物体の自由落下の跳ね返りの高さ

物体の自由落下の跳ね返りの高さ
要約
物体の自由落下に対する物体の跳ね返りの高さを測定した。
自由落下させる始点を高くするにつれ、
跳ね返りの高さはただ単に始点の高さに比例するわけではなく、
跳ね返る直前の速度に比例することがわかった。
(1)目的
球技において必ず発生する球の跳ね返りとはどのような規則性に基づいて発生しているのか
を調べるために、4種類の物体を用い様々な床の上で実験をして跳ね返りの規則性を測定した。
(2)実験手法
[準備するもの]
・スタンド ・1mものさし ・クリップ(2個) ・ストップウォッチ ・巻尺
・ボール(ピンポン玉、ビー玉、テニスボール、ビニルボール)
[実験手順]
●実験1
1. 実験台の上にスタンドを置き、上下二箇所で1mものさしを実験台に対して垂直になるよう
に固定した。このとき、ものさしの下端が実験台につくようにした。
2. 1mものさしの 50cm のところにクリップ①の上端がくるようにクリップ①をつけた。
3. [手順2]でつけたクリップ①を目印にして、ピンポン玉の下端がクリップ①の上端と同じ高さ
になるようにして、ピンポン玉を自由落下させた。
4. 跳ね返った後のピンポン玉の最高点に大体の目安として、クリップ②をつけた。
5. [手順3]を繰り返して、最高点に到達したピンポン玉の下端と、クリップ②の上端が同じ高さ
になるように、クリップ②を移動させた。
6. クリップ②の上端の高さを、ピンポン玉を 50cm の高さから自由落下させたときの跳ね返り
の最高点とし、記録した。
7. [手順3]~[手順6]をボールがビー玉やテニスボールやビニルボールの場合や、高さが
100cm(1m)の場合で行い、それぞれの跳ね返りの最高点を記録した。
8. 場所を実験台からコンクリートの材質の台や、木の台の上に移し、[手順1]~[手順7]を
行った。ただし、コンクリートの材質の台の上でビー玉を自由落下させることは割れる危険
性があるので行わなかった。
●実験2
1. 実験1の[手順1]同様、スタンドを組み立てた。
2. スタンドを校舎内の1階から4階までの吹き抜けに移動させた。実験1の[手順2]~[手順6]
を行い、ピンポン玉とテニスボールの1mのところからの跳ね返りの高さを測定した。また、
巻尺を吹き抜けの踊り場から降ろし、各階の踊り場の高さを測った。
3. ピンポン玉とテニスボールを1階と2階と3階の吹き抜けの踊り場から自由落下させ、それぞ
れの1回目の床との衝突と2回目の床との衝突の間の時間をストップウォッチで測り記録し
た。
4. [手順3]で測定した時間より、跳ね返った最高点の高さ h m を求める。
1
[手順3]で測定した時間を t 0 とおくと、最高点に到達するまでの時間 t 1= 2 t 0
最高点での速度 V 1=0 なので、跳ね返った直後の初速 V 0 は
1
V =V 0−gt より、 V 1=V 0−g t 1 。よって V 0 = g t 0
2
2
2 2
V 
1 g t0
2gh=V 1 2−V 0 2 より、 h= 0 =
2g
2 g 22
g 2
よって、 h= 8 t 0
(3)実験結果
結果として次のような数値が得られた。
●実験1の結果
表1 50cm の高さから自由落下させた場合のそれぞれの跳ね返った後の高さ(cm)
ピンポン玉
ビー玉
テニスボール
ビニルボール
実験台
35.2cm
16.8cm
28.2cm
14.2cm
コンクリート台
36.4cm
数値なし
25.6cm
9.8cm
木の台
35.4cm
22.0cm
27.6cm
9.8cm
表2 100cm の高さから自由落下させた場合のそれぞれの跳ね返った後の高さ(cm)
ピンポン玉
ビー玉
テニスボール
ビニルボール
実験台
65.2cm
30.2cm
56.4cm
28.4cm
コンクリート台
68.6cm
数値なし
52.6cm
19.4cm
木の台
67.6cm
38.0cm
54.2cm
19.6cm
ビー玉
40
70
35
60
30
50
実験台
コンクリート
台
木の台
40
30
20
10
跳ね返った高さ (cm)
跳ね返った高さ (cm)
ピンポン玉
80
0
25
実験台
コンクリート
台
木の台
20
15
10
5
0
50
100
50
始点の高さ (cm)
始点の高さ (cm)
テニスボール
ビニルボール
60
30
50
25
40
実験台
