水と土の科学 水と土に関連した災害は, 誘因は,大雨・地震・強風 自然素因は,地表面・地盤・河川・海水 二次現象の発生,洪水・山崩れ・土石流 高潮・津波 加圧力の作用 社会素因は,人間・資産・施設 被害の発生 災害の波及 社会・経済システムへ波及し混乱・苦難 水と土の科学 水と土に関連した災害は, 誘因は,大雨・地震・強風 自然力の制御 自然素因は,地表面・地盤・河川・海水 二次現象の発生,洪水・山崩れ・土石流 二次現象の緩和 高潮・津波 二次現象の阻止・防止 社会素因は,人間・資産・施設 被害拡大の阻止 社会・経済システムへ波及し混乱・苦難 土と水に関する諸問題 地下水汚染 降雨 ダム 斜面崩壊 揚水量 河川 蒸発 涵養 地盤掘削 地すべり 漏水 浸透量 地下水の 塩水化 井戸 地盤沈下 シールド トンネル 浸透圧 流動 浸透破壊 湧水 トンネル掘削 湧水,周辺地下水低下 1. 土の成因と種類 土は,主に岩石が気象などによって形や 性質を変える風化作用を受けて生成され, 一部には植物の腐食によって生じた土もあ る。 風化作用は,物理的風化,化学的風化, 生物的風化の3つに大別される。 物理的風化は, 温度変化によって岩石にひずみが生じたり, 岩石の亀裂内の水が凍結・融解を繰り返すこ とによって破砕して,岩石が細分化していく のである。流水や風などの作用によって岩石 が侵食され細分化することもある。 礫,砂,シルトは,主にこの物理的風化作用 を受けて生成されたもので,岩石が細分化さ れただけでその性質は変わらない。 粒径による区分 粒径が75mm以上のものを岩石質材料, 75mm未満のものを土質材料といい, 0.075mm未満の大きさをもつ土を細粒分, 0.075~75mm範囲のものを粗粒分 粒径による区分と名称 細粒分 粗粒分 粒径(mm) 0.005 粘土 0.075 0.250 0.85 シルト 細砂 中砂 2 粗砂 4.75 細礫 砂 細粒分 中礫 礫 粗粒分 土質材料 19 粗礫 75 300 粗石 巨石 石 石分 岩石質材料 化学的風化には, 岩石中の鉱物と水が接触して化学反応を 生じる加水分解,炭酸ガスを含む水による 鉱物の溶解,岩石中の鉄分の酸化作用があ る。これらの作用によって,岩石の化学組 成・鉱物組成が変化して,粘土鉱物(粘土 を構成する主成分鉱物)が生成される。 粘土鉱物には,大別して,カオリナイト, モンモリロナイト,イライトと呼ばれるも のがある。 生物的風化について, 岩石の割れ目で植物の根が成長すること によって岩石を破砕する作用もあるが,根 の腐食(腐植)の際に生成される炭酸や有機 酸が岩石鉱物を溶解していくものである。 2. 土層の形成 岩石の風化によって生成された土は,その ままの位置で堆積した定積土(残積土)と,重 力,流水,風力,火山などの作用によって運 搬された後に堆積した運積土(堆積土)に区別 することができる。 定積土 定積土の代表的なものの一つに,花崗 岩質岩石が風化して堆積したまさ土と呼 ばれる土がある。また,定積土には植物 が腐食・堆積してできた植積土(腐植土) も含まれる。なお,植積土で,植物組織 が未分解でまだ残っているものを泥炭 (Pt),その組織が残っていないものを黒 泥(Mk)とそれぞれ呼んでいる。 運積土 崩積土は,重力の作用によって斜面上の土 が下方へ堆積した崩積土があり,円錐状の堆 積物である崖錐がその代表的なものである 崩落 流水の作用で, 雨水や河川水などの流れにのって河川で堆 積した河成堆積土,湖での湖成堆積土,海で の海成堆積土に分類される。 