- 1 - 進路指導 自己を生かし,よりよい人生を創造する力をはぐくむ

進路指導
自己を生かし,よりよい人生を創造する力をはぐくむ「みやぎキャリア教育プラン」
−体験を伴う学習と評価を位置付けたキャリア教育プログラムの構築を通して−
平成 18 年度 進路指導研究グループ
専門研究員 宮城県宮城野高等学校
加美町立中新田中学校
富谷町立富谷小学校
登米市立宝江小学校
企画研究班 指導主事
指導主事
稲継昌毅
名取秀樹
齋藤卓也
高橋広満
水口俊彦
早坂雅彦
概 要
昨年度構築したキャリア教育プログラムを一層発展させるために,体験のもつ教育的
効果に着目し,組織的に活用することと,指導の効果を適確に把握し,次の活動に生か
す評価を加える。この研究は,そのことによってプログラムのもつ学びの質を高め,校
種を通して活用できる「みやぎキャリア教育プラン」を改めて提言するものである。
1 主題・副題の設定について
1.1 現在の学校教育を取り巻く環境
21 世紀に入り,現代日本の社会は少子高齢化や情報化等により,急速な変化の中にある。この社会
の変化は,それまでの人の考え方や行動に変化を引き起こし,家庭の有り様や地域社会における人間
関係の変容となって表出してきている。その結果,家庭生活,社会生活等で多くの社会不適応ととも
に様々なストレスを生み,世情不安を引き起こしたり,一方で社会組織の根幹を揺るがすニートやフ
リーターの増加につながったりしている。
教育,特に学校教育についても,その急激な変化には対応しきれていない。教育という分野が,結
果が見えるまで非常に長い時間がかかることや,学校教育が義務教育を中心として国民に均等な教育
を施す特質をもつために,あえて急激な変化に左右されにくい体制をとっており,結果として,いつ
も社会の変化を後追いする形になってしまうのが現状である。
学校教育の現場でも,小・中・高等学校各校種を問わず,少子高齢化を主とした家庭の変容や,社
会の情報化によるコミュニケーションの変化等による児童生徒の人間的な成長が,大きく変容してき
ている。一例を挙げるならば,集団の中で協調できない児童の増加が学級崩壊の原因の一つになった
り,中学校入学時には,思春期という成長過程の中で,新しい学校のシステムになじめず,新たな人
間関係を結べないまま学校不適応を起こしたりするケースが目に見えて増加している。さらに携帯電
話に代表されるコミュニケーション・ツールに依存するあまり,人間関係の構築力が身に付かず,他
人の気持ちを思いやったり,自分の気持ちを表現したりすることが極端に不得手な若者たちが,社会
不適応に苦しんでいる現状がある。
1.2 教育の課題とこれからの学校教育
学校教育には,そもそも児童生徒一人一人の心身の十分な成長を促し,健全な国民を育成するとい
う本質的な目的がある。これは,一人一人がしっかりとした人格をもつ,人間として調和のとれた国
民の育成と言い換えることができる。
今の学校教育を客観的に見つめ直したとき,はたして一人一人が人格を円満に形成する心身の成長
- 1 -
を促すことができているか,人間として調和がとれるようなバランスのよい情意,知識,能力を身に
付けられるものであるか,また,健全な国民を育成する方向で教育の指針が定まっているか,これら
の視点を目の前の児童生徒の実情と照らし合わせ,その将来に思いを馳せながら,教育の課題一つ一
つを考えていく。そうすると,現在の学校教育の改善点をおぼろげながら浮かび上がらせることがで
きる。
1.1で例示したことは多分に概略的なことであるが,全国どこの学校,校種でも問題となってい
る,日本の学校教育の普遍的な問題である。このことを踏まえると,教育の課題には児童生徒の社会
的な自立を支援していく視点が必要であるということが,現状から浮かび上がってくる。
具体的には,現在ある教科等の学習指導の中に児童生徒の自立を支援していく要素を取り入れてい
くことの必要性である。さらに自立を確実に支援する要素として,学校教育が児童生徒一人一人の人
生設計に資する情報を提供するとともに,よりよい人生へのイメージを与え,それにアプローチして
いくための価値観の形成を図るものでなければならないと考えた。言い換えれば,勤労という形で社
会に参画し貢献することで,人生を有意義なものにしていくというイメージと,そこに自己実現をし
ていくための職業にアプローチしていく価値観の形成である。そのことから,一人一人が社会で協調
しながら自己を生かして生きていくための要素の一つとして,学校教育にとって勤労観と職業観の形
成が欠くことができない要素であるということができる。
1.3 本県の進路指導の課題
さて,進路指導にかかわる本県の教育課題を振り返ってみると,一つは進学及び就職状況の改善が
挙げられる。
宮城県教育委員会が平成 17 年3月に策定した
「宮城県学力向上推進プログラム」
の中に,
宮城県の高校生の卒業時における進路状況が示されている。それによると,現役生の大学・短大等へ
の進学率及び就職決定率は共に全国 40 位,仕事に就いていない者の割合を示す無業率は全国6位(共
に平成 16 年3月)であるなど,高校卒業時における進学及び就職の不振が示されている。進路の決定
には社会の変化や経済と雇用の状況など多くの要素が関係しており,学校教育における進路指導の在
り方のみが問われるものではないが,本県の教育課題の解決を図るためには,この状況の改善に向け
て具体的な手だてを講じていかなければならない。
上記の進学及び就職の課題は,単に決定率等の数値的な見方や,社会の変化や雇用の状況との関係
だけが論じられる傾向がある。しかし教育的には,自己実現という児童生徒の成長過程にかかわる大
切な側面をもち,自立を支える大切な要素が含まれている。児童生徒の自立のためには,獲得した知
識を生かして,自己の適性や能力について理解する力,社会とのかかわりの中で自己の在り方生き方
を考え,自分で進路を選択し決定していく力,人間関係を築いたり社会に適応したりする力,などに
応用させていく能力が必要である。すなわち,学校教育の中で児童生徒にそのような能力を身に付け
させることは,児童生徒の自立を支援し,自分の力で自分の進路を切り開いていくことになる。その
結果,現実に本県の課題としてある進路状況の改善につながっていくと考える。
さらに内在するもう一つの課題として,中学校進学時における不登校生徒数の著しい増加という,
いわゆる中1ギャップの問題がある。小学校から中学校への移行は,児童生徒にとって精神的な負担
となる場合が少なくない。人間関係の構築や学習への対応など,新たな環境への適応を求められ,そ
れまでは潜在的に各自が抱えていた問題が中学校入学時に一気に表出する。また,自己を取り巻く環
境の変化という点から考えると,同様の問題が高等学校や大学への進学時や就職時にも起きているこ
とが指摘されている。
中1ギャップに象徴される児童生徒の抱える問題は,これもまた児童生徒の自立を考えるには欠く
ことができない重要な要素を含んでいる。人間関係を構築していくには,自己の内面を表現し,他者
とのコミュニケーションを適確に図る能力の他に,人間関係をつくっていこうとする感情や意志つま
り情意が身に付いていることが必要である。また,他者とのかかわりを通して得た,自己肯定感や自
己有用感,自己を向上させようとする気持ちなどの情意が,精神的な成長を促し,児童生徒の内面を
- 2 -
支えていく。このように,自立には情意の成長もまた必要である。そして,このような新しい環境に
対する不適応の問題も進路指導に関する教育課題として重要度が増しており,その改善に向けた教育
環境の整備が急がれる。
以上,本県の進路指導に関する主な教育課題を二つ提示した。これらは,今や学校教育全般にかか
わる課題とともに,家庭や地域も含めた社会全体で取り組むべき教育の課題でもある。児童生徒の成
長過程を,社会の構造の変化など幅広い視点から考え,児童生徒の自立を支援する教育活動とはどう
あるべきか,その考え方や具体的な手だてを明らかにすることが,本県にとっての課題である。
1.4 自立を支援する進路指導
1.4.1 進路指導とキャリア教育
昨年度から引き続き進路指導研究を継続するに当たり,
今年度は児童生徒の自立支援という視点で,
小・中・高 12 年間の系統性,関連性のある教育プログラムの作成を研究の柱とした。そこで,児童生
徒の自立を支援する進路指導として,学校教育全般を社会とのかかわりの中で考えながら,児童生徒
が社会の中で生きていくために必要な力をはぐくむ「キャリア教育」の導入と具体的なキャリア教育
のプログラムの作成を今年度も引き続き進めていく。
「キャリア教育」とは,児童生徒の自立を支援し
ながら学習活動を進めていく教育の理念を示すものである。また「キャリア」とは,経験を基に身に
付けていく考え方や力の累積である。
その理念に基づいた教育活動を展開するに当たっては,具体的な目標として児童生徒の発達段階に
応じた「キャリア発達課題」と,キャリア形成をするために必要な能力として「キャリア諸能力」を
設定した。キャリア発達課題は,それぞれの発達段階におけるキャリア発達の状況を児童生徒の態度
や行動を通して確認する指標である。
1.4.2 価値観の形成による自立支援
さて,児童生徒が学校内で学習活動に取り組むとき,また学校外で様々な気付きを学習として積み
重ねる場合,児童生徒の受け取る情報は,興味や関心といった強いフィルターによって,その情報が
自分にとって重要なものか,そうでないものかが選別されると考えられる。つまり,児童生徒の中に
ある価値観が学力の形成に大きくかかわっているということである。また,学力ばかりでなく,生活
の指向,人間関係,そして自身の生き方までもが,その時点での児童生徒のもつ価値観によって大き
く左右される。これまで児童生徒の自立のために,情意,知識,能力の育成が必要であることを述べ
てきた。それに加えて自立を支援する要素として,児童生徒のもつ価値観も大きく影響していること
がわかる。
現行の学校教育では,一般的に社会の様々な事象についての学習が繰り返し行われる。それは全て
の教科において,知識として児童生徒の学力の形成をするものである。そして,児童生徒は体験的な
教育活動を中心に,その知識を自分なりに応用させて様々な能力を身に付けていく。そのことを踏ま
えて,ここで価値観を形成する視点で学校教育を考えてみる。例えば学習活動の中に,社会の構造や
職業に関する知識の学習を取り入れる。そうすることによって,児童生徒は体験的な教育活動を中心
に,社会構造や職業に関する知識を自分なりに応用させて,社会生活や職業理解についての能力を身
に付けていく。そしてさらに,その体験的な教育活動の中で,感情や意志などの情意面が刺激され,
育成されることによって,社会への参画や職業に対する価値観を身に付けることになる。そのような
教育活動の積み重ねの中から,児童生徒は自己と社会の関係をつかみ,社会の中で自己を生かすため
の学習に対する意欲を喚起し,生きる意味を見いだし,生きる力をはぐくみながら,自立をしていく
と考える。
児童生徒の自立を支援するための側面の一つには,小・中・高等学校各校種の児童生徒の成長過程
に応じて学習内容を工夫することによって,勤労観,職業観が上記のような過程の長年の積み重ねで
育成されていくことが必要である。情意,知識,能力を身に付けるとともに,よりよい人生に対する
- 3 -
価値観(=人生観)の形成を意図する必要があるということである。情意,知識,能力を身に付け,
それに応じた価値観を形成し,同時に,そのように形成された価値観によって,また新たな情意,知
識,能力を獲得していく。その連鎖の中から,児童生徒は社会の中で自立していく力を身に付け,自
己を生かし,よりよい人生を創造していく力を身に付けていくと考える。
1.4.3 教育活動を支える「感性」の働き
ところで,授業をコーディネートする教師側にも,それに臨む児童生徒側にも,様々な教育の場面
で感性が働いていることに気付く。自立の支援や教育活動の効果をねらい,特に児童生徒側の感性の
働きに着目をしながら,感性と教育活動との関連を明らかにし,本研究のプログラムが更に効果的な
ものになるよう研究を進めていきたい。
感性とは,周囲の様々な事象を印象で感じ取る心の働きである。これを働かせることは人間だれも
が生まれつき備えている能力の一つである。しかし,感性はだれもが均一にもつものでなく,生まれ
た瞬間からの生育環境や,その後の生活環境,学習環境によって,その質や性能が変化していく。ま
た,上記で述べた学習活動と同じように,感性はその人の興味・関心にも大きく影響され,様々な価
値観によっても変容していく性質をもつ。
つまり,教育活動の中には,児童生徒の感性の働きに注意を向け,個々の感性が健やかにはぐくま
れる学習環境をつくっていく要素が必要なことが分かる。これは特に情意の育成と深くかかわる部分
であるが,そのような情感的な分野にのみとどまるものでなく,教科指導の様々な場面にも当てはま
ることである。
例えば,数学の図形の学習において,教師が図形を板書しそれを生徒が認識した瞬間,どのように