コンクリート
台
木の台
30
20
10
跳ね返った高さ (cm)
跳ね返った高さ (cm)
100
20
実験台
コンクリート
台
木の台
15
10
5
0
0
50
100
始点の高さ (cm)
50
100
始点の高さ (cm)
●実験2の結果
表3 テニスボールの吹き抜けでの1回目の床との衝突と2回目の床との衝突の間の時間(s)
1回目
2回目
3回目
1階踊り場
1.18s
1.17s
1.19s
2階踊り場
1.37s
1.49s
1.51s
3階踊り場
1.70s
1.68s
数値なし
参考…吹き抜けのところで 100cm の位置からでは56 cm の高さまで跳ね返った。
表4 表 3 から得られるテニスボールの吹き抜けでの跳ね返りの平均の時間(s)と高さ(m)
平均の時間(s)
跳ね返りの高さ(m)
1階踊り場
1.18s
1.71m
2階踊り場
1.46s
2.6m
3階踊り場
1.69s
3.5m
表5 ピンポン玉の吹き抜けでの1回目の床との衝突と2回目の床との衝突の間の時間(s)
1回目
2回目
3回目
1階踊り場
1.06s
1.08s
1.15s
2階踊り場
1.32s
1.36s
1.25s
3階踊り場
1.26s
1.32s
数値なし
参考…吹き抜けのところで 100cm の位置からでは65.4 cm の高さまで跳ね返った。
表6 表5から得られるピンポン玉の吹き抜けでの跳ね返りの平均の時間(s)と高さ(m)
平均の時間(s)
跳ね返りの高さ(m)
1階踊り場
1.10s
1.47s
2階踊り場
1.31s
2.10s
3階踊り場
1.29s
2.04s
4
3.5
跳ね返った高さ (m)
3
2.5
2
テニスボール
ピンポン玉
1.5
1
0.5
0
1.00
3.69
7.15
11.05
始点の高さ (m)
参考…各階の踊り場の高さは、1階は 3.69m 2階は 7.15m 3階は 11.05m であった。
(4)考察
実験1より 50cm の高さから落下させた時の跳ね返りの高さと 100cm の高さから落下させたとき
の跳ね返りの高さが、場所を変えてもおよそ 1:2 になることから、「跳ね返りの高さは始点の高さに
比例し、また、ボールや床の条件を変えると比例定数も変化する。」…① ということが予測された。
しかし、実験2の結果を見ると、ピンポン玉はテニスボールと同じ条件下で測定を行っているに
もかかわらず、比例しなかった。なので①は不適切である。
ここで、エネルギーの保存を考える。自由落下の始点の高さを h 0 m 、跳ね返る直前の速度
1
2
を V 0 m/s  とすると mgh0 = 2 mV 0 より、 V 0 = 2gh である。よって、 h 00 より、 V 0 は
h 0 に比例する。
これを踏まえ、「跳ね返りの高さは、始点の高さによってもたらされる跳ね返る直前の速度に比
例する。また、ボールや床の条件を変えると比例定数も変化する」…②と仮定する。これなら、実
験2の時のピンポン玉は h 0 が大きくなっても V 0 は大きくならなかったと考えれば結果と一致
する。すなわち、速度がある一定の速さまで達したときに、加速度が 0 になったと考えるのである。
私はここで、速度の1乗に比例する空気抵抗の存在を考えた。この空気抵抗が存在すると自由
落下の運動方程式は ma=mg−kv (k は空気抵抗の比例定数、v は物体の速度)となる。そして、
a0 である限り、速度は増加し続けるが kv の値も大きくなり、 a は限りなく0に近づいてい
く。これは②を仮定したときの「ピンポン玉は h 0 が大きくなっても V 0 は大きくならなかった」と
いう考え方にあてはまる。重ければ重いほど mg は大きくなり、加速度の減少はゆるやかになる。ピ
ンポン玉は半径 2.0cm・重さ 3g であったため、半径 3.3cm・重さ 60g のテニスボールよりも急激に
加速度が減少したのである。
つまり、空気抵抗がない場合は物体に働く力は重力加速度のみで加速度は一定なので①の
仮定も成り立つが、空気抵抗が存在する場合物体に働く力は重力加速度のみではないため、①
はすべてにおいて成り立つわけではない。よって②の仮定が正しい。
(5)結論
自由落下する物体の跳ね返りの高さは衝突直前の速度に比例する。また、物体と衝突する床
の間には物体によって異なる比例定数をもつ。
(6)参考資料
『新・物理入門』
山本義隆著 2007 駿台出版