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デジタルな組織へ
デジタルの限界を突き破る
目次
企業幹部層はデジタル技術活用による成長の加速に期待しているが…
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新しいテクノロジーと古いモデル
4
新たな収益化モデルによるブレークスルーの実現
6
収益化による差別化
8
デジタル・ビジネスがもたらすブレークスルー
9
まとめ:無限の成長を実現する
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本調査について
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デジタルな組織へ:デジタルの限界を突き破る
3
企業幹部層はデジタル技術活用による
成長の加速に期待しているが…
デジタル化による収益は伸び悩んでいませんか? 多くの企業が同じ問題を抱えて
います。アクセンチュアの調査によると、現在多くの企業において、総収益のうち
デジタル関連分野が占めるのは約 15%未満です。この限界を突き破るために、デジ
タル・リソースを収益へと転換させる、新たな戦略が求められているのです。
多くの企業幹部層はデジタル製品/サービスの分野に大きな期待を
抱いています。アクセンチュアの最新調査では、企業幹部層の過半
数(60%)がデジタル関連分野を、新たな収益源を開拓する重要な
1
手段とみなしていることが明らかになりました 。
しかし、実情は異なります。
私たちの調査では、企業のおよそ 4 分の 3(70%)が、現在の全収
益のうちデジタル関連分野が占める割合は 15%未満だと回答しま
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した 。この数値は、いわば「デジタルの限界」を示しています。
では、デジタルの限界を超えるためにはどうすればいいのでしょう
か?そのためには、デジタル技術を収益へとつなげるための、明確
な戦略を新たに策定することが必要です。
70%
の調査対象企業が、総収益の
うちデジタル関連分野が占める
割合は 15%未満と回答。
1
出典 :
2
同上
Executive Survey, European Business Summit Survey Report
ちなみにデジタル化がもたらす収益とは、デ
ジタル・リソースを用いた新製品/サービス
による収益のことを指します。つまり、デジ
タル技術を使って既存の製品/サービスを販
売することで得られる収益(たとえば、医薬
品メーカーがタブレットベースのアプリケー
ションを使って既存の製品を販売した場合の
収益増加)とは異なるものです。
デジタルな組織へ:デジタルの限界を突き破る
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新しいテクノロジーと古いモデル
多くの企業がまずは、デジタル技術を用いて既存のビジネスモデルを拡大しようと
するでしょう。実際、企業幹部の 88%はこの方法でデジタル関連分野への投資を推
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進していると回答しています 。この場合、図 1 が示すように既存のコアコンピタ
ンスを強化/拡大したアプリケーションが開発されるのが一般的です。
金融大手のバークレイズのアプリ、Pingit が良い例です。バークレ
イズのコアコンピタンスである「決済サービス」用アプリの Pingit
は、ピアツーピア決済という新たな市場獲得のチャンスをバークレ
イズにもたらしました。利用者はバークレイズの口座を保有してい
なくても、Pingit で決済が可能です。Pingit を利用する企業は現在、
48,000 社に上ります。ダウンロード数は 350 万回にも達し、決済
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額は 10 億ドルを超えました 。
米クアルコムは、インダストリアル・インターネット市場への参入
によりデジタルの限界を突き破り、ブレークスルーを実現しました。
携帯電話メーカーから出発したハイテク企業である同社は、まずモ
バイル OEM に自社テクノロジーをライセンス供与することでビジ
ネスを拡大。現在はインダストリアル・インターネット市場のリー
ダーとして、センサー・ハードウェア、通信、およびアナリティク
スの統合サービスを提供しています。
ただし、図 1 からはデジタルの限界を突き破るには既存の製品/
サービスをより良いものに改善し、より迅速に、低価格化して提
供するだけでは不十分であることも読み取れます。そういったアプ
ローチはあっという間にライバルに模倣され、コモディティ化する
からです。デジタル・ビジネスの成長を実現するには、新たな顧客
と新たな製品/サービスを創出し、新たに収益源を生み出す必要が
あるのです。
図 1:デジタルの限界を突き破り、デジタル・ビジネスの成長を実現するには、既存
のコアコンピタンスを拡大するだけでは不十分。新たなビジネスの創出が求められる
デジタル・ビジネスの成長
新規
製品/