生徒がその図形をとらえるかは,個々の感性によって違う。その生徒個々の感性を尊重しながらも,
教師が意図するその図形のとらえ方に授業全体を導いていくことが,生徒の授業理解に十分好影響を
与えることは容易に想像できる。また,実技教科における活動のプロセスや,学校行事,学級活動等
で,児童生徒の感性の働きに着目をしながら教育活動を進めることは,各学習活動の効果を高めるこ
とにもつながる。さらに,心の動きに着目してもらえた児童生徒は,教師への信頼を増し,更に学習
に対しての意欲を高めていくことにもつながっていくだろう。
以上のことから,本研究では児童生徒の「感性」の働きに着目をし,更に感性をはぐくむ要素を研
究に加えることにした。
1.5 昨年度の研究成果と本年度の研究の方向性
1.5.1 昨年度の研究成果
全国のキャリア教育に関する研究の多くは,
平成 14 年 11 月に国立教育政策研究所より示された
「児
童生徒の職業観・勤労観を育む教育の推進について(調査研究報告書)
」と平成 16 年1月に文部科学
省より示された「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書」が研究の依拠とな
っている。
昨年度の本研究においても,これらを基に「みやぎキャリア教育プラン」を構想した。これは,国
民一人一人が自分の個性や能力を存分に発揮し,喜びや生きがいを感じ,自分の人生をよりよく主体
的に生きていこうとする姿を自立した社会人像とし,そのような人生を実現していく力を「自己を生
かし,よりよい人生を創造する力」とした上で,児童生徒に小・中・高等学校の学校教育全体で,こ
の力をはぐくんでいくという構想の基に作成した教育プログラムである。その内容は,キャリア諸能
力(資料1)を育成するために,学級活動(ホームルーム活動)
,道徳,総合的な学習の時間の3領域
の関連性と系統性を意図した小・中・高等学校 12 年間の指導計画,指導案を盛り込んだものある。
- 4 -
1.5.2 本年度の研究の方向性
本年度は昨年度のプログラムを拡充する形で,本県におけるキャリア教育プログラムの軸となる部
分の研究開発に加え,前述の「みやぎキャリア教育プラン」の理念をより具現する方向で,自立を支
援する教育プログラムの構築を目標とした。
第一に,前述のように情意,知識,能力とともに価値観の獲得や育成,形成には,体験活動の中か
ら生きた学びを引き出すことが,教育的に有効であることに着目をし,プログラムの中に「体験を伴
う学習」として,組み込むことにした。そして,この「体験を伴う学習」のプログラム化に当たって
は,児童生徒のもつ感性を刺激し,はぐくむ視点が重要であるので,それを考慮した具体的な指導の
在り方を提案していくことにした。
第二に,指導の効果を児童生徒側も教師側も明確に把握し,次の教育活動に生かし,より効果的に
学習内容を取り扱えるようにするため,キャリア教育における「評価」を研究の柱とした。これにつ
いては,評価の方向性や観点,方法等の具体例を,作成し提案することにした。
2 研究目標
キャリア教育における体験を伴う学習の指導と,キャリア教育の評価の在り方を明らかにし,教育
課程全体に関連性をもたせたキャリア教育プログラムに発展させる。さらに,キャリア教育実践のた
めの具体的な方策を示すことで,県内各校におけるキャリア教育の推進とその具現を図る。
3 研究の内容および方法
3.1 理論研究
(1) 「体験を伴う学習」を効果的に展開するために,特別活動,道徳及び総合的な学習の時間や教科
等との関連を含めた指導や支援の方策を探る。
(2) 感性を刺激し,はぐくむ「体験を伴う学習」の指導の在り方を検討する。
(3) 児童生徒の変容や成長を把握するための評価の在り方を探る。
(4) キャリア教育推進のための方策を検討する。
3.2 開発研究
(1) 教育課程全体に関連性をもたせたキャリア教育プログラムを構築する。
(2) 感性を刺激し,はぐくむ「体験を伴う学習」の効果的な指導方法を明らかにする
(3) 児童生徒の変容や成長を把握するとともに,指導の改善に生かすための評価方法を確立する。
(4) 児童生徒のキャリア形成の過程を継続的に見つめるために校種間をつなぐ「キャリアファイル」
の提案をする。
(5) 県内各校におけるキャリア教育実践を支援するためのホームページを作成する。
3.3 提言
本研究を通して,宮城県内各校においてキャリア教育実践の手掛かりとなる指導例や評価方法を,
本研修センターホームページを活用して示し,宮城県におけるキャリア教育の在り方を提言する。
- 5 -
4 研究の概要
4.1 体験を伴う学習
「為すことによって学ぶ」
(デューイ)と言われるほど,人々は様々な経験によって知識を蓄え,
その結果能力を獲得し成長してきた。この経験のもつ教育的な価値は,古くから体験学習として教育
活動に取り入れられており,現在の学校教育でも様々な体験学習が行われている。本研究でも,児童
生徒の成長にかかわる諸能力の育成,知識や能力の統合,情意と感性の育成を,体験による学びとい
う視点でとらえ,キャリア教育プログラムの構築にあたって,体験による学習を組み入れていきたい
と考えた。
児童生徒は体験の中での具体的なかかわりをよりどころとして,自分の身の回りの事物や事象に気
付き,感動したり,驚いたりしながら「なぜ,どうして」と考えを深めていく。また,そこで,自分
のもっている知識や能力などを統合的に発揮し,主体的に課題の解決に当たる。そして,体験で得た
知識や考え,能力を基に,実生活の様々な課題に取り組む。さらに課題を解決した経験から,また新
たな知識や能力,価値観をはぐくみ,成長していく。
さらに,発見をしたときの感動や解決したときの達成感,また他者とかかわりながら学習を進める
ときの心情等に着目をして考えていくと,体験では知識や能力,価値観だけでなく,児童生徒の情意
面も大きく成長させながら教育活動が進んでいくと考えられる。
また,体験を重ねながら様々な場面で,児童生徒は各々がもつ感性を働かせながら,次々と解決を
試みる。知識を獲得するときも,能力を身に付けるときも,情意を成長させるときも,感性が働き,
感性をはぐくみながら学習が進んでいく。体験は,児童生徒の感性を磨き育成する効果も備えている
と考えられる。
このように体験を取り入れた学習は,児童生徒に学習への意欲を喚起し,知識,能力を身に付けさ
せ,情意の成長を促し,感性をはぐくませ,学んだ内容をキャリアとしながら,よりよい人生を創造
していく新たな価値観を形成するために非常に有効な教育手法である。
以上,体験のもつ教育的効果は,児童生徒の「キャリア形成」において重要な意味をもち,欠くこ
とのできないものであると考える。そしてこのキャリア形成が,児童生徒の自立を促す重要な要素で
あること踏まえ,児童生徒の自立を支援する教育プログラムとして,体験による学びをキャリア教育
プログラムの中に位置付けることにした。
本研究では,体験を取り入れた学習を教育課程全般と関連を図りながら展開したいと考える。具体
的には,社会性の育成という側面で自己と社会とのかかわり方を学んだり,よりよい人間関係を構築
する活動や,身の回りの事象や自然,芸術に目を向けたりする活動を,キャリア教育の理念に沿って
広く見直していきたいと考えた。そこで,教科の学習で行われる体験活動,学級活動で行われる話合
い活動やグループ活動などの体験的な活動,学校行事や総合的な学習の時間などで行われる体験的な
学習,これらを総じて「体験を伴う学習」とし,それを関連性と系統性を加えて整理し組織化をして,
キャリア教育プログラムの柱とした。
4.2 「体験を伴う学習」を位置付けたキャリア教育プログラム
4.2.1 「体験を伴う学習」の組織化
昨年はキャリア教育プログラムとして,3領域の系統的な指導計画の構築を図った。また,個々の
「体験を伴う学習」が児童生徒のキャリア発達にとって有効であることや,より効果的に実施するた
めの手だてなどについては,前項で述べたとおりである。そして,キャリア教育プログラムをより効
果的なものにするために,
「体験を伴う学習」相互の関連や,他の教科・領域の学習との関連を図り,
組織化していく必要があると考える。
他の教科・領域との関連については,これまでも行事や総合的な学習の時間等において,行われて
きたことである。また,関連を図ることによる効果については,前項において述べたとおりである。
- 6 -
それに加え,1年間を見通し,キャリア諸能力を育成するという視点から,
「体験を伴う学習」相互の
関連を図った。その具体例を「4.4 キャリア教育プログラムにおける指導と評価の実際」の項で
「小学校 第5学年の年間指導構想」として示した。さらに,学年を越えて行う学校行事や校種を越
えて行う上級学校見学,地域の事業所などの協力を得て行う職業的体験学習などについても,同様に
ねらいなどをキャリア発達課題に照らし合わせ系統付けた。
このようにキャリア教育プログラムに
「体
験を伴う学習」を位置付けることで,児童生徒のキャリア発達をより促し,
「自己を生かし,よりよい
人生を創造する力」をはぐくんでいくことができると考えた。
さらに,
「体験を伴う学習」を通して学んだことを一定の期間をおいて振り返ることによって,児
童生徒自身も「体験を伴う学習」を相互に関連付けてとらえ,自分自身について見つめ直したり,考
え方や価値観を高めたりすることができると考えた。このような機会として,学期末,学年末の振り
返りの時間をキャリア教育プログラムに位置付けた。
これらのことによって,「体験を伴う学習」が,プログラムの中で相互に関連し,プログラム全体
として総合的に児童生徒の自立を支援できると考える。
4.2.2 有効な体験にするために −感性を刺激し,働かせ,はぐくむ視点−
体験を伴う学習を有効な教育活動として展開していくためには,事前にその体験にかかわる児童生
徒の実態や生活経験を考慮し,興味・関心や共感する気持ちをもちながら取り組めるような学習の展
開を工夫することが大切である。
「この体験で児童生徒はどんなことを感じ,考えるだろうか」
「どの
ように働き掛けることで,児童生徒の心を動かすことができるだろうか」など,児童生徒の感性に配
慮し,体験の対象から感じ取ったことや考えたこと,その過程における心情の変化等を推察していく
ことが大切である。
体験を伴う学習において児童生徒の感性を刺激し,働かせる視点としては,次のようなことが考え
られる。
(1) 児童生徒にこれまでの経験と照らし合わさせたり,児童生徒の生活と関連のあることや興味・関
心のあることを提示したりする。
(2) 体験の対象にどのように働き掛けたり,接したりするとよいか,その表現の仕方を考えさせる。
また,必要に応じて,その方法を具体的に提示したり,異なる視点を与えたりする。
(3) 再度対象に働き掛ける機会を設け,新たなことに気付かせたり,より深く感じ取らせたりする。
(4) 児童生徒が感じ取ったことを共感的,肯定的に受け止め,更なる気付きを促す。
また,このような視点で様々な体験を繰り返し行っていくことによって,児童生徒の感性は更に磨
かれ,より鋭敏な感性へ育っていくものと考える。
4.2.3 1年間で学んだことの体系化 −児童生徒に自らの成長を実感させる指導について−
児童生徒が様々な体験や学習を通して学んだことを,貴重な経験として自らの財産にしていくため
には,学んだことを自分のものの見方や考え方として意味付けしていくことが重要である。このこと
はすなわち,児童生徒がキャリアを形成していく過程と言い換えることができる。そのためには,体
験時に感じたことや考えたこと,さらには学期や年間を通した自分自身の変容や成長に気付かせ,実
感させていくことが大切となる。例えば,学校行事では,児童生徒は行事の成功に向けて,またそれ
ぞれの目標の達成に向けて,ひたむきに取り組んでいる。この体験の後で,充実感や達成感を味わっ
ていた自分に気付かせたり,
「こんなことができるようになった」
「やればできるんだ」と感じさせた
りすることで,児童生徒は体験を自分なりに意味付けていくことができる。そして,自分を肯定的に
とらえ意欲を喚起したり,その成果を次に生かしたりしようとする。このように,学んだことを意味
付け自らの成長を実感することを積み重ねることで,体験を貴重な経験として内面化させていくこと
ができると考える。
児童生徒に自らの成長をより実感させていくために,体験後や学期,年間の振り返りの学習の中で,
- 7 -
その機会を意図的にもたせていきたい。また,そこで児童生徒自身の実感を促す手だてとして,ワー
クシートや作文,振り返りシート等の活用と,それをポートフォリオとして累積させていくことが効
果的であると考えた。具体的には,学校行事を始めとする体験を伴う学習の振り返りの場面では,自
他の取組から考えを深めさせたり新たな気付きを促したりしていく。また,学期や年間の振り返りの
学習の場面では,それぞれの学習で使用したワークシート等を蓄積したポートフォリオ資料を基に,
