NGO オフィスインターンシップ活動報告書 ・Bangladesh Work Camps Association (BWCA) ・NOWZUWAN (BWCA パートナーNGO) インターン期間:2008 年 7 月 24 日∼2008 年 10 月 24 日 松田真実 目次 1) はじめに 2) 活動内容 3) 団体概要 4) スケジュール 5) バングラデシュの生活・文化 6) 成果 7) 感想 1) はじめに 私は海外と関わり、特に発展途上国と関わり合いながら自分のキャリアを形成したい と考えていたのだが、大学卒業を前に、今まで数週間程度の短期での海外経験しか持ち 合わせていなかったため、ある程度の期間日本を離れてみようと決意しこのプログラム に申し込んだ。住み慣れたところを離れてバングラデシュでインターンを経験すること で、自分の英語が仕事として通用するのか、そして、NGOとは、途上国での実際の生 活はどのように送られているのか、問題点は、良い面は、文化はどのようなものかを知 りたいという意識を持って、3 ヶ月の間にできる経験はすべてして、成長して帰って来 ようと出発した。 ダッカに着いて、さあ仕事。と思いきや、BWCA でのオフィスワークがあまりないため、 はじめに 1 週間程首都ダッカの BWCA オフィス兼代表ラーマン氏のお宅へホームステイ し、その後 2 週間のボグラ地方、ウジュグラム村という小さな農村で植林ワークキャン プに参加。ワークキャンプ後にチッタゴンという、バングラデシュ第 2 の都市に移動し て、BWCA のパートナーNGO である NOWZUWAN(ノージュワン)で約 2 ヶ月のオフィスワー クに取り組むことを告げられた。 この間関わってくれた多くの人に支えられ、私にとってこのインターンは生涯の財産 となった。納得できないことや文化の差に悩むこともあったが、多くの仲間や人生の先 輩に助けられ、無事期間を終えることができた。この経験をふまえ、今後のキャリア形 成に生かしてゆける、と今自信を持って言える。今後バングラデシュでインターンやボ ランティアをする方の参考になれば、とこのレポートを作成する。 2) 活動内容 ①07/24∼ ダッカ 08/01 BWCA 代表宅にてホームステイ ②08/02∼ ボグラ 08/14 植林ワークキャンプ ③08/15∼ チッタゴン NOWZUWAN オフィスインターン 10/24 ①ダッカでのホームステイ ここでは特に仕事はしていないので詳細は割愛。ベンガル語のテキストを持参するのを忘 れたため、ひたすら同じ家に住む人たちと交流しつつベンガル語の単語を覚えた。ホームス テイ先は BWCA 代表ラーマン氏のお宅。ビルの 2 階がラーマン氏の家族の階、私の部屋は 3 階で、同じ階で美容院を経営している。 ②BWCA 植林ワークキャンプ BWCA 主催のこのワークキャンプでは、植林を軸に村人への環境教育をおこなった。参加 者は日本から私の他にもう 1 名、韓国から 2 名、そして首都ダッカの学生が 3 名、地元の学 生が 1 名参加した。引率に BWCA スタッフの方 1 名と、料理人として現地スタッフの方 1 名 とともにキャンプ施設に宿泊した。場所はダッカからバスで5時間ほど離れたボグラ地方、 ウジュグラム村というところで、広大な田んぼに囲まれた数十軒から成る村にある。 植林の作業は、昼間40℃近い気温、強烈な炎天下の中、思い描いたようには進まず、暑 い国で労働することの大変さが身にしみて分かった。また、この時期はちょうど雨期だった ため、雨が降ると足元がぬかるむため、止むまで作業ができなかったりと、完全に天候に合 わせた作業だった。 ワークキャンプ中、地元の小学校に出向き、<タナバタアクション>という教育プログラ ムを行うのに同行した。短冊に環境のためにすることを書いて、国連へ送るそうだ。 また、せっかく植えた木が家畜などに食い荒らされるのを防止するため、今回BWCA で は村人に木のオーナーとなってもらうことで、管理体制を整えた。もしも木がダメージを受 けたら、オーナーはBWCA に連絡し、BWCAは新しい苗木を調達する。そして木が充分 成長したら村人は薪として市場に売ることができ、収益の半分を得るシステムである。これ は3年前の植林プロジェクトで植えた300本の木のうち、残ったのはわずか5本だったと いうことを受けて考え出された仕組みである。