第9回ケモメトリックス・ワークショップ開催報告 キッコーマン(株)研究本部 相島鉄郎 [email protected] シカゴに本社を置く SPSS は Statistical Packages for Social Sciences という名前からも分かる ように、60 年代から汎用統計ソフトウェアとして社会科学分野で広く用いられてきた。しかし従来、も う一つの汎用ソフトウェアである SAS がケモメトリックスを初めとする化学分野で多用されてきたにも かかわらず、実験計画法などの研究を効率的に遂行するために必要な手法が備わっていないことなどか ら、SPSS の自然科学分野での利用例は必ずしも多くはなかった。ところが近年、ニューラル・ネットワ ーク、さらに実験計画法もオプションとして製品ラインに加え、自然科学分野の研究者に対する利便性 を急速に増している。そこで 11 月 20 日、日本化学会会館6階会議室において 10 時から、日本たばこ 産業・榊 武志博士による開会の挨拶に続き、シカゴから招いた Anthony J. Babinec が「汎用統計ソフ トウェアによる実験計画法と他変量データ解析の基礎と応用」について、SPSS のバージョン 7.5 とニュ ーラル・ネットワークおよび実験計画法のソフトウェアを駆使し下記の内容で講演した。 1 多変量解析法 ・一変量データの取り扱いとt-検定及び分散分析 ・試料数が少ないデータの検定 ・探索的な多変量解析-主成分分析、因子分析 ・パターン認識法-判別分析 ・検量法-重回帰分析、非線回帰分析、データ変換 2 実験計画法 ・要因計画法 ・部分要因計画法 ・D-最適化法 3 ニューラルネットワーク ・パターン認識への利用 ・検量への利用 ・適用に際しての留意事項 約50人の聴衆中には、外国からの留学生も2人含まれており、海外におけるケモメトリックスの認 知度合いの高さを示した。今までのワークショップ同様、今回も全体的には企業からの参加者が多く、 ケモメトリックスの手法の応用面への関心の高さをうかがわせた。今回の講演は、実験計画のソフトウ ェアを用いた、D-最適化法など最新手法の紹介や美しい応答曲面の図示はあったものの、多変量解析に ついては従来手法の基礎に関する丁寧な説明と応用例の紹介が多かった。しかし、ややもすれば基礎な しに一挙に応用に走る傾向も少なくない、我が国におけるケモメトリックスの現状を考えれば、重回帰 分野における残差検定などの基礎的な話題は、本ワークシップの本旨に適うものである。また、さまざ まな分布を示す2群データのパターン認識に判別分析とニューラル・ネットワークを適用し、試料分布 に応じて両手法の分類結果がいかに異なるかの三次元図を用いた比較は、統計的手法とニューラル・ネ ットワークの違いを理解するためには非常に有用であった。 お茶の水女子大学・藤枝修子教授の閉会の挨拶により講演会を終了した。講演終了後、約30名が参 加した日本化学会会館5階会議室における約2時間の懇親会は、参加者どうしの意見交換はもととより、 演者に対して様々な質問も発せられ非常に有意義なものであった。 -----------------------------------------------------------------------------------------あいしま てつお AISHIMSA, Tetsuo 連絡先 〒278 千葉県野田市野田 399 キッコーマン(株)研究本部 電話 0471 23 5980
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