アスファルトの熱を利用した発電 6 班 青木蒼 1. はじめに 近年特に都市

アスファルトの熱を利用した発電
6 班 青木蒼
1. はじめに
近年特に都市部では温暖化の影響が顕著に表れて
いる.その原因は温室効果ガスや,室外機からの排熱,
アスファルトからの放熱など様々なものが挙げられ
る.言い換えれば気温が高いということはその分だ
け熱エネルギが大きくなるということである.そこ
でこの熱エネルギを電気エネルギに変えることは出
来ないかと考えた.
今回はアスファルトに注目した.夏の日中では太
陽の日差しによりアスファルトの温度が 50~60℃
になることも珍しくない.そこでどのようにすれば
この熱を効率的にエネルギ変換できるのかを考察し
た.
2. ペルチェ素子を用いた方法
2.1ペルチェ素子 1)
上記のエネルギ変換をする方法として,ペルチェ
素子を用いる方法を考えた.ペルチェ素子とは二種
類の異なる金属に電流を流すと,片方の金属から
もう片方の金属に熱が移動するというペルチェ効果
を利用した半導体の素子である.電流を流すと片面
は放熱をし,もう片面は吸熱をするという仕組みで
ある.しかし今回の実験では電流を熱に変えるので
はなく,熱を電流に変えるため,ペルチェ効果とは対
照的なゼーベック効果を利用した.ゼーベック効果
とはペルチェ効果の逆過程であり,ペルチェ素子の
両面で温度差を生じると,温度差に比例して電位差
が生じるというものである.またゼーベック効果の
電位差V と温度差T には以下のような特性がある.
V=αT
(1)
ここでαとはゼーベック係数と呼ばれペルチェ素
子に固有の非線形で温度に依存した値をとる.一般
的なペルチェ素子ではゼーベック係数が常温の場合
50V/K から 100V/K 付近のものが多い.この式から
わかるように,ゼーベック効果により得られる電位
差は温度差に対して mV オーダーとなる.
2.2作成したシステム
今回のテーマを実現するにあたって arduino でプ
ログラムを組み,以下の3つのシステムを作成した.
①
ゼーベック効果を利用し,ペルチェ素子の上
面が高温,下面が低温の場合温度差から発電す
るシステム.
②
①のときに発生する電位差,上面の温度をペ
ルチェ素子の両面に取り付けた温度センサから
読み取り,7セグメント LED を用いて表示する
システム.
③
ペルチェ効果を利用し上面が0℃付近になっ
た時にペルチェ素子に電流を流し上面を温める
システム.(冬のアスファルトの凍結防止)
2.3実験方法
①実験ではゼーベック効果を利用するため,ペル
チェ素子の上面をヒータの表面に設置させ,下面を
地面に設置してヒータの温度を上げて温度差を生じ
させた.このときペルチェ素子の端子を電位差計に
つないでペルチェ素子の上面と下面の温度を放射温
度計を用いて電位差と温度差の関係を調べた.
まずペルチェ素子の面を熱電シートを介して3つ
のペルチェ素子を接着させそれぞれの導線同士をつ
ないで直列接続した.次にペルチェ素子を電圧計に
つないでヒータの温度を上げていき温度が安定して
きたら直列につないだペルチェ素子の最上面をヒー
タと接触させ,電圧計の目盛りを読み取った.ペルチ
ェ素子の下面をそのまま常温で何も接触させない場
合と,温度一定の流水で冷やしながらの場合の2つ
の条件で電位差と温度差,経過時間の関係を調べた.
ヒータの温度を横軸,生じる電位差を縦軸に書いた
グラフとヒータの温度を一定にして電位差を縦軸,
経過時間を横軸に書いたグラフをそれぞれ作成し,
直線で近似しゼーベック係数を求めた.ゼーベック
係数を求めたら arduino にV=αT という関係式
を入力し,ペルチェ素子の上面と下面に設置した温
度センサを用いて温度差から電位差の理論値を算出
した.
②四桁の7セグメント LED の左二桁に電位差,右
二桁に上面の温度をそれぞれ mV,℃単位で表示する
プログラムを作成した.3)
③上面が放熱,下面が吸熱側になるようペルチェ
素子と電池を繋いだ回路を作成し ,上面の温度が
5℃以下になった時に①の回路が③に切り替わるよ
うにリレーを用いてプログラムを作成した.
3.結果
電位差と温度差の関係を表1,図1,電位差と経過
時間の関係を表2,図2に示し,装置が可動している
様子を図3に示した.また上面が5℃以下になった
とき,リレーによって回路が切りかわることを確認
した。
表1
電位差と温度差の関係表
一枚重ねたペルチェ
三枚重ねたペルチェ
電位差(mV) 温度差(K) 電位差(mV)温度差(K)
0.9
10
1.8
10
1.5
20
4
20
2.5
30
6.5
30
3
40
8.1
40
4.2
50
10.3
50
図1
表 2
電位差と温度差の関係グラフ
電 位 差 と 経 過 時 間 の 関 係 表
下面を空気中に放置
下面を流水で冷却
電位差(mV) 時間(s) 電位差(mV)時間(s)
11
0
10.6
0
5.2
3
9.7
3
2.1
6
9.3
6
0.2
9
9
9
0
12
8.8
12
0
15
8.5
15
0
18
8.3
18
0
21
7.9
21
図3
電位差1mV,上面の温度温度 21℃の表示
4.考察
図 1 と図 2 からも分かるように,ペルチェ素子の下
面を常温放置した場合時間が経過するにつれ生じる
電位差が小さくなることが分かる.これは上面のヒ
ータの熱が下面に移動して最終的に温度差が生じな
くなり電位差が生じなくなるためだと考えられる.
流水に下面を接触した場合は時間に対して電位差の
変化がほとんどないことが分かる.このことから実
際に屋外でこの装置を作る場合,アスファルトと接
触させる反対側の面は冷却機能のある物体に接触さ
せることで発電効率が良くなると考えられる.下水
道など配管,橋の下を流れる川などが候補として挙
げられるだろう.また,冷却機能のある物体を確保で
きない場合は,なるべく上面の温度が下面に移動し
ないよう,下面と上面の距離を大きくすることが必
要と考える.ゼーベック係数は 211V/K となったが
ペルチェ素子がひとつだけ接続された場合は
81μV/K であったためペルチェ素子を重ねれば重ね
るほどゼーベック係数は大きくなると考えられる.
今回の実験では温度差が 50℃ある場合でも 10mV 程
度しか生じないため数個ペルチェ素子を重ねた程度
では実用的な電位差を得ることはできない.電位差
を大きくするためにはペルチェ素子を多数重ねるこ
とはもちろんのこと,集熱器などで集めた熱を利用
することが好ましいと考えられる.
5.結論
今回用いた装置で計画通りの回路,電位差を得る
ことができた.しかし蓄電池に充電するためには
1.2V 程度の起電力が必要となるため,実用化するに
は考察でも述べたような改良が必要である.
図 2 電位差と経過時間の関係グラフ
6.参考文献
1) 坂田亮編 熱電変換 (2005) 掌華房
2)http://garretlab.web.fc2.com/arduino/introdu
ction/beginning_with_7segment_led/