ただ植えただけでは植林は終わらないという ことを知った。 ②NOWZUWAN オフィスインターン NOWZUWAN では教育、人権、環境に関する様々なプログラムについて活動しており、私の 仕事は主に代表のイマーム氏の参加するミーティングに同行することや、インターネットを 使った情報収集、文化交流として小学校や障がい者施設で日本の文化を紹介するなどだった。 3)団体概要 BWCA 組織概要 BWCA は国際ワークキャンプを実施することで、世界中の若者にボランタリズムとは何か体 感してもらい、国際交流を図る団体である。 今回のワークキャンプは、BWCA のメインプログラムである Volunteer Training Center (VTC)の建設事業のなか、植林部分を<Greening Asia and Climate Change>として実施さ れたものだ。 VTC は若者たちがボランティアについての知識と経験を得るためという目的と、ウジュグ ラムの村人に向けてプライマリーヘルスケアセンター、社会的弱者のためのジョブトレーニ ングセンターを建設することを目的としている。 そして Greening Asia and Climate Change プログラムとして植林を行う目的は、植林を 通じて気候変動へ取り組むことと、地域住民への啓発活動である。 NOWZUWAN 組織概要 団体分類はローカル(チッタゴン地方)、非政治、非利益、非政府組織である。 NOWZUWAN とは 勇者という意味のベンガル語で、正義心を持った問題解決に取り組む若 者を指し、女性や子どもを中心とした社会的弱者に対し、施設建設やエンパワーメント、教 育、支援、潜在能力の開発と利用を通じて経済的地位の向上を目指す。 特に積極的に取り組んでいるのは、障がい者に関するプログラムで、すでにレクリエーシ ョン、職業訓練施設を機能させており、さらに今後サービスの規模拡大に向けて複合機能を 持つビルを建設計画中である。 その他にも河川保護を中心とする環境問題、人権問題、非正規初等教育、健康啓発、マイ クロファイナンス、外国人ボランティア受け入れなど多岐にわたる活動を展開している。 4)スケジュール スケジュールは変則的で、ほとんどの時間を NOWZUWAN 代表イマーム氏のミーティングに 同行、又は PC を使っての情報収集で過ごした。 週に1∼2回、ポティヤという障がい者支援、小学校、エイズ啓発プロジェクト開催地の 村や、月 1 回ほど首都ダッカへの出張もあった。 たいていの場合、朝は通常時 8 時頃に起床、10 時頃出勤(代表宅と同じ建物)、14 時頃 昼食のため一時帰宅、20 時頃帰宅。 ラマダン時には 11 時頃出勤、17 時頃帰宅、19 時から 23 時頃まで仕事となっていた。 5)バングラデシュの生活・文化 日本の環境と比較した場合、バングラデシュの生活基盤は基本的に政府の機能不全のため 全く整っていないと言える。加えてイスラム教国であるため、女性でホームステイをする場 合には宗教行事や習慣などに、大きな差がある。しかしお客さんをとても大切にするホスピ タリティはどの国の人にも負けず、珍しがったりしながら温かく迎えてくれるのがバングラ デシュ人である。 ○気候 私の滞在していた夏場は非常に蒸し暑く、気温は 40 度になることも。バングラデシュの気 候は熱帯性で、10 月から 3 月にかけての冬季は温暖である。夏季は 3 月から 6 月にかけて 高温多湿な時期が続き、6 月から 10 月にかけてモンスーンが襲来する。ほぼ毎年のように この国を襲う洪水、サイクロン、竜巻、海嘯といった自然現象は、一時的な被害にとどまら ず、森林破壊、土壌劣化、浸食等を引き起こし、さらなる被害を国土に対して及ぼしている。 ○感染症 バングラデシュでは、コレラ、赤痢、腸チフス、A型・E型肝炎などの感染症や寄生虫疾患 がよくみられる。熱帯・亜熱帯地域特有の感染症であるマラリア、デング熱も存在。治療が 遅れると死に至る熱帯熱マラリアや従来の薬が効きにくい薬剤耐性マラリアが存在。38 度 以上の発熱がみられる場合、早めに医師に相談すること。軽い下痢の場合、整腸剤を服用し 脱水症状を起こさないようスポーツドリンクなどで水分を補給。サラインと呼ばれる生理食 塩水をつくる粉は大抵の場所にあるため、体調がすぐれないと時はすぐに周りに相談するこ と。 ○治安 女性の場合、常にNGO職員や関係者に同行してもらえるため、私の滞在中、危険を感じた ことはほぼなかった。ただし、バスではスリ被害は多いよう。携帯電話や財布はポケットか らはみ出ないようにするか、首から提げたり、腰につなげたりといった工夫が必要。 またサイクルリキシャの客や、歩行者を狙うひったくりが多く、ホストマザーも何度か被害 に遭っているそう。 女性の場合は痴漢被害もあり、イスラム教徒でなければ何してもかまわないと思っている人 もいるのは事実。注意すること。 基本的に外国人=お金持ちと思われており、金品をねだられることは日常茶飯事。できない ことははっきりと言うべき。 都市部、村落部に共通しているのは、貴重品は必ず鍵のかかる机の引き出しや、トランクな ど入れ物にしまうこと。バングラ人の家庭には人の出入りが多く誰が荷物に触れるかわから ないため、必ず貴重品を身に着け行動するように言われた。 ○電気 気温が上がると、電力不足により停電になりやすい。一日に何回も停電になるため、そのた びにPCを使う仕事が中断となる。自家発電機を持っている家庭もある。 ○水道 浄水場のキャパシティが小さく、ひどい時は2−3日に 1 度くらいしか水が出ないときがあ った。しかし植林のキャンプ地では井戸があり、水浴びに困ることはない。 NOWZUWAN滞在時、家庭用の井戸を掘ったので後半困ることはあまりなかったが、断 水時は毎日水浴びができないときもあった。 一般家庭にホットシャワー設備はなく、バケツに水をためて水浴びをする。 ○家 滞在した家は広く、西洋式の家と変わらない。ベッドには蚊帳もついている。エアコンはな いがファンがあるので、停電でないときは快適に過ごせる。 ○環境 道路は交通量がひどく、空気はかすみ長時間道路にいると、夜目が腫れた。とくに夕 方の渋滞は激しく、運転はみんな荒いので道路を渡るのにひやひやさせられ、実際追 突事故も多いので注意が必要。 ○移動 移動は基本的に、ベビータクシー(インドでオートリキシャと呼ばれているもの)を 使用。それに加え、サイクルリキシャやバイクの 2 人乗り、列車、バスを利用するこ とも。特に女性の場合、一人で外出することはほとんどなかった。 ○服 男性は、普通のシャツ&パンツもしくはルンギという 1 枚布のロングスカートのよう な腰巻を着用。 女性はスリーピースまたはサルワカミューズと呼ばれるズボン・チュニック・スカー フの 3 点セット もしくはインドと同じサリー(シャリーという)を着用。スカーフ (オロナと呼ばれる)は胸のふくらみを服の上から隠す役割をし、前からかけて、後 ろに両端をたらす。 私もスリーピースを着て生活。厳格なムスリムだと、外歩くときは長袖のロングドレ ス&目だけ出すスカーフ、結婚した女性は頭からスカーフをかぶるなど、いろいろな パターンがある。都会の先進的な生活をする女性は、ごくたまにジーンズを着ている こともあるが、足を露出することは決してない。 ○食事 食べ物は本当に毎食カレー。しかし、スパイスの調合や、水加減、具は全く違うので 毎食飽きなかった。インドと同じくスプーンは使わず、手でがばっと混ぜて食べるが、 食事の前は石鹸で手洗いするので清潔。 時間は規則的で、 朝食 8:30 おやつ 12:00 昼食 14:30 おやつ 18:00 おやつ 20:00 夕飯 23:00 朝とおやつには必ずチャー(ミルク&砂糖たっぷり)を飲む。 濃い目に味付けたカレーは、パラパラのインディカ米と良く合うため、バングラ人は 女性でも一食にカレー皿山盛り 2 杯 3 杯食べる。 バングラの食事は油を多く使うため、慣れないと腸にガスがたまり、お腹を下す原因 となるので、油を減らしてもらうようリクエストすると良い。 果物も豊富で、バナナやパイナップル、グアバ、カスタードアップルにジャックフル ーツ、さとうきびなど多くを楽しめる。 おやつの甘味はミシュティと呼ばれ、非常に甘く、様々な種類がある。 ○宗教習慣 イスラム教徒がほとんどであるが、ヒンズー教徒、少数民族(日本人と同じモンゴロイド系 山岳民族)の仏教徒もいて、特に争いもなく共存しているよう。 9月はイスラム教徒のラマダン(断食)月で、早朝およそ4時から夕方およそ6時まで飲み 物、食べ物、その他欲のある行為を断つ。旅行者や肉体労働者、病人、子供は免除される。 