第1学年1組 音楽科学習指導案 平成14年11月27日(水) 授業Ⅰ 場 所 音 楽 室 指 導 者 吉 沢 ゆ き 1 題材名 「ようすをおもいうかべて」 2 題材の目標 〇 歌詞の表す様子を思い浮かべたり、歌い方を工夫したりすることができるようにする。 〇 楽曲の気分を感じ取って、想像豊かに表現したり聴いたりすることができるようにする。 3 題材の評価規準 観点 ア 音楽への関心・意欲・態度 イ 音楽的感受や表現の工夫 ウ 表 現 の 技 能 エ 鑑 賞 の 能 力 ①歌唱表現に興味や ①歌詞の表す情景を ①自分の歌声に気を ①音楽を聞いて,音 題 関心をもち,楽し 想像し,イメージ つけながら,気持 楽の表す情景を想 材 く歌おうとする。 をふくらませて歌 ちを込めて歌う。 像しながら楽しく の ②音楽を聴いてその い方を工夫する。 ②はっきりとした発 聴く。 評 よさや楽しさを感 ②情景を表す音楽を 音で歌詞をはっき ②おもな旋律を口ず 価 じ取ろうとする。 聴いて,その楽し りと歌う。 さんだり身体表現 規 さを感じ取る。 したりしながら, 準 音楽のまとまりを 感じ取って聴く。 ①範唱を聴いて,同 ①歌詞の内容から歌 ①自分の歌声に気を ①楽曲の気分を感じ 学 じように歌いたい の情景を想像し, つけながら,楽曲 取って,情景を想 習具 という願いをもっ 楽曲の気分に合っ の感じに合った歌 像しながら聴く。 活体 て歌おうとする。 た歌い方を自分で い方で歌う。 ②はじめの部分(フ 動の ②自分なりの感じ方 考えて工夫する。 ②口を大きく動かし, ァンファーレ)− A に評 で,音楽の楽しい ②音楽を聴いてお話 歌詞を大切にして − B − A 一終わり お価 気分を感じ取ろう の登場人物になっ 歌う。 の部分の気分の違 け規 とする。 たつもりで自分で いを感じ取る。 る準 お話をつくったり, 自由に身体表現を 工夫したりする。 4 教材曲 教 材 曲 名 作詞・作曲者名 こねこのきょうだい 佐田 黒沢 和夫 吉徳 作詞 作曲 楽曲について・教材性・題材との関連 この曲は,こねこが広場で遊ぶ様子を描いた楽しい曲である。ス タッカートやシンコペーションを効果的に使った旋律が,この曲の リズミカルでユーモラスな感じを一層引き立てている。 歌詞では,1 番は「広場で元気に遊ぶ様子」,2 番は「遊び疲れて 昼寝をしている様子」,3 番は「うっかり寝過ぎてあわてている様子」 が時間の経過とともに描かれている。主人公のこねこの様子を分か りやすく描いている歌詞なので,子どもたちは教科書のイラストに 頼らなくとも,容易にその情景を想像することができそうである。 それぞれの場面は,こねこたちの動きという視点から見ても「動→ 静→動」といった変化が感じられる。「げんきにあそんでる」「なか よくひるねする 」「あわててかけだす」などの言葉から,こねこた ちの「動き」に気づかせるようにして,歌い方を工夫する活動を進 めていくようにしたい。 ― 吉 沢 1 ― 教 材 曲 名 楽曲について・教材性・題材との関連 作詞・作曲者名 ドイツ生まれの作曲家イェッセル(1871 ∼ 1942)の作品である。 おもちゃのへいたい イェッセルは,ワーグナー,ブラームス以降,目立った音楽家が出 なかった時代に,オペレッタなどの作品を中心に作曲し,また指揮 イェッセル 作曲 者としても活躍した。 この曲は,音楽の気分や・曲想の変化を感じ取って,想像豊かに 聴くことができる。ファンファーレで始まる A の部分,4 度上に転 調して演奏される軽やかな B の部分,再び現れる A の部分,突然や ってくるコーダの部分で構成されている。 軽快なテンポのこの曲の導入としては,体を揺らしたり,軽く手 を打つなどの自然な身体反応を生かしながら,まずは気持ちよく聴 くことから始めたい。 そのうえで,音楽の曲想の変化や感じをとらえて,自由に場面を 想像しながら聴くようにする。