寺院の経営する納骨堂への課税は? R&R No328 本年もあと僅かになりました。例年のことですが、何やら追い立てられるような気分に なる中、去る十一月三十日の「朝日新聞」に「納骨堂 宗教かビジネスか」と題する興味 深い記事が掲載されました。 舞台は都内港区赤坂の都心の一等地に二年前に建てられた五階建てビル。持ち主は金沢 市にある曹洞宗の宗教法人・伝燈院で、広さ四〇〇平方㍍を超える敷地に本堂や約三七〇 〇基もの収容能力のある「赤坂浄苑」という納骨堂を備えています。 十二ある参拝ブースで IC カードをかざせば、奥にある納骨堂から該当する骨壺が入った ず し 「厨子」が出てくる仕組みになっていて、手軽に訪れ、お参りすることができるのが目玉 となっているようです。 永代供養料は一基あたり一五〇万円で、毎年の護持会費は一万八千円、仮に将来護持会 費が払えなくなっても合祀され永代にわたって供養されるとのこと。 区画の販売は仏壇・仏具の大手業者に委託されていて、売れれば手数料が業者に入り、 残額が伝燈院のものとなって建設費に充てられ、すでに区画の約三割が売れたそうです。 いささか旧聞に属しますが、本年三月、この納骨堂として使用される敷地と建物の固定 資産税をめぐって伝燈院と東京都との間に係争事件が起こりました。東京都が昨年度分の 税として四〇〇万円余りを課したからです。 周知のように、地方税法三四八条二項には固定資産税の非課税の範囲が具体的に列挙さ れていますが、その一つとして宗教法人が宗教活動を行う「境内建物・境内地」に続いて、 墓地が挙げられてはいるものの、納骨堂については明文では規定されていません。 しかし、納骨堂を墓地と同じく非課税扱いと考えていた伝燈院としては「ほかで課税さ れた例は聞いておらず、我々だけ課税されるのは納得行かない」(角田徳明住職)として、 七月に都を相手取って課税取り消しを求める訴訟を提起したというのがこれまでの経緯で す。 争点は、〝納骨堂ビジネス″の対象となっているビルの二~四階などの建物の部分と、 これに対応する敷地部分が固定資産税の非課税物件として認められるか否かというところ にあります。 東京都は、墓地とは異なる本件納骨堂が宗旨・宗派を問わず無宗教者まで広く受け入れ てきたこと、区画の販売を委託された業者に建物内での営業を認めてきたことなどを理由 として、非課税になる境内建物・境内地には該当しないと認定したのでしょう。 両者の主張は真っ向から対立するもので、訴訟の成り行きが注目されますが、都市部で の土地付きの墓がますます入手困難となっている現状から、こうしたビル式納骨堂の需要 はさらに増していくと考えられますので、同様なトラブルの発生を防ぐためにも早急にき ちんとした基準が建てられることが望まれます。 (十二月十日)
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