並行輸入と商標権 - Powell Gilbert

英国 最新知財判例
24th August 2010
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並行輸入と商標権
Honda Motor Co Ltd & Honda Motor Europe Ltd v David Silver Spares Ltd
[2010] EWHC1973(Ch)
2010 年 7 月 22 日 英国王立裁判所高等法院判決
本田技研工業株式会社及びホンダモーターヨーロッパ社(以下まとめて「ホン
ダ 」 ) は 、 ホ ン ダ 自 身 が 欧 州 経 済 地 域 ( EEA ) 域 内 で 販 売 し た も の で は な い 、 真
正な交換部品の、第三者による EEA 域内への輸入及び販売を制限する手段を講じ
た。ホンダは、以前より並行輸入への対抗手段を取ってきたところ、本件では、
ホ ンダ 製部品 の、 英国最 大の 販売会 社で ある Silver に 対し て提訴 した もので ある 。
2010 年 7 月 22 日、英国王立裁判所高等法院は、ホンダ勝訴の判決を言渡した。
本件訴訟における主要な論点は、「権利者による承諾」に関するものである。特
に、ホンダ自身による EEA 域外の市場での販売行為に基づく、商標権の消尽の成
否について、原告であるホンダが立証責任を負担するか否かという点が争われた。
本件で問題となったのは交換部品であり、当該部品自体には出所表示がなされて
いなかったため、ホンダは、Silver が販売した商品が EEA 域外から流入したもの
で あ る と す る 積 極 的 な 証 拠 を 提 出 し 得 な か っ た 。 そ こ で 、 Silver は 、 ホ ン ダ の 本
件訴えを棄却する略式判決を求めたのである。
EU 法においては、EEA 地域に関する、特定の製品の販売等に対する個別の同意が
ない限り、商標権は消尽しないものとされている。すなわち、一般的に、商標権
者が自ら EEA 域外の市場で商品を販売した場合であっても、同人の個別の同意が
ない限り、商標を付した真正商品の EEA 域内への輸入及び販売を禁ずることがで
きるのである ※ 。
本件において、裁判所は、欧州司法裁判所の過去の判例の解釈に基づき、商標権
の 消 尽に かか る 立証 責任 は 被告 であ る Silver が 負 担すべ き であ ると 結 論付 けた。
ま た 、ホ ンダ の 権利 侵害 の 主張 が広 範 過ぎ ると す る Silver の 主 張も 、 退け た。こ
れは、争いとなっている製品にマークが付されていない場合などには、商標権者
に個々の権利侵害行為の詳細を特定させるのは実際的でないとの判断に基づくも
のである。
本判例は、商標権の消尽を主張する被告が証拠提出の義務を負うべきであるとす
るものであり、英国の裁判所の、並行輸入の事案に対する現実的な態度を示して
いる。すなわち、本判決は、商標権者が、並行輸入品である旨の十分な立証が困
難な場合であっても、当該商品が EEA 域外から流入されたものと信ずるに足る理
由があれば、商標権者の方から訴訟を提起し、当該手続の中で、被告に対して当
該商品の出所に関する証拠の提出を義務付けることが出来るとしたものである。
本 判 決 は 、 オ ン ラ イ ン 取 引 、 又 は 従 来 型 の 販 売 店 経 由 の 取 引 か に 関 わ ら ず 、 EEA
域外から承諾なしで行われた並行輸入の停止を、更に後押しするものである。
商標権者のかかる権利が制限される場合もある(Oracle America, Inc v M Tech Data Limited and anr
[2010] EWCA Civ 997 2010 年 8 月 24 日控訴審判決)
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Alex Wilson [email protected]
Powell Gilbert LLP
訳
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