教科書には情景を思い浮かべて聴く ための活動のヒントとなる説明文が示されているが,挿絵を参考に して様子を想像することも,この曲を興味深く聴くためのアプロー チとなろう。 昭和 16 年,NHK の「幼児の時間」を通して発表された曲である。 たきび 作詞者の巽 聖歌(1905 ∼ 1973)は北原白秋に学んで「赤い鳥」 などに投稿,昭和初期の童謡詩人として知られている。 巽 渡辺 聖歌 作詞 茂 作曲 作曲者の渡辺 茂(1912 ∼)は千葉県出身で,小学校の教職につ いていたとき,NHK から依頼を受けて作曲した。 今ではだんだん見られなくなった落ち葉たきの光景を,子どもの 目でとらえて描いた歌詞となっている。かつてはあちらこちらでよ く見かける光景で晩秋から冬にかけての風物詩であったが,このご ろはこうした光景を見たこともない子供たちも多いのではないかと 思われるので,説明して歌詞の情景をとらえて歌えるようにする。 「あたろうか,あたろうよ」の会話風の部分は気持ちをこめて歌い やすく,語りかけるような気持ちで表情豊かに歌うキーワードとな りそうである。季節感が豊かに感じられる歌詞の内容を考えながら, 言葉を大切にして歌うことを心がけさせたい。 明治 34 年発行の「幼稚園唱歌」で発表された曲である。 おしょうがつ 作詞者の東 くめ(1877 ∼ 1969)は,「鳩ぽっぽ」「水でっぽう」 など,口語体による童謡を滝廉太郎とのコンビで世に送り出した。 東 くめ 作詞 作曲者の滝廉太郎(1879 ∼ 1903)は,日本の洋楽の黎明期に活躍 滝 廉太郎 作曲 し, 「花」 「箱根八里」などの歌曲のほかにピアノ曲なども作曲した。 正月を待ち望む当時の子どもたちの心情がそのまま描かれた歌詞 である。時代とともに子どもたちの遊びも変化して,この歌に見ら れるような遊びも姿を消しつつあるようだ。そこで,この歌から感 じ取ることができるお正月を楽しみに待つ気持ち,子どもたちのお 正月の遊びなどについて話し合いながら,様子を思い浮かべながら 表情豊かに歌う楽しさを味わえるようにする。 ― 吉 沢 2 ― 5 題材全体の指導計画 ●学習内容 ・学習活動 ○ 指 導 の 手 だ て 教 材 曲 : こねこのきょうだい ●こねこの様子を思い浮かべ ○教科書の挿絵を参考に,こねこ 本時 て歌ってみる。 の様子を思い浮かべるようにす ・歌に出会い,歌ってみる。 る。 ・歌詞を音読して内容をつか ○ 1 番から 3 番まで気分を変えて む。 音読し,こねこの気持ちの違い ・曲の気分を感じ取りながら を想像させるようにする。 歌う。 2 教 材 曲 : こねこのきょうだい ●様子や場面を思い浮かべな ○特に,各節で繰り返される言葉 がら,歌い方を工夫する。 に気を付けて歌うようにする。 ・発音に気を付けて,歌詞唱 ○こねこの気持ちになって想像す する。 るようにする。 ・歌詞の言葉を手がかりに様 ○特徴をつかんで工夫していると 子や気持ちを話し合う。 ころを互いに参考にしながら, 自分たちの表現を工夫するよう にするとよい。 3 教 材 曲 : こねこのきょうだい ●歌に合わせて身体表現を工 ○歌詞の内容からこねこの様子を 夫する。 想像して,こねこになったつも ・歌ったり,自由に身体表現 りで動くようにする。 したりする。 ○身体表現をすることで,場面の ・グループで身体表現を工夫 変化による曲の気分の違いを感 する。 じ取るようにする。 ・身体表現をしながら,歌い ○身体表現によって,曲の気分を 方を工夫する。 さらに感じ取るようにする。 4 教材曲:おもちゃのへいたい ●曲の気分を感じて聴く。 ○指導者の発問で活動を促す。 ・挿絵を手がかりに場面を想 像して聴く。 ○挿絵を指さしたり,兵隊になっ ・主な旋律をロずさんだり, たつもりで行進したりして,曲 音楽に合わせて自由に身体 の気分を感じ取るようにする。 