河川水が山間部から平野部,湖・海へと至 るとき,流水の運搬力が順に小さくなるので, 河川上流で大きな粒子の礫や砂,下流でシル トそして湖や海で粘土がそれぞれ堆積し易い。 上流は粒径大 下流は粒径小 風積土 我が国では火山灰が偏西風によって運 ばれた風積土(運積土に分類される)が広 く分布している。その代表的なものに関 東ロームやしらすと呼ばれるものがある。 偏西風 堆積 3. 建設工事の対象となる土層 代 新生代 沖積土 絶対年代 (百万年) 紀 世 0.01 1.8~2 第四紀 沖積世 洪積世 23 新第三紀 鮮新世 中新世 古第三紀 漸新世 始新世 暁新世 第三紀 70 中生代 125 180 220 白亜紀 ジュラ紀 三畳紀 古生代 270 350 400 440 490 600 二畳紀 石炭紀 デボン紀 シルリア紀 オルドビシア紀 カンブリア紀 先カンブリア紀 4600 (原生代) (始原代) 地質年代の区分 洪積土 4. 粗粒土の構造 砂{S} 砂の場合は,粗粒土では,様々な粒径 の土粒子が角張ったり丸みを帯びたりし た形状をもっており,その単一の粒子が 点で接触し合うように集合した単粒構造 を示す。 但し,細粒分が幾らか混入している場 合には,その単粒構造で,粗粒子に細粒 子が付着して存在するような構造になる こともある。いずれにしろ粗粒土の構造 の形成には,単一粒子の粒度・形状とそ の接触状態が大きくかかわる。 5. 細粒土の構造 シルト{M} 粘土{C} シルト粒子 あるいはペッド 粘土粒子 粘土粒子よりも大きな粒径のシルト 粒子あるいは薄片状の粘土粒子が凝集 化した団粒(ペッド)と呼ばれる。 ペッド 粘土粒子 [ランダム構造] [綿毛化構造] [分散構造] [配向構造] ペッドの部分では,粘土粒子の配列が様々 な形態をとる。これらペッドやシルト粒子の 配向,ペッド内部の粒子配列およびリンクの 発達状況は,土が海水中で堆積するなどの環 境や過去に土が受けた外力の履歴などによっ て異なり,土の強さと大きなかかわりをもつ。 土の生成に関する確認 (1)岩石の種類は極めて多いが,その成因か ら分類すると,(火成)岩,(堆積)岩,(変成) 岩に大別される。 (2)(火成)岩は(マグマ)が内部から上昇し, 冷却して固まった岩石をいう。 (3)花こう岩の風化過程にあるものを(マサ) 土といい,透水性がよく山崩れなどの災害を 起こしやすい。 (4) 我が国の平野部に分布する地層は,主と して(沖積)層および(洪積)層である。特に (沖積)層は(軟弱)な地層の場合が多く,建設 工事には注意が必要である。 (5) 大きな断層を地質構造線といい,日本の 地学上最も重要な構造線として(糸魚川静岡) 構造線と(中央)構造線がある。 (6) 断層では岩石がその面で(破砕)されてお り,断層面では角レキや粘土からなる (断層破砕帯)を形成し,軟弱で湧き水を伴い やすい。 (7) 岩石は風化作用によって破砕と分解を受 け,しだいに細かくなっていく。その要因 として,(物理的)風化,(化学的)風化, (生物的)風化がある。 (8) 岩石の表面が風化してできた土が,その まま堆積している場合を(残積)土という。 また,風化した土が流れや風によって遠方 まで運ばれて堆積し,圧力を受けて存在す る土を(運積)土という。 (9) 火山から噴出する火山灰は,岩石の風 化によってできた土とは著しく性質を異 にする特異な土で,我が国では広く分布 し,それぞれの地方によって(関東ロー ム),(しらす)と呼ばれる。土木工事には 困難な土となることが多い。 関東ローム→赤土
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