第九章 上六人部の常用語︵方言︶ 言葉は生活に必要な伝えごとであると思います。そ して地域によって都合よく相手に分りやすくしたもの だと感ぜられます。ということは言葉は生きているも のである。とくに近年の情報化社会や交通の利便化に よって広範囲に流布し、一地方の言葉であったもので も全国的に琉延して同化、 普遍化していることもある。 こ の 意 味 か ら す る と 高 度 の 情 報 化 社 会 に な っ た 今 日、 ﹁これが私たちの方言﹂であると言い切れることはな いであろう。 がいき︵風邪︶ がいる︵蛙︶ かしん︵菓子︶ かばち︵縁︶ かきばあ︵かきもち︶ かざ・かた︵くさい︶ かい︵粥 ︶ かいさま︵さかさま︶ おなめ︵牝牛︶ ねぶか︵葱︶ なわめ︵けものみち︶ なんどう︵なにか・おやつ︶ ながたん︵包丁︶ となだ︵戸棚 ︶ とます︵いたち︶ てしょう︵小皿 ︶ てのこぼ︵手の平︶ ちょんのう︵鉋=大工道具︶ ねき︵そば︶ ぬくそで︵懐手︶ とんのこ︵おにぎり︶ かばち︵端︶ がんど︵鋸︶ ぎぎた・ぎんた︵魚の一種 ︶ た﹂という意味で書き上げてみたい。 こくば︵落ち松葉︶ こおずき︵子供を背負う紐︶ ぐろた︵穴 ︶ こうこ︵沢庵︶ ばんげ︵夕方・夜︶ ひょかすけ︵ひょうきん者︶ はしっぽ︵片隅︶ きんのう︵昨日︶ ●名詞 こめんじゃこ︵めだか・小魚︶ 今は使われてないかもしれないが、私たちの幼いこ ろは、﹁日常的によく使い理解して生活に活用してい いちんぼ︵椎の実︶ ごっつおう︵ごちそう︶ びじょれ︵みぞれ ︶ ふくろび︵ほころび︶ のうしろ︵苗代 ︶ はしり︵炊事場・台所 いっけ︵親戚︶ こっとい︵雄牛︶ こばる︵我慢︶ ふなめ︵桑の実 ︶ へえこきむし︵かめ虫︶ せんば︵薪︶ べんちゃら︵お世辞・へつらい︶ はめ︵蝮︶ ばあ︵餅︶ いったんどり︵いたどり ︶ ごりんぽ︵ごり ︶ すきのこ︵つちのこ︶ おおかめはんぞう︵くわがた虫 ︶ たちかけ︵もんぺ ︶ だっちん︵おやつ︶ ぼり︵乾燥したご飯・干し飯︶ えんげ︵縁側 ︶ おいど︵お尻︶ いどこ︵竹で編んだ籠 ︶ うち︵わたし=女 ︶ うろた︵穴 ︶ せんち︵雪隠・便所 ︶ べこ︵仔牛 ︶ へっついさん︵家付き娘 ︶ おかあちゃん︵お母さん︶ たばこ︵休憩 ︶ だる︵下肥︶ おくどさん︵かまど・くど ︶ ほんま︵本当に︶ べんべこ・ぺんぺん虫︵蟻地獄︶ べべ︵着物・和服︶ おまい︵お前︶ ちょっかかり︵とっかかり︶ おとうちゃん︵お父さん︶ おんた︵動物の雄 ︶ もと︵もつ=魚の一種 ︶ みどこ︵溝︶ めんた︵動物の雌︶ ︶ みちのこえ︵無駄なこと︶ めいめいに︵個々に・自分自分で︶ しかまげる︵手間取る︶ しないな︵しなさいよ︶ こかす︵倒す︶ くりぶく︵しゃがむ︶ ぐずる︵ねだる︶ きばっとってんかい︵がんばっていますか︶ きない︵来なさい︶ めえる︵見える ︶ ぼる︵もぐ︶ ほざける︵ふざける︶ ぼいでくる︵もいでくる︶ へたる︵弱って座り込む︶ しゃっつける︵張り付ける︶ ●形容詞 めげる︵壊れる︶ めぐ︵壊す︶ よんべ︵昨夜 ︶ わい︵私・自分︶ ●動詞 あかへん︵駄目だ︶ しゃちはばかる︵立ち塞がる︶ あずる︵もがく︶ しよらへん︵していない︶ あかんたれ︵弱虫︶ あぶのうない︵危険ではない︶ すりんこむ︵水に潜る ︶ すんまへん︵すみません︶ おちん︵座る︶ おちょくる︵からかう︶ えずく︵嘔吐する︶ いんなした︵帰られました︶ のっけから︵はじめから︶ ねやす︵寝かせる︶ なにしとってん︵何してる︶ なつべる︵仕舞う︶ とれえる︵穫り入れる︶ どんぶりかえる︵ひっくりかえる︶ てばる︵手間取る︶ とっとく︵しまっておく︶ つかえる︵触れる ︶ てっぱる︵突き出ている︶ たぼうとく︵蓄えておく ︶ たんまに︵たまには︶ ちゅうた︵∼と言った︶ しゃーない︵仕方ない︶ ごつい︵大きい・凄い︶ ︶ けやす︵消す︶ けなるい︵羨ましい︶ ぐつがわるい︵格好または調子が悪い こらえる︵辛抱する︶ かいい︵痒い︶ がさい︵荒い︶ おらへん︵いない︶ お起きに︵有難う︶ いかめい︵羨ましい︶ えげつない︵人情味がない︶ かじる︵穀物や麺の適度な乾燥・発酵︶ のどく︵覗く ︶ はだかる︵挟まる︶ しょうもない︵つまらない︶ あだける︵高いところから落ちる ︶ いうとうちゃった︵言っておられました︶ かきぼり︵柿取り︶ はりこむ︵おごる︶ いっとっちゃんたん︵行っておられましたの︶ いのうか︵帰ろうか︶ いららく︵乾燥する︶ いらんこ︵いらないか︶ いろう・いらう︵触る・触れる︶ かたげる︵担ぐ︶ せえへん︵しません︶ ずつない︵苦しい︶ しもた︵しまった︶ きしょくい︵気持ちが悪い︶ おっとろしい︵恐ろしい︶ えらい︵しんどい・体が疲れる︶ かたみばんこ︵交互︶ いがむ︵ゆがむ ︶ いける︵埋める︶ さっき︵先に︶ ひきしゃく︵引き裂く ︶ ふすべる︵燻べる ︶ きゃへんこ︵来ないか︶ ほめく︵むし暑い︶ ほげた︵口達者な︶ ほかす︵捨てる︶ はしかい︵素早しこい︶ ぬくい︵暖かい︶ どえらい︵途方もない︶ ちょろい︵小さい ︶ でえらい︵途方もない︶ ちょこなぶる︵馬鹿にする︶ ちょこっと︵少し︶ せんど︵長い間︶ せや︵そうだ︶ せっしょうな︵ひどい︶ ●感動詞 やだくさ︵雑然・乱れている・下手な︶ ほたえる︵ふざけ騒ぐ︶ ほうがつかん︵方法がない︶ ほうか︵そうですか︶ ひっさに︵久々・長々︶ しょうわるい︵性格が悪い︶ しまつする︵倹約する︶ ごてつく︵意地悪く人を困らせる︶ どんのいも︵どのようにも︶ どくしょうな︵殺生な︶ こそばい︵くすぐったい︶ ごうがわく︵腹が立つ︶ きとってや︵来ておられる︶ たんま︵時々︶ しんきくさい︵じれったい︶ しらんで︵知らない︶ へてから︵それから︶ ●接続詞 まんだ︵まだ︶ ようけ︵沢山︶ べっちょない︵大丈夫︶ ひょたひょた︵へたへた︶ ほやけど︵それだけど︶ ひとりでに︵自然に︶ なんやかや︵いろいろと︶ なんぼ︵いくつ︶ ちびっと︵少し ︶ なんせ︵なにしろ︶ ちいと︵少し︶ ちいとま︵しばらく ︶ せんぐり︵次々に︶ すこい︵ずるい︶ そやさかい︵それだから︶ しょうことなしに︵よんどころなく︶ もむない︵美味しくない︶ ねぶたい︵眠たい ︶ のうなる︵なくなる︶ またい︵手ぬるい・おろかだ・遅い︶ ひーん︵ふーん︶ ●形容動詞 いかへんこ︵いかないか︶ あらへん︵ありません︶ あないな︵あんなこと︶ あとんじょり︵あとずさり︶ あく︵なんともない︶ あけへん︵だめ・あかない︶ ︶ かったに︵全然︶ えらいこと︵大変なこと︶ いけず︵意地悪︶ あんびょう︵按配=うまく ︶ あんじょう︵うまく・上手に・きっちり︶ あじない︵まずい︶ あさっぱら︵早朝︶ ●副詞 ∼かいや︵∼なのか・∼ましょうか︶ ∼け︵∼か︶ ∼かい︵ですか ︶ ●付属語 ほんま︵本当だ︶ ほな︵それでは ︶ ほんで︵それで︶ ほって︵そして︶ ほたら・ほったら︵そしたら ︶ うだうだいうな︵くどくど言うな︶ けったいやな︵変な︶ ∼げな︵∼であるそうです ︶ あいそつく︵飽きる︶ えろうて︵しんどい︶ さんこ︵不潔・散らかす︶ ごんたれ︵意地悪︶ しこぶつな︵頑丈な︶ ∼こ︵∼ですか︶ ∼こっちゃ︵∼ことだ︶ ∼しいひん︵∼しない︶ ∼じぇや︵∼ですよ︶ ∼じぇわ︵∼ですよ ︶ ∼たった︵∼した・∼された︶ ∼たる︵∼してやる ︶ ∼たろけい︵∼してやろうか︶ きいもむ︵きをもむ︶ ごわへん︵ございません︶ しもた︵しまった︶ しゃーない︵仕方ない︶ しゃーらん︵しかたない︶ せえへん︵しません︶ せや︵そうだ︶ ∼てえな︵∼してほしい︶ のうなる︵なくなる︶ なんやかや︵いろいろと︶ だんない︵かまわない︶ どんのいも︵どのようにも︶ ∼とっけい︵∼しておきましょう︶ ∼ちゃった︵∼した・∼なさった︶ ∼とる︵∼している︶ ほうこ︵そうか︶ ほうか︵そうですか︶ ほうがつかん︵方法がない︶ ∼とるん︵∼しているのか ︶ ∼とろ︵∼しておこう︶ ∼とろいや︵∼しておこう・しているだろう ︶ ∼とるんこ︵∼していますか︶ ∼のんこ︵∼のか︶ ∼へん︵∼ない︶ ∼へんで︵∼ないよ︶ ∼やない︵∼ではない︶ ∼やのう︵∼だなあ・だねえ︶ ∼んこ︵∼していましたか︶ ●連語 あかん︵だめだ ︶ あんのう︵あのねえ︶ おしまいな︵こんばんは ︶ かなん︵かなわない・こまる︶ かめへん︵かまわない ︶ がたがきた︵ふるくなった︶
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