反応をしたりする。 教 材 曲 : おもちゃのへいたい 5 ●場面を想像し,旋律の変化 ○楽器を演奏するまねをしたり, を感じ取って聴く。 強弱に反応したりして,自由に ・音楽に合わせて身体表現を 身体表現するようにする。 しながら聴く。 ○おもちゃの兵隊になったつもり ・思い浮かべた様子や場面を でお話をつくるようにする。 発表し合い,お話をつくる。○それぞれの発表をまとめ,想像 ・つくったお話をたどりなが を広げるようにする。 ら,じっくり聴く。 時 1 6 7 ◆ 評 価 規 準 ◆歌唱表現に興味や関 心をもち,楽しく歌 おうとする。ア−① ◆自分の歌声に気をつ けながら,気持ちを 込めて歌う。ウ−① ◆歌詞の表す情景を想 像し,イメージをふ くらませて歌い方を 工夫する。 イ−① ◆はっきりとした発音 で歌詞をはっきりと 歌う。 ウ−② ◆情景を表す音楽を聴 いて,その楽しさを 感じ取る。 イ−② ◆音楽を聴いてそのよ さや楽しさを感じ取 ろうとする。ア−② ◆音楽を聴いて,音楽 の表す情景を想像し ながら楽しく聴く。 エ−① ◆おもな旋律を口ずさ んだり身体表現した りしながら,音楽の まとまりを感じ取っ て聴く。 エ−② 教 材 曲 : た き び ●歌詞の内容を理解し,情景 ○言葉のもつ意味やイメージを大 ◆歌詞の表す情景を想 をとらえて歌う。 切にして歌うように促す。 像し,イメージをふ ・グループで歌い方を話し合 くらませて歌い方を って練習し,発表し合う。 工夫する。 イ−① 教 材 曲 : おしょうがつ ●楽しいお正月の様子を思い ○待ち遠しいと思う気持ちも込め ◆自分の歌声に気をつ 浮かべて歌う。 ながら,歌詞の内容を話し合い, けながら,気持ちを ・みんなで今までの学習を生 お正月の様子を思い出すように 込めて歌う。ウ−① かして歌い方を工夫する。 させる。 ― 吉 沢 3 ― 6 題材の指導にあたって (1) 題材について この題材では,今までの学習で少しずつ身に付けてきた「音程やリズムを正しく歌う」といっ た基礎的な表現技能を一歩進めて,声や音に関心をもちながら,楽曲にふさわしい歌い方や場面 を想像しながら聴くなど,表情豊かな表現を求めて工夫する活動を進めていく。そこで,子供た ちが具体的なイメージをもって表現を工夫したり聴いたりすることができるように,イメージと してとらえやすい歌唱教材と鑑賞教材を取り上げる。 歌唱表現の活動では,様子を思い浮かべて歌ったり,歌詞の気持ちを生かして歌い方を工夫し たりする。この題材では曲想を感じ取るよりどころを主に歌詞に置き,歌詞の内容から気分を感 じ取って歌声に生かす工夫をする。そのためここでは,「歌詞が表す情景を思い浮かべて,自分 なりに気分を感じ取ること」と,「感じ取った気分を生かした表現の仕方を工夫すること」の二 つを中心に学習を進めていくようにする。 鑑賞では,楽曲の感じをとらえて自由に場面を想像したり,様子を思い浮かべたりしながら聴 く活動を展開する。そこで,音を聴いてイメージを広げる楽しさが味わえる曲を取りあげ,導入 では曲名や挿絵などにとらわれず, 「音楽の感じから自由に何かを想像して聴くことができたか」 というところに重点を置いた鑑賞活動を進めるようにしていく。その後,身体表現を取り入れた り,挿絵なども活用したりして,楽しみつつ想像豊かに音楽と触れ合う機会にしていく。 (2) 児童の実態について ( 男18名 女22名 計40名 ) 入学直後の4月より,音楽の授業だけでなく,朝の活動や帰りの活動においても音楽に取り組 む機会をできるだけ多くもつようにしてきた。自由に楽器に触れたり演奏の仕方を教えたりする 時間をとってきた結果,音楽が楽しいということを実感して喜んで音楽活動に取り組む児童が多 くなってきている。その結果,朝や休み時間も楽器を演奏して過ごす児童が増えてきている。