新計測機器の可能性 地上型 3D レーザースキャナーの活用 古川大助 1. はじめに 地上型 3D レーザースキャナは、任意のターゲットに向 けて照射したレーザーパルスが反射して戻ってくる時間 から、3次元情報を高速かつ高密度に計測する機器であ り、この技術を活用することで、雪氷防災技術の向上に 貢献できると考えられる。以下に機器の仕様、観測の特 徴および雪氷防災技術への適用可能性、計測事例につい て紹介する。 2. 仕様(NikonTrinble GS200) (1)概要 測定距離 1∼200m レーザー波長 写真-1 532nm 現場での計測状況 レーザー安全規格 クラス2 レーザー方式 タイム・オブ・フライト 距離標準偏差(表-1) 表-1 距離(m) 25 50 100 150 200 通常(mm) 1.4 1.4 2.5 3.6 6.5 最大(mm) 3.0 3.0 4.0 6.0 10.0 (2)概観(写真-2) 寸法 380×420×280mm,重量 電源 AC 13.6Kg 90/240V-50/60Hz,DC24V (3)運用時の人員数 写真-2 3D レーザースキャナ本体 2∼5人(山間部、雪など現場条件が悪いほど人数増) (4)現場計測での必要機材(写真-3,4) ①スキャナ本体 ①スキャナ本体 ②ノートパソコン ③電源 BOX ④発電機 ⑤3D 専用ターゲット ③電源 BOX ④発電機 写真-4 ⑤3D 専用ターゲット 株式会社アルゴス 写真-3 現場での機器設置の一例 ②ノートパソコン 3. 観測の特徴および可能性 (1)危険な雪崩斜面へ立ち入らずに、積雪斜面形状等 を安全に計測できる (2)雪庇、雪面形状等を乱さずに計測が可能なため正 確な形状が把握できる。また、定期的に計測する ことにより連続的な形状変化の把握も可能である (3)積雪データと無積雪期地形データを照合し、積雪 量・積雪形状を計測できる (4)人工雪崩の発生量を正確に把握できる 4. 計測事例 3D レーザースキャナーの計測事例として、無積雪期地 盤データと積雪後の 3D データを照合し、雪面形状の把握 写真-7 3Dデータ正面より 写真-8 3Dデータ側面より を行った例を示す。 (1)現地計測 現場は急斜面で作業員の立入りは困難。(写真-5) この様な地形も 3D レーザースキャナーならば、詳細 な地形データを取得することができる。取得した 3D データはパソコン上で画的に表現され、自由に回転、 拡大表示することも可能である。(写真-6∼9) 写真-5 現地写真 写真-9 写真-6 3D データ(加工前の生データ) 3Dデータ上空より (2)3D データの加工(クリーニング∼モデリング) 取得した3D データは以下の順で加工する。 3D データより必要とされる部分を切り出す (3)雪面データと無積雪期地形データの照合 降雪後 に計測を行い、無積雪期地形データ と重ね 合わせて 表示することで、積雪量、形状を面的に把 握できる。2つの3D データは同一の座標系で管理さ れているため、簡単に照合が可能である。 (写真-12) 斜面形状に不要な草などの 、ノイズデータを削除 斜面部分、構造物に分け個別にモデリング ① 写真-12 無積雪期地形データ、積雪後のデータを重ねて同時に 表示したもの。白い点群が積雪表面の3D データ。 写真-10 加工後の3D データ 34cm 30cm 写真-13 上図枠内①を拡大し横方向より表示 10.08 ? 写真-11 雪崩予防柵のモデル 写真-14 枠内①の積雪量 また、定期的 な計測を行うことによって 、雪面形状 の変化を把握することができる 。ここでは1断面のみ を比較しているが 、任意の断面で比較することが 可能 である 。 (写真-15,図-1) B 人工雪崩実施斜面 A 写真-15 断面比較位置 無積雪期地盤 凡 例 1月 人工雪崩実施前 人工雪崩実施後 図-1 雪崩予防柵付近の断面形状拡大図 5. まとめ 地上型3D レーザースキャナーによる計測、および取得 される3D データの特徴を以下に示す。 (1)計測対象を点ではなく面でとらえ、解析が可能 (2)危険箇所に立ち入ることなく安全に計測できる (3)脆く変形しやすい対象でも、そのままの形を正確 に計測できる これらの 特徴より、雪対策 については以下の利用が有効 と考えられる。 (1)危険な雪崩斜面の地形測定 (2)積雪量・積雪形状の計測 ① 雪崩予防工、または周辺の堆雪量測定 ② 雪崩デブリ堆雪量測定 ③ 人工雪崩による処理量の把握(図-1 参照) ④ 積雪の時系列的形状変化 の把握(成長過程・融 雪過程等) (3)植生の把握 樹木の位置、太さから 雪崩の発生する植生かどうか の判断
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