生活習慣は宗教と密接に結びついており、1日に何回もお祈りをする。 ○身分 カーストが存在する。仕事により身分差があり、実際ベンガル語には敬語がある。 中流階級以上の家庭には家事全般、子守りをする住み込みのお手伝いさんがいることが多い。 英語を話さない、明らかにホストファミリーが身分の違うものとして接している彼らとの接 し方に最初戸惑うことも多かった。 参考 Website ・厚生労働省検疫所 http://www.forth.go.jp/tourist/worldinfo/02_asia/h15_bang.html ・Wiki トラベル バングラデシュ http://wikitravel.org/ja/%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%87%E3%82%B7%E3 %83%A5 ・Wikipedia バングラデシュ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%87%E3%82%A 3%E3%82%B7%E3%83%A5 6)成果 BWCAの植林キャンプでは、300 本の植林、小学校・農村での環境教育を達成。 NOWZUWANでは資金調達の情報収集、ネットワークづくり、10 人ほどの障がい者グ ループ・3つの学校の小学生との異文化交流として日本文化の伝達を達成。 7)感想 いままで大学で勉強してきた国際組織や NGO の働きを実際に活動しているところを 間近で経験したいと思い参加した今回のインターンシップでは、想像していたよりも ずっと実りの多いものとなった。 バングラデシュでは政府が正常に機能していないため、NGO の働きが基本的な生活を 支えるので、NGO なしでは教育、福祉、環境、衛生など生活基盤が保障されない。街の オシャレスポットが NGO 経営のブティックだったり、地方に行くと管轄 NGO の所在地 を表す看板が立っていたりと日本の NGO と比べ、その存在感は圧倒的だ。 イマーム氏は毎日ミーティングやネットワーキングのため、政府関係者やビジネス のエリートのお宅訪問、大学教授やジャーナリスト等色々なとこに出かける。ビジネ スで成功してる人や、教授の人生談を聞くと勉強になるし、自身のモチベーションア ップにもつながった。 英語の文書の翻訳作業、NGO 運営の学校で日本文化を教えたり、障がい者施設に行っ たりと、ローカルながら多岐に渡るプログラムをしっかり運営していて、それぞれの プログラムを勉強するのも興味深かった。 NOWZUWAN の主な活動プログラムを列挙すると、 A, 障がいと開発 B, ハルダ川保護 C, カルナフリ川保護 D, 都市丘陵保護 F, 人権とグッドガバナンス G, 非正規初等教育 H, 水と公衆衛生 I, 固形ごみ管理と堆肥化 J, 植林 K, 家族計画サービス L, マイクロファイナンス M, 国際ボランティア受け入れ N, HIV/AIDS 予防 O, 災害管理、タバコ反対、薬物反対、子どもと女性の人身売買防止 と、分野もさまざまだが、それぞれのプロジェクトマネージャーが各自プロジェクト を管理運営しているため、どこのプロジェクトを見ても、問題点や取り組むべきこと など、知ることができた。身体障がい者もマネージャーとしてばりばり働いているの を目の当たりにし、彼らの自国を良くしようという勢いには感銘を受けた。 しかしやはり私は先進国の豊かな国から来た日本人として、色々と要求されたし、意見を ぶつけ合わせることも多々あった。バングラデシュではチャンスが来たら、それを自らつか まなければならないということを当然としている人が多く、<察する>という日本の文化と は異質なものである。 他にも文化の違いや習慣で日本と異なることが多かったが、その違いを知る機会を持てて、 今までよりも視野が広がったことを感じている。 また、この期間に作った友人関係は生涯かけがえのない財産になるだろう。現在は帰国後 数か月経っているが、バングラの友人たちとの連絡は途絶えていない。 最後に滞在を支えてくれたバングラの方たち、NICE スタッフの方、日本から応援してく れた友人、家族に心から感謝をこめてこの報告書を終わりにする。
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