サービス
既存
デジタルの限界
既存のコアコンピタンス
既存のコアコンピタンスの拡大
既存
新規
顧客
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出典 :
Digital Double Down Survey
4
出典 :
http://www.newsroom.barclays.com/releases/ReleaseDetailPage.aspx?releaseId=3059
デジタルな組織へ:デジタルの限界を突き破る
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デジタルな組織へ:デジタルの限界を突き破る
新たな収益化モデルによるブレークスルーの実現
創造的破壊者は、業界の収益化モデルに変化をもたらします。デジタルの限界を突
き破り、ブレークスルーを実現し、持続的・継続的成長をもたらすビジネスを展開
するためには、「収益化」について新たな視点を持つ必要があります。
広告主にデータを販売するだけでは十分とは言えません。デジタル
に特化した企業は業界でのデータ活用方法に変化をもたらし、限界
顧客とリソース・コストを減らしながら、新たな限界収益を創出し
ます。新たな収益化モデルは、アナリティクスやモバイル・アプリ
への投資を増やすだけでは実践できません。新たなモデルとは何か
を熟考することが求められるのです。
図 2 は、収益化モデルの構成要素をまとめたものです。収益化と
は、すなわちあるメカニズムによってリソースを価値へと転換させ、
その価値を(製品やサービスの形で)市場に送り込み、顧客ニーズ
を満たすことです。以下にまとめた収益化モデルは、デジタルに特
有のモデルではありません。ただし、デジタルは収益化モデルの構
成要素とそれらの相互作用とを確実に変化させます。以下では、実
際にもたらされる変化ついて、さらに具体的に見ていくことにしま
しょう。
1 顧客/市場ニーズ
デジタルは顧客体験を拡張しますが、もはやそれだけでは十分とは
言えません。アクセンチュアの最近の調査では、拡張された体験の
ためにお金を払ってもよいと回答した消費者は全体のわずか 39%
にとどまりました。顧客はデジタル技術にそれ以上のものを求めて
います。調査においても、新たな機能を持ったソリューションのた
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めの支出を厭わないと回答する消費者が 74%に達しました 。
3 価値
収益化は、交換対象となるリソースに付加価値を提供します。ただ
し、この「価値」は「価格」以上のものでなければなりません。そ
うでなければ、リソースはただのコモディティとなります。デジタ
ルによりリソースは新たな価値を得て、①問題を解決する、②機会
を生み出す、③顧客自身に心地よさを感じさせる、あるいは他者か
ら見て顧客が心地よく見えるようサポートする、といったことがで
きるようになります。
4 メカニズム
メカニズムとは、リソースの価値を生かして収益を拡大する仕組み
のことです。デジタル技術はモノを売ったり/貸したり、何かを無
料で提供することによって、メカニズムを多様化させることができ
ます。マイクロペイメントのような新しいメカニズムが生まれる一
方で、従量課金制のような従来のメカニズムも、経済的な問題を含
めて実現可能性が高まってきています。
5 企業の能力
企業の能力とは、デジタルを用いた収益を創出するための新しい業
務の進め方のことです。デジタル技術は、収益の創出を加速させる
新たなサービスやサプライチェーン、流通モデルなどの新たな能力
の開発を可能にします。
2 リソース
デジタルの世界では、「リソース」の意味が変化しつつあります。
リソースはもはや物理的な製品や人が提供するサービスだけではな
く、情報やデータ、マーケット・アクセス、アクセスによる成果と
いった要素を含むようになっています。これらのリソースを新たな
方法で統合することによって、デジタル製品/サービスのベースを
構築することが可能です。
74%
の顧客が、新たな機能を
持ったソリューションの
ための支出を厭わないと
考えています。
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出典 :
Accenture Research, Survey of Digital Strategists
このような変化は新たな収益源を生み出しますが、そのためには経
営幹部がありきたりなソリューションから脱却しなければなりませ
ん。たとえば、Uber のサービスは業界における「リソース」の意
味を根本から覆し、ブレークスルーを可能にするデジタル・サービ
スと言えるでしょう。同社は輸送業であるにもかかわらず、自社で
は車両を所有せずに輸送サービスを提供しています。
デジタルな組織へ:デジタルの限界を突き破る
図 2:収益化モデルの構成要素。デジタルは、これらの構成要素とその相互作用を
変化させる。
顧客/市場ニーズ
誰がどのような理由でその製品/サービスに興味を持つか。
リソース:
価値:
メカニズム:
提供される製品/
サービスの内容
なぜそのリソースが
必要なのか
リソースの価値を
生かす仕組み
自社の製品/サービスは何か?