自分自身を素直に見つめさせ,自らの成長を実感し,以後の生活への意欲を喚起できるようにする。
この自分自身を客観的に見つめる力を養っていくことは,児童生徒が,日常的に自分を見つめ成長を
実感しながらキャリアを形成し,よりよい人生を求め,たくましく生きていこうとする力をはぐくん
でいくことにつながるのではないかと考える。
これらの振り返りの場面においては,ワークシート等で学習のねらいに対する設問を第一に考える
ことはもちろんであるが,同時に,どのようなことを感じ,考え,学んだかなどを振り返ることがで
きるような問い掛けを行い,表現させることに留意することが必要である。
また,児童生徒がワークシートに書いた内容を受けて,変容や成長に気付かせたり次の活動への意
欲を喚起したりすることができるような教師の励ましや助言,コメントの重要性を自覚し,工夫しな
がら指導に当たらなければならない。このとき,児童生徒が自己肯定感・有用感をもち,何事にも前
向きに取り組もうとする気持ちを喚起していくことをねらいとした助言が望まれる。また,保護者の
コメント欄を設けることで,学校と家庭の双方から支援していくことが可能となり有効な手段である
と考える。
さらに,これらの振り返りの中で実感した自分の成長の足跡を,数年間にわたり累積し,1 年前や
数年前の自分と今の自分を比較することで,より一層,自らの成長を確信していけるのではないだろ
うか。そして,児童生徒の成長の跡をポートフォリオとして累積し,次年度へ引き継ぐだけでなく,
小・中・高等学校へと学年や校種の枠を越えてつないでいくことは,かけがえのないキャリアの累積
を確認し,児童生徒の成長を支える有効な手だてであると考える。
4.3 キャリア教育における評価
4.3.1 キャリア教育における評価の在り方
児童生徒のキャリアは,様々な体験・経験を通して徐々に形成されていくものである。また,キャ
リアを形成していくために必要なキャリア諸能力は,発達段階に応じたキャリア発達課題を達成する
ことにより段階的にはぐくまれていくものである。したがって,児童生徒のキャリア形成をより確か
なものにしていくためには,児童生徒のキャリア発達の段階を踏まえた意図的,系統的なプログラム
を構築するとともに,児童生徒個々のキャリア発達の状況に応じた指導や支援を行わなければならな
い。そのためには,児童生徒の変容や成長を適確に把握し,評価することが必要である。そして,評
価に当たっては,次のような点に留意することが大切であると考える。
教師は児童生徒の変容や成長の過程を共感的,肯定的に理解し,次の活動への意欲を高めるという
視点に立って行う。また,児童生徒のキャリア発達には個人差があること,児童生徒の内面や行動を
評価することから,より総合的に評価を行うことが肝要であり,数量的に基準を定めた評価のみに偏
ることがないようにする。
さらに学校の教育課程全体を通じて,指導の前後における児童生徒のキャリ
ア発達の状況や内面の変容などを継続的,総合的にとらえる。
4.3.2 児童生徒の変容や成長の評価
児童生徒の変容や成長の評価に当たっては,
「みやぎキャリア教育プランにおいて設定したキャリ
ア発達課題」
(資料1)を活用し,児童生徒のキャリア発達の状況を把握することにした。そして,
児童生徒の成長や変容を継続的,総合的にとらえていくには,学習の過程や結果等の記録を累積し活
用するポートフォリオ評価がふさわしいと考えた。この評価に用いるポートフォリオは,教科,領域
の学習や学期ごとの振り返り活動で用いたワークシート及び感想文等を選択して利用していく。これ
- 8 -
らの資料から,各活動における児童生徒の様子や学期ごと,一年ごとの変容や成長をキャリア発達課
題と照らし合わせ把握し,評価するとともに,累積する。
ワークシート等に書かれたものをどのように評価していくかについては,次のとおりである。
(1) ワークシートを活用した評価
単位時間や単元等のワークシートからは,その学習を通して児童生徒が気付いたことや感じたこと
などを把握する。そして,それらを児童生徒の変容の過程として把握し,学期末,学年末の評価に活
用する。また,ここで把握したものを基に,ワークシートへの朱書きや対話を通して,児童生徒のキ
ャリア形成を支援するとともに,次の活動への意欲を高めていく。
学期末,学年末のワークシートからは,その期間を通して児童生徒自身がとらえた自己の変容を把
握する。例えば「○○する勇気がもてた」
「以前はできなかった○○ができるようになった」
「以前は
○○について,あまり考えられなかったが,今は考えることができるようになった」など,自己の変
容についての表現に着目をする。そして,これらをキャリア発達課題と照らし合わせ,児童生徒のキ
ャリア諸能力の伸長,考え方などの変容や成長について評価をする。
(2) 総合的な評価を行うために配慮すべきこと
児童生徒のキャリア諸能力の評価に当たっては,意欲や達成感といった情意が表現されている部分
を見逃さないように配慮することはもちろんであるが,ワークシート自体に表出されないものもある
ことに留意しなければならない。そこで,ポートフォリオを活用して面談等を行い,児童生徒の内面
から発するものを感じ取り,適確に把握していくことが大切である。さらに行事等の担当者や学年,
教科の担当者等と情報交換を行い,児童生徒の学習の様子について確認することで,より総合的に評
価ができると考える。また,可能な限り保護者等から得られる情報を収集・活用することが望ましい。
これらはより総合的な評価のための資料となるだけではなく,児童生徒に自己の成長を自覚させる上
でも有効である。
4.3.3 指導やプログラムの評価
指導やプログラムについては,児童生徒のキャリア発達の段階に適したものになっているか,キャ
リア発達を支援するために意図的,系統的になっているかなどを検証し評価していく。評価の資料と
しては,前述のワークシートや面談等を通して把握した児童生徒の変容や成長の評価を活用する。よ
り総合的に評価するために,
「学習活動の様子についての記録」
「児童生徒,教師,保護者及び関係諸
機関の事後アンケート」等も積極的に活用していく。これらの資料を基に,指導やプログラムについ
て評価し,児童生徒のキャリア発達にとってより効果的なものに改善していく。単位時間や単元の指
導計画の評価については,その担当者や該当学年の担任が中心となると考えられるが,それらの枠を
越え,学校全体で単位時間や単元の指導計画の関連性や系統性についても検証し,プログラム全体に
ついて年度末に学校全体で総合的に評価していくことで,より効果的なプログラムへと改善を図るこ
とができる。
- 9 -
ポートフォリオ
教科・領域の振り返り活動
のワークシート等
面談等
学期末・学年末の振り返り
活動のワークシート等
教科・領域の活動後の
アンケート等
担任以外の教
師,保護者,
協力者等
児童生徒の変容や成長の評価
ワークシートへのコメントや面談等を
通した個への指導や支援
指導やプログラムの評価
指導やプログラムの改善
児童生徒のより確かなキャリア形成
図1 児童生徒の振り返り活動のワークシートを生かした評価の構想
- 10 -
4.4 キャリア教育プログラムにおける指導と評価の実際
4.4.1 指導の構想
(1) 学年の特性とキャリア発達目標及び 12 年間の系統性を意識した学年の目標
学年の特性やキャリア発達の目標及び 12 年間の系統的な指導の在り方を学年の目標として設定し
た。
表1 学年の特性とキャリア発達目標及び 12 年間の系統性を意識した学年の目標一覧
校
種
勤労を重んじ
目標に向かって努力する態度の育成
身のまわりの仕事や環境への関心・意欲の
向上と夢や希望及び憧れる自己イメージの獲得
1
年
2
年
3
年
4
年
5
年
6
年
興味・関心等に基づく
勤労観・職業観の形成
生き方や進路に関する現実的探索
進路計画の立案と暫定的選択
他者理解の深化と
1
年
2
年
3
年
選択基準としての
勤労観・職業観の育成
進路の現実吟味と試行参加
将来設計の立案と社会的移行の準備
他者理解の深化と広がり
校
望ましい人間関係の形成
学
自己理解の深化と自己受容
等
現実的探索・試行と
社会的移行準備の段階
高
望ましい人間関係の醸成
校
肯定的自己理解と自己有用感の獲得
学
現実的探索と暫定的選択の段階
中
他者への積極的関心の形成と人間関係の醸成
校
学
年
キャリア発達の目標
自己への積極的関心の形成・発展
学
進路の探索・選択にかかる基盤形成の段階
小
段階
1
年
2
年
3
年
学年の目標
新しい環境・集団への適応と望ましい人間関
係づくり,自己肯定感の獲得,基本的生活習
慣の定着
友達や1年生への思いやりや配慮,友達のよ
さの気付き,他者に認められることを通して
の自己肯定感の獲得
集団活動や協力の意義への気付きと人間関
係の醸成,自他の受容と相手を思いやる言
動,自己肯定感の獲得
集団における協力の意義の理解と実践的態
度,役割や責任を遂行しようとする態度,自
他のよさを受容する心情,目標達成に向けて
努力する心情と態度
高学年としての自覚,望ましい集団づくりに
寄与する態度,自分の長所の理解と他者を尊
重する心情と態度,6年生に向けての意識の
高揚
リーダーとしての自覚と実践的態度,人間関
係の意義の理解と醸成,自己有用感の獲得,
役割や責任を遂行する態度,将来の生き方や
中学校生活への希望と展望を抱く
新しい環境への適応と人間関係の醸成,集団
の一員としての自覚,自己の特性理解,将来
の夢や希望する職業の模索と自己課題の認
識,主体的な生活態度
中堅学年としての自覚,生徒会活動への積極
的な参画,場に応じた望ましいコミュニケー
ション能力,自己の特性・個性・能力の理解,
進路や職業選択のための理解と目標の設定
最高学年としての自覚,リーダーとしての役
割や責任の遂行,社会認識の深化及び社会的
な責任と役割の自覚,具体的な将来設計と進
路決定に向けた取組
人間関係の構築を通した高校生活への適応,
自己理解・他者理解の意義の自覚,将来の夢
や希望の育成と自己の在り方生き方及び進
路の可能性の検討
中堅学年としての自覚,自己の個性・適性の
理解と進路の具体的・現実的吟味,進路目標
及び具体的な進路計画の設定,人間関係の醸
成,最終学年に向けた具体的な目標設定
最終学年としての自覚,互いに高め合う人間
関係の形成,志望達成に向けた実践的な態
度,社会参画・貢献への自覚,生涯学習の必
要性の理解
これらを踏まえ,
「体験を伴う学習」を組織的に位置付けてキャリア教育プログラムを構築した。
また,これに基づき,各学年のキャリア教育プログラムをどのように展開していくか,その指導の構
- 11 -
想を表したものが,
「学年の年間指導構想」である。
この「学年の年間指導構想」では,学年の特性を考慮した具体的な指導の方向性を示すとともに,
「体験を伴う学習」と「自分を見つめ,振り返る時間」を意図的,計画的に実施することを重要な視
点としている。体験を通した学びを振り返らせ相互に関連付けさせていくことで,児童生徒自身が成
長を実感しながら,情意,能力及び価値観を高めていくことを支援できると考えたからである。
このような「体験を伴う学習」をキャリア教育プログラムに組織的に位置付けることにより,児童
生徒のキャリア諸能力をより確かに身に付けさせ,自己を生かし,よりよい人生を創造する力をはぐ
くんでいくことができるものと考える。
ここからは指導から評価までの一連の流れについて,小学校第5学年の学習活動を例に具体的に説
明する。
(2) 1年間の指導の構想
① 小学校第5学年のキャリア教育プログラム
特別活動,道徳及び総合的な学習の時間の関連を図り,体験を伴う学習を位置付けて構築した小
学校第5学年のキャリア教育プログラムが次の表2である。
表2 小学校 第5学年 キャリア教育プログラム
学級活動
内容
新学期のスタート
∼
4
6
月
道徳
ポートフォリオ
ワ 作
学級目標と学級組織を決めよう
健康を見直す
1年生を迎える会をしよう
温かい家族
運動会を成功させよう
自然を愛する心
下級生のお世話をしよう
同じ地球に生きている
下級生のお世話を振り返ろう
ワ
あいさつの大切さ
歯の健康を考えよう
命があったからこそ
自然体験学習を振り返って
ワ
話し方・聞き方を見直そう
∼
9
月
学校行事等
ポートフォリオ
内容
花いっぱいになあれ(縦割り活動)
交通安全教室
1年生を迎える会
花のなえを植える準備をしよう
運動会
花だんに花を植えよう
自然体験学習
友達のために
ワ
困っている人のために
ワ
公共の広場を大切に
地域のために自分たちができること(縦割り活動)
生きることの尊さ
地域のために
どんなことができるかを考えよう
わたしとボランティア
郷土を見直す
老人ホームを訪問しよう
校内水泳記録会
《例》地域のゴミ拾いをしよう
オリエンテーション
祖父母参観・交流会
ワ
ワ 作
社会への奉仕
ワ
約束や規律の尊重
公平な心
ワ
生活時間・家庭学習をを見つめ直そう
役割を果たす
ワ
学習発表会を成功させよう
