USB Applications - Cypress Semiconductor

4 本の配線によって広がる世界 - さらに強力になる USB
サイプレス セミコンダクタ社 (Steve Kolokowsky, Cypress Semiconductor Corp., and
Trevor Davis)
Executive Summary(概要)
現在ではあらゆる機器に搭載されている USB がどのように普及してきたかを最新動向及び将来的な展開までを含み解説
しています。USB の基本構造から USB を実現するための手法を利点と欠点を含めながら紹介し、さらには、応用と最新
動向、将来的な USB の展開までが述べられています。
USBは、PCとPC周辺機器の接続に世界でもっとも広く使われている規格である。この記事では、USBはどのようにして
ここまで多くの機器に搭載されるようになったのか、USBの最新動向、USBの将来について述べる。
USB はいかにして現在の機器に導入されたか
まずUSBシステムの3つの主要機能ブロックを理解することが重要である。これを理解すれば、なぜPC周辺機器の設計者
がUSBを搭載しようとするのか、知ることができるであろう。
1.
トランシーバ - USBシステムの物理的な送受信機能を担う。このアナログ コンポーネントは、USBケーブ
ルを通じてデータを正しく送信するために、非常に高い周波数で動作する。
2.
シリアル インタフェース エンジン(SIE)- この機能は、トランシーバが生成する通信トラフィックを
USBに変換するデジタル論理回路によって実行される。USBはパケットに基づいたプロトコルであり、SIE
はデータのパケット化と解析を行う。
3.
マイクロコントローラ(uC)- マイクロコントローラ論理回路は、SIEが復号したUSB信号に基づく処理を
行うために用いられる。USBコマンドはこの論理回路によって実行される。
USBの機能は、この3つの主要ブロックに明確に分けることができるため、設計者はいくつかの選択肢、つまりUSBの集
積化のレベルを選ぶことができ、USB設計をどのレベルから始めるかを決定できる。上記の各機能は必ず無ければならな
いが、どの機能をシステムのどの半導体チップで実行するかについては、あらかじめ定められた基準があるわけではな
い。USBの集積化レベルは、次のようなパターンに分けられる。
いずれの設計にも利点と欠点がある。設計者は個々の設計において最適な選択肢がどれであるかを検討しなければなら
ない。
外部USBマイクロコントローラ - 3つの主要機能、TX、SIE、およびuCを、すべて外部のスタンドアローン
チップ(サイプレス セミコンダクタ社のFX2LPなど)で処理する。USB処理はすべてこのチップが実行する。
この設計手法は、周辺機器設計者がUSBプロトコルの理解まで手が回らない場合、またはすべての設計をUSB
チップ内に集積化できる場合などに有効であり、USBマウスや専用マス ストレージ機器などで採用されてい
る。
外部SIE+TX - 低レベルのプロトコルは機器内部のプロセッサで処理するが、より高レベルのUSB処理に
は外部プロセッサが必要になる。USB 2.0トランシーバもこの外部プロセッサに集積化される。この設計手
法は、外部マイクロプロセッサまたはDSPを用いて、既存の設計にUSBを追加する場合に有効である。
外部トランシーバ - この設計手法はASICを使用するが、設計者がUSB 2.0アナログ トランシーバをデジタ
ルASICに組み込むリスクを冒したくない場合に有効である。また、ASICと、比較的高電圧を使用するUSB
トランシーバのプロセス テクノロジに互換性がない場合にも有効な手法である。USBプロトコルは、IPデ
ザインハウスが作成した、ASIC上の既製専用論理回路内で処理される。この手法は、FPGAまたはCPLDを
用いた試作時にも有効と思われる。サイプレス セミコンダクタ社のTX2を始めとする、UTMI規格に準拠し
たチップがいくつか販売されている。
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ASICへの完全集積化 - 最高レベルの集積化である。USB設計の専門知識を社内に蓄積するか、社外より購入す
る必要がある。もっとも低コストのソリューションが得られるが、設計パターン ルールの緩いASIC上で、高周
波動作するUSBが問題となるおそれがある。
現在でも上記の4つの設計オプションは、いずれも技術市場において有効である。
USB 技術の最新動向
低コストソリューションである USB は、現在でも普及しているパソコン周辺機器、ゲームコントローラ、モバイル機器、Onthe-go アプリケーションホスト、マルチメディア、ネットワーク、記憶装置、その他 USB ハブなどに理想的な接続性を提供す
