279 熊本県内における薬剤耐性グラム陰性桿菌の分離状況について ー熊本臨床微生物ネットワーク研究会の2013年度報告よりー ◎木下 まり 1)、永田 邦昭 2)、山本 景一 3)、磯崎 将博 4)、溝上 幸洋 5)、川上 洋子 6)、西田 志保 7) 独立行政法人地域医療機能推進機構 熊本総合病院 1)、公立玉名中央病院企業団 公立玉名中央病院 2)、熊本大学医学部附属病院 3)、社団法人 天草郡市医師会立 天草地域医療センター 4)、恩賜財団 社会福祉法人 済生会熊本病院 5)、独立行政法人 国立病院 機構 熊本医療センター 6)、荒尾市民病院 7) 【目的】熊本臨床微生物ネットワーク研究会(Kumamoto 【結果】ESBLs 産生菌の分離菌数は、熊本県内で薬剤 Clinical Microbiology Network:KCMN)は、熊本県内の感 耐性グラム陰性桿菌が分離されはじめた 2003 年度 153 株か 染症対策を目的に活動している。今回は、県内における ら 2013 年度 1533 株へと約 10 倍に増加している。当初は熊 2003 年度より 11 年間の薬剤耐性グラム陰性桿菌の分離状 本県北部の施設を中心に分離される傾向だったが、2009 年 況について報告する。 度頃より熊本市内地域や天草・県南地域でも増加蔓延して 【対象と方法】2003 年 4 月から 2014 年 3 月までに県内 いる。ESBLs 産生菌の菌種は E.coli 14 施設(熊本医療センター,熊本赤十字病院,済生会熊本病 いるが、その他の腸内細菌科の菌種も増加傾向である。特 院,熊本大学医学部附属病院,熊本市立熊本市民病院,荒 に K.pneumoniae については各施設から分離される傾向にあ 尾市民病院,公立玉名中央病院,熊本総合病院,熊本労災 る。薬剤耐性緑膿菌, MBL産生菌は、年間 40 株前後で推 病院,天草中央総合病院,天草地域医療センター,人吉医 移している。MBL産生菌の菌種内訳は、2010 年度以降非 療センター,公立多良木病院,水俣市立総合医療センタ 発酵菌より腸内細菌科の菌種が多くなっている。 ー)において各種臨床材料より分離されたESBL産生菌,薬 【考察】熊本県下における薬剤耐性グラム陰性桿菌の分離 剤耐性緑膿菌,メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)産生菌を 数は腸内細菌科の菌種を中心に増加傾向にある。感染対策 対象に集計を行った。薬剤耐性菌の検出は、各施設におけ や感染症の治療において重要な耐性菌も含まれており、ひ る日常業務の薬剤感受性検査の成績とESBL産生菌およ きつづきこれらの動向を監視する必要がある。ネットワー びMBL産生菌をスクリーニング目的とするCVA配合に クを活かした地域での感染対策はもとより、今後は県内で よるディスク法,シカベータテスト,SMAディスク法,β-ラ 薬剤耐性菌の歯止めとなるような活動が検討課題である。 クタマーゼテスト等を用いて判定した。 が約 8 割を占めて 連絡先 0965-32-7111(内 377) 280 POT 法および rep-PCR 法による薬剤耐性緑膿菌の菌株識別能に関する検討 ◎幸福 知己 1)、森崎 隆裕 1)、中井 依砂子 1)、黒田 亜里沙 1)、川口 正彦 1)、吉田 弘之 2) 一般財団法人 住友病院 1)、国立大学法人 神戸大学医学部附属病院 2) 【はじめに】多剤耐性緑膿菌(MDRP)およびメタロ-β ラ POT 法で POT 型 644-41 となった 59 株は、rep-PCR 法では クタマーゼ(MBL)産生 P. aeruginosa は医療関連感染の原 5 タイプに分類され、46 株が 95%以上の相同性を示し、 因菌として最も重要な耐性菌の一つであり、アウトブレイ 13 株は 88~94%の相同性であった。また、アウトブレイク クが疑われる場合には、分子疫学的な解析が必要となる。 が発生した病棟から分離した MBL 産生 MDRP 28 株の 今回、MDRP および MBL 産生 P. aeruginosa を用いて Phage POT 型は 2 タイプに分類され、POT 型 644-41 が 26 株であ open reading flame typing(POT)法と rep-PCR 法の比較検討 った。一方、rep-PCR 法では 5 タイプに分類され、21 株が を行ったので報告する。【対象】2007 年から 2013 年に当 95%以上の相同性を示した。【まとめ】今回の検討では、 院で入院患者から分離した MBL 産生 MDRP 41 株、MBL POT 法ならびに rep-PCR 法ともにほぼ同等の菌株識別能で 非産生 MDRP 6 株、MBL 産生 P. aeruginosa 24 株および環 あると考えられた。また、POT 法、rep-PCR 法ともに菌株 境由来 MBL 産生 MDRP 4 株の合計 75 株を対象とした。 識別の標準法であるパルスフィールドゲル電気泳動法 【方法】POT 法は緑膿菌用シカジーニアス分子疫学解析 (PFGE)と同等の識別能であったとの報告がある。 POT キット(関東化学)を用いて POT 型を決定した。rep- PFGE は操作が煩雑で結果判明まで数日を要するのに対し、 PCR 法は DNA 抽出したものを rep-PCR にて増幅し、 POT 法、rep-PCR 法ともにキット化されており操作が簡便 diversilab system(シスメックス ビオメリュー)により解析 で短時間で結果が得られ、過去の分離株との比較も可能で し、電気泳動パターンが 95%以上の相同性を有するものを ある。POT 法ならびに rep-PCR 法はアウトブレイクが疑わ 同一株とした。rep-PCR 法は神戸大学附属病院感染制御部 れた際に迅速な対応が求められる病院検査室において有用 に依頼し測定した。【結果および考察】検討した 75 株は、 な検査法である。 POT 法 13 タイプ、rep-PCR 法 11 タイプに分類された。 連絡先:06-6443-1261(内線 6040) 281 TAZ/PIPC 耐性を指標としたプラスミド性耐性遺伝子の検出 ◎長南 正佳 1)、山田 好恵 1)、武政 雄大 1)、中村 文子 1)、三澤 成毅 1)、堀井 隆 1)、大坂 顯通 1) 順天堂大学医学部附属順天堂医院 1) 【目的】近年、本邦では ESBL 産生菌やカルバペネム耐性 pneumoniae 4 株(2.0%)、K. oxytoca 4 株(4.5%)で、 腸内細菌科細菌(CRE)などプラスミド性耐性遺伝子を保 IPM、MEPM の MIC 値はすべて 1μg/ml 以下であった。遺 有する E. coli や Klebsiella spp.が増加している。特に 伝子検査は 13 株実施し、E. coli は ESBL が 5 株(CTX-M- CRE は、欧米やアジア圏で多く検出され、2009 年以降輸入 1 型と CTX-M-9 型)、AmpC が 4 株(CIT 型と DHA 型) 事例が散見される。CRE の検出には IPM や MEPM が用い で、カルバペネマーゼ遺伝子保有株は認められなかった。 られるが、一部の遺伝子型では耐性度が低く、日常検査で 一方 K. pneumoniae は CTX-M-1 型が 2 株、そのうち 1 株は 見逃される可能性がある。