工夫して新しいことを
ワ ワ 作
夏休み作品展
チューリップの球根を植えよう
交流会の準備をしよう
終業式
楽しく交流会をしよう
始業式
交流会を振り返ろう
学習発表会
ワ
希望を持って
ワ
福祉体験活動に取り組もう
避難訓練
ワ
男女が理解し合う心
ワ
学習課題を決めよう
仙台自主研修(社会科)
ほんとうの思いやり
ワ
学習計画を立てよう
大掃除
火災被害に遭わないために
調査・体験をしよう
学習のまとめをしよう
∼
困った人の身になって
ワ
冬休みの計画
広い心で
ワ
新年のめあてをたてよう
日本を愛する心
4年生に委員会活動について伝えよう(1)
ものを大切に思う心
かぜを予防しよう
みんなのために尽くす人
ワ
責任を果たす
ワ
4年生に委員会活動について伝えよう(2)
自分に誠実に
大切の思う心の大切さ
悩み相談
4年生に委員会活動について伝えよう(3)
かけがえのない命
6年生を送る会を成功させよう
樹木を大切に
学習活動を振り返ろう
「働くこと」について考えよう
ワ 作
家族の仕事に目を向けよう
職場見学をしよう
計画を立てよう
職場見学
6年生を送る会
体験のまとめをしよう
奉仕作業・大掃除
私たちの学校
発表会をしよう
卒業式
ワ 作
心の通じ合い
働くことについて考えよう
修了式
高い目標に向かって
ワ 作
発表会をしよう
ワ
6年生から学ぼう
5年生の反省と6年生に向けて
作
交流会の計画を立てよう
後期のめあてを立てよう
6年生から学ぼう∼引き継ぎ式∼
ワ 作
避難訓練
室内の過ごし方を考えよう
ボランティアについて考えよう
ポートフォリオ
始業式
夏休みの反省
10 サイコロトーキング
男女で協力しよう
12 読書に親しもう
月
仙台自主研修をしよう
3
月
内容
ワ
美しい真心の尊さ
夏休みの計画
前期をふり返って
1
月
総合的な学習の時間
ポートフォリオ
規律ある行動
自然体験学習に行こう
地震被害に遭わないために
7
内容
夢を実現するために
ワ
ワ
ワ :ワークシート(及び振り返りシート) 作 :作文
網掛け:前・後期の振り返りで活用する資料 白抜き:年度のポートフォリオ資料
② 小学校 第5学年の年間指導構想
先に示した小学校第5学年のキャリア教育プログラムに基づいた1年間の指導の構想を次のよ
うに考えた。具体的には,高学年という学年の特性を踏まえ,委員会活動や学校行事などでの活動
の機会を生かし,リーダー性や集団の一員としての役割,他者との関係づくりといった情意,能力
及び価値観をはぐくんでいきたいと考えた。
なお,これらの活動を通して,感じたり,考えたりする児童の心の動きに配慮し,感性を働かせ
る指導を心掛けることにより,学びの質を高めていきたい。そして,更には児童生徒の感性をはぐ
くんでいきたいと考える。
- 12 -
小学校第5学年は,高学年に進級し,学校のリーダーとしての活躍が期待される学年である。委員会活
動や学校行事,児童会活動,縦割り活動など,自分の役割を自覚し,誠実に取り組んだり,下級生を優し
くお世話したりするなど,これらの活動を通して高学年としての自覚と責任感がはぐくまれていく。この
一連の活動を学級活動や道徳,総合的な学習の時間,各種行事等と関連させ,意味付けを図りながら指導
に当たることで,その成果(児童の成長)が期待できると考える。
具体的には,相手を思いやり,よりよく人とかかわろうとする気持ちや集団生活の向上のために自分の
役割を自覚し,責任を果たそうとする態度,自らを高めようとする意欲をはぐくんでいきたい。
また,高学年という発達段階を考慮し,将来の生き方や職業,社会とのかかわり等についても各種学習
活動と関連させながら思いや考えを抱いていけるようにしたい。
始 業 式
人間関係の形成
前
新年度を迎え,目標
をもち新たな決意を胸
に学校生活を送ろうと
する意欲を喚起する。
自然体験学習や運動
会などの取組を通し
て,互いの人間関係を
醸成させていきたい。
自然体験学習
学級目標と学級組
織を決めよう
友達のために
高学年になり,
下級生をお世話す
る機会が多くなっ
てくる。この機会
をとらえ,思いや
りの気持ちやリー
ダーとしての意識
を喚起していきた
い。
1 年生を迎える会
運
動
会
下級生のお世話をしよう
困っている人のために
花だんに花を植えよう
期
社会とのかかわ
りにつて考えさせ
たい。
社会への奉仕
地域のためにできること
前期の振り返り活動
高学年としての意識の高まりとその活動を振り返らせる中で,委員会活動や学校行事等で人の役に立つ喜び
を実感させ,自己有用感や自己肯定感を味わえるようにする。また,これらの活動を通し,下級生に対する言
動や友達と協力して活動した経験から,他者理解能力や人間関係形成能力の変容に気付かせる。
後
期
学習発表会や6年生
を送る会などの活動を
通して,互いの関係を醸
成させていきたい。この
際に,道徳においても人
とのかかわりについて
考える機会をもたせて
いきたい。
また,「6年生を送る
会」や「6年生から学ぼ
う」の活動を通して,最
高学年に向けた意識付
けを図りたい。
学習発表会
6年生を送る会
サイコロトーキング
6年生から学ぼう
男女が理解し合う心
本当の思いやり
「わたしとボランテ
ィア」
「
『働くこと』に
ついて考えよう」の学
習を通して,将来の生
き方や職業について
考えさせていきたい。
なお,これらの学習を
進めるに当たり,道徳
的な価値とて考えさ
せることで,学習を深
めさせたい。
希望を持って
みんなのために尽くす人
高い目標に向かって
わたしとボランティア
「働くこと」について考えよう
責任を果たす
年間の振り返り活動
人とよりよくかかわり合うことの大切さとともに,協力し助け合うことの意義や価値について気付かせた
い。また,これらの経験を通して,自己有用感や肯定感に気付き,最高学年への意識の高まりを自覚させてい
くことで,6年生に向けて頑張ろうとする意欲を喚起する。また,これまで考える機会の少なかった将来の生
き方や職業について,現時点での自分の考え方や価値観を自覚させる。
※
:学校行事,
:学級活動,
:道徳,
:総合的な学習の時間,網掛けは「体験を伴う学習」を示す。
図2 小学校 第5学年の年間指導構想
- 13 -
4.4.2 指導の実際
ここからは総合的な学習の時間の「わたしとボランティア」単元指導計画(資料2)を基に具体的
に説明する。
(1) 各種教育活動のねらいとキャリア諸能力との関連を意識した指導の工夫
体験のねらいに迫るための指導とキャリア諸能力の育成とがどのような関連をもつのか,その関連
を押さえ,指導に当たることが大切である。次の図3に示したように,それらを踏まえることで,指
導者側の意識化が図られるものと考える。
小学校 第5学年 総合的な学習の時間 単元指導計画
わたしとボランティア
単元のねらいとキャリア諸能力との関連
自己
理解
ね ら い
老人ホームへの訪問活動を通し,相手を思いやる心情や態度を養うことができ
るようにする。
ボランティアや福祉問題についての理解を深めながら,社会全体が支え合って
生きていくことの大切さを考えることができるようにする。
老人ホームで働く方々の姿や思いに触れ,人のために働くことや社会貢献の意
義を感じることができるようにする。
自己
表現
人間
関係
○
他者
理解
将来
設計
職業
理解
○
○
○
○
○
○
○
図3 単元指導計画「わたしとボランティア」単元のねらいとキャリア諸能力との関連
(2) 教科・領域との関連を図った指導の工夫
児童の学習への意欲や興味・関心を高めたり,学習を深めたりするために,事前・事後の指導や教
科,
道徳及び学級活動などと関連付けながら指導に当たる。
具体的な指導の系統は次のとおりである。
道
徳
主題名「困っている人のために」
・意欲の喚起
学級活動 題材名「ボランティアについて考えよう」
・問題の意識化
学びの深化
社
会
「わたしたちの
生活と食料生産」
「わたしたちの
生活と工業生産」
※働く人の思いを
想起させる。
総合的な学習の時間
単元名「わたしとボランティア」
第1次「老人ホームを訪問しよう」
第2次「福祉体験活動に取り組もう」
学びの深化
道
徳
「社会への奉仕」
学びの自覚・統合・深化
国
国
語
「マザー・テレサ」
語 振り返り作文
総合的な学習の時間
単元名「地域のためにできること」
道
徳
「本当の思いやり」
道徳「みんなのた
めに尽くす」
総合的な学習の時間
単元名「『働くこと』について考えよう」
図4 教科・領域との関連を図った指導の系統図
(3) 児童が感性を働かせるための指導の工夫(資料3 学習指導案「交流会の計画を立てよう」
)
体験を伴う学習で児童が感性を働かせて取り組む手だてとして「体験場面での指導・支援」と「体
験場面を充実させるための事前指導」が考えられる。
「体験場面での指導・支援」としては,体験時の児童の心情に寄り添い,心の動きに配慮したり,
- 14 -
価値ある対象に目を向けさせたりする手だてを講じることにより感性の働きが高まると考える。
また,
「体験場面を充実させるための事前指導」では,体験時に児童の感性が十分に働くような状態にする
ことが大切であると考える。
次の表は,
「体験場面を充実させるための事前指導」を例に,体験での児童の心の動きや感じ方が
どう変容し,その成果としてどのように深まっていくかを具体的に予想したものである。
表3 児童が体験場面で感性を働かせることにより期待される学びの深まり
はぐくみたい
心情や能力
相手のこと
を考え,思いや
る気持ちをは
ぐくむために
事
前
(感性の働きを高めるために)
交流会の内容を,相手に「喜
んでもらいたい」
「楽しんでも
らいたい」という思いで真剣
に考え,話し合わせる。
事
中
(感性を働かせた体験中の学び)
事
後
(期待できる効果)
交流会の場面で,相手の表情
相手を思いやる気持ちがより
や反応を気に掛け,相手の心情
養われ,他者を理解する能力も
や心の動きをより敏感に感じる
高められていくことが期待でき
ことができる。
る。
→ 自分たちの行為に対する相
手の反応を気に掛けるように
なる。
老人ホ ーム
の仕事やそこ
で働く人の思
いを深く理解
し,働くことへ
の認識を高め
るために
働いている方へのインタビュ
ー内容を事前に考えさせる。
→ その仕事をイメージし,仕
事内容やその苦労等を推察で
きる。また,自分なりの職業
観をもって体験活動に取り組
むことができる。
実際に自分で見たり,聞いた
その仕事の厳しさや働く人達
り,介護体験をしたりすること
の思いを強く感じ,学びをより
で,自分の想像が及ばなかった
深め,働くことに対する新たな
仕事の苦労や厳しさ,仕事に対
考え方や価値観がはぐくまれて
する意識の高さに気付くことが
いくことが期待できる。
できる。
※ 枠内は手だてを示す
以上のように,体験を伴う学習を行うに当たって,児童の感性の働きに着目して事前の学習を工
夫していくことにより,学びがより深まることが期待できる。
(4) 体験での学びを意味付けする事後の指導 −振り返りのためのワークシートの活用−
この単元「わたしとボランティア」の第2次小単元の振り返り場面で活用するワークシート(図5)
を例に説明する。
① ワークシート作成の意図と使い方
福祉体験活動を振り返って
5年 組 名前
ア 単元のねらい,児童が事前に立て
わたしはこ んな活動に 取り組みました !
ためあてや計画に対し,児童自身が
どのようなことを考えながら,どの
ように取り組んでいったかを振り返
活動を通しての学びを振り返る中
らせる。
で,人のために役立つ喜びややりが
い,働くことの苦労などについて考え
イ 児童に感想や反省をワークシー
させたい。
※ 「他者理解能力」「人間関係形成
能力」など
トにまとめさせ,互いに発表させる
ことで,いろいろな考え方に触れさ
活動の成果だけでなく,めあてに向かって努力することや協
力して活動すること,自分の責任を果たすことなどの意義をど
せ,児童のものの見方や考え方を広
のように感じ取っているかを表現させたい。
※「向上心」「人間関係形成能力」「職業理解能力」など
げさせる。
ウ 学習後は教室掲示物として活用
し学びの広がりや深まりを期待する。
なお,この単元終了後に国語科の「書
自己肯定感,自己有用感を味わう
ことができるように励まし,次の活
動への意欲化を図る。
くこと」の学習と関連させ作文を書かせ
また,自らの成長に気付けない児
童に示唆したり,実感させるための
ることで,児童が学習を再確認したり,
アドバイスをしていく。
吹き出し内は設問の意図,※はこの設問で把握したいキャリア諸能力を示す。
深めたりしながら内面化を図っていくこ
とができるようにする。
図5 ワークシート「福祉体験活動を振り返って」
総合的な 学習の時間
小 単元「福祉体 験活動に取り組 もう」
この活動に取り組んで みて 感じ たこ とや気づいたことなどをまとめてみましょう。
(「やりが いを感 じた こと」「喜 びを感 じた こと」「苦 労したこ と 」「新たに 発見したこ と」など )
今回の活動の充実度は?