企業の能力:
製品/サービスを市場に投入するために必要な能力
どのようにして収益を得るか?
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デジタルな組織へ:デジタルの限界を突き破る
収益化による差別化
行動志向の収益化戦略では、リソースと価値とメカニズムを今までにない形で組み
合わせることに重点が置かれます。
たとえば:
リソースを変える
既存製品/サービスのリソースを変えることで、新たな市場や製品、
サービスを創出することが可能です。たとえば、センサーとアナリ
ティクスを組み合わせて開発した新しいサービス・プラットフォー
ムを、情報型製品として提供することができます。また、ネットワー
ク上で自動車とセンサーをつなぐテクノロジーは、埋め込み型の保
険補償やメディア・サービスの配信など、さまざまな新しいサービ
ス提供を可能にするでしょう。
価値の度合いを変える
価値の度合いを変えることで、プレミアム製品/サービスを創出し
たり、特別感の醸成やブランディングの拡張によって直接購入を促
したりすることが可能です。デジタルは、カスタマー・インティマ
シー(顧客との親密さ)を高め、
収益増加と離反率低減を実現します。
豪州のスーパーマーケット最大手のコールズは、高い価値を備えた
顧客に Hiku という小型のスキャニング・デバイスを配布しています。
顧客は Hiku を使って、製品のバーコードを読み取り、買い物リス
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トを作成したり、コールズとつながったりすることができます 。
収益創出の方法を変える
バリューチェーンの見直しによって、収益を生む方法を変えるこ
とが可能です。デジタル・テクノロジーは、商取引の条件やメカ
ニズムに変化をもたらし、製品購入をサービス利用へと転換させ
ます。ミシュランはデジタル・センサーやアナリティクスなどの
テクノロジーを導入し、商用車向けの新たなサービス・モデルを
構築しました。
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出典 :
http://demos.techlabsdemos.com/colescoinnovation/
デジタルな組織へ:デジタルの限界を突き破る
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デジタル・ビジネスがもたらすブレークスルー
デジタルの収益限界を突き破るブレークスルーを実現するには、コアビジネスに副
次的な活動を付加するのではなく、ビジネスそのものを構築しなければなりません。
2 つの企業の取り組みを比較してみると、その違いは明らかです。
一方の企業は、既存のコアビジネスにデータ・ビジネスを付加しま
した。同社は収益化を限定的な視点で捉え、データ小売戦略を展開。
広告主をはじめとする顧客は、消費者情報などに基づいたインサイ
トを有益なサービスと見なし、同社から大規模データを積極的に購
入しました。ところが、企業側は大規模データを扱う収益化モデル
を実践するに当たって、限られた販売/サポート体制しか用意して
いませんでした。同社はたちまち成長圧力に直面。データ・ビジネ
スの新味もまたたく間に失せ、顧客は従来利用していた消費者デー
タ・サービスに乗り換えました。
他方の企業は、データを消費経済への参入を拡大する新しいビジネ
スのひとつとして捉えました。この視点の下、同社は消費者データ・
サービスの一環として、専任の販売チームとサービス・チームを設
けるなど、多彩な付加価値サービスを提供しました。
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出典 :
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同上
Executive Survey, European Business Summit Survey Report
新たに開発したこれらの能力により、同社はカスタマー・エンゲー
ジメントを改善。さらなるイノベーションと付加価値的データ・サー
ビスの提供を実現しました。以上の取り組みの結果、同社のデータ
販売価格は、単なるデータ大量販売の約 9 倍まで上昇。同社は新た