るとして、2006 年以降も成長を続けるものと思われる。
USB技術に見られるもう1つの顕著な傾向は、機器の機能に見られる。モバイル機器のいくつかではコンセントが無くと
もUSBを扱えるものがある。モバイル機器のUSBを外部電源なしで使用できるようになったのは、ごく最近になってから
である。
USB規格では、機器設定前にUSBケーブルから供給を受けることができる電流はわずか100 mAにすぎない。機器は、エ
ニュメレーション プロセスにおいて、より大きな電力モード(最大500 mA)を要求できる。要求された電力をホストから
得られるかどうかによって、デバイスは認識されたり、されなかったり(接続できたり、できなかったり)する。これら
電源の制約は、バスパワーまたはセルフパワーいずれのアプリケーションを構築するかという設計者の判断に大きな影響
を与える。
USB 規格によれば、USB 機器は USB ケーブルから電源を供給する「バスパワー方式」
、または電池またはコンセントを使
用する「セルフパワー方式」のいずれかに属する。さらに、バスパワー機器には、異なる電力レベルを供給する 2 種類の
USB ポート、高電力ポートと低電力ポートが規定されている。高電力ポートは、下流の機器に 500 mA を供給する能力が
ある。低電力ポートは、下流の機器に 100 mA しか供給できない。2 つのレベルがある理由は次のとおりである。低電力
ポートの当初の目的は、バスパワー式のハブを使えるようにすることだった。これらのハブは上流から 500 mA の供給を
受け、ハブ内で 100 mA を消費し、下流の各ポートに 100 mA を供給する。
(図 1 参照)
図 1.
ポート拡張のためにハブを接続したホスト PC による電源構成
実際には、バスパワー式のUSB機器は、USBの初期から存在していた。しかし、USB 2.0規格で高速(480 Mbps)データ
転送が追加されると、どのUSB用シリコン チップ メーカーも、100 mAという厳しい制約の下で正しく認識される高速
USBコントローラを作れなかった。新しい高速USBデバイスを搭載した周辺機器が接続を試みると100 mAの制限を超え
てしまうため、設定が正しく行われないという状態を招いたのである。2003年、サイプレス セミコンダクタ社は、高速
低電力機器用の電流を発生できる初めてのプログラム可能な高速デバイス、EZ-USB FX2LPを発表した。
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USB がワイヤレスになる日
2006年には、ワイヤレスUSB技術に基づいた実際の製品の登場が期待されている。ワイヤレスUSB技術(WUSB)は、
USBの機能拡張として当然の成り行きであるが、周辺機器や消費者向け電子機器のホストPCへの接続をさらに容易にす
るものである。消費者向け電子機器の新しい製品が市場に登場するたびに、この種のインタフェースに対する要求が高
まっている。ワイヤレスUSBは、2メートル(約6.6フィート)離れた機器間において、ワイヤ(有線)USBと同じ480 Mbps
のデータ転送速度をサポートする超広帯域(UWB: UltraWideBand)技術に基づいており、転送速度を110 Mbpsに下げれ
ば、UWBの到達距離はさらに長くなる(最大10 m、約30フィート)
。家庭やオフィスの環境では、この技術は非常に有用
である。ワイヤUSBと同様に、ワイヤレスUSBの成否の鍵を握る要因は2つある。価格と電力である。開発者が、広く普
及するための低価格を実現できなかったり、電池を短時間で放電してしまう大電力を必要とする設計を行ったりすれ
ば、高価で使いづらい接続ソリューションとなり、顧客はこのようなシステムを認めないであろう。
このような課題が存在するにもかかわらず、業界アナリストらは市場におけるワイヤレスUSBの隆盛を熱心に主張してい
る。調査会社のInStat社は、
「2006年には、公に認められたワイヤレスUSB市場が立ち上がり、2007~2008年には著しい成
長が予想される。全体としては、2006年から2009年にかけて、ワイヤレスUSB対応の製品の出荷高が年率193%で成長す
るだろう。
」と予測している。
これが現実となり、消費者が、世界でもっとも優れた接続規格 -USB(ワイヤ、ワイヤレスのいずれでも)からもたら
される、より高品質、低価格、高速の接続を求め続けるかぎり、これからの10年間も経験が積まれ、集積化が進み、新
しい独自の用途が生み出されることを期待してよいだろう。
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