“光と風のエネルギー”発電所見学会 平成 25 年 10 月 31 日 1. 横浜市風力発電所 企画:科学技術立国日本を考える会 愛称“ハマウイング”見学 見学会を事前に E-mail 等で案内し、応募された 22 名の社会人が、平成 25 年 10 月 31 日午前、横浜市神奈川区瑞穂ふ頭にある横浜市が運営するデンマー ク Vestas 社製 V80-2.0MW 型風力発電所(愛 称ハマウイング)を見学した。定格出力 1,980 kW、鋼製モノポールタワー高さ 78m(重さ 163.8 t)、3枚のブレードから成るローターの 直径は 80 m。発電機の部分ナセルはデンマー ク製、ガラス強化エポキシ樹脂ブレードは韓 国製、タワーは中国製と国際色豊かである。 当日地上では弱い風 2~3m/s 程度であるが、 上空では 2 倍の 5m 程度の風が吹き、下から 見上げると巨大なブレードがゆっくりと回っ て発電していた。 (右図)。 発電能力としては、風速が 4m/s 以上で発 電を行い、15m/s で定格出力となり、台風時 ハマウイング:タワー根元の青から 上部の白へグラディエント模様 等 25m/s 以上で発電を停止する。ローターの 回転数は 9~19 rpm、ハマウイングの平均風 速は 5m/s 弱、年間稼働率は 60%である。風 車が回っていても緩い回転時は発電していな い。設備利用率(発生電力/定格発電能力) でみると 12 %となる。発生する電圧は 690V、 発電所を出ると東京電力の 6600V 高圧線に 接続される。年間発電量は 220 万 kWh, 平 成 19 年の運転開始より平成 24 年までの 6 年 間に約 1320 万 kWh 発電している。制御用に 必要な電力約 20kW は外部電力(東京電力) から供給されている。年に2回は定期点検を 行う。ベアリングの不調などはある。ブレー 発電状況を示す構内のパネル ドの回転を止める非常用のディスクブレーキが備えられており、点検時はピン を入れて停めておく。 風車施設建設時パイルを 15m の深さまで打ち込んである。 建設費は 5 億円、一部新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金 を得て建設し、市債の償還財源として、電力の販売と企業の協賛金を充ててい る。1口年間 100 万円の協賛企業としてキリンビールなど 14 社(44 口)が参 加している。1口分(発電量の 1/45)だけは、固定価格買い取り制度で販売し ている。17年運用し、減価償却する。また建設市債を 350 名の市民が購入し ており、文字通り市民参加の地産地消型発電である。 2. 川崎市 浮島太陽光発電所見学 平成 25 年 10 月 31 日(木)午後 見学先 川崎市環境局 “かわさきエコ暮らし未来館” 浮島太陽光発電所 ( 川崎市 / 東京電力 共同運営 ) 資源化処理施設(プラスチック、ミックスペーパー処理) 見学会に応募された社会人など 23 名が、川崎市浮島の埋め立て地 11 ヘクタ ールに建設されたメガソーラー発電施設を見学した。埋め立て地は地中から水 を汲み上げクリーニング中で一般的な建物は建てられないため、太陽光発電所 を建設することになった。発電最大出力は 7,000kW、予想年間発電量約 740 万 kWh、川崎市と東京電力の共同事業として運営されている。発電施設は東芝製、 太陽光モジュールはシャープ(株)製単結晶シリコンと日本製である。川崎市 には、今回見学した浮島太陽光発電所の外、扇島太陽光発電所(出力 13,000kW) がある。両発電所発電能力等諸元を次ページに示す。 見学した浮島発電所は太陽電池パネル最大出力 198W、37,926 枚から成る。 関東地方のパネルの理想的角度は 30°であるが、風の影響、コストを考慮して、 浮島では 10°としている。パネル 18 枚を 1 ユニットとし、発生した直流 (250~600V)を接続箱に集め、更に集電箱を経由してパワーコンデショナーに 送られる。そこで直流は交流 210V に変換され、中間変圧器で 6,600V に昇圧さ れた後、更に 66,000V に昇圧され、ガス絶縁遮断器を経由して発電所外地中送 電線に送られる。過去 2 年に発電した電力量は予想を上回り、1,920 万 kWh で あった。太陽光発電所の“天敵”は雲と雑草であり、除草が必要なようだ。ま た浮島では発生していないが、カラスが石を落として、ガラスが割れる事故も あるという。発電所内の設備構成は添付資料をご覧ください なお、浮島太陽光発電所の傍に、 「かわさきエコ未来館」がある。そこには太 陽光発電の解説施設だけでなく、川崎市内で集められたごみを資源化する施設 も併設されており、手作業によってプラスチックの分別、ミックスペーパーの 分別作業が行われている様子が見学できた。 川崎市―東京電力 浮島太陽光発電所 浮島太陽光発電所 見学の様子 羽田飛行場に着陸する飛行機が見える。 連系変圧器、遮断機等の説明 3. 見学会の感想と意見 以下に、見学会参加者の感想、意見を纏めます (1)風力発電所見学者の感想 1)風力発電所見学の中で特に印象に残った点 ① 支柱のデザインが素晴らしかった。 ② この規模では経済的にはなかなか引き合わないのだなぁと改めて認識した。 ③ 風力発電の施設の中を見たのは初めてであった。風が弱くても強くても駄目であり、 正に風任せであることがわかった。 ④ 発電した電力を入札で売買しているらしいことが分かったが、もう少しその実態を 聴きたかった。 ⑤ 設置場所が USA の艦船の停泊している脇だったこと ⑥ やはり、風力での採算に厳しいものがある点での説明は、実際にやっている人の説 明は説得力があります。三菱重工でも見学しているので、よく分かった。 ⑦ 今の日本の主要な電力源になるとは思えない。客観的で詳細な発電コストを出すべ き。洋上風力発電なら多少の期待は持てる。 2)風力発電の、実用性や技術的課題、導入するための経済社会的仕組み等について ① 発電インフラに大々的に組み込むのはかなり困難と思う。限定された用途にとど まるのではないか。 ② 中国のゴビの砂漠での風力発電所を列車から見たが、 列車が 30 分位走っている間、 ズーット風車が並んでおり、物凄い数の風車で発電していた。要は広い地域で大量 の風車を設置できれば局所での風の変動がカバーできるのではないだろうか ③ 風力発電による収支状況、風が弱い時の代替措置等についてのシステムについて もっと専門的・具体的に説明が欲しかった。 ④ 補助的または山・海など、限られた用途には実用的であるが、基幹発電設備とし てはコスト的に引き合わないだろう。 ⑤ 太陽光についても言えるが、蓄電池の開発が重要。 現状の蓄電池の性能(効率・効率の経年変化・コスト)を明確にしてほしい。 ⑥ 安定した風、騒音の問題等を考えると陸上設置は向いていないと思った。 ⑦ 思ったほど実用的ではないことが分かった。 ⑧ 将来性のライフサイクルコストを総合して、自然エネルギーの議論をすべき。将来、 自然エネルギーの伸ばす必要があるが、隠れたコストをオープンにしないと進まな い。いつまでも化石燃料や原子力には頼れないのだから、その時代時代にふさわし いエネルギー資源の発掘を長期展望で行っていく必要があります。原子力は隠れた コストとリスクが余りに大きい教訓を生かすべき。問題点をオープンにすべし。ま た海外の輸入品と聞きましたが、何故日本は競争力が無いのかも議論が必要。波力、 地熱、等々、スターリングエンジン等々小さなエネルギーの回収技術も伸ばすべき。 (