な収益源を獲得し、投資から利益を生むことに成功しました。
私たちの調査では、このような大胆な試みは現在では稀なようです。
調査に参加した企業幹部層も、業界に創造的破壊をもたらすことを
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目指しているのは 4 人に 1 人にとどまっています 。また、新たな
収益化戦略の導入を計画している企業も、全体のわずか 30%との
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結果が出ています 。
ここには明確なメッセージがあります:企業にとって大きなチャン
スがあるということです。
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デジタルな組織へ:デジタルの限界を突き破る
まとめ:無限の成長を実現する
デジタルの限界を突き破るには、新たな収益化戦略が不可欠です。企業はデジタル・
リソースの有益性と価値を見直し、新たな製品/サービスを開発して、新しい顧客
に訴求しなければなりません。これらの 3 つのプロセスを正しく踏むことで、持続
可能な成長への基盤が完成します。デジタル投資の現状を把握して、新たな収益化
戦略に着手する。コアビジネスの拡大戦略を続行しながら、新たな体験によって、
新たな顧客と市場に訴求する。そして、コアビジネスのさらに先へ目を向け、リソー
スとニーズ、ならびに両者をつなぐメカニズムを明確化する。情報の強度を高め、
つながりの強化によって企業が獲得する新たな能力こそが、デジタル化による収益
のさらなる拡大を可能にするのです。
デジタルな組織へ:デジタルの限界を突き破る
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本調査について
収益化は、顧客と経営と売上を網羅する複雑な問題です。本レポートは、700 人以上の企
業幹部層を対象としたアンケート、約 200 人のデジタル・ストラテジストを対象とした
デジタル・トレンド・アンケート、1,000 人超の CEO を対象としたアンケート、新たなデ
ジタル製品/サービスの選好に関するデジタル・コンシューマーを対象とした詳細なアン
ケートの結果を基に作成されています。
筆者
アクセンチュアについて
マーク・P・マクドナルド
(Mark P. McDonald)
[email protected]
アクセンチュアは「ストラテジー」
「コンサルティング」
「デジタル」
「テクノロジー」
「オペレーションズ」の 5 つの領域で幅広いサービ
スとソリューションを提供する世界最大級の総合コンサルティング
企業です。世界最大の規模を誇るデリバリーネットワークに裏打ち
された、40 を超す業界とあらゆる業務に対応可能な豊富な経験と
専門スキルなどの強みを生かし、ビジネスとテクノロジーを融合さ
せて、お客様のハイパフォーマンス実現と、持続可能な価値創出を
支援しています。世界 120 カ国以上のお客様にサービスを提供す
るおよそ 37 万 3,000 人の社員が、イノベーションの創出と世界中
の人々のより豊かな生活の実現に取り組んでいます。
Contributors
Jennifer G Burrowes
[email protected]
Laurie A. Henneborn
[email protected]
アクセンチュアの詳細は www.accenture.com を、
アクセンチュア株式会社の詳細は www.accenture.com/jp をご覧ください。
Praveen Tanguturi
[email protected]
アクセンチュア・ストラテジーについて
アクセンチュア・ストラテジーは、ビジネスとテクノロジーの融合
を実現します。ビジネス/テクノロジー/オペレーション/ファ
ンクション戦略に私たちの能力を統合することによって、お客さま
が業界に適した戦略を策定/実践し、組織の変革を達成するのを
サポートします。デジタルな創造的破壊、競争、グローバル経営
モデル、人材、リーダーシップに関連する問題に焦点を当てるこ
とにより、アクセンチュア・ストラテジーは効率性と成長の改善
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