子 供たち同士で仲良く合奏する姿が見られるようになり,担任が指導にあたることができない朝の 活動などにおいても,子供たちだけでしっかりと合奏に取り組む姿が見られるようになってきた。 学芸会では,ドラムセットやシンセサイザー,電子オルガン,木琴,鉄琴,グロッケンなどを 使った演奏に全員で取り組んだ。音楽を楽しむ心を育てることを大切にし,美しい音を求める態 度や感性を培うように意図して働きかけてきたので,演奏に集中して取り組むようになってきて いる。その結果,飛躍的に楽器の演奏技術が伸びてきて,楽器の演奏に関しては,自信をもち始 めている児童が増えてきている。そして,みんなで一生懸命取り組んで大勢の前で演奏を発表し たことによって,大きな満足感と成就感を味わい,ますます音楽が好きになったと答えている。 歌唱の方では,喜んで歌う児童が多く見られる。学芸会に向けて歌でストーリーを進めていく オペレッタに取り組み,のべ21曲に及ぶ歌を踊りながら歌いこなしていく中で,音程やリズム に対する感性が徐々に伸びていったように感じた。しかし,楽しく歌うことを優先してきている ために,じっくりと歌い方について話し合ったり,考えたりするというような経験はまだ少ない。 鑑賞では,聴いて感じたことを指揮をしてみたり身体表現をしてみたり様々な方法で豊かに表 す児童が多く見られる。鑑賞の学習では何とか自然に何度も聴く機会がもてるように展開の工夫 をしてきたので,鑑賞曲を口ずさんだり旋律を楽器で演奏したりする児童の姿も見られた。 楽器も歌唱も技術的な個人差が大きいので,どの児童も楽しめるような活動の進め方には配慮 してきた。子供たちに音楽について聞いてみると,歌も楽器も大好きだと答える児童が多く,そ の理由は「きれいな音が出るから」「いろいろな楽器をしてみたい」「みんなと合わせると楽し い」「歌うと元気がでてくる」「歌ったり踊ったりするとわくわくする」「上手にできるともっと やりたくなる」「声がひびいて気持ちいい」など,ほんとうに音楽を心から楽しんでいる様子が 感じ取れた。よく中高学年に見られるような音楽に対する苦手意識を持っている児童は一人もい なかった。しかし,取り組む姿勢にむらが見られる児童もいるので,常に指導の工夫が必要とな っている。 なお,今月の第2週から転入してきたばかりの児童があり,その児童は課外の活動で取り組ん できたレパートリーにおいてはまだ習得していない。活動をする際は,負担を感じさせないよう に配慮してきている。 ― 吉 沢 4 ― (3) 指導の着眼 ① 児童が楽しく活動に取り組めるようにする 導入の段階で十分音楽に浸ってとにかく楽しい気分になれるように,既習曲や音楽集会で 歌う曲などを演奏したり,歌ったりする。 そして,本時は本題材の第1時であるとともに教材曲に初めて出会う時間となるので,学 習のめあてをはっきりと提示して本時の学習に対する興味・関心を高め,教材曲を「歌って みたい」という意欲を児童一人一人がもつことができるように働きかけることを大切にする 必要があると考えている。 音楽活動を進める段階では,児童がそれぞれもっているイメージを尊重し,自分で感じた こと,自分なりに考えたことを大事にしていく。また,表現の工夫をしていくために音楽的 な感性を働かせて判断していくような場面を多くとり,楽しい雰囲気で表現の工夫が進むよ うに授業を展開したい。表現の工夫を中心にして活動をすることは本時が初めてといっても よい段階なので,具体的に表現の工夫をする観点を示して活動の方向をわかりやすくするこ とによって子供たちが楽しく取り組むことができるようにしたい。 ② 評価の在り方 評価規準を考えて評価計画を立てるとともに,実際に評価を行う際に留意しなければなら ないことをおさえておきたい。児童が自分なりのものを発揮しながら楽しく音楽活動に取り 組んでいくことができるように,児童一人一人の学習の様子を的確に評価し,適切な指導を 考えていくようにする。