TPP 大 筋 合 意 合意内容 生果 りんご 果汁 現 状 ・現行の関税(17%)を、初年 ・国産りんごは、品質面で国際的に高い競争力あり 度 12.8% とし、毎年同じ割合 ・輸入量は、夏期にニュージーランドからの 2 千 t 程度で、 国内供給量に占める割合は 0.3% とごくわずか で削減し、11 年目に関税撤廃 ・現行の関税(「19.1%」~「34% ・りんご果汁は、輸入品の割合が既に需要量の8割を超え または1kg23 円のうちの高い ているが、大部分は中国が占めTPP参加国からの輸入 方」)を毎年同じ割合で削減し、 は2割以下 8 ~ 11 年目に関税撤廃 ・現行の関税(16%)の枠外税 トマトピューレ― 率を、毎年同じ割合で削減し、 ・国産の加工原料用トマトは、ストレートジュースに仕向 6年目に関税撤廃(枠内は現行 けられ、近年、ニーズが高まっており、メーカー側は、 ・ペースト トマト 無税) 国内契約数量を増やしたい意向が強い状況 加工品 ・トマトピューレ―・ペーストの輸入量は、TPP不参加 ・現行の関税(16~29.8%)を トマトケチャップ、 国からが7割以上 毎年同じ割合で削減し、6~ ソースジュース等 11 年目に関税撤廃 トマト にんにく キャベツ ダイコン 特集 TPP (環太平洋連携協定)をめぐり10月5日、交渉参加12カ国による閣僚会合で大筋合 表3)重要品目以外の合意内容 品 目 〜 概 要 に つ い て〜 ・野菜の関税はもともと低い ・現行の関税(3%)を即時撤廃 ・鮮度や検疫上の理由から、関税が撤廃されても直ちに輸 入量が急増することはないとの見通し 意をした。今回の特集では、一部の農産物分野に限定して大筋合意内容の概要についてまと めた。 表1)TPP交渉合意による関税撤廃の概要 【TPP協定の発効について】 品目総数 関税撤廃率 全品目 9,018 8,575 95.1% 農林水産物 2,328 1,885 81.0% 586 174 29.7% A)の枠外で、米国に対して5万t(当初3年 58 15 25.9% に対して6千t(当初3年維持)で13年目以降 ○小麦・大麦 109 26 23.9% は8400tとする無関税の輸入枠を新設。輸入 ○牛肉・豚肉 100 70 70.0% MAの内でも米国産米の実質的な優遇措置を導 ○乳製品 188 31 16.5% ○砂糖・でんぷん 131 32 24.4% ⇒国内米消費量が毎年約8万t減少している状 1,742 1,711 98.2% 落を招く恐れがある。 項目 うち重要5品目 ○米 その他農林水産物 表2)重要品目の合意内容 ・現行の国家貿易制度及び枠外税率(米は 341円/kg)を維持 米 ⇒発効には、12カ国の総GDPの約78%を占める日米の批准が絶対条件 5 2015.11 米国=7万t、オーストラリア=8400t ⇒中粒種・加工用の枠を新設(6万t) ・現行の国家貿易制度及び枠外税率(小麦= 55円/kg、 大麦=39円/kg)を維持 麦 ・事実上の関税であるマークアップを45% 削減 ・特別輸入枠(SBS方式)を新設 TPP大筋合意により、合意内容が明らかとなった。関税削減、撤廃による輸入相手国の変化等により、 国産農産物の価格下落も懸念されることから、今後十分検討をして、国内対策に万全をつくすような政 策となるよう、注視する必要がある。 *平成27年10月末現在 用語解説 交渉参加12カ国:アメリカ、シンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリ、オーストラリア、ペルー、マレーシア、ベトナム、メキシコ、カナダ、日本 ミニマムアクセス:最低輸入機会。高関税による事実上の輸入禁止を撤廃する事が目的。米では77万tを輸入。うち10万tをSBS方式で主食用米と して輸入している。 売買同時入札(SBS方式) :国際貿易で輸入業者が政府に売る価格と、卸業者が政府から買う価格を、輸入業者と卸業者がペアとなり、連名で入札す る制度。 マークアップ:買い入れ価格と売り渡し価格の差額。事実上の関税として機能。 セーフガード(緊急輸入制限措置) :自国の産業に重大な被害を及ぼす輸入品目に対して、国が課す制限措置。 GDP:国内総生産。国内で一定期間内に生産されたモノやサービスの付加価値の合計額。交渉参加12カ国の総GDPは3,100兆円で、うち米国と日 本で約78%を占める。 ・特別輸入枠(SBS方式)を設定 ・既存のMA内で事実上の米国産米優遇策 ① 全ての原署名国が国内法上の手続きを完了した旨を書面により寄託者に通知した後、60日後。 ② ①に従って、2年以内に全ての原署名国が国内法上の手続きを完了しない場合、GDPの合計が 85%以上で、6カ国以上が寄託者に通知した場合には、上記2年の期間の経過後60日後。 ③ ①又は②に従って協定が発効しない場合には、GDPの合計が85%以上で、6カ国以上が通知し た日の後60日後。 ※内閣官房TPP政府対策本部「環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の概要」より 関税撤廃率となり、「聖域なき関税撤廃」が改め 関税撤廃 する 品目数 アスパラガス ●TPP協定発効までの流れ TPP交渉は、協定の詳細にかかる詰めの作業などを経て、内容を確定させた後、政府間の「署名」 が行われる。署名後は、各国で条約を承認する「国会批准」が行われ、発効に至る。 署名までに、各国でどのような経緯をたどるかが焦点となるが、米国のTPA法に規定された手続き の進捗が署名時期などに影響を及ぼすことが想定される。 TPP交渉合意は、表1のように高い水準の 小麦=25.3万t、 大麦=6.5万t ・関税38.5%⇒発効16年目に9%まで削減 ・セーフガードは73.8万t(16年目) まで発動 牛肉 ・セ ーフガ ード発 動 時 の 関 税 は15年 目に 18% ※16年目以降は4年間発動なしならセーフ ガード廃止 て浮き彫りとなった。重要品目である米、麦、 牛肉の合意内容は表2や下記のとおり、重要品 目以外の合意内容は表3のとおりである。 【米】 米 は ミ ニ マ ム ア ク セ ス( 最 低 輸 入 機 会 = M 維持)で13年目以降は7万t、オーストラリア 義務のない売買同時入札(SBS)方式を採用。 入するほか、米の調製品や加工品で関税削減・ 撤廃も行う。 況で、米豪産米の主食用米流入は大きな米価下 【麦】 小麦と大麦は、現行の国家貿易制度を維持す るが、マークアップ(売買差額)は9年目まで に45%削減。小麦は最大で25.3万t、大麦は 6.5万tの特別輸入枠も新設。小麦粉製品等には 6万tの輸入枠を設定し、マカロニ・スパゲティ は、9年目までに関税を60%削減する。 ⇒経営所得安定対策の財源が脆弱になり、輸入 麦の価格低下による国内生産麦の価格下落が危 惧される。 【牛肉】 牛 肉 は T P P 全 参 加 国 に 対 し、 現 行 の 関 税 38.5%を段階的に削減し、16年目以降は9% まで下げる。全参加国からの輸入量が一定水準 を超えた場合に関税を引き上げるセーフガード (緊急輸入制限措置)も導入するが、通常時の関 税が9%の時は発動しても18%までしか戻らな い。また16年目以降、4年間発動がなければ廃 止する。 ⇒中ランクの牛肉は価格帯が競合し大きな影響 を受け、牛肉関税収入が減少すれば、生産者補 てんの財源にも影響する。 4
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