すごく充実
けっ こう 充実
先生から
- 15 -
もう 少しがんばれた
もっともっとがんばれた
また,事後の道徳や総合的な学習の時間の学びに生かすことができるように,体験の意味付けを
図る。
② 考えを深めさせたり,新たな気付きを促したりする教師の働き掛け
教師の助言が児童の成長に大きく影響することを自覚し,児童のキャリア発達を支援するという
立場で児童の変容や成長を共感的に理解することが大切である。
ア 児童が自己肯定感や自己有用感をもち,何事にも前向きに取り組む意欲を喚起できるように
助言をする。
イ 優れた気付きや考え,学びに対し,アンダーラインを引き,コメントを記入して賞賛する。
ウ より深く考えさせたい内容に,アンダーラインを引いて,
「どんなふうに感じましたか」
「ど
うしてだと思いますか」「このことをあなたはどう考えますか」などと問い掛けることで,児
童に新たな気付きを促す。その際は,アンダーラインの色を変えるなど工夫する。
(5) 自らの変容や成長を実感させる指導
特別活動,道徳,総合的な学習の時間等で記録したワークシートや各活動における感想文等,ポー
トフォリオとして集積させたものを活用する。
学級活動の年度末の題材である「5年生の反省と6年生に向けて」の学習で活用するワークシート
「1年間を振り返って」(図6)を用いて指導に当たる。ここでは先に示したワークシート「福祉体験
活動を振り返って」(図5)を始め,学級活動,道徳,総合的な学習の時間など,表2のポートフォリ
オの欄で網掛けした項目のワークシートを基に,次の視点で振り返らせる。
① 高学年になり,学校のリーダーとして前
1 年 間 を 振 り 返 って
向きに活動できたことを実感させること
5年 組 名前
により,自己肯定感や自己有用感を味わわ
「できるようになったこと」「よくなっ
せる。
たこと」などに着目させ,自己肯定感や自
己有用感を高める。
② ワークシートや学習の記録,作文等のフ
※ キャリア諸能力との関連を探る。
ァイルを準備させ,振り返りの視点(図6
ワークシート「1年間を振り返って」の吹
将来の生き方や職業にかかわることについて考
えたことを整理させ,自分の将来への夢や希望,
き出し)を具体的に助言し,自分を見つめ
憧れを抱くことができるようにする。
※ キャリア諸能力(「将来設計能力」「職業理
解能力」等)との関連を探る。
させる。
今後のめあてとなるよう
なことを書かせ,意欲の喚
③ 自分自身を素直に見つめさせ,その結果
起を図ることができるよう
に指導に当たる。
として自らの成長を実感し,今後の生活へ
の意欲を喚起できるように指導に当たる。
なお,家庭からのコメント欄を設けることに
励ますことを第一に考え,コメントす
児童の成長を家庭でも実感
より,学校と家庭が児童の変容や成長について
る。自分の成長や変容に気付けない児童
しながら励まし,援助してい
や自分に自信がもてない児童の支えとな
けるようにする。
るような助言をする。
の情報を共有し,連携を図りながら支援してい
吹き出し内は設問の意図,※はこの設問で把握したいキャリア諸能力を示す。
くことができるようにする。また,自分の変容
後期もいろんな行事などで活躍できたことも多かったと思います。
「がんばれたこと。
」
「できたこ
と。
」
「できるようになったこと。」
「自分も変わってきたな。」と思えることなどを,これまでのふり返
りシートや作文などを見ながら,自分をふり返ってみましょう。
ボランティア活動や職場見学なども体験しました。これらの活動を通し,自分の将来のことについ
て,どんなことを感じたり,考えたりしましたか。
6年生に向けての自分に,応援メッセージを贈りましょう!
おうちの人から
先生から
図6 ワークシート「1年間を振り返って」
や成長に気付くことができなかったり,自分に
自信がもてなかったりする児童には,自己を肯定的にとらえられるような励ましの助言をする。
4.4.3 評価の実際
学期ごとの振り返りのためのワークシート(
〈例〉図6「1年間を振り返って」
)や,学級活動,道
徳及び総合的な学習の時間等,これらの教科・領域で記録したワークシートや感想文等を活用しなが
ら総合的にポートフォリオ評価をしていく。この評価で活用する主な学習活動とワークシート,感想
文等は次の表4に示したとおりである。なお,ポートフォリオ欄内の白抜きで示したワークシートや
感想文等は学年,校種を越えたポートフォリオとして「キャリアファイル」に蓄積していく。
(1) 児童の変容や成長の評価
学習時の観察と4.4.2(5)で述べた自らの変容や成長を実感するために用いたワークシートや感
- 16 -
想文等を基に総合的に評価する。児童の記録内容から読み取る従来どおりの学習評価に加え,キャリ
ア発達課題に対する達成状況を確認するという観点でも,児童がどのようなことを学び,どのような
変容や成長があったのかを学期ごとに評価する。
また,ワークシートに表現された言葉だけに頼らず,児童の表現意欲や文章力等を十分に考慮し,
児童の実態に合わせ,必要に応じて事後の対話等を行いながら補完していく。
(2) 指導やプログラムの評価
児童がワークシート等に表現した児童の記録や,教師が児童の学習の様子を観察して感じたこと,
アンケート結果の考察,児童の記録,教職員間の情報交換などに基づき総合的に判断する。
これまでは一般的に,指導の改善のための評価は,学習内容の定着状況や学習活動の観察,児童と
教師の事後アンケートなどを基に行ってきた。これらに併せ,(1)の評価内容を基に,児童のキャリア
発達を支援できたかという視点でも評価していくことが必要となる。
「自己肯定感が高まっているか」
「自分のよさの理解が深まっているか」
「人とかかわることの大切さを感じ取っているか」
「将来の生
き方や職業に対する考え方が深まっているか」など,発達段階に合わせた具体的な視点をもって評価
に当たり,指導計画やその学年のキャリア教育プログラムの改善に反映していく。
表4 ポートフォリオ評価のための学習題材,単元等一覧
学級活動
内容
新学期のスタート
前 下学年のお世話を振り返ろう
自然体験学習を振り返って
期 ボランティアについて考えよう
前期をふり返って
サイコロトーキング
男女で協力しよう
6年生から学ぼう∼引き継ぎ式∼
後
学
期
ポートフォリオ
ワ 作
ワ
ワ
ワ
ワ 作
ワ
ワ
ワ
期
5年生の反省と6年生に向けて
道徳
内容
夢を実現するために
友達のために
困っている人のために
社会への奉仕
公平な心
役割を果たす
希望を持って
男女が理解し合う心
本当の思いやり
困った人の身になって
広い心で
みんなのために尽くす人
責任を果たす
高い目標に向かって
ポートフォリオ
ワ
ワ
ワ
ワ
ワ
ワ
ワ
ワ
ワ
ワ
ワ
ワ
ワ
ワ
総合的な学習の時間
内容
ポートフォリオ
学校行事等
内容
ポートフォリオ
運動会
ワ 作
自然体験学習
作
学習発表会
6年生を送る会
わたしとボランティア
老人ホームを訪問しよう
福祉体験活動に取り組もう
ワ ワ 作
働くことについて考えよう
ワ 作
ワ 作
ワ
ワ 作
(※ 詳細は表2「小学校 第5学年 キャリア教育プログラム」参照)
4.5 キャリア教育の推進に向けて
4.5.1 自校化を図るということ
各校において,キャリア教育を導入するには,キャリア発達について理解し,その視点から,児童
生徒を取り巻く状況について把握する必要がある。その上で,児童生徒が現在,各教科・領域におい
て学んでいることを児童生徒自身が社会の中で自立して生きていくための情意,能力,価値観へと統
合していくことができるように支援していかなければならない。そのためには,現在の教育活動が児
童生徒のキャリア発達にとって,どのように生かされるのかという視点で見直すことが必要となる。
そして,教師自身がそれぞれの教科・領域の学習が児童生徒の将来にどのように生かされるのかとい
うことを踏まえて支援を行うことである。それは,現在,各校において学校や地域の特色を生かし編
成している教育課程を,児童生徒のキャリア発達を支援するという視点から,もう一度見直していく
ことであり,学校教育と現在の社会,そして,児童生徒が社会人として生きていく将来の社会を結び
付けていくことに他ならない。そのために,学校や学年を越えた系統性や教科・領域の枠を越えた関
連性を図ったり,必要であれば,新たな活動を設定したりしていくことになる。
本項では,キャリア教育の導入に向けた初年度の取組の手順や要点を示し,各校の児童生徒の実態
や地域の特色を生かしたキャリア教育の実践の一助としたいと考える。また,児童生徒のキャリア発
達は,学校全体の共通理解を図るとともに家庭や地域と連携して実践することで,より促されるとい
うことをぜひ踏まえておいてほしい。
- 17 -
4.5.2 キャリア教育の自校化の手順(例)
(1) 導入のための計画の立案
キャリア教育を導入するための見通しや手順など,学校全体にかかわる計画を立案する。導入の1
年目は図7(1)から(6)のような流れが考えられる。これを基に,実態に応じた計画を立案する。この
段階は,学校全体への導入の段階なので,教務主任,研究主任,進路指導主事などが推進役となり進
めることが望ましい。そして,運営委員会や職員会議等,学校運営にかかわる会議の中に,キャリア
教育の視点からの議題を設けて教育課程を見直したり,学年部会を始めとする各部会や委員会等で常
に情報を交換したりすることにより,学校全体で連携を図りながら進める。また,教育課程全体で,
児童生徒のキャリア発達を支援するためには,教育計画の中に「キャリア教育」に関する計画を位置
付けることも必要となる。
(2) キャリア教育に関する共通理解
キャリア教育とはどのようなものなのか,キャリア発達の概念などについて理解する。そして,そ
の実践に向けて,
「4.4 キャリア教育プログラムにおける指導と評価の実際」で示したように実践
の方法について,共通理解を図る。なお,実践と並行しながらキャリア教育についての理解を深めて
いくという視点が大切である。
(3) 児童生徒の実態の把握
実践に向けて,学年部会などで,学級や学年の児童生徒のキャリア発達の状況をとらえる。最終的
には,一人一人について把握することが求められるが,この段階では,学級や学年の傾向を全体とし
て把握することが必要である。そうすることで,学級や学年として,児童生徒がキャリア発達のどの
段階にあるのか,重点をおいてはぐくみたいキャリア諸能力はどれかなどについて共通理解を図り,
指導に生かすことができる。また,ここで把握した情報は,今年度の実践後に把握する児童生徒の実
態把握結果と比較していくと,児童の変容や成長が明らかになり,指導やプログラムの効果を検証す
る視点としても活用できる。そして,そこで見えてきた課題が,2年目以降に向けた計画の改善の方
向性を決める貴重な資料となる。
(4) 指導の実際
実態を基に目標を設定し,その達成に向けてどのような活動を行うかなど,具体的な指導の構想を
立てる。特に体験を伴う学習においては,教科・領域と関連付け,事前・事後の指導の充実を図る。
次に各活動の目標とキャリア諸能力の関連をとらえ,
具体的な指導や支援の手だてを考え,
実践する。
年間指導構想等については,
「4.4.キャリア教育プログラムにおける指導と評価の実際」を参照の
こと。
(5) 指導やプログラムの評価と改善
内容や指導方法等について,児童生徒のキャリア発達の状況の評価を基に検討する。ここでは,学
年ごとの評価や検討にとどまることなく,学校全体でも行い,プログラムの関連性や系統性について
も検討することが必要である。詳細については「4.3 キャリア教育における評価について」
「4.