その場合,児童一人一人をとらえ,共感しながらその子らしいよさ や特性を見いだし伸ばしていくことを心掛ける。よさを認めることは,児童に自信をもたせ ることにつながり,主体的に活動しようとする意欲を促す効果が期待できると考えている。 それから,教師による評価だけではなく,児童による自己評価や子供同士の相互評価を積 極的に取り入れ,児童一人一人の音楽に関する感受性を高めていこうと考えている。 ③ 歌い方の工夫をする際の観点 本題材では,児童の実態を考慮して,分かりやすく歌い方の工夫ができる要素として,下 記の3点にしぼって授業を進めることにした。そして,児童が自ら気付き,一人一人の感性 を土台にして考えながら表現の工夫をする活動が展開できるように働きかけていくようにす る。 <様子を思い浮かべて表情豊かな表現をする工夫> 歌詞の内容を中心にして歌の様子をイメージして,歌い方を工夫させていく。 旋律は,音の高さ,音と音をつなぐリズムなどの要素で構成されている。この音の連続 を,あるところではなめらかに,またあるところでは歯切れよく歌うことによって,旋律に 表情が生まれていく。それを踏まえた上で,歌詞からイメージした様子を表現できるような 歌い方を工夫していくように働きかける。 その際,理屈をこねすぎないようにして児童自身の表現を引き出し尊重していくことを心 掛け,表情豊かな歌い方の工夫を場面ごとのイメージを具体的なことばにして話し合いを進 めていこうと考えている。 声の出し方の工夫に関しては,言葉だけで確認することは限界があるので,何とか児童が 理解しやすいように比較をさせるなど,働きかけを工夫する。そして,様子を思い浮かべて 表情豊かに歌おうとする心情をしっかりともたせることを大切にして,表現の技能などは具 体的に指導するように配慮したい。 ― 吉 沢 5 ― <強弱の変化の工夫> ここでの強弱とは,曲全体の構成の中でフレーズごとの強弱を指している。 強く歌いたいところと,弱く歌いたいところを考えて表現することに挑戦させる。または, 「強い」「弱い」という表現だけではなくて,情景を考えて「元気よく」とか「静かに」な どというようにその場面にふさわしい言葉で表現させることも考えている。 みんなで考えた歌い方を実際に声にしていくことができるように,強くしたり弱くしたり するための声の出し方や歌い方をみんなで工夫していくことを大切にする。強弱の工夫がで きたとしても,実際にスムーズに強弱をつけて歌うことは子供たちにとっては決して簡単な ことではないので,児童一人一人が「こんなふうに歌いたい」という意欲をしっかりともつ ことができるように働きかけることが大切になると考えている。 <曲に合った速度(テンポ)の工夫> 歌うとき,まずテンポの設定が重要となるということに気付かせたい。 学芸会で取り組んだオペレッタに出てきた数々の歌を思い起こさせ,それらが様々なテン ポで歌われていたことに気づかせる。オペレッタでは教師のピアノ伴奏でテンポ設定されて しまい,自分で考えて歌っていたわけではないと思われるので,「ちょうどよい速さ」とい う表現で話題にしていこうと考えている。 テンポが少し変わっただけで曲の雰囲気がちがってくるので,教材曲のイメージにぴった りのテンポはどれぐらいなのかについて話し合う。そして,みんなで決めたテンポがほんと うに心地よいのかを,実際に歌ってみて確かめていく。その際,電子オルガンの機能である リズムの自動演奏を活用し,設定するテンポを客観的に数値としても確認しておきたい。 7 本時の指導 (7時間扱いのうちの第1時) (1) 題材名 (2) 目標 こねこのきょうだい こねこの様子を思い浮かべて歌い方を工夫して歌う。 (3) 本時の指導の着眼 本時は教材曲に初めて出会うことになるので,楽曲のよさを子供たちに感じ取らせてまず楽 しく歌を覚えることができるように配慮する。