勤 務 医 と 労 働 基 準 法 1 労働基準法の適用 (1)一般職国家公務員には適用なし(国家公務員法附則第16条) ⇒ 国立病院、国立大学付属病院等・・・適用なし (※ 独立行政法人へ移行後は適用あり。) ⇒ 民間病院、公立病院等・・・適用あり (2)労働時間、休憩、休日に関する規定の適用除外(労基法第41条) ① 農・水産業従事者 ② 管理監督者 ③ 監視断続的労働従事者(宿日直勤務者) 2 労働基準法上の労働時間制度の概要 (1)労働時間(労働基準法第32条) 1週40時間、1日8時間 労働時間とは、使用者の指揮監督下にある時間(手待ち時間も含 まれる)。1週間とは就業規則に特段の定めがないときは、日曜日か ら土曜日までの暦週。また、1日とは午前0時から午後12時までの 暦日。ただし、前日の勤務が翌日まで及ぶ場合は1勤務として扱う。 (2)休憩(労働基準法第34条) 労働時間6時間超→少なくとも45分 8時間超→少なくとも1時間 休憩時間は、労働時間の途中に、①一斉に与え(ただし、保健衛生 業、商業等一部の事業は適用されず、また、書面による労使協定を締 結した場合を除く。)、②自由に利用させなければならない。 (3)休日(労働基準法第35条) 1週1日又は4週4日 休日とは原則として、午前0時から午後12時までの暦日をいう。 (4)時間外労働・休日労働(労働基準法第36条・第33条) 時間外・休日労働を行うには、次の事項を労使協定(36協定)で 定め、労働基準監督署長に届け出ることが必要。 ① 時間外労働又は休日労働をさせる必要のある具体的事由 ② 業務の種類 ③ 労働者数 ④ 1日及び1週間を超える一定の期間について延長するこ とができる時間又は労働させることのできる休日 ⑤ 労使協定の有効期間(労働協約による場合を除く) なお、④の延長時間については、時間外労働の限度基準が設けられてお り、1週間15時間、1カ月45時間、1年間360時間等の一定期間に 対応した限度時間を超えないものとしなければならない。 また、災害その他避けることのできない事由がある場合(急病等人命を 保護するために必要な場合を含む。)には、労働基準監督署長の許可又は 事後の届出により、時間外・休日労働を行うことができる。 以 上 の 時 間 外 労 働 ・ 休 日 労 働 に つ い て は 、 割 増 賃 金 の 支 払 が 必 要( 労 働 基 準 法 第 3 7 条 ) 法定時間外労働 25%以上 法定休日労働 35%以上 深夜(午後10時∼午前5時まで)労働 25%以上 なお、時間外労働が深夜に及ぶ場合は50%以上、休日労働が深夜に及ぶ 場合には60%以上の割増賃金の支払が必要となる。 (5)年次有給休暇(労働基準法第39条) 一定期間(6カ月以上)の継続勤務と出勤成績8割以上が要件。 勤続年数(年) 付与日数(日) 年次有給休暇は、原則として、労働者が請求した時季に与えなけれ ばならないが、事業の正常な運営を阻害するときは、使用者は時季を変更 できる。 また、年次有給休暇日数の5日を超える部分については、労使協定 による計画的付与もできる。 (6)変形労働時間制 ① 1カ月単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の2) ② フレックスタイム制(労働基準法第32条の3) ③ 1年単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の4) ④ 1週間単位の非定型的変形労働時間制(労働基準法第32条の 5) (7)みなし労働時間制 ① 事業場外のみなし労働時間制(労働基準法第38条の2) ② 専門業務型裁量労働制(労働基準法第38条の3) ③ 企画業務型裁量労働制(労働基準法第38条の4) 3 宿日直勤務の許可(労働基準法第41条) (1)概要 宿日直勤務者については、労働基準監督署長の許可を得た場合には、 労 働 基 準 法 上 の 労 働 時 間 、休 憩 、休 日 に 関 す る 規 定 は 適 用 が 除 外 さ れ る 。 (2)一般的許可基準 ① 勤務の態様 ・ 常態としてほとんど労働する必要のない勤務 ・ 原則として、通常の労働の継続は許可しない ② 宿日直手当 ・ 1日又は1回につき、宿日直勤務を行う者に支払われる賃金の 1日平均額の1/3以上 ③ 宿日直の回数 ・ 宿直については週1回、日直については月1回を限度 ④ その他 ・ 宿直については、相当の睡眠設備の設置 (3) 医師、看護師等の宿直の許可基準 (一般的基準の取扱い細目) ① 通 常 の 勤 務 時 間 の 拘 束 か ら 完 全 に 解 放 さ れ た 後 の も の で あ ること。 ② 夜 間 に 従 事 す る 業 務 は 、一 般 の 宿 直 業 務 以 外 に 、病 院 の 定 時 巡 回 、 異常事態の報告、少数の要注意患者の定時検脈、検温等、特殊の措置を必 要としない軽度の、又は短時間の業務に限ること。 応急患者の診療又は入院、患者の死亡、出産等があり、昼間と同態様 の労働に従事することが常態であるようなものは許可しない。 ③ 夜間に十分睡眠がとりうること。 ④ 許可を得て宿直を行う場合に、②のカッコ内のような労働が突発 的にあっても許可を取り消さないが、その時間については労働基準法第3 3条、第36条による時間外労働の手続を行い、同法第37条の割増賃金 を支払うこと。 4 医療機関における休日及び夜間勤務の適正化 (1)背景事情 ① 宿日直勤務において突発的に行われる通常の業務に関し、割増賃 金が支払われていないもの、宿日直回数が許可基準を上回っている ものなどの問題が認められるものがみられること。 ② 救急医療体制の体系的な整備が進められてきたことに伴い、宿日 直任務において救急医療が頻繁に行われ、断続的労働である宿日直 勤務として対応することが適切ではない状況がみられること。 ( 2 ) 適 正 化 に 係 る 通 達 ( 平 成 14年 3月 19日 基 発 第 0319007号 、 平 成 14 年 11月 28 日 基 監 発 第 1128001号 ) の 概 要 宿日直勤務に係る許可を受けた医療機関を対象として、次の事項を 順次実施する。 ① 自主点検表の送付・回収による宿日直勤務の労働実態の把握 ② 集団指導の実施 (時期) 第3四半期又は第4四半期 (対象とする事業場) ア 督促を行ったにもかかわらず、自主点検表を提出しないもの イ 宿日直勤務について、次のいずれかに該当するもの ① 自主点検表において、宿直又は日直勤務の回数が許可基準を上 回るもの ② 自主点検表において、1か月における宿日直勤務中に救急患者 に医療行為を行った日数が8日以上のもの ただし、次のものは除外すること。 a 1か月における宿日直勤務中に救急患者に医療行為を行った 日 数 が 8 日 な い し 10日 で あ る 場 合 に お い て 、 救 急 患 者 の 対 応 に 要 した時間が最も多い日について勤務医及び看護師ともに3時間以 内のもの b 1か月における宿日直勤務中に救急患者に医療行為を行った 日 数 が 11日 な い し 15日 で あ る 場 合 に お い て 、 救 急 患 者 の 対 応 に 要した時間が最も多い日について勤務医及び看護師ともに2時間 以内のもの c 1か月における宿日直勤務中に救急患者に医療行為を行った 日 数 が 16日 以 上 で あ る 場 合 に お い て 、 救 急 患 者 の 対 応 に 要 し た 時 間が最も多い日について勤務医及び看護師ともに1時間以内のも の ③ 自主点検表において、宿日直勤務中の通常の労働に対し宿日直 手当のほか必要な賃金を支払っていないもの ウ 自主点検表を提出した事業場のうち、宿日直勤務の全部又は一部 について所轄労働基準監督署長の許可を得ることなく、許可を受けた 場合と同様の取扱いを行っていると考えられるもの (宿日直勤務の適正化のための方策の例) ア 救急患者への対応等が頻繁に行われる一部の時間帯(終業時刻に 近 接 し た 夜 間 の 早 い 時 間 帯 等 ) の 勤 務 に つ い て は 、 法 第 41条 に 基 づ く 断続的労働である宿日直勤務の対象から除外し、変形労働時間制の活 用や始業・終業時刻の変更等により所定労働時間の中に組み込むか、 これが難しい場合には法定の時間外・休日労働として取り扱い36協 定の締結・届出、割増賃金の支払等を適正に行うこと イ 救急患者への対応等が頻繁に行われる一部の診療科、職種等につ い て は 、 法 第 41条 に 基 づ く 断 続 的 労 働 で あ る 宿 日 直 勤 務 の 対 象 か ら 除 外すること ウ 輪番制等により救急医療を行う場合であって、当番日においては 救 急 患 者 へ の 対 応 が 頻 繁 に 行 わ れ る と き は 、当 該 日 の 勤 務 に つ い て は 、 法 第 41条 に 基 づ く 断 続 的 労 働 で あ る 宿 日 直 勤 務 の 対 象 か ら 除 外 す る こ と エ 宿日直勤務に従事する者の範囲を見直し、宿日直勤務に従事する 者を増やすことにより、宿日直勤務に従事する回数を減らすこと オ 1回の宿日直勤務における勤務者の数を増やすことにより、勤務 者1人当たりの救急患者への対応等の時間を減らすこと カ 交替制を導入すること (改善報告書の提出) ア 集団指導に際しては、文書により改善を要請するとともに、改善 に係る報告書を提出するよう指導する。 