4 キャリア教育プログラムにおける指導と評価の実際」を参照のこと。
(6) 次年度の計画・整備
2年目以降は,1年目の実践を基に,各校の児童生徒の実態を踏まえて,キャリア諸能力やキャリ
ア発達課題を見直し,教科・領域の関連を図ったり,学年間の系統を付けたりし,全体計画や学年の
年間指導構想をより具体的なものにしていく。
また,キャリア教育の目的を理解してくると,学校間や家庭,地域との連携の必要性や意義につい
ても理解が深まると思われる。家庭や地域の教育力を高めていくことが,児童生徒のより一層のキャ
リア発達を促すことにつながるので,これらについても,整備していくことが必要である。
なお,これらについての詳しい資料は「みやぎキャリア教育プランホームページ」にて公開してい
るので参考にしてほしい。
- 18 -
(1) 導入のための計画の立案
〔
4月
〕
(2) キャリア教育に関する共通理解〔4月∼5月〕
(3) 児童生徒の実態の把握
〔5月∼6月〕
(4) 指導の実際
〔7月∼11 月〕
2年目へ
(5) 指導やプログラムの評価と改善
〔12 月∼1月〕
(6) 次年度の計画・整備
〔2月∼3月〕
〔
〕内は,1 年目の目安となる時期
図7 キャリア教育の自校化に向けた取組の流れ(例)
4.5.3 家庭,地域,関係諸機関との連携・協力の在り方
児童生徒のキャリアの形成には,一人一人の成長・発達の過程における様々な経験や人との触れ合
いなどが総合的にかかわってくる。キャリア教育を推進するに当たっては,学校が児童生徒の生活時
間の多くを占める家庭と積極的にかかわりをもち,共に連携・協力を図りながら進めることが重要で
ある。また,産業構造の変化等についても,事業所の担当者から学んだり,情報交換をしたりするな
ど,関係諸機関との連携・協力が必要となってくる。
このように,学校と家庭,地域がパートナーシップを発揮して,互いにそれぞれの役割を自覚し,
一体となった取組を進めることがますます重要となる。
地域の教育力を活用した体験活動として現在推進されているものに,職場見学や職場体験,インタ
ーンシップ等の職業的体験学習がある。平成 16 年度現在,全国公立中学校の約 90%,同じく全国の
全日制高等学校の約 60%が,それぞれ職場体験やインターンシップを実施しているとの調査結果があ
る。これを効果的な体験学習とするためには,学校,地域社会及び事業所そして家庭のそれぞれが体
験学習のねらいやその教育的な効果を共有し,児童生徒の指導に当たることが重要となる。職業的体
験学習を通して,児童生徒は,仕事に従事する人たちの姿を見つめ職業の実務に触れながら,働くこ
との意義や社会の構成員としての役割を感じ取る。それは,望ましい勤労観や職業観をはぐくんでい
くことにつながると考える。また,職業的体験学習のねらいの達成に向けた学校,地域社会,家庭の
三者の連携により家庭や地域の教育力の再生が図られるなど,その意義や期待される効果は枚挙にい
とまがない。
しかし,職業的体験学習が広がりを見せるとともに,学校と家庭,地域及び関係諸機関との連携・
協力の課題や問題点も明らかになってきている。この課題や問題に対し,改善のための具体的な方策
を以下に示す。
- 19 -
例1 学校と事業所・職場との連携
職業的体験学習を実施する際,学校と地域社会,各事業所との間で,体験学習のねらいの共通理
解を図ることが重要となる。この体験学習により「児童生徒に何を感じ取らせたいのか」
「何を学ば
せたいのか」
「どんな児童生徒に育てたいのか」などの学校としてのねらいを押さえた上で,各事業
所に理解していただく。このねらいを踏まえて,事業所とともに「児童生徒のためにできること」
や「児童生徒に伝えたいこと」などの具体的な方向性を決めていくことが大切となる。したがって,
「とにかく働くことを体験させてほしい」という依頼ではなく,
「お客様や職場の方々など,人との
かかわり方の大切さに気付かせてほしい」
「働くことの楽しさだけでなく,つらさや難しさも併せて
感じ取らせてほしい」
「普段目にすることの少ない裏方の仕事の大切さややりがいを伝えてほしい」
というように,より具体的な場面や内容を明らかにした体験となるように依頼する必要がある。こ
のように,両者がそのねらいを共有することにより,児童生徒の体験による学びをより効果的なも
のにするとともに,職場での体験が児童生徒のキャリア形成のために非常に有意義な経験となって
いくものと考えられる。
事業所・職場
ねらいの共有化
具体的な場面・内容の検討
小・中・高等学校
図8 職業的体験学習における学校と事業所・職場との連携の視点
取組に対する問題点として,現在,職業的体験学習を実施する多くの学校では,実施時期の決定や
受け入れ事業所の開拓及び確保を,各校の教員や保護者が独自に行っていることが多く,学校間の連
携や連絡調整,情報交換などはあまりなされてはいない。年々職業的体験学習の実施率の増加や実施
日数の長期化が進むにつれ,実施時期の重複により受け入れ事業所等の確保が困難になったりするな
どの問題が起きてきている。体験学習の意義を理解し学校教育や地域社会への貢献に寄与しようと協
力を惜しまない事業所等にとっても,時間的にも物理的にも協力が困難となることも起こりうる。
これらの問題を解決する方策を以下のように提案する。
例2 職業的体験学習連絡会議(仮称)の設置
市町村あるいは近隣地域における各学校の職業的体験学習にかかわる担当者による連絡調整の場
として職業的体験学習連絡会議(仮称)を設置し,時期や回数,話合いの内容等を検討し実施する。
ここでは,各学校の体験学習のねらいや期日,対象学年,参加人数,希望する職種や職場等の情報
を交換しその調整を図る。これにより,実施時期や人数の調整だけでなく,同一の事業所への複数
の学校の児童生徒の体験学習の可能性を探ることもできる。またこの会議では,保護者や地域にお
ける企業や事業所はもちろん,商工会議所,農業協同組合などの経済団体や市町村や教育委員会,
ハローワーク,警察署,消防署,郵便局,保健所などの関係する各行政機関や公共機関の代表の方々
に参加いただく機会も設ける。事業所にとっての負担感を少しでも軽減し,職業的体験学習のねら
いを伝えて理解をいただき,より一層の協力を得られるようにしていきたい。
市町村教育委員会
行政機関
A小学校
公共機関
農業協同組合
B小学校
職業的体験学習に関係する
情報交換・調整
商工会議所
C中学校
D中学校
E高等学校
図9 職業的体験学習連絡会議(仮称)
- 20 -
例3 市町村教育委員会からの支援
同一地区にある複数の小・中・高等学校が職業的体験学習を実施するに当たり,限られた地域内
の事業所へそれぞれ独自に協力を依頼することにより,同一事業所に複数の学校から申し込みが集
中することも考えられる。協力の依頼や受け入れの可否についての打診,返信文書発送事務,教員
や生徒からの幾度にも渡る連絡への対応など,事業所に負担感や多忙感を与えてしまうことは否め
ない。これらを緩和させるためにも,できれば,市町村教育委員会から支援をいただきながら,連
絡調整の窓口として事務連絡等を一括して取り扱う組織や機関があることが望ましい。
4.6 みやぎキャリア教育プランホームページ
キャリア教育に対する関心の高まりとともに,実践に向け参考になる資料がほしいといった要望が
聞かれるようになってきた。この求めに応じて,県内各校におけるキャリア教育の実践に向けた一助
となるように,研究内容や研究成果をより活用しやすい資料として提供することが必要であると考え
た。そこで,その方策の一つとして「みやぎキャリア教育プランホームページ」を作成し,本キャリ
ア教育プランを紹介する資料や実践のための指導案,ワークシート等を提供していくこととした。作
成に当たっては,資料4のような構成とし,キャリア教育の基本的な理解から実践まで,それぞれの
要望にできるだけ対応できるように配慮した。また,指導案等については,授業展開のポイント等を
示すことに重点をおき,これを基に各校において児童生徒の実態に合わせたり,学校の特色を生かし
たりした実践につながるようにした。
5 キャリア教育の展望
キャリア教育は,児童生徒一人一人の全人格の成長・発達を促し,自立を目指したものである。そ
してキャリア発達の視点に立って,今行っている活動を見つめ,何ができるかを問い,見直していく
教育である。本研究では,その過程で,児童生徒に人間関係形成能力や自己表現能力を始めとするキ
ャリア諸能力はもとより,情意,価値観,さらに感性をはぐくんでいくことが重要であると考えた。
そして,そのための体験・学び・実践の有効な手だてを模索してきた。また,キャリア教育を推進す
るに当たり,小・中・高等学校の校種間の連携や社会との連携の重要性にも着目してきた。
生きる力そのものとも言える自立を目指すキャリア教育が,学校教育の中で,今後必ずその中核を
なすものになることは,多くの先生方が感じている。これは,各種研修会に参加している先生方の言
葉からも,うかがい知ることができる。しかし,多くの教育的課題が存在し,その解決に向けて日々
努力している学校現場において,キャリア教育の視点から教育活動全般を見直すことは,なかなか容
易なことではない。確かにキャリア教育は万能薬ではない。しかし,教育課題の解決に向けて大きな
可能性をもっていることも事実である。この 12 年間を見据えたキャリア教育の実践は,必ずや児童生
徒一人一人の心の中にある自立の種を芽生えさせるものになると考える。ぜひ県内の多くの小・中・
高等学校で実践されていくことを望む。そして,この研究がそのための一助になれば幸いである。
- 21 -
主な参考文献
[1] 中央教育審議会:青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等について
[2] 国立教育政策研究所生徒指導センター:児童生徒の職業観・勤労観を育む教育の推進に
について(調査研究報告書)
[3] 文部省:中学校・高等学校進路指導の手引 −進路指導主事編−
[4] 文部省:中学校・高等学校進路指導の手引
体験的・探索的な学習を重視した進路指導 −啓発的経験編−
[5] 文部科学省:体験活動事例集 −豊かな体験活動の推進のために−
[6] 文部科学省:小学校学習指導要領(一部改訂)
[7] 文部科学省:中学校学習指導要領(一部改訂)
[8] 文部科学省:高等学校学習指導要領(一部改訂)
[9] 文部科学省:キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書
[10] 文部科学省:義務教育の構造改革(中央教育審議会答申の概要)
[11] 文部科学省:中学校職場体験ガイド
[12] 文部科学省:小学校・中学校・高等学校 キャリア教育推進の手引
−児童生徒一人一人の勤労観,職業観を育てるために−
[13] 文部科学省:中等教育資料 1月号 −特集 キャリア教育−
ぎょうせい
[14] 人間力戦略研究会:人間力戦略研究会報告書
[15] 宮城県教育委員会:宮城県学力向上推進プログラム
[16] 兵庫県教育委員会:
「トライやる・ウィーク」5年目の検証(報告)
[17] 兵庫県教育委員会:平成 17 年度 地域に学ぶ「トライやる・ウィーク」のまとめ
[18] 石渕裕則:学校行事を活用したキャリア教育導入の工夫 −系統的なキャリア指導案
の作成と実践を通して−
群馬県総合教育センター
[19] 栃木県総合教育センター:キャリア教育の視点を生かした進路指導の工夫・改善に関
する参考資料
[20] 大阪におけるキャリア教育推進委員会:大阪におけるキャリア教育推進プラン
[21] 江原美明,附柴 聡:児童・生徒のボランティア活動当社会報誌・体験活動等の推進
に向けた研究 −豊かな人間性や社会性を育むことを目指した新たな取組に向けて
<実践報告>−
神奈川県立総合教育センター研究集録 25
[22] 東京都:平成 17 年度 中学生の職場体験報告書「わくわくWeek Tokyo」
[23] 労働政策研究・研修機構:新版 職業レディネス・テスト及びその手引
[24] 内藤勇次:生き方の教育としての学校進路指導−生徒指導を踏まえた実践と理論−
北大路書房
[25] 山口満編著:子どもの生活力がつく「体験的な学習」のすすめ方
学事出版
[26] 高橋史朗編:感性・心の教育(全5巻)
明治図書
[27] 仙 武,野々村新,渡辺三枝子,菊池武剋:入門進路指導・相談
福村出版
[28] 渡辺三枝子,大庭さよ,岡田昌毅,黒川雅之,中村 恵,藤原美智子:
キャリアの心理学 −働く人の理解<発達理論と支援への展望>− ナカニシヤ出版
[29] 岡田陽:なぜいま学校で「表現教育」なのか?