そして,情景を想像して表現を工夫する活動に も初めて取り組むことになるので,歌い方を工夫することの必要性に気づかせ,具体的に一つ 一つみんなで話し合って活動を進めていく。 歌は歌詞・旋律の動き・リズム・速度,さらに伴奏の響きなどが一体となってその歌の気分 をつくり出しているが,中でも歌詞は内容が具体的であるためその歌の曲想に大きくかかわる 存在だといえる。そこで本時は,まず歌詞をヒントにして,みんなで考えを出し合いながら歌 い方を工夫していくことにする。本時の教材曲である「こねこの きょうだい」は,1 番から 3 番までのこねこたちの変化に富んだ動きや様子を想像させることが容易で,歌詞を読んでいく だけで時間の経過とともに変わっていくこねこたちの様子をまるで小さな物語のようにとらえ ることができそうである。例えば,1 番では,「はしって はしってじゃんぷして」とこねこ たちが遊んでいる楽しそうな場面の様子,2 番は「そろってそろって に昼寝をしている様子,3 番は「こまった こまったよるに きの かげで」と静か なる」とあわてている様子など, 動と静の対比から,歌う速度や,強弱,声の出し方などを工夫して歌うといった活動の展開を 考えている。子供たちの感性を大事にしながら,話し合いを進めていくように心がけたい。 ― 吉 沢 6 ― (4) 評価規準 【音楽関心・意欲・態度】 学習活動における 具体的な評価方法と評価の判断例 具体の評価規準 (A:十分満足できる状況,B:おおむね満足できる状況,支援) ア−① ○評価方法 歌唱表現に興味 この評価規準は,本時初めて学習する教材曲「こねこのきょうだい」 や関心をもち,楽 に出会うことになるので,楽曲のよさを積極的に感じ取り,歌詞を手が しく歌おうとする。 かりにして1番から3番までの歌い方を工夫しようという課題に対して 関心をもって意欲的に取り組もうとしているかどうかを,表情や態度か ら観察し判断する。 A:歌うことの楽しさや,こねこの様子を感じ取って表現の工夫をするこ との楽しさを声や態度で表している。さらに,一生懸命歌って満足し た表情がうかがえる。 B:音程やリズムを正しくとらえて歌い,歌詞を読んでこねこの様子を感 じ取って歌い方を工夫しようと試みている姿が見られる。 支援:新しい教材曲に取り組むことになってもあまり反応を示さず,1番 2番3番のこねこの様子の違いを歌い方で表現しようという意欲が あまり顕著でない場合には,この曲のよさがわかるように働きかけ るとともに,本人のそばに行き,一緒になって活動することで音楽 に対する関心や意欲を引き出すように支援する。 【音楽的な感受や表現の工夫】 学習活動における 具体的な評価方法と評価の判断例 具体の評価規準 (A:十分満足できる状況,B:おおむね満足できる状況,支援) イ−① ○評価方法 歌詞の表す情景 この評価規準は,歌詞を手がかりにして1番から3番までの情景の移 を想像し,イメー り変わりに気づいたり,こねこの様子の違いを感じ取ったりして,表現 ジをふくらませて の工夫に役立てることができるかを,発言やつぶやきから観察し判断す 歌い方を工夫する。 る。 A:歌詞を読んでこねこの様子を感じ取り,1番,2番,3番それぞれの 歌い方を自分なりに工夫しようといろいろと考え,実際に歌ってみた り,自分の意見を発言したりしている。 B:歌詞を読んでこねこの様子を感じ取り,1番,2番,3番それぞれの 歌い方を工夫しようと,つぶやきに出している姿が見られる。 支援:歌の歌詞を読んでもあまり反応を示さず,1番2番3番のこねこの 様子の違いについてもあまり感じ方が顕著でない場合には,わかる ように説明するとともに,本人のそばに行き,一緒になって活動す ることで音楽の受け止め方や表現の仕方(歌い方)を引き出すよう に支援する。 