・アクティブ両方を提供 20%
図表13.株式ファンドの種類とターゲット・デート・ファンド
アクティブ、パッシブ、ターゲット・
デート・ファンド
アクティブ、ターゲット・デート・ファン
ドのみ
パッシブ、ターゲット・デート・ファンド
のみ
ターゲット・デート・ファンドの提供な
し
n=348
80%
42%
マネージド・アカウント
投資戦略
図表14.運用商品数の推移
70%
ブローカレッジ・アカウント/
ミューチュアル・ファンド・ウィンドウ
n=354
多い。10 社中4社以上の事業主がこのオプションを
17%
提供している企業割合
24%
10%
0%
4%
7%
1-9本
10-19本
20本以上
35%
35%
ライフ・サークル、ターゲット・デート・ファンド、投資信託オプション、アニュイティーは全て一
つのオプションとして計算。
19%
11%
2012 U.S. Defined Contribution Sponsor Survey Report 8
手数料:従業員が直接費用負担する傾向に
手数料水準は退職後の収入に多大な影響を及ぼす可能性が
レコードキーピング費用のすべてをレベニュー・シェアリング方
あり、十分な老後資産を積み立てておきたいという加入者の努
式ではなく、直接費用として支払っている企業のうち、44%は
力を減じる方向に働きかねない。レコードキーピング費用は、
直接費用を加入者に負担させており、37%は企業が直接費用
レベニュー・シェアリング方式(注:個人残高から差し引く費用
を負担し、残りは企業と加入者の両社が負担し合っている(図
の一部をレコードキーピング費用に充てる方法)でなく、直接費
表 16)。直接費用を加入者に定額方式で請求するケースは増
用として支払っている企業の割合が増している(2009 年の
えている(2009 年の 31%から 2012 年の 61%に)。
32%から 2012 年の 37%へ)(図表 15)。
図表15.レコードキーピング費用の支払い方法
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
35%
40%
45%
42%
レベニュー・シェアリング方式
33%
32%
レベニュー・シェアリング方式ではなく、
費用の全額/一部を加入者/企業が負担
37%
レベニュー・シェアリング方式ではなく、
ラップ・フィーもしくは信託報酬への追加で
費用徴収
2009
n=140
2012
n=359
11%
12%
6%
その他
11%
8%
不明
7%
図表16.より多くの企業がレコードキーピング費用を加入者に直接、定額負担させている
直接費用の負担者
直接費用の負担割合
70%
2009
n=45
70%
2012
n=133
2009
n=13
60%
2012
n=57
60%
61%
58%
50%
50%
46%
44%
40%
40%
37%
33%
30%
33%
30%
20%
20%
31%
23%
19%
10%
10%
9%
0%
5%
0%
企業
加入者
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企業及び加入者
口座残高比例
定額
口座残高比例と
定額の組み合わせ
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直接費用の増加はレベニュー・シェアリング方式への依存を減
らすことになるので、この現象はコストのシフトというよりコスト
の透明化を進める動きであるといってよい。
63%の企業が、アクティブ運用のファンドの運用報酬は平均
0.50%~0.84%であると回答している。パッシブ運用のファンド
の運用報酬は平均 0.50%未満となっている企業は 60%ある。
回答をみると、企業規模が大きいほど価格交渉力が増すこと
が分かり、小型のプランになるとかなり割高な運用報酬を支払
っている(図表 17 と 18)。
図表17.アクティブ運用商品の信託報酬
制度の規模(ドル)
0.5%未満
0.5%-0.84%
0.85%-1.24%
1.25%以上
10-49.9百万
0%
43%
57%
0%
50-99.9百万
18%
27%
36%
18%
100-249.9百万
14%
56%
28%
2%
250-499.9百万
18%
60%
19%
4%
500-999.9百万
17%
65%
17%
2%
10-24.9億
16%
62%
19%
3%
25-49.9億
31%
63%
6%
0%
50億以上
17%
72%
11%
0%
n=300
図表18.パッシブ運用商品の信託報酬
0.5%未満
0.5%-0.84%
0.85%-1.24%
1.25%以上
10-49.9百万
制度の規模(ドル)
50%
50%
0%
0%
50-99.9百万
55%
27%
9%
9%
100-249.9百万
53%
37%
8%
2%
250-499.9百万
58%
34%
8%
0%
500-999.9百万
69%
24%
5%
0%
10-24.9億
61%
35%
4%
0%
25-49.9億
79%
21%
0%
0%
50億以上
67%
28%
6%
0%
n=302
2012 U.S. Defined Contribution Sponsor Survey Report 10
