L I V E R E P O R T 11 28 sat. MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島 奥田民生 寒空の下 3 万人と勝ち取った 奥田カープ完全試合 奥田民生ここに極まれり。そんな 1 日だった。 2004 年・旧広島市民球場、2011 年・嚴島神 社に続く 3 度目のひとり股旅スペシャルは、前日 に広島県で初雪が観測された極寒の中で行われた。 空には雲が低くたれこめ、いつ時雨れてもおかし くない状況。彼の晴れ男伝説ももはやこれまでか …と思いきや、開演時刻が近づくにつれ、雲はど んどん流れ、ついには青空の面積が雲のそれを上 回るまでに! 歴史的ライブは、天すら味方につ けたのだ。 ウグイス嬢の「1 番、奥田民生、背番号 082」 というアナウンスの後、バックスクリーン側から 奥田が登場。拍手と歓声を浴びながら、2 塁付近 に設けられたステージに向かうその表情は、寒さ かはたまた緊張からか、若干強張って見える。ス テージに上がり深く一礼した彼はドリンクをひと 口。この時、タンブラーのフタを派手に落として 会場が一笑いしたことで、場の空気が一気にほぐ れた。そして審判の「プレイボール!」の声と共 に、祝祭は幕を開けた。 3 万人が固唾を呑んで見守る中始まったのは、 1st アルバムの 1 曲目でもある『674』 。伸びや かな歌声と素朴なギターの音色が青空にこだます る。いつもなら後半のヤマ場やアンコールで披露 されることの多い『イージュー★ライダー』を 3 曲目に歌ったところで、野外公演としては異例の 11 月末開催に至った理由を 「カープが日本シリー ズに出ると見越してのスケジュールです。しかし、 私の考えは甘かった…」とぼやく。そしてウグイ ス嬢にユニコーン縛りでリクエストしてもらった 『デーゲーム』 『雪が降る町』や、昨年の奥田民生 50 祭のテーマ曲『私はオジさんになった』など、 ソロとユニコーンの曲を織り交ぜ、 「みんな歌え ると思いますんで」というフリからの『風は西か ら』の英語バージョン ( 笑 ) で休憩タイムへ突入。 後半戦は、奥田を筆頭に、ユニコーンメンバー、 S 真 心 ブ ラ ザ ー ズ、PUFFY、 木 村 カ エ ラ な ど SMA 所属アーティストが歌うカープの応援歌が スクリーンに映し出されてスタート。映像の終わ りと同時に観客がジェット風船を飛ばし、スタジ アムならではの盛り上がりを見せる。 さらに、 バッ ターを奥田、ピッチャーを前田健太選手、キャッ チャーを大瀬良大地選手が務める始球式というサ プライズ演出も。豪快なスイングは空振りに終わ るも、奥田は「( ワークシャツに ) サインもらい ました」と満足気だ。 ひとり股旅と言えば意外性のあるカバーも見 どころのひとつということで、 「人の力を借り て盛り上げていきたいと思います」と西野カナ E T 01. 674 02. えんえんととんでいく 03. イージュー★ライダー 04. デーゲーム(ユニコーン) 05. 雪が降る町(ユニコーン) 06. 遺言 07. 何と言う 08. 野ばら 09. 私はオジさんになった (ユニコーン) 10. 風は西から(英語 ver.) 11. SUN の SON 12. メリハリ鳥 13. The STANDARD 14. Darling(西野カナ) 15. 結婚しようよ(吉田拓郎) L I S T なんです。前の市民球場の時もそうでし 16. アイ・ラヴ・ユー、OK(矢沢永吉) 17. 幸せであるように(FLYING KIDS) 18. さくら(ケツメイシ) 19. 人間はもう終わりだ! たけど、初ということでやらせていただ いて、ありがとうございます」と前置き した上で、 「もう僕はこんな大きなことは (真心ブラザーズ) しません。いい歳なんでこういうお祭り (THEE MICHELLE GUN ELEPHANT) みたいなのが恥ずかしくなってきました」 20. 世界の終わり 21. じょじょ(サンフジンズ) 22. ハリがないと(サンフジンズ) 23. 無限の風 24. 早口カレー(ユニコーン) 25. CUSTOM 26. さすらい ENCORE 01. 最強のこれから 02. 風は西から と宣言する奥田。そして、最後までスタ ミナ切れすることなく、アンコールまで の全 28 曲を歌い上げた。 ステージを下り、サインボールを客席 に投げ込みながらグラウンドを一周する 彼の表情は、実に柔らかく晴れ晴れしかっ た。ギター 1 本で 3 万人を魅了し、圧倒 した 2 時間半のアクト。それは 3 万人の 『Darling』からカバータイムスタート。甘えた 口調で「ねぇダーリ~ン、ねぇダーリン♪」と 胸を熱くした頃には、日もとっぷりと暮れていた。 1 人ひとりにとって忘れられない出来事であると 歌 っ て 会 場 を 沸 か せ、吉 田 拓 郎『 結 婚 し よ う 気温はどんどん下がっていく一方なのに、力強く 共に、奥田民生の並外れた人間力を実感する場で よ』 、本人を彷彿させる渋いシャウトを交えた矢 ギターを掻き鳴らし、声を張り上げる姿にそうし もあった。もう大きなことはしないと言いつつ 沢永吉『アイ・ラヴ・ユー、OK』で同郷の先人 たことは微塵も感じられない。 も、 「万が一またこういう機会があればよろしく へ敬意を表する。盟友・真心ブラザーズ『人間 ライブ終盤に差し掛かった頃、 「今年 50 歳に お願いします」と言った彼の言葉をゆる〜く信じ は も う 終 わ り だ!』 、THEE MICHELLE GUN なったということと、スタジアムの芝生の張替え て、この祝祭がまたいつかどこかで開かれる日を ELEPHANT『世界の終わり』を熱唱して観客の 工事のタイミングとで、本当に今日は奇跡の 1 日 待ちたいと思う。 text_ 上岡 雅 photo_ 三浦憲治 2016 JAN. © 2016 YUMEBANCHI Co.,Ltd. All rights reserved.
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