ICT活用のための環境整備について 1.日常的に活用するために ここ数

ICT活用のための環境整備について
1.日常的に活用するために
ここ数年で学校には実物投影機(書画カメラ)やインターネットに接続されたPC,プ
ロジェクタや電子黒板など様々な種類のICT機器が導入された。それらをどのように授
業に活用するかという視点が大切だが,もう一つ重要なことがどの様にすれば日常的に活
用できるかという視点である。
結論から言えば,しまい込まないことである。
教室や近い場所にすぐに使える状態で待機させておくこと,施錠できる倉庫や棚にしま
わないこと。ケースや布等のカバーを掛けないことである。当然ながら授業でICT機器
を使う予定があれば,事前に開錠し倉庫から運び出し接続をすればよい。しかし,実際に
は授業前の10分の休憩時間に準備をし,授業後の10分にそれらをしまい鍵を戻す余裕
はあまりない。また,授業中に「これを拡大すれば子どもたちに分かりやすいかも」など
急に使いたいと思う場面もあるだろう。
だから,私たちがすぐに手の届く場所にこれらの機器を置いておくことが「日常的に活
用 す る 」 た め に 重 要 な こ と で あ る 。 以 下 に そ の 具 体 例 を 紹 介 す る が ,「 手 の 届 く 場 所 」 に
置いておくためには,当然ながら子どもたちへの指導や機器のメンテナンスを行うことが
必要である。
2.プロジェクタを日常的に使うために
プロジェクタは実物投影機やPCなどを手軽
に接続でき,最も広範囲に使えるICT機器で
ある。そのためプロジェクタの設置の仕方に工
夫が必要になる。
その一つの方法として右のような市販のキャ
ス タ ー 付 き ラ ッ ク を 活 用 し て い る ( 写 真 01・ 0
2)。 プ ロ ジ ェ ク タ は ス ク リ ー ン に 映 る 位 置 を 考
えながら2段目に収納している。
写 真 01
2段目に収納することによって,一番上(天
板)の部分にはPCや実物投影機を置くことが
可能になる。3段目にはケーブルやリモコン,
使わない実物投影機を置くスペースにしている
(写 真 02)。
3段目はホームセンターや100円ショップ
で売られているケースを使ってケーブルやリモ
コンなどを納めたり,レターケースを置いて説
写 真 02
明書やプリントなどを入れるなどの工夫も可能
である。
ラックにこれらの機器が乗っていることによって,接続させるケーブルをまとめること
ができる。また電源ケーブルについても,市販の延長コード(3m)を結束バンドでラッ
クに固定することで,ラックから出ているケー
ブ ル は 延 長 コ ー ド だ け に な る ( 写 真 03)。
もちろんプロジェクタ専用のラックも販売さ
れており,自由に高さや使い方が選べる点が優
れている。しかし強度の問題があるので市販の
ラックを購入する場合には注意が必要である。
ラックを選ぶに当たりこだわった点が,ラッ
クの天板から床までの高さである。スクリーン
写 真 03
とプロジェクタは子どもたちの席と黒板の間に
置くことが多い。そのため,子どもたちの視界
をできるだけ遮らない高さを90センチまでと
考 え た 。 写 真 04 は プ ロ ジ ェ ク タ の す ぐ 後 ろ に 座
る子どもの目の高さからスクリーンを見た様子
である。低学年には高いが,中学年以上の場合
にはわずかに下の部分が遮られる程度である。
写 真 04
3.説明書づくり
機器に付属している説明書を見ればほとんど
のことがわかるが,どこに書いてあるかを探す
だけでも時間がかかる。それが複数の機器を使
うとなればなおのことである。せっかく授業で
活用したくとも,接続でつまずいていては活用
どころの話ではない。
そこで,機器の接続から調節までを一枚にま
と め た 説 明 書 を 作 成 し た ( 写 真 0 5 )。 手 書 き で
写 真 05
はあるが,必要なことだけを書くことで時間的なロスの解消を図ることができる。
4.保管場所について
4年から6年までの教室は2階にあり,ここ
に電子黒板2台,プロジェクタが乗ったラック
が2台ある。これらを授業者は必要なときに教
室 に 持 っ て 行 き 活 用 し て い る ( 写 真 0 6 )。 プ ロ
ジェクタを乗せているラックにキャスターがつ
いているのはこのためである。
教室が1階にある低学年については,これら
の機器は教室に保管して使っている。機器を移
写 真 06
動する際に,子どもがぶつかってけがをしたり,機器を破損したりリスクを軽減するため
である。床にビニルテープで境界線をつくり,入らないようにするなどの指導を行ってい
る学級もある。
5.電子黒板やスクリーンの工夫