イ 提出期限は、集団指導の日から3か月程度経過した時期とする。 ウ やむを得ないと考えられる理由により改善が3か月以内にできな いことを申し出た場合において、当該医療機関の具体的な状況からみ て、改善が十分期待できると認められるときは、改善期間については 弾力的に取り扱って差し支えない。 エ 医療機関から改善の方策等について相談がなされた場合には、当 該医療機関の実態を踏まえ、懇切な指導を行うよう留意する。 ③ 監督指導の実施及び許可の取消 上記指導を行ったにもかかわらず、報告書を提出しない医療機関及 び報告書の内容から宿日直勤務に問題があると考えられる医療機関に 対しては、監督指導を実施する。また、労働実態から宿日直勤務での 対 応 が 適 切 で な い こ と が 明 ら か な も の に つ い て は 、許 可 の 取 消 を 行 う 。 (参考) 過重労働による健康障害防止のための総合対策 1 「過労死」(脳・心臓疾患)の労災認定新基準 平成13年12月12日付け通達により、脳・心臓疾患の労災認定基 準が改正され、業務災害の認定に当たって、疲労の蓄積をもたらす長期 間の過重労働も業務による明らかな過重負荷として新たに考慮すること とした。 労働時間の評価の目安 疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間に着目 すると、その時間が長いほど、業務の過重性が増すところであり、具 体的には、発症日を起点とした1ヶ月単位の連続した期間をみて、 ① 発症前1ヶ月ないし6ヶ月間にわたって、1ヶ月当たりおおむね 45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症と の関連性が弱いと評価できること。 ② おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務 と発症の関連性が徐々に強まると評価できること。 ③ 発症前1ヶ月におおむね100時間又は発症前2ヶ月間ないし6 ヶ月間にわたって、1ヶ月当たりおおむね80時間を超える時間外 労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価でき ること。 を踏まえて判断を行う。 2 「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」 (平成14年2月12日基発0212001号)の概要 (1)「過重労働による健康障害を防止するための事業主が講ずべき措 置等」の内容 ① 時間外労働の削減 ② 年次有給休暇の取得促進 ③ 労働者の健康管理に係る措置の徹底 ア 健康診断の実施等の徹底 イ 産業医による助言指導 (ア)月45時間を超える時間外労働を行わせた場合 当該労働者の作業環境、労働時間、深夜業の回数及び時間 数、過去の健康診断の結果等の情報を産業医に提供 ⇒ ・事業場における健康管理について産業医による助言指導 (イ)月100時間を超える時間外労働を行わせた場合又は2ヶ月 以内ないし6ヶ月以内の1ヶ月平均の時間外労働を80時間を超え て行わせた場合 当該労働者の作業環境、労働時間、深夜業の回数及び時間 数、過去の健康診断の結果等の情報を産業医に提供 ⇒ ・当該労働者に対する産業医の面接による健康指導 ・産業医が必要と認める場合に健康診断 (ウ)過重労働による疾病を発生させた場合 産業医の助言を受け、原因究明及び再発防止徹底 (2)対策 ① 「過重労働による健康障害を防止するため事業主が講ずべき措置 等」の周知啓発 ② 過重労働による健康障害防止のための窓口指導 ③ 過重労働による健康障害防止のための監督指導
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