【表現の技能】 学習活動における 具体的な評価方法と評価の判断例 具体の評価規準 (A:十分満足できる状況,B:おおむね満足できる状況,支援) ウ−① ○評価方法 自分の歌声に気 この評価規準は,リズムや音程,速度に気を付けたり,旋律の流れや をつけながら,楽 歌詞の発音などに気を付けたりして,よりよい表現をめざして歌ってい 曲の感じに合った るかを,歌っている表情や声,態度などを観察し判断する。 歌い方で歌う。 A:リズム,旋律,強弱,速度などに気を付けて,常によりよい表現をめ ざしてていねいに歌ったり,きれいな声で歌ったり楽しそうに活動し ている。さらに,友達の歌声に耳を傾け,みんなと合わせて歌うとと もに,伴奏の響きを聴いて歌っている。 B:リズムや音程,速度に気を付けたり,旋律の流れや歌詞の発音などに に気を付けて歌っている。 支援:自分の歌声に耳をすまして友達と合わせたり,リズムや音程に気を 付けて歌ったりしようとする意欲が見られない場合は,近くで一緒 に歌うことで歌い方を身につけていくことができるように支援する とともに,苦手意識をもたせることがないように配慮して接する。 ― 吉 沢 7 ― 7 本時の学習過程 過 学 習 活 程 雰 囲 気 を つ く る A,Bは評価規準 ( )は,評価の観点 [ ]は,評価の方法 1 既習曲をみんなで合 1 みんなで演奏できる曲を楽しく 1 奏して楽しむ。 演奏することで,これから音楽を B 曲の感じをつかみ, ・ きらきらぼし 楽しもうとする気持ちを盛り上げ 今までの学習を生かし ・ ファンファーレ る。 て演奏している。 ・ Every Heart など [演奏,観察] 2 8 分 動 指 導 上 の 留 意 点 指 導 の 手 だ て 既習曲を歌って楽し 2 体をゆらしたり,身体表現を入 2 む。 れたりしながら,リラックスして B 歌に合わせて自ら体を ・ ペンギン 数曲歌うことで,友達と声を合わ 動かし,楽しく歌唱表 ・ もりのレストラン せて歌うことの楽しさを感じ取ら 現をしようとしている。 ・ きょうりゅうとチ せたい。 ( ア) ャチャチャ など それぞれの楽曲の感じをとらえ B 友達と一緒に心を合 て,ふさわしい歌い方や似合った わせて歌うことのよさ 身体表現ができるように働きかけ や楽しさを感じ取って る。 いる。 (イ) 子供たちが歌いたい曲があると B 友達の歌声に耳を傾 いう声が出た場合,可能であれば け,みんなの声と合わ 取り上げる。 せて歌うとともに,伴 奏の響きを聴いて歌っ ている。 ( ウ) [歌唱表現,表情観察] 3 つ か む 15 分 本時のめあてを理解 3 本時のめあてをしっかりと理解 3 し,自分なりの取り組 することができるように働きかけ B 歌唱表現に興味や関 み方の見通しをもてる る。 心をもち,楽しく歌お ようにする。 うとする。 A 本時のめあてを踏ま こねこのようすをおもいうかべてうたいましょう。 えてよりよい歌唱表現 を考え,すすんで発言 4 歌に出会い,歌って 4 教科書の挿し絵を参考にして, している。 ( ア) みる。 こねこの様子を思い浮かべるよう [発言,表情観察] に働き掛ける。 B リズムや音程,速度 に気を付けたり,旋律 の流れや歌詞の発音な どに気を付けたりして 歌っている。 A 歌を注意深く聴き, リズム,旋律,強弱, 速度などに気を付けて, よりよい表現をめざし て歌っている。 (ウ) [歌唱表現,表情観察] ― 吉 沢 8 ― 5 歌詞を音読して内容 5 1 番から 3 番まで気分を変えて 5 をつかんで歌ってみる。 音読し,こねこの気持ちの違いを B 歌詞に合った挿し絵, 想像させるようにする。 話し合いなどからイメ ージを膨らませ,気持 1番 「はしって はしって じゃんぷして」 ちを込めた歌い方を工 遊んでいる楽しそうな場面の様子 夫している。 動 A 自分の表現意図をし 2番 「そろって そろって きのかげで」 っかりもって,歌い方 静かに昼寝をしている様子 静 を具体的に考え発言し ている。 (イ) 3番 「こまった こまった よるになる」 [発言,表情観察] あわてている様子 動 B 心を込めて歌詞を読ん 表現の工夫に生かしていくよう だり歌ったりしている。 に場面の移り変わりをしっかりと A 場面の移り変わりを らえさせて表現の工夫に生かして 自分なりにイメージし いくように働きかける。 て歌詞を読んだり歌っ りしている。 ( ウ) [歌唱表現,表情観察] 6 歌詞から感じ取った 6 歌詞から感じ取ったイメージに 6 曲の気分を表現するよ 合うように場面ごとに歌う速度や B 歌詞の表す情景や気 うに歌う。 声の出し方を考え,みんなで話し 持ちを想像したり,登 合って歌ってみるというような活 場するこねこの気持ち 動をする。 になったりして,歌い 方を工夫している。 1番の歌い方 楽しそうに 元気よく A 旋律や言葉の繰り返 テンポ → はずんだ感じで し,場面の変化などを 明るい声 感じ取り,表現を工夫 強弱 → 強く している。 ( イ) [発言,表情観察] 2番の歌い方 静かに ゆっくり テンポ → ゆったりした感じで やさしい声 B 曲の様子をとらえて 強弱 → 弱く 歌っている。 A 自分の歌声に気をつ 3番の歌い方 あわてて 困ったように けながら,様子を思い テンポ → 急いでる感じで 浮かべて気持ちを込め あせっているような声 て歌っている。 (ウ) 強弱 → やや強く [歌唱表現,表情観察] 7 半分ずつのグループ 7 友達の表現を聴く機会をもたせ 7 でそれぞれ歌い方を工 ることによって,より表現の工夫 B 友達の表現を聴き, 夫しながら歌って聴き のよさに気づかせたい。 そのよさを感じ取って 合う。 そして,さらに表現の工夫を進 いる。 めることができるように働きかけ A 友達の歌声に接して る。 さらに表現を工夫を考 えている。 (イ) [発言,表情観察] つ く る 17 分 ― 吉 沢 9 ― 振 り 返 る 3 分 意 欲 を も つ 2 分 5 本時の学習の成果を 5 本時のがんばりは認めた上で, B これからも表情豊か 話し合う。 1回で完璧に歌えるはずがないの に歌おうという意欲を ・ 思うとおりに歌う で,次の時間も歌い方を工夫して もつ。 ことができた部分と, いくことを知らせる。 (ア) まだうまく歌えない [発言,表情観察] 部分を思い返す。 6 次時の学習内容を知 6 次時は,ますます自分なりに歌 B 次時の活動に意欲を り,意欲をもつ。 い方を工夫していこうとする態度 もって取り組もうとし ・ 本時の成果を生か が大事であることを,理解させた ている。 して,さらに歌い方 い。 を工夫しようとする。 8 準備物 楽譜,歌詞,鍵盤ハーモニカ,ピアノ,キーボード,オルガン,電子オルガン, 低音奏用オルガン,立奏用木琴バス・テナー,立奏用木琴アルト,立奏用木琴ソプラノ, グロッケン,立奏用鉄琴,ビブラフォーン,シンセサイザー,ドラムセット 9 場の設定 黒 ビ ブ ラ フォーン 板 木 琴 鉄 琴 キーボード 木 琴 電子オルガン シンセサ イザー ドラム セット マリンバ 木 琴 木 琴 木 琴 グロッケン 音 ― 吉 楽 沢 室 10 ― 木 琴 10 板書事項 歌うときのめあて 演奏するときのめあて 「きょうりゅうと 「 Every チャチャチャ」 階 名 Heart 」 演奏するときのめあて 「きらきらぼし」 表 階 名 表 1番,2番の歌詞 ようすをおもいうかべてうたいましょう! 「こねこのきょうだい」 1番の歌詞 「こねこのきょうだい」 2番の歌詞 工夫のキーワード 3番の歌詞 工夫のキーワード 挿し絵 挿し絵 ― 吉 沢 「こねこのきょうだい」 工夫のキーワード 挿し絵 11 ―
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