ハワイコナ農園研修レポート

ハワイコナ農園研修レポート
(平成 26 年 10 月 13 日~17 日)
直営部 箕面小野原店 櫻井 秋那
ハワイ島について
ハワイ州は、カウアイ島、オアフ島、マウイ島、ハワイ島などの主要な8つの島と19
以上の火山島からなる。今回訪れたハワイ島は、ハワイの他の島を全て合わせた面積より
も大きいことから、「ビッグ・アイランド」と呼ばれている。
ハワイ島には、ファラライ山(2521m)、マウナケア山(4205m)
、と2つの火
山マウナロア山(4170m)とキラウエア火山がある。中でもキラウエア火山は世界で
最も活発な火山の一つであり、現在も溶岩が流れ出ており、人々の生活にも影響が出てい
る。ハワイ島の沿岸部には白い砂浜ではなく、ゴツゴツとした黒い火山性の土壌となって
いることが見て取れた。その肥沃な土壌と地形、恵まれた自然環環境から、世界の13気
候帯のうち、北極気候とサハラ気候を除く11気候が存在する。平均気温は25~29度
で、他の島々と比べると四季が感じられやすく、年間を通して湿度が低い。12月~3月
は雨季だが通り雨程度である。
GoogleMap より
Hawaiian Queen Coffee 農園
コナコーヒーについて
コナコーヒーとは、ハワイ島のコナ地区で栽培されたコーヒーの総称で183年前から
生産が開始された。コーヒー栽培は主に、ファラライ山とマウナロア山の西側斜面の地区
で盛んである。栽培されている標高は250~800mと低めだが、昼夜の寒暖の差が大
きく、夕方に曇りや雨になる気候、水はけがよくミネラルを多く含む火山性の土壌といっ
た栽培に適した条件が揃っている。コナ地区は、ハワイ島南西部の長さ約35km、幅3.
2kmの地区を指す。狭い地区で栽培されるコナコーヒーは世界のコーヒー生産量の1%に
満たないため、希少性が高くブルーマウンテンに次ぐ高値が付けられる。
コナ地区には大小600~800の農園があると言われており、収穫された豆は卸業者
へ売られ、精製された後、国内外へ流通する。個人の庭にコーヒーの木を植えると、農園
扱いとなり固定資産税がかからないため、副収入源として栽培されているケースも多いよ
うだ。上の写真のように、コナ地区の農園にはシェイドツリーがないのは、午後から夕方
にかけて、海上の水蒸気が雲を生み、霧や雨となり、直射日光を防ぐ効果をもたらしてく
れるためである。2月に開花し、8月には収穫期を迎える。収穫は手摘みで、斜面の下か
ら上へ向かい、6~8回に渡り収穫される。収穫期には、メキシコ人やフィリピン人を雇
っている農園が多いそうだ。
品種はアラビカ・ティピカ種で、苦味が少なく、芳醇な香りと独特の甘みと酸味が特徴
的な味わいである。グレードは4つあり、スクリーンサイズと300g当たりの欠点豆の
数(No.1 以上は300g中の欠点豆の数、それ以下は300g中の欠点豆のグラム数が定
めだれている)により、上から、「エクストラ・ファンシー」「ファンシー」「No.1」「プラ
イム」となる。プライム以下は、コナコーヒーではなく、ハワイアンコーヒーと呼ばれる。
当社が仕入れているのはプライムである。コナ地区では2010年から、コーヒー・ビ
ーン・ブロッカーという害虫が確認されおり、現在もその影響は大きい。視察した農園で
は、殺虫剤ではなく、ブロッカーに効く成分の菌を散布したり、コーヒーの香りを付けた
薬品をコーヒーの木に吊るしたりして対策が取られていた。話によると、発生当初と比べ
ると虫の被害は縮小しているとのことだが、1 つの木に対して半数以上被害があるのではな
いかと、思われる現状であった。
年間約1000~1500t生産さているほとんどのコナコーヒーはアメリカ本土で消
費され、日本に輸出されているのはわずか1割程度で、年間わずか145tほどである。
「1
00%コナコーヒー」と表示するには、ハワイ州農務局による認証が必要であり、認証マー
クもある。ブレンドコーヒーの場合は、アメリカでは10%、日本では30%以上含んでい
ないとコナブレンドコーヒーと表示できない。
【Hawaiian Queen Coffee】
当社の契約農園。160 エーカー、1200 体の農園はコナコーヒー地帯のほぼ中央に位置す
る。
年間生産量は約 54tで、
コナコーヒー全体の約 4%に当たる。代表取締役の Ronald Adler
