プラスチック製血液培養ボトルの基礎的検討

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プラスチック製血液培養ボトルの基礎的検討
◎若林 真衣 1)、伊藤 優佳 1)、安田 和成 1)、中澤 恵子 1)、中村 明子 1)、森本 誠 1)
三重大学医学部附属病院 1)
【はじめに】ガラス製血液培養ボトルは衝撃
送を行なった直後の 2 通りで実施した。培養
により破損する危険性があるため、気送子に
期間は(1)と同様とし、各条件での陽性シ
よる搬送が難しい。そのため、病棟スタッフ
グナル検出に要する時間を比較した。
が不足する夜間帯などでは検体を接種した血
【結果】(1)発育支持力の検討結果:両ボ
液培養ボトルが数時間室温に放置される場合
トルで陽性シグナル検出に要する時間差は最
もあり、培養陽性率および陽性シグナル検出
大 16.3%であった。一例として、各菌種
に要する時間に影響を与える可能性がある。
103CFU/mL を好気ボトルで培養した際の所要時
衝撃に強く気送子での搬送が可能なプラス
間を以下に示す。 S. aureus :ガラスボトル
チック製血液培養ボトルへの移行を目的に、
9.4 時間/プラスチックボトル 9.25 時間、
ガラス製血液培養ボトルとプラスチック製血
E. faecalis : 7.6 時間/8.0 時間 、
液培養ボトルの発育支持力の比較、及び、輸
S. pneumoniae:11.8 時間/12.1 時間、
送・保管条件の影響を検討した。
E. coli:8.1 時間/7.7 時間、
【対象および方法】血液培養ボトルは両ボト
P. aeruginosa:10.6 時間/9.6 時間、
ルともに好気用・嫌気用レズンボトル(日本
C. parapsilosis:28.2 時間/27.2 時間。
ベクトン・ディッキンソン)を使用した。
(2)輸送・保管条件による影響の検討結
標 準 菌 株 6 菌 種 ( ATCC29213 S. aureus、
果:いずれの菌種においても接種直後と気送
ATCC29212
E. faecalis、 ATCC49618
子による搬送直後の陽性シグナル検出に要す
S. pneumoniae、ATCC25922 E. coli、
る時間差は 2.8%以内であった。
ATCC27853 P. aeruginosa、
【考察】プラスチック製ボトルはガラス製血
ATCC22019 C. parapsilosis )を使用し、
液培養ボトルと同等の発育支持能を有し、気
103 ~108 CFU/mL の菌液を作成した。
送子による搬送でも菌体発育に影響を受けな
(1)発育支持力の比較検討:各濃度の菌液
かった。また、当院の気送子送受信ステーシ
1mL とヒツジ脱繊維血液 9mL をガラス製及びプ
ョンは、約 1mの高さから(気送子が)落下す
ラスチック製の好気および嫌気ボトルへ接種
るが、搬送によるボトルの損傷もみられず、
し、BACTEC FX(日本ベクトン・ディッキンソ
耐衝撃性にも優れていた。血液培養は、検体
ン)を用いて培養した。培養期間は最大 1 週
接種後早期に培養を開始することが望ましい
間(168 時間)とし、BACTEC FX に挿入してか
ため、検体接種直後に気送子で搬送すること
ら陽性シグナル検出に要する時間を比較した。
により、病棟スタッフの業務負荷の軽減、培
(2)輸送・保管条件による影響の検討:ブ
養開始までのタイムラグの縮小が期待できる
ドウ糖液(大塚製薬)でボトル中のグルコー
ことが示唆された。
ス濃度を 100mg/dL に補正したプラスチック製
の好気および嫌気ボトルへ各菌液 1mL を接種
会員外共同研究者:田辺正樹、杉本和史、中
した。BACTEC FX へのボトル挿入タイミングは、
谷中
菌液接種直後と菌液接種後に気送子による搬
三重大学医学部附属病院(059-232-1111)