ダルシー流れおよび引け巣発生の数値予測

ダルシー流れおよび引け巣発生の数値予測
Numerical Modeling of Darcy Flow and Shrinkage Formation
加工成形シミュレーションチーム
朱金東*1,木下文昭*2,水野裕介*2,村上俊彦*2
牧野内昭武*3,C. Teodosiu*3,大浦賢一*3
[email protected], [email protected]
*1: Multi-Flow Software,*2: クオリカ㈱,*3: 理研
背景
∑ (ρ
Snu t + Δt )ij Δt = Δ( f L ρ LV + f S ρ SV )i
(2)
(T t +Δt − T jt ) + ρc S u TK
Ti t + Δt − Ti t +Δt
= ∑ Sij j
∑j P ij ij ij
Δt
Rij
j
(3)
質量保存
ダルシー流れ(Darcy Flow)は多孔質内の流体流れであり、
金属凝固時の固液共存域における液相流動はダルシー流
れとして取り扱うことができる。また固相率の高い領域では透
過率が小さいため、わずかな凝固収縮補給流れで大きな圧
力低下をもたらすことが知られている。一方、鋳物の凝固過
程において、凝固収縮を補給するため、押し湯上部の液面
低下でパイプ状の空隙(引け巣)は生じ、また鋳物内部で液
相補給流れが困難となると、固相デンドライト間に分散した空
隙(ポロシティ)が生じる。しかし、これまでの引け巣およびポ
ロシティ欠陥の数値予測法は凝固計算および簡易パラメータ
によるものがほとんどで、この場合、ダルシー流れで生じた湯
面低下またはダルシー流れが困難になる条件を定量評価で
きない問題がある。そこで本研究はダルシー流れの数値解析
を行うことより、引け巣およびポロシティ欠陥の数値予測を試
みた。さらに計算精度をあげるため、VCADメッシュシステムを
使用した。
L
j
熱エネルギー保存
( ρcPV )i
ここで、ρL:液相密度、ρS:固相密度、Rij:熱抵抗、Tij:上流
側の温度。
解析結果例
[g/cm2]
[cm/s]
適用メッシュシステム
(1) ボクセル直交; (2) ボクセル混合(境界近傍でKTCを導入) (a) 上部面断熱 (b) 上部面冷却
(3) 8分木直交; (4) 8分木混合(境界近傍でKTCを導入)
図1: 角柱鋳物の引け巣予測結果
(中心断面表示)
本システムの特徴
(a) 相対圧力 (b) 液相流速
図2: ダルシー流れの解析
結果
注湯口
(1) 流動・凝固解析用の支配方程式の離散化は直接差分法
を用いて行った。
(2) Kitta-Cube(KTC)を導入した境界セル(混合要素)に対し
て、元の直交要素内で各材質の占める体積率、面積率を導
入することによって基礎式の汎用化を行った。
(3) 隣接要素間の接続関係(特にKTCを含む境界セル近傍、
8分木分割階層の異なる要素同士間)をより少ないメモリ容量
と短い計算時間で処理できるようにするため、さまざまな工夫
を施した。
(4) ダルシー流れの数値解析は非定常流れ解析である。
製品部
押し湯
(a) 引け巣率
心
中
ダルシー流れの数値解析
ロシ
ポ
テ
ィ
(b) ポロシティ率
運動量保存
図3: ロッド状鋳鉄鋳物の引け巣およびポロシティの予測結果
⎛ u t + Δt − u ISt ⎞
⎛ μV ⎞
( ρ LVL )IS ⎜ IS
⎟ = −u ISt +Δt ⎜ L ⎟ + ( P1 − P2 )( f L S )IS + ( ρ LVL )IS g ⋅ n g
t
Δ
⎝ K ⎠ IS
⎝
⎠
(1)
結言
式(1)の左辺は運動量の蓄積項、右辺はそれぞれダルシー (1) VCADデータシステムに対応した引け巣予測プログラムの
項、圧力項、重力項である。ここで、ρL:密度、 VL:流体体積、 開発はほぼ終了した。
uIS:注目面ISの流速(空塔流速)、t:時間、Δt:タイムステップ、 (2) 図1~図3に示すように本解析システムはダルシー流れの
μ:粘度、K:透過率、P:圧力、S:面積、fL:液相率、g:重力ベ 数値解析によって得られる引け巣およびポロシティの予測精
クトル、ng:面ISの法線ベクトル、下添え字1,2:注目面IS両側 度は従来法より改善できる可能性があり、今後実験結果との
比較検証が課題である。
の要素番号。
VCADシステム研究 - ものつくり情報技術統合化研究(第5回)
351-0198 埼玉県和光市広沢 2-1 http://www.riken.go.jp/lab-www/V-CAD/sympo2005/