①スクリーンや電子黒板と黒板の位置関係
電子黒板やプロジェクタで投影するスクリーン(以下まとめてスクリーンとする)の位
置 関 係 は 様 々 な 書 籍 で も 取 り 上 げ ら れ て い る 。大 き く 分 け て 黒 板 の 横 に 置 く 場 合( 写 真 07)
と 黒 板 に 重 ね て ス ク リ ー ン を 置 く 場 合 ( 写 真 08・ 09) と が あ る 。
写 真 07
写 真 08
写 真 09
②電子黒板について
現 在 , プ ロ ジ ェ ク タ と 併 せ て 使 う ボ ー ド 型 の 電 子 黒 板 ( 写 真 07) と テ レ ビ 型 の 電 子 黒 板
( 写 真 08) が あ る 。 授 業 の 内 容 や 投 影 し た い 資 料 な ど に よ っ て そ れ ぞ れ の 良 さ が あ る こ と
を研修した。
ボード型は画面が大きいので教室の後ろからでも十分見ることができる。しかし,プロ
ジェクタで投影するので,ラックやボードが動くとキャリブレーションを設定し直す必要
がある。
テ レ ビ 型 の 場 合 ,キ ャ リ ブ レ ー シ ョ ン な し で す ぐ に 使 え ,接 続 す る ケ ー ブ ル 類 も 少 な く ,
準備にかかる時間も短くてすむ。映し出される画像も鮮明である。しかし,ボード型と比
較 し た 場 合 画 面 の 大 き さ が 小 さ い の で ,映 し 出 す 教 材 な ど の 大 き さ を 配 慮 す る 必 要 が あ る 。
③スクリーンの素材
写 真 10 は ど ち ら も 黒 板 に ス ク リ ー ン を 貼 っ た
状態である。左側は専用のスクリーンで,発色
が よ く ,背 面 は 磁 石 に な っ て お り は が れ に く く ,
ホワイトボードマーカーで書くこともできる。
右側はホームセンターで売っている白いテーブ
ルクロスである。発色は弱いが,薄くて丈夫。
何よりも1メートルあたり500円くらいから
写 真 10
購入できる。
スクリーンにできる素材としてはテーブルク
ロスの他に模造紙でも同様のことができる。こ
れらは大きさを自由にしたり,黒板ではなく壁
に貼って使うこともできる。テーブルクロスで
あれば3メートル以上の大きなスクリーンも安
価 に つ く る こ と が で き る ( 写 真 11左 側 )。
その他にはホワイトボードをそのままスクリ
ーンにすることもできる。マーカーで書き込む
こともできるが,どうしても画面が光るのが難点である。
写 真 11
6.情報センター(コンピュータルーム)の環境整備
校内には読書センター(図書室)と情報セン
ター(パソコンルーム)がある。情報センター
には14台のデスクトップPCが配置され,図
鑑などの調べ学習に使える書籍が開架されてい
る。
写 真 12 は 平 成 2 1 年 の 情 報 セ ン タ ー の 様 子 で
あ る 。2 人 1 組 で イ ン タ ー ネ ッ ト を し て い る が ,
ノートや筆箱を置くスペースがわずかしかな
写 真 12
い。書籍やインターネットを使って調べたこと
をノートに書き取ったりまとめたりといった学
習に向いていないという指摘があった。そこで
PC本体をモニタの後ろに配し,使わないとき
にはキーボードも立てて置くことでノートを広
げたり,書き写したりするための十分なスペー
ス を 確 保 し た ( 写 真 13)。
また,PCとPCの間を広くとることで,模
造紙を使ってまとめることができるように配置
写 真 13
を 工 夫 し た ( 写 真 14)。
このほか情報センターには,題材の見つけ方
から発信までの工夫の仕方や調べ方等の工夫を
掲示したほか,子どもたちに机上を片付けるな
どの注意を呼びかけるポスターを作成し掲示し
た。
教職員向けには情報センターの活用の仕方や
インストールされているソフトウェアについて
の説明書を作成した。
写 真 14
7.終わりに
I C T 機 器 活 用 の た め の 環 境 整 備 は 学 年 や 単 元 ,授 業 の 目 的 に 応 じ て 変 え る 必 要 が あ る 。
しかし,それらの全てに対応することはなかなか難しい。今後どのような機器やソフトウ
ェアが教室に入ってくるかわからない中で大切なことは,指導者としてはまず使ってみる
ことである。そして箱や倉庫に入れて置くのではなく,すぐに使える環境を用意すること
が大切である。
ICT機器やPC等の機器やメディアは急速に普及している。そして,子ども達はそれ
が身の回りに当たり前の様にある環境で生活している。子どもたちのために我々は必要な
機器やソフトを必要な時にすぐ使える環境づくりを今後も心がけたいと考えている。