コミュニケーション
事業主は従業員に対して、自社の確定拠出年金に関する情報
ばならない結果だ。「従業員は自社の確定拠出年金の良さを
提供を定期的に行っている。退職準備計画ツールや運用モデ
理解しているか?」という質問に対し、「いいえ」または「分から
ル・ツールを提供することによって、従業員の退職準備を支援
ない」と答えた企業は実に半数以上にのぼった。
している。その一方で、「従業員はこれらのツールを使ってい
る」または「確定拠出年金が何を提供してくれるのか現実的な
期待を従業員は持っている」と考える回答企業はわずかであっ
こうした調査結果はタワーズワトソンの「2011 年 Retirement
た。
Attitude Survey」の結果と矛盾している。同調査では、老後準
備のために使うツールについて、従業員に質問しているが、
74%の従業員が「会社または運営管理機関のウェブサイトを
事業主が提供する加入者教育としては、紙媒体の教材、オン
使う」と答え、65%は「他のオンライン・ツールや自宅に郵送さ
ライン・ツール、ウェブキャスト、従業員説明会、ファイナンシャ
れてくる教材を利用する」と答えていた。ここで疑問となるのが、
ル・プラナーとのセッションといったものがあげられる。もっとも
ツールの使用がモニタリングされているかどうかだ。さらには、
多く行われているのは一般情報の提供であり、少なくとも年に
加入者がより健全な決定を下すために、どのツールが実際に
1 回加入者に情報提供されている(図表 19)。
役立っているのかということだ。
多様なツールが利用できる状態であるにもかかわらず、「大多
約 3 分の2の企業はコミュニケーションの効果を少なくとも年に
数の従業員は老後準備や資産運用に関するリソースをよく活
1 回は計測している。しかし「従業員は自社の確定拠出年金の
用している」と考える企業は 6 分の1(15%)未満であった(図
良さを理解しているのか?」という質問に対し、「分からない」ま
表 20)。さらに「確定拠出年金が何を提供してくれるのか現実
たは「していないと思う」と答えた事業主は実に 3 分の1を上回
的な期待を従業員は持っている」と考える事業主は4分の1
った。
(26%)しかなかった。3分の2(65%)に近い事業主は「従業員
は老後準備と資産運用のためのリソースを十分利用できる状
態にある」と考えていることからすると、これは少し考えなけれ
図表19.従業員コミュニケーション
一般的な情報提供
対面によるコミュニケー
ション
コンピュータによる双方
向コミュニケーション
年1回以上
毎日または24時間
利用可能
リクエストに応じて
提供
提供なし
97%
2%
1%
0%
53%
2%
36%
9%
35%
27%
25%
13%
そう思う
どちらでもない
そう思わない
9%
37%
54%
15%
35%
50%
22%
42%
36%
26%
43%
31%
45%
34%
21%
65%
22%
14%
n=362
図表20.従業員の老後準備に対する企業の認識
従業員は、退職後の所得目標を持っている
従業員の多くは老後準備や資産運用に関するリ
ソースをうまく活用している
従業員は老後資金に関して、十分な情報に基づい
て意思決定をしている
従業員は確定拠出年金からの給付に関して現実的
な期待を有している
従業員は確定拠出年金の内容を理解し、評価して
いる
従業員は十分な老後/投資計画の情報を得られて
いる
n=368
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退職準備:
チームによる取り組み
確定拠出年金は米国民間部門の多くの従業員をカバーする退
自社の取り組みを計測する。加入者の一人一人の状況を見極
職準備制度である。この制度をよく理解して資産残高を増やす
め、制度設計、コミュニケーション、運用商品ラインナップなど
努力(拠出率を最大にする、引き出しを抑える、自分の投資対
を是正する措置を講じる。このようなアプローチをとることによ
象をモニタリングする)をしている従業員は、十分な老後資金を
って、企業は自社の取組みに対するROI(投資収益率)を計測
確保していく道へと進んでいくだろう。老後資金の増大に責任
できる。そして、今後の改善方向について正しく決定できるだろ
を持つのは従業員自身ではあるが、事業主も以下にあげるよ
う。
うな支援を提供することが肝要である。
情報を十分に伝達する。従業員としては、将来の老後資金を
確保するために今積立を行うのだ、ということを知る必要があ
次のステップ
る。確定拠出年金の仕組み、運用商品にはどのようなものが
確定拠出年金を導入した成果として、十分な老後資産を確保
あるのか、リスクとリターンの関係、自分のポートフォリオをモ
した社員は順々に退職していくのだろうか?それとも確定拠出
ニタリングし、適宜調整する方法、といった事項について理解
年金への依存が高まることにより、「職場にいるのにまるで隠
する必要がある。事業主としては、自社のコミュニケーション・
居したかのように、まともには働かない隠れた受給待機者」が
ツールの効果をモニタリングして、必要ならば修正を加えてい
出るリスクが増すのだろうか?