今回、CRE の検出を目的として OXA-48 型同時保有株で、改良ホッジテスト陽性であった。 TAZ/PIPC 耐性株を抽出し、これらのプラスミド性耐性遺伝 なお、K. oxytoca 2 株はいずれの遺伝子も検出されなかった。 子の保有状況を調査した。 【考察】TAZ/PIPC 耐性 E. coli および K. pneumoniae は、全 【材料と方法】対象は 2014 年 1~8 月に各種臨床材料から 株がプラスミド性耐性遺伝子を保有しており、感染対策上 分離された 938 株(E. coli 652 株、K. pneumoniae 198 株、K. 留意すべき耐性菌であった。また、今回カルバペネム系薬 oxytoca 88 株)である。同定・薬剤感受性は MicroScan 感性の OXA-48 型カルバペネマーゼ産生菌を検出し、 WalkAway Neg EN panel(SIEMENS)を用い、TAZ/PIPC の TAZ/PIPC 耐性が CRE の指標となり得ることが示唆された。 MIC 値≧32/4μg/ml を耐性とした。耐性株は酵素阻害試験に 連絡先 03-3813-3111(内線 5186) よる β-ラクタマーゼ産生のスクリーニングを行った。プラ スミド性耐性遺伝子(ESBL3 種、AmpC6 種、カルバペネ マーゼ 6 種)は PCR 法により検出した。 【結果】TAZ/PIPC 耐性株は、E. coli 17 株(2.6%)、K. 282 Viral aetiologies of acute encephalitis syndrome in Bangladeshi children ◎Daisuke Mori1)、Takashi Matsumoto2)、Akira Nishizono2)、Kamruddin Ahmed3) Department of Clinical Laboratory, Kyushu University Beppu Hospital / Department of Microbiology, Faculty of Medicine, Oita University 1)、 Department of Microbiology, Faculty of Medicine, Oita University2)、Research Promotion Institute, Oita University / Department of Microbiology, Faculty of Medicine, Oita University3) Background: Acute encephalitis is the inflammation of the brain 114 months. A total of 18 (18.5%) infected causes were identified, with high mortality and sequelae. In developing countries, the 79 (81.4%) remained unknown. Among the positive samples, 15 incidence 5.23–7.3 (83.3%) were of single virus and 3 (16.7%) were of mixed viruses. cases/100,000/year and 4.6–7.4%, respectively. Although the Human boca virus (HBoV), human herpes virus 1, Epstein Barr situation is much severe in developing countries, the cause is virus, human coxsackie virus B3, human echovirus 2, human mostly unknown due to several limitations. This prospective study parechovirus was performed to clarify etiology of encephalitis in children of a Phylogenetic tree showed that HBoV1 strains from encephalitis tertiary care hospital in Bangladesh. patients made a cluster. A cluster predominantly formed by Methods: The study was conducted from April 2010 to August HBoV1 detected in the CSF may indicate that possibly these 2012 at Institute of Child and Mother Health Hospital situated in strains are genetically similar. Full genome sequencing of strains Matuail, detected in the CSF and stool may find out the differences. and Dhaka, mortality rate Bangladesh. varies Hospitalized from children with 3, and human adenovirus were identified. encephalitis were enrolled during the study period. CSF samples Conclusion: Only through ongoing prospective surveillance will were subjected to routine investigations. Encephalitis-causing be apparent whether these agents will remain significant causes of pathogens were detected by PCR. Nucleotide sequences of the encephalitis or whether they will be replaced by other emerging PCR products were determined to confirm the product, and to pathogens. perform phylogenetic analysis. Contact: 0977-27-1712 Department of Clinical Laboratory, Results: All targeted data were available in 96 samples. The male Kyushu University Beppu Hospital female ratio was 1.7:1. The age of the children ranged from 2 to
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