平成22年度 卒業修了パーティー祝辞

平成22年度
卒業修了パーティー祝辞(平成23年3月25日)
皆さん、神戸大学農学部卒業、大学院農学研究科博士前期課程・後期課程修了、
おめでとうございます。
今年は、学部卒業生184名、大学院前期課程修了生134名、大学院後期課
程修了生 8 名、合計326名の諸君が、農学部、大学院農学研究科を卒業、修
了されました。誠におめでとうございます。
さる 3 月 11 日の東日本大震災では、マグニチュード 9.0 という日本最大の地震
と、次々に襲い来る恐ろしい巨大津波のニュースをみて、日本だけでなく世界
中の人々が自然の猛威に震撼させられました。阪神淡路大震災を遙かに上回る
数の方々が亡くなられ、今でも多くの方々が乏しい物資に耐えた避難生活を余
儀なくされています。こうした状況を鑑み、この会を開催するか否か、迷いま
した。しかし、日本全体が一致団結してこうした苦難を乗り越え、復興を成し
遂げるためには、特に若い人達の力が必要であることを考え、この会を、
「卒業
修了記念激励会」として行うことといたしました。今日の卒業式では、福田学
長からも国際性と学際性に富んだ神戸大学の卒業生・修了生として、知恵と創
造力を活かしてこの国難を乗り切って欲しいとの訓辞をいただきました。ぜひ
皆さんの勇気と若い力で日本の復興に貢献していただきたいと思います。就職
される方々の多くは東京で勤務されると思います。電力不足と福島原発事故に
よる放射能の危険が大いに心配されますが、今こそ、お互いが精神的・経済的
に助け合い、震災復興という目的を一つにして仕事に励み、世界のリーダーた
る範を示していただきたいと考えます。
皆さんへのはなむけとして、社会に役立つ仕事をするための原動力について、
一言お話ししたいと思います。私の高校時代の同級生で、現在、大阪大学総長
であり、哲学者の鷲田清一氏は、
「一つのことに集中しているときでも必ず複眼
を持ちなさい」と言われています。一つの光を当てるよりも、二つの光を当て
た方が、より立体的にものが見えるのと同じように、一つの事業を行う場合に
も、それを内からと外から、あるいは向かい側とその逆向きの二つの方向から
みる方が、進むべき道がよりはっきり見えてくる。どんな事業であっても、ゴ
ールまで一直線にたどり着けるものは滅多にいない。たいていは途中で何度も
挫折したり、あるいは軌道修正を、さらにはいったん撤退を余儀なくされる。
そんなときに一番必要なのは、外からの別の眼だというわけです。そういう複
眼を一人で磨くのは難しいものです。複眼が持てるかどうかは、自分とは別の
生き方、ものの見方をしている人たちとどれくらい深く、幅広くつきあいをし
ているかにかかっていると思います。言い換えると、趣味や家族を通した複数
の人的ネットワークをもっているか、人とのつきあいをどれだけ大切に考える
かにかかっていると思います。幅広い人とのつきあいを大切にして、この鷲田
先生の複眼の哲学を磨いてほしいと思います。
最後に、神戸大学学歌の 3 番に、こんな歌詞があります。
「あふれる願い
なにを告げよう
ともに生きる
神戸
神戸
熱
い明日
息づく世界に
この丘
のうえ
愛あざやかに」この歌詞を、ぜひ忘れないでともにがんばって欲しい
と思います。皆さんの未来に大いに期待しています。神戸大学農学部・農学研
究科の代表として、誇りを胸に、勇気をもって大海原にこぎ出してください。
ボンボヤージ
改めて、おめでとう。