かねばならない。
確定拠出年金の目的が単に「競争力のある給付水準を提供す
自動加入制度などを提供する場合、十分な拠出率になるよう
ること」であるならば、同制度が「順序だった適切な時期での退
に設計する。自動加入制度は資産形成に積極的ではない従
職」を促すか否かは関係ない。しかし確定拠出年金の目的の
業員が対象であるため、最初の拠出率を低く設定すれば加入
一つが「給付水準が十分であること」である場合、上記は当然
者数は増えるものの、老後準備としては不十分となるだろう。
関係してくる。いかなる制度設計、運用商品、手数料、コミュニ
マッチング拠出が最大となる率で自動加入制度を実施し、加入
ケーションの方針と実践が成功につながるのか?タワーズワト
者がいつでも脱退できるオプションを残しつつ掛金を自動的に
ソンの調査によれば、確定拠出年金の目的には実に多種多様
引き上げるようにすることが肝要だ。
なものがあったものの、「十分な給付水準の提供」をめざす事
必要に応じて、ターゲット・デート・ファンドを提供する。ターゲッ
業主は多かった。
ト・デート・ファンド(従業員の退職予定日とひもづいた運用商
成功の目安が十分な老後資金の準備を指す場合、事業主は
品)は老後準備を支援する商品として、このところ人気を博して
いかに過去の取組みと将来の改善策を評価したらいいのだろ
いる。81%の事業主がこの種のファンドを提供していることか
うか?401(k)プラン受託機関の報告書には、加入率、資産配
ら、資産の獲得競争は激しさを増している。それに伴い、各ファ
分データ、口座残高の平均値といったデータが記載されている
ンドの間で資産配分の変動パス、費用、パッシブ運用とアクテ
が、これらの尺度から退職準備ができているか否かを判断す
ィブ運用の比率も多種多様になっていくことが予想される。
るのは難しい。平均値では実態は明らかにならないし、加入者
運用商品ラインナップの見直し。アンケートに回答した企業は
一人一人による退職準備の状態を数値化するのは困難だ。
従業員が選択できる運用商品の数を減らしている。これに伴
結局、手数料を気にかけ、シンプルな運用商品ラインナップ、
い、従業員の選択もシンプルになり、混乱も減るであろう。
ターゲットを絞ったコミュニケーション、自動加入制度を提供し
手数料への着目。高い手数料は老後資産を減少させる。手数
料をしっかりモニタリングして、受託機関と交渉することによっ
て、手数料が従業員の老後資産に及ぼすマイナスの影響を減
らすことができる。
ている事業主こそが、自社の確定拠出年金を有効活用して、
従業員の退職準備を促進させることができるのだろう。費やし
た努力を測定し、成功のメルクマールを持っている事業主は、
自社プランに必要な変更を施し、将来にわたって効果的な制
度として維持していくことができるであろう。
2012 U.S. Defined Contribution Sponsor Survey Report 12
本調査について
「2012 DC Plan Sponsor Survey(確定拠出年金導入企業調
こうした企業は、他の退職給付制度も導入している。59%の企
査)」は、2011 年末の実績に基づき、2012 年に実施したもので
業は伝統的な確定給付年金を提供しており、30%はいわゆる
ある。従業員数千人超、資産残高 1 千万ドル以上の 401(k)プ
ハイブリッド・プランを提供している。従来型の確定給付年金と
ラン導入企業 371 社から回答を受け取った。ほとんどの企業
ハイブリッド・プランの多くは、閉鎖(新入社員はカバーしない)
がフォーチュン 1000 社とP&I1000 社に含まれており、業種も
もしくは凍結(在籍者の将来分はカバーしない)されている。
多岐にわたっている。93%は 1 億ドルを超える確定拠出年金
(図表 21)。本調査の回答企業は広範な業種に属しているが、
資産を持ち、63%は従業員が 5 千人以上である。
一番多いのは製造業である(図表 22)。
45%の企業は、従業員数 1 万人以上であり、2011 年末の時
図表21.その他の退職給付制度
点で資産残高が 10 億ドルを超えている(図表 23、図表 24)。
70%
60%
50%
n=370
新入社員を含め提供
31%
46%
40%
図表23.回答企業の従業員数
30%
20%
10%
14%
16%
n=371
23%
8%
11%
8%
0%
19%
21%
10%
5%
1,000-2,499人
2,500-4,999人
5,000-9,999人
17%
10,000-24,999人
25,000人以上
24%
図表22.回答企業の業種
0%
10%
製造
20%
19%
30%
24%
n=370
エネルギー、電気、ガス、水
道
11%
金融機関(保険会社)
図表24.回答企業の資産額(米ドル)
0%
10%
IT
10百万-49.9百万
9%
ヘルスケア(製薬会社を除く)
7%
金融機関(保険会社を除く)
6%
小売/卸売
6%
50百万-99.9百万
5%
10%
3%
5%
ヘルスケア(製薬会社)
3%
ビジネスサービス
3%
運輸
3%
飲食サービス
2%
その他
4%
20%
250百万-499.9百万
19%
500百万-999.9百万
19%
10億-24.9億
19%
25億-49.9億
12%
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20%
n=371
100百万-249.9百万
メディア、コミュニケーション
15%
50億以上
11%
6%
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