首都圏北部4大学研究室紹介 ●環境 カバークロップのもつ炭素貯留機能 城大学農学部 2002∼2007年までの5年間における0∼ 農業安全管理学研究室 サラ イイ エフ ン ス 表1 カバークロップと耕うん方法別の年間の土壌炭素貯留の 増加率 (Mg CO 2 /ha/年) 30cmにおける土壌炭素貯留量の推移をみる と、 耕うん方法とカバークロップの利用により、 情 報 通 信 土壌炭素貯留は著しく変化しました(表省 ■研究テーマ 略) 。 5年間におけるカバークロップ導入による ●有機農業および自然農法に関する研究 ●園芸療法および園芸福祉に関する研究 土壌炭素貯留の増加量を1年あたり二酸化 炭素換算すると表1のとおりです。 カバークロッ ■キーワード 有機農業、 自然農法、園芸療法 プとしてライムギを利用し不耕起やロータリ耕 ■産業界の相談に対応できる技術分野 うんにより夏作物栽培を行う体系で年間の炭 土壌保全、有機農産物、福祉分野 境 材 料 素貯留増加量が0.66∼0.80トンCO 2 /haと ■主な設備 もっと大きく、次いでヘアリーベッチ利用で 有機農業圃場、 温室効果ガス測定装置、 土壌分析装置一式 小松崎将一 教授 連 絡 先 城大学FSセンター 小松崎将一 城大学産学官連携イノベーション創成機構 環 注)試験期間中春と秋の年2回測定した全炭素含有率(%) に 仮比重を乗じて深さ30cmあたりの炭素貯留量を求め、 この推移 を回帰直線に表し、当該回帰直線の傾きから年間の土壌炭素増 加量を求め二酸化炭素に換算した。 ▲印はマイナスを示す。 TEL:029-888-8707 FAX:029-888-8707 e-mail: komachan@mx.ibaraki.ac.jp TEL:0294-38-5005 FAX:0294-38-5240 e-mail: ccrd-iu@mx.ibaraki.ac.jp 研究概要 います。 基本的な作付体系は冬作物(カバーク 農法の違いによる炭素隔離機能の定量的 ロツプあるいは裸地)と夏作物とし、 夏作はオカ 評価に関する研究 ボ (品種:ユメノハタモチ) の連作としました。 カ ◆ バークロツプの種類は、 ライムギ、 ヘアリーべッ IPCCは2007年2月に、 温暖化の主因は二 チおよび裸地とし、 耕うん方法はプラウ耕、 ロー 酸化炭素などの温室効果ガスと断定し、 その タリ耕および不耕起としました。 試験は分割区 被害は地球全域に及ぶと警告を発し、温暖 画デザイン法により4反復で実施しました。 化は戦争や核の拡散と同じように人類の生存 調査項目は、 0-30cmにおける土壌炭素貯 の脅威とみなされつつあります。 わが国では、 留量:SOC (Mg/ha) を求めました。 また、2週 京都議定書に定められた温室効果ガスの削 間ごとに (耕うんおよび施肥時は3日ごと) に 減目標の達成が危ぶまれる一方で、二酸化 チャンバー法による農地からの亜酸化窒素の 炭素の吸収源として森林管理に加えて、 農耕 排出量を求めました。 農耕地における温室効 地土壌の炭素吸収機能に注目が集まってい 果ガスを二酸化炭素換算するため土壌炭素 ます。 農耕地における炭素貯留機能を高める の3.67倍、 および亜酸化窒素の296倍し、土 手法としては、 堆肥の投入と並びカバークロッ 壌炭素増加に伴う吸収量機能と亜酸化窒素 プの導入が注目されています。 ここでは、 カ による相殺 (オフセット) を求めました。 表2 カバークロップと耕うん方法別の年間の亜酸化窒素の直 接排出量 (Mg CO 2 /ha/年) これに 0.36∼0.53トン CO 2/haを示しました。 対し、 プラウ耕体系では、土壌炭素の減少が 激しく、 裸地でマイナス0.25トン CO 2/haとなる のに対し、 ヘアリーベッチ利用やライムギ利用 で土壌炭素貯留量の減少が抑制されました。 カバークロップと耕うん方法別の年間の亜 酸化窒素の直接排出量について二酸化炭素 を基礎とする温室効果ガスポテンシャルに換 技製 術造 ︵ も の づ く り ︶ 注)亜酸化窒素の発生量は無施肥区における2006年1月から 12月までの積算値を用い、二酸化炭素を基準とする温室効果ガ スポテンシャルに換算した。 算すると、 表2のとおりです。 表1の炭素貯留増 加量とのオフセットを行うと、 裸地では、 いずれ 研究の特徴 の耕うん体系でも0.015∼0.253トンCO 2 /ha ◆◆ のマイナス値を示し、 またプラウ耕においては 不耕起栽培やロータリ耕などとカバークロッ カバークロップ利用によっても0.202∼0.211 プ利用を組み合わせることで、 土壌炭素貯留 これに対 トンCO 2/haのマイナス値を示します。 の効果が亜酸化窒素発生との相殺を考慮し し、不耕起栽培でのライムギ利用並びにロー ても認められることから、 これらの農法をベース タリ耕でのライムギおよびヘアリーベッチ利用 にした圃場管理による農耕地の炭素貯留機 でそれぞれ0.486、0.567および0.255トン 能の有効性は極めて高いと考えます。 カバー CO 2/haの増加を示しています。 クロップの吸収窒素の一部は後作物の生育に 活用されることから、 カバークロップ導入により 施肥窒素の削減が期待でき、 これらの窒素量 バークロップ導入による耕地内の土壌炭素の 社 会 基 盤 城 大 学 を削減することで、 0.008∼0.212トンCO 2/ha 動態の視点から農耕地における炭素貯留機 宇 都 宮 大 学 の施肥由来の温室効果ガスの削減の可能性 能と亜酸化窒素によるオフセットについて検 があります。 討しています。 また、農業のもつ環境保全機能を高めるた 研究の取り組み 群 馬 大 学 めに、 有機農業の研究、 自然と共生する農業と 城大学農学部附属フィールドサイエンス しての自然農法や、 農業の福祉機能を活用す 教育研究センターの畑地圃場に以下の圃場 埼 玉 大 学 る園芸療法に関する研究も実施しています。 設定を2002年10月に行い、 現在まで継続して 高齢者などと行う園芸福祉活動 土壌炭素量モニタリング圃場 99 4u Vol.4 4u Vol.4 100
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