氏は、グレードにこだわりすぎるのではなく、最終的には「味」で評価して欲しいと情熱
的に語ってくださったのが印象的であった。世界中どこのお店で提供されても、同じ味を
保てるような高品質の豆の生産を目指しているそうだ。
衛生的な加工設備も整っており、精製方法はウォッシュドのみ。2 日間発酵させたのち、
コンクリート床の干し棚で2~3日間乾燥させる。大型のガス乾燥機もあり、24時間で
乾燥できる。水分含有量は 10.5~11.5%と低めである。エイジングは 2 ヶ月間。輸送は旅客
機での空輸で、鮮度にこだわっていることが伺えた。2013年には、毎年開催されるコ
ナ・コーヒーフェスティバル・カッピングコンテストで優勝した実績を持つ。
ファンシー、No.1、ピーベリー、プライムのカッピングをさせていただいた。カッピン
グの経験が浅い私でもグレードによる風味の違いがわかるほど如実に現れていた。やはり、
グレードが高いほどクリーンで甘みと酸味のバランスがよかった。ファンシーとプライム
の味の差が予想外に大きく驚いた。
【KAU Coffee Mill】
Kau Coffee Mill での焙煎風景
カウ地区はコナ地区からさら
に南下した、マウナロア山の裾野
に位置している。Kau Coffee Mill
は2007年に開業した新しい
農園兼加工所で、栽培から焙煎、
販売まで行っている。コーヒー栽
培がされているにも関わらず、カ
ウ地域には加工設備がないため
地域の45の小規模農家にはビ
ジネスチャンスがなかった。そこ
に目をつけた創設者は、彼らのた
めに加工設備を作り、買い取りを始めたそうだ。現在では自社の農園でも栽培を行ってお
り、海外市場にも目を向け、カウ地域のコーヒー発展に力を入れている。
カウコーヒーは、チョコレート、チェリー、ココナッツのような味わいと、蘭や柑橘系
の花を思わせるフローラルな香りが特徴的だという。ウォッシュド、セミ・ウォッシュド、
ナチュラルと精製方法も多様で、幅をきかせたコーヒーの魅力を伝えている。
焙煎の様子も見学した。焙煎の一部始終を見たのは初めてだったため、貴重なものであ
った。写真に写っている女性がチーフロースターで、温度や火力、時間の設定も全て彼女
の手動で行われる。その日の気温や湿度、生豆の状態など全てを考慮して行われる焙煎の
奥深さがわかった。「焙煎は化学と芸術だ」という言葉が印象的であった。
【Greenwell Coffee Farms】
グリーンウェルコーヒー農園は、コナ地
区で最も歴史ある老舗農園である。初代グ
リーンウェル夫婦がイギリスから185
0年に移住し、農園を作り上げた。園内に
は、樹齢120~130年の原木があり、
現在も3年に一度カッドバックをしなが
ら栽培されていた。
樹齢 100 年以上のコーヒーの木
栽培品種はアラビカ・ティピカで、収穫は全て手摘みである。周りの農家からもチェリ
ーを買い取っている。精製方法はウォッシュドで、12~14時間発酵させた後、天日で
6~7日乾燥させる。伝統守り丁寧に栽培、加工されている印象を受けた。
生産地を訪れて学んだこと、感じたこと
コーヒーの産地を訪れたのはラオスに次いでまだ2カ国目である。ほどんどのコーヒー
が発展途上国で生産されている中で、ハワイというある意味特殊な生産地を訪問できたこ
とは貴重な経験であると思う。どうしてもラオスと比較してしまい、全体的に「先進的で
整った農園」という先入観があったが、相違点、類似点があり勉強になった。
今回の視察では深く話を伺ってはいないが、衛生的な精製設備、確立された流通経路、農
園の資金や経営、人材、情報などコーヒー生産の基盤に関してはおそらく心配するほどの
問題はなく、整っていて、それらが途上国と先進国の農園の大きな違いではないかと思っ
た。スケジュール上難しかったが、個人的には、もう少し一つ一つの農園をじっくり視察
し、フェアトレードやサステイナブルに対してどのような考えを持っているのかを伺って
みたかった。
今回の研修を経て、毎日店舗で提供・販売しているコーヒーの背景にもそれぞれ農園が
あり、栽培、精製、焙煎、抽出の各プロセスでたくさんの人の手が加わっていることを再
認識した。他の生産地も機会があればぜひ行って勉強したい。今後は、コーヒーの各プロ
セスに関する知識を向上させ接客につなげること、生産地を訪れたことのないスタッフに
学んだことを伝えて行くこと目標としたい。