−子どもにとっての芸術の意味−
芸団協出版部
[30] 三村隆男:キャリア教育入門 その理論と実践のために
実業之日本社
[31] こどもくらぶ編:だれにもわかる「キャリア教育のテーマ50」
学事出版
[32] 青山鉄平:体験活動における「体験」概念の原理的検討
国立オリンピック記念青少年総合センター研究紀要第6号
[33] 日本進路指導協会:進路指導 第 79 巻
[34] 吉田辰雄編著:最新 生徒指導・進路指導論
−ガイダンスとキャリア教育の理論と実践−
図書文化
[35] 日本教育評価研究会:指導と評価 −特集 キャリア教育−
図書文化
[36] 平成 17 年度宮城県教育研修センター専門研究員:
「教育相談に関する研究」
[37] 平成 17 年度宮城県教育研修センター専門研究員:
「進路指導に関する研究」
- 22 -
2002
2002
1977
1984
2002
2003
2003
2003
2004
2005
2005
2006
2007
2003
2005
2003
2006
2005
2004
2005
2006
2006
2006
1991
1999
1999
2000
2003
2003
2004
2005
2006
2006
2006
2006
2006
2006
資料 1
「みやぎキャリア教育プラン」で設定したキャリア発達課題
低学年
キャリア発達の段階
キャリア発達の目標
小学校
中学年
中学校
高学年
進路の探索・選択にかかる基盤形成の段階
・自己への積極的関心の形成・発展
・他者への積極的関心の形成と人間関係の醸成
・身のまわりの仕事や環境への関心・意欲の向上と夢や希望及び
憧れる自己イメージの獲得
・勤労を重んじ目標に向かって努力する態度の育成
キャリア発達に関する6能力
自己理解
能力
自己表現
能力
人間関係
形成能力
他者理解
能力
高等学校
前半(1年・2年前期)
後半(2年後期・3年)
現実的探索と暫定的選択の段階
前半(1年・2年前期)
後半(2年後期・3年)
現実的探索・試行と社会的移行準備の段階
・肯定的自己理解と自己有用感の獲得
・他者理解の深化と望ましい人間関係の醸成
・生き方や進路に関する現実的探索,進路計画の立案と暫定的選択
・興味・関心等に基づく勤労観・職業観の形成
・自己理解の深化と自己受容
・他者理解の深化と広がり,望ましい人間関係の形成
・進路の現実吟味と試行参加,将来設計の立案と社会的移行の準備
・選択基準としての勤労観・職業観の育成
6能力でとらえたキャリア発達課題(具体目標)
自己の個性・能力・ ・自分の好きなこと ・自分のよさを 見付 ・自分の長所と短所が分 ・自分の個性や能力について理解 ・自己の個性や能力について理解を深め
かる。
る。
する。
適性感性を理解し, や好きなものが言 ける。
・自分の興味・関心の傾 ・自己と他者の物事に対する感じ ・自己の適性について理解する。
自己分析を通して内 える。
・自分のよさを大切
向に気付く。
的な深化を図る能力
にしようとする。 ・自分らしさを大切にす 方やとらえ 方の違い について理 ・自己の感性や価値観を客観的に見つめ
る。
解する。
る。
・自己の能力・適性・感性について理解し, ・自己の能力・適性・感性について理解を
深め,自己を伸ばそうとする。
自己を伸ばそうとする。
・他者とのかかわりを通して,自己の考え ・他者とのかかわりを通して,自己の考え
方を,広げたり深めたりする。
を広げたり深めたりしようとする。
・生き方在り方にかかわる自分の価値観を ・生き方在り方にかかわる自分の価値観
の認識を深める。
認識する。
自 分 の 考 え や 感 じ ・友達の前で大きな
方,感情を伝えるた 声で発表したり,
音読したりする。
めに,豊かに表現す
・進んで発表する。
る能力
・自分の考えを 相手 ・自分の考えを相手に分 ・集めた情報をもとに伝えたいこ ・自分の考えを伝えるために必要な情報
かりやすく伝える。
に伝える。
を集め,活用する。
とをまとめ,発表する。
・意見を人前で 発表 ・意見を進んで発表する ・自分の考えを聞き手に分かりや ・聞き手を説得できるように,論理的に
ことの大切さが分かる。 すく説明する。
する。
説明する。
・考えや意見を他者に伝えること ・考えや意見を的確に伝えるために,表
現を工夫する。
の大切さが分かる。
・情報を吟味し,それに対する考えや意見 ・情報を吟味し,それに対する考えや意見
を論理的・効果的に説明する。
を論理的に説明する。
・様々な表現の仕方や効果を考え,適切な ・様々な表現の仕方や効果を理解し,適
切に表現する。
方法で表現する。
・自分を表現する。ことの喜びを知り,
・自分を表現することの喜びを知る。
豊かに表現しようとする。
集団・組織の中でコ ・みんなと仲良く遊
ぶ。
ミュニケーションを
・ 友 達 に 親切 に す
図り,豊かな人間関 る。
係を築いていく能力 ・大きな声であいさ
つする。
・お礼を言う。
・友達と協力する。 ・男女分け隔てなく,協 ・コミュニケーションを通して, ・相手に配慮しながら,積極的にコミュ
人間関係を 広げたり 深めたりす ニケーションを図り,よりよい人間関
・思いやりの気持ち 力して活動する。
係をつくる。
をもって接する。 ・相手を思いやり,より る。
・集団の中での立場を自覚し,互 ・集団や組織の中での立場を自覚し,全
・進んであいさつす よい関係をつくる。
体の協力関係をつくれるようにする。
・時と場に応じたあいさ いの協力関係をつくる。
る。
・集団生活のマナーを身に付ける。・社会生活のマナーを身に付ける。
つをする。
・様々な環境の中で豊かな人間関係を築く
・リーダーシップ・フォロアーシップにつ
いて理解し行動する。
・互いに支え分かり合える友人をつくる。
・社会生活のマナーを踏まえて行動する。
・多様な他者と,場に応じた適切なコミ
ュニケーションを図り,豊かな人間関係
をつくる。
・リーダー・フォロアーシップを発揮し
て,互いの能力を引き出すような関係を
つくる。
・社会生活のマナーを踏まえて行動する。
互いを認め,尊重し ・友達のよいところ
合うために,他者の に気付く。
・困っている人に気
個性や価値観を理解
付く。
する能力
・相手の親切な言動
に気付く。
・相手のよさを認め ・友達の考え方や心情を ・他者の長所を理解する。
・他者の個性を理解し,尊重する。
る。
・意見や自分への助言等を通して,・他者の意見や助言等を理解し,それを
理解し,尊重する。
・友達の気持ちを理
受け入れる。
・人の優しさや思いやり 他者の考えを理解する。
解しようとする。
・
他者の感性や価値観を理解しようとす
・他者の感情の変化に気付く。
・親切な言動に感謝 を理解する。
る。
の気持ちをもつ。
・他者の価値観や個性を理解しそれを受け
入れる。
・他者の意思等を的確に理解する。
・他者の生き方について理解を深める。
・他者の価値観や個性を理解し,それを
受け入れて尊重する。
・社会人としての他者の生き方について
理解を深める。
将来の生き方を思い
・将来「やってみ
描き,社会の現実を
たい」
「…になりた
踏まえながら,将来
い」という思いを
・日常の生活が将来 ・将来のことを考える大 ・情報をもとに,将来の夢や希望 ・将来の夢や希望を具体的に思い描き, ・自分の生き方在り方について考えを深
その実現までを見通して進路計画を めながら,興味・関心・適性に応じた進
を思い描く。
の 生 き 方 へ と つ な 切さが分かる。
路について,可能性を検討する。
が っ て い る こ と を ・将来の生き方や職業に,・将来につながる進路について, 立てる。
・当面の進路や学習を主体的に選択する。
・進路の決定に向けての課題を自覚し,
具体的に考える。
知る。
夢や希望,憧れを抱く。
・進路計画に基づいて,今取り組むべき課
・進路の決定に向けての自分の課 その解決を目指す。
・将来の生き方や職
題について,具体的に考える。 ・進路に関する情報と自己の能力・適性 題を明確にし,その解決策を見付ける。
業に関心をもつ。
を総合的に考え,進路を選択する。
将来設計 を計画し,選択・決 もつ。
能力
定していく能力
学校と社会・職業生
活の関連の中で,働
くことの意義や,役
職業理解 割などについて理解
能力
を深めていく能力
向上心
・係や当番の仕事に
取り組む。
・家族 の仕 事を知
る。
・係や当番活動の大 ・係や委員会活動の大切 ・様々な職業に就いて働いている ・情報や体験活動を通して職業の意義や
切さに気付き,進ん さが分かり,意欲的に取 人たちの様子や考えを知る。
働く人の思いを理解する。
り組む。
で取り組む。
・学校におけるきまりの意義につ ・社会における常識や規則の意義につい
・様々な職業がある ・様々な職業に取り組む いて理解する。
て理解する。
人に関心をもつ。
ことを理解する。
・役割を果たすことの大切さを理 ・社会における役割分担の意義と,個々
・職業は社会生活を支え
解し,進ん で自分の 役割を果た の果たすべき責任について理解する。
る 役 割 を も っ てい る こ
す。
とが分かる。
小学校
学習や生活のめあてをもち,その達成のために努力する
中学校
自己を向上させようと,進んで活動に取り組む
・就業体験等の進路に関する探索的・試行
的な体験に取り組み,社会の理解を深め
る。
・勤労や職業に対する多様な考えについて
理解し,認識を深める。
・学校や社会において自分の果たすべき役
割を自覚し,積極的に果たす。
・社会規範を踏まえて行動する。
・社会において,働くことを通した自分
の生き方在り方について,考えをもつ。
・将来についての総合的・現実的な理解
に基づいて,進路を主体的に選択・決定
する。
・進路希望の実現を目指す上で,とらえ
た課題を解決していく態度やスキルを身
に付ける。
・職業生活における権利・義務・責任を
理解し,社会人としての心構えをもつ。
・ライフステージに応じた学びの必要性
について理解する。
・社会規範を踏まえて行動する。
高等学校
よりよい生き方や在り方を求め,自己を向上させようと進んで活動に取り組む
資料2
小学校 第5学年 総合的な学習の時間 単元指導計画
わたしとボランティア
単元のねらいとキャリア諸能力との関連
自己
理解
ね ら い
老人ホームへの訪問活動を通し,相手を思いやる心情や態度を養うことができ
るようにする。
ボランティアや福祉問題についての理解を深めながら,社会全体が支え合って
生きていくことの大切さを考えることができるようにする。
老人ホームで働く方々の姿や思いに触れ,人のために働くことや社会貢献の意
義を感じることができるようにする。
自己
表現
人間
関係
○
他者
理解
将来
設計
職業
理解
○
○
○
○
○
○
○
単元の構想
道徳や学級活動の学習を,事前学習として本単元と関連付け,学習の意義付けをしていくことで学習効
果をより高めていけるようにする。第1次の学習において,老人ホームを訪問し,交流会を体験する中で,
人の役に立つ喜びを実感させ,自己有用感を味わわせながらボランティア活動に対する関心を高め,その
意義の理解を深めさせていきたい。そして,その体験活動を通して得た思いや気付きを生かして第2次の
小単元へとつないでいけるようにしたい。
この学習活動では,相手を思いやり,よりよく人とかかわる心情や態度,そこで働く方々の姿や思いに
触れさせることで「働くこと」や「将来の職業」についての考えを深めさせていくことができると考える。
これら一連の学習活動を通し,他者理解能力,人間関係形成能力,職業理解能力などのキャリア諸能力を
育成していきたい。
また,学習のまとめとしてワークシートや作文の記入により振り返らせる場面では,学習のねらいを踏
まえた振り返りの視点を与え,児童の考え方や価値観を高めていきたい。同時に,この活動を通じ,自ら
の変容や成長を実感させていきたい。
なお,これらの体験を通し,児童が多くのことを考え,学んでいけるようにするために,児童に気付い
て欲しいと願う内容や考えを深めさせたいことに対し,体験時に感性が働くような事前指導の在り方を工
夫していきたい。
教科・領域との関連
道
徳 主題名「困っている人のために」
・意欲の喚起
・問題の意識化
学級活動 題材名「ボランティアについて考えよう」
学びの深化
社
会
「わたしたちの
生活と食料生産」
「わたしたちの
生活と工業生産」
※働く人 の思いを
想起させる。
総合的な学習の時間
単元名「わたしとボランティア」
第1次「老人ホームを訪問しよう」
第2次「福祉体験活動に取り組もう」
学びの深化
道
徳
「社会への奉仕」
学びの自覚・統合・深化
国
語
「マザー・テレサ」
国 語 振り返り作文
道
徳
「本当の思いやり」
総合的な学習の時間
単元名「地域のためにできること」
道徳「みんなのた
めに尽くす」
総合的な学習の時間
単元名「
『働くこと』について考えよう」
単元指導計画(26 時間扱い)
主な活動内容
次 活動名
(【 】内はキャリア諸能力との関連)
第一次 ﹁老人ホームを訪問 しよう﹂
︽
オリエン
テーショ
ン
(1 時間)
交流 会 の
計 画 を立
てよう
(2 時間)
交 流会 の
準備 をし
よう(4 時間)
交流会を
しよう
1 教師の説明を聞く。
【他者理解】
2 知っていることややってみたいことな
どを話し合う。
【自己表現】
1 話合いをする。
(1) 交流会の内容
(2) 準備・役割分担
【自己表現】【他者理解】
2 老人ホームで働く人たちに聞いてみ
たいことを考える。
【職業理解】
1 準備をする。【職業理解】【人間関係】
2 リハーサルをする。
【自己表現】
1 交流会をする。
【職業理解】【自己表現】
【人間関係】【他者理解】
2 老人ホームで働く人達に尋ねたいこ
とを随時聞く。【職業理解】【他者理解】
(3 時間)
時間︾
11 交 流 会 を 1 ワークシートを使い,活動を振り返る。
振り返ろう
(1 時間)
学習課 題
を決めよう
第二次 ﹁福祉体験活動に取り組もう﹂
︽
(2 時間)
学習計 画
を立てよう
(2 時間)
調査・体
験をしよう
(5 時間)
学習 の ま
とめをしよ
う
(3 時間)
発表会を
しよう
【自己理解】
2 互いの感想を発表し合う。
【自己表現】【他者理解】
3 老人ホームで働く人達の姿から気付
いたことや感じたことを話し合う。
【職業理解】【他者理解】
4 ボランティア活動や老人福祉等を考
える。
1 自分たちができそうな身近なボランテ
ィアや福祉体験活動について考える。
2 互いの考えを発表し合う。
【自己表現】
3 自分が学習の見通しをもちながら,課
題を設定する。
1 各自で学習計画を立てる。
2 意見交換をする。
【自己表現】【他者理解】【人間関係】
調査・体験をする。
【自己表現】【職業理解】【人間関係】
《例》「ヘルパー体験」「独居老人訪問」
「キャップハンディ体験」など
1 調査・体験活動のまとめをする。
【自己理解】
2 発表方法を考える。
3 発表準備をする。
【自己表現】
1 発表会をする。
【自己表現】【他者理解】
2 互いに意見や感想を出し合う。
【自己表現】【他者理解】
時間︾
(2 時間)
15 学習活 動 1 ワークシートを使って活動を振り返
を振り返
ろう
(1時間)
る。
【自己理解】
2 互いに感じたことを発表し合う。
【自己表現】
3 社会福祉について感じたことや考え
たことを話し合う。
【自己表現】
4 人の役に立つことや働くことについて
考える。
【職業理解】
指導上の留意点
(感:感性を働かせるポイント)
教科・領域との関連
◇話合いを通して,訪問することへの 《事前学習》
関心を高める。
道徳「困っている人のために」
◇昨年の様子を6年生に聞くことも効 学級活動 「ボランティア活動
果的であることを助言する。
について考えよう」
◇互いに協力しながら活動できるよう
に内容や準備,役割分担等を話し
合わせる。
感相手に対する思いを強く抱かせるこ
とで,体験時に相手の言動や反応
に対する感性の働きを高め,心情を
感じ取れるようにする。
◇訪問を通して,老人ホームで働く人
たちの思いに触れさせる。
◇協力しながら準備させるとともに,当
日,自信をもって活動できるようにリ
ハーサルに取り組ませる。
◇自分たちが立てた計画に基づき,
互いに協力し合い,お年寄りを思い
やりながら交流活動をさせる。
◇見学や活動する中で気付いたこと
や感じたことを職員の方に随時質問
するよう事前に指導する。
◇交流会を振り返り,自分たちの活動 《関連学習》
の意義や成果を確かめ,満足感や 社会「わたしたちの生活と
自己有用感をもたせる。
食料生産」「わ たしたちの
◇感想を発表し合い,互いの学びを 生活と工業生産」
深めるとともに,認め合わせる。
※働く人の思いを想起
◇働く人の思いについて感じたことを
話し合わせ,考えを深めさせる。
《事後指導》
◇ボランティア活動や老人福祉につい 学級活動
て自分なりの考えをもたせる。
「前期を振り返って」
◇前小単元の活動を通して,自分なり 《関連指導》
に感じたり,考えたりしたことをもと 道徳「社会への奉仕」
に,ボランティア活動や福祉体験活
動に関する個人の課題を設定する。
◇児童が立てた課題に対し,実現の
可能性を適宜助言していく。
◇活動の見通しと課題意識をもって取
り組めるように助言する。
◇友達と意見や情報を交換させなが
ら,課題に対する意識を高められる
ようにする。
◇計画に基づき,意欲的に活動するよ
うに励ます。
◇安全等には十分留意させる。
◇自分が調査や体験した活動をみん
なにどのように伝えるかを考えさせ
ながら,自分なりの方法でまとめさせ
る。
◇調査・体験活動を,自信をもって分
かりやすく伝えるように励ます。
◇認め合う雰囲気を大切にしながら発
表会を行い,互いの体験を共有でき
るようにする。
◇学習活動を振り返り,様々な気付き
や友達の考え等をもとに,ボランティ
ア活動や社会福祉問題に対する自
分なりの考えをもてるようにする。
◇人の役に立つことへの喜びや満足
感,自己有用感を高められるように
励ましや児童相互の認め合いを大
切にする。また,進んでボランティア
活動に取り組もうとする実践への意
欲を喚起する。
《事後学習》
国語「作文」
学級活動「前期を振り返って」
《関連学習》
道徳「本当の思いやり」
「みんなのために尽くす人」
総合的な学習の時間
「地域のためにできること」
「『働くこと』について考えよう」
国語「マザー・テレサ」
資料3
小学校
第5学年
総合的な学習の時間指導案
交流会の計画を立てよう
交流会の内容や役割分担,準備計画等をみんなで話し合い,お年寄りに喜んでもらえるような交流会にし
ようとする意欲を高める。また,訪問する中で,そこで働く人たちの仕事内容や仕事に対する思いを感じ
取ることができるようにする。
キャリア諸能力育成の視点
他者理解能力
老人ホームで生活するお年寄りのことを考えた話合いができる。
自己表現能力
自分の考えや意見を相手に分かりやすく伝えることができる。
職業理解能力
老人ホームで働く人の仕事に対する思いを感じ取ることができる。
授業のポイント
この計画は,老人ホームで交流会をする学習に臨む児童の意欲を左右し,主体性を引き出すために
大切な学習活動である。交流会の内容を決める話合いでは,児童が祖父母や曾祖父母の様子などを思
い起こしながら,
「どんな交流会にすれば喜んでもらえるか」
「どんな活動が可能か」
「自分たちにでき
ることは何か」など,自由に意見交換をさせながら活動への意欲や思いを膨らませられるようにして
いきたい。また,老人ホームで生活するお年寄りの実態を踏まえながら,
「どんなことに配慮しなけれ
ばならないか」なども考えさせていきたい。これらの活動を通して,他者理解を深め,思いやりの気
持ちをはぐくんでいけるのではないかと考える。
準備や役割の分担等を話し合う場面では,グループ活動を基本としながらも,一人一人の役割を明
確にすることで,一人一人が自分の仕事に責任をもって取り組み,みんなで協力して会を成功させよ
うとする気持ちを高めていきたい。また,その結果,充実した会を創り上げたという経験をさせるこ
とが,満足感や自己有用感の獲得へとつながり,自己の成長を実感し,その後の学習や生活への意欲
を高めていくことができるものと考える。
また,老人ホームで働く方へのインタビュー内容を考える場面では,児童は主に介護の仕事をイメ
ージし,それに関連した質問等を考えるものと思われる。ここでは,あくまで児童がもつ介護などの
仕事のイメージで考えさせる。そして,体験活動を通して,
「介護」の仕事が想像以上に大変な仕事で
あることに気付かせ,働くということを深く考えていく学習へとつなげていきたい。
なお,本時の学習では,体験場面での学びの質を高めていくために,次のように児童の感性の働き
を高めていくことが有効であると考えた。
児童の感性を働かせる手だて
○交流会の内容を考える場面では,自分が人のために何かを行い,相手に喜んでもらったり,感謝
されたりして感じた充実感や自己有用感を想起させる。そして,そのときの感覚を思い浮かべな
がら,
「相手に喜んでもらいたい」
「相手に楽しんでもらいたい」という視点で交流会の内容を真
剣に考え,話し合わせることで,より相手の実態を考慮した内容を考えることができるようにな
ると考える。児童の喜んでもらいたいという強い思いは,交流会の場面で自分の行為が相手にど
のように伝わったのかを気に掛けるようになり,相手の表情や反応をより敏感に感じ取ることが
できるようになると思われる。ゆえに,その場面で感性の働きを高めて体験活動に取り組ませる
ことで,他者を理解し,思いやる気持ちがより養われていくことが期待できる。
○働いている方へのインタビュー内容を事前に考えさせることで,仕事内容やその苦労等を自分な
りに推察し,自分なりの職業観をイメージして体験活動に臨むことができると考える。また,そ
のイメージをもって体験活動に取り組み,実際に自分で見たり,聞いたり,介護体験をしたりし
たときに,初めに抱いていたイメージとは違い,自分の想像以上に大変な仕事であるというギャ
ップの大きさに気付き,鮮明な印象を残すものと考える。さらには,その気付きや実感が,仕事
の苦労や厳しさ,働く人の思い,仕事に対する意識の高さなどを強く感じ取り,働くことに対す
る自分なりの考えを深めていくきっかけになっていくことが期待できる。
資料3
学習過程
段階
課
題
の
意
識
化
(5)
課
題
の
学習活動(○:児童の反応)
指導上の留意点と評価(感:感性を働かせるポイント)
1 課題を意識する。
(1) 教師の話を聞く。
○前時までの学習の流れを確認
し,本時の学習課題を意識 す
る。
(2) 課題意識をもつ。
◇前時に予告し,どんなことができそうかを事前に考
えさせておき,自分の意見をもって学習に臨ませる
ことで,主体的に学習に取り組もうとする意欲を喚
起していく。
交流会の計画を立てよう
2 話合いをする。
(1) 交流会の内容について話し合
う。
①意見を出し合う。
○ゲーム,昔の遊び
○歌
○手品
○肩たたき など
②意見を絞り込む。
○車いすで生活している人が多
いので,座ってできることがい
い。
○お年寄りの人が知っている歌
や昔の遊びがいい。
○お年寄りに元気をあげられる
ような歌や踊りを発表しよう。
など
③意見をまとめる。
(2) 準備・役割分担について話し合
う。
追
究
・
解
決
3 インタビュー内容を考える。
(1) 仕事の内容を予想する。
○食事のお世話
○洗濯
○入浴のお世話 など
(2) インタビュー内容を考え,ノー
トにまとめる。
○具体的な仕事の内容
○大変だと思うこと
○やりがい
○この仕事を選んだ動機 など
(3) グループで紹介し合う。
※ 児童の反応は省略
表 自分の考えを分かりやすく発表することがで
きたか。
《観察》
他 お年寄りの実態を考慮しながら交流会の内容
を考えることができたか。
《観察》
◇基本的にはグループごとに準備や役割を分担する
が,グループ内で一人一人に役割をもたせることで,
共同意識や責任感をはぐくむとともに,主体的に活
動しようとする意欲を喚起したい。
◇なお,一人一人が責任ある仕事を分担し,それを誠
実に果たすことで充実した会を創り上げることがで
きたという経験をさせたい。そして,達成感や自己
有用感を味わい,自己の成長の実感や次の活動への
意欲につなげていきたい。
感老人介護や社会福祉に対して興味や関心をもつ児童
は少ないと考えられる。ゆえに,児童が「知りたい」
と心から願う質問項目を挙げさせるのは困難である
と予想される。そこで,事前学習では仕事の内容を
予想したり,勤務形態,仕事の苦労ややりがいなど
を質問項目として考えさせたりするにとどめ,仕事
の本質的な理解まではあえて求めないこととする。
そして,訪問時に自分が見たり,聞いたり,体験し
たりする中で,その仕事の厳しさやそこで働く人の
思いに気付いたり,感じたりできるようにすること
で,児童の心に深い印象が残るようにしていきたい。
◇互いの意見を紹介し,意見交換することで質問の質
を高めていけるようにする。
職 老人ホームで働く人の仕事の内容や様子を自
分なりにイメージし,インタビュー内容を考え
ることができたか。
《記録,観察》
(80)
総
括
(5)
◇自由に意見を出し合える雰囲気づくりに努める。
◇自由に意見を出させていくことで,学習活動への興
味・関心を高めていけるようにする。
感「喜んでもらいたい」という強い思いで真剣に話し
合うことで,交流時にお年寄りの反応に敏感になり,
他者の受容や理解をより深めることができるように
なると予想される。
◇お年寄りの実態を考慮しながら意見を絞り込んでい
くように助言する。
◇児童の祖父母や曾祖父母のことや,老人ホームで生
活するお年寄りのことで知っていることを出し合い
ながら,話合いを進めていくことで,相手の立場を
理解し,思いやる気持ちをはぐくんでいきたい。
4
次時の学習内容を確認し,学習
の見通しと意欲をもつ。
*
◇本時の学習活動の取組でよかったところをほめ,次
時の学習活動への期待や励ましの言葉を掛けること
で,意欲を喚起していく。
他:他者理解能力
表:自己表現能力
職:職業理解能力
資料4
「みやぎキャリア教育プランホームページ」サイトマップ
【トップページ】
みやぎキャリア教育プランホームページの紹介
【みやぎキャリア教育プラン】
みやぎキャリア教育プランに込めた願い(理念)
キャリア教育が求められる背景
進路指導とキャリア教育
勤労観,職業観を育てる教育
【キャリア教育って何?】
キャリア教育・キャリア
キャリア教育発達課題
キャリア諸能力
キャリア教育プログラム
体験を伴う学習
感性をはぐくむ
評価
【キャリア教育Q&A】
Q&A形式で,キャリア教育について説明
【はじめようキャリア教育】
校内研修の流れと資料のダウンロード
Step1(キャリア教育に関する共通理解)
Step2(児童生徒の実態の把握)
Step3(指導の実際)
Step4(指導やプログラムの評価と改善)
Step5(次年度の計画・整備)
【キャリア教育プログラム】
キャリア教育プログラム(小・中・高等学校)
年間指導構想(小・中・高等学校)
年間指導計画(学級活動,ホームルーム活動,道徳,総合的な学習の時間)
【指導案・ワークシート】 授業づくりのポイント
小学校
通年の指導(年間指導の構想・プログラム・指導案・ワークシート)
学級活動・道徳・総合的な学習の時間
中学校
通年の指導(年間指導の構想・プログラム・指導案・ワークシート)
学級活動・道徳・総合的な学習の時間・
高等学校
通年の指導(年間指導の構想・プログラム・指導案・ワークシート)
ホームルーム活動・総合的な学習の時間
職業的体験学習にかかわる系統的なプログラム例
【新着情報】→キャリア教育の動向や実践例の紹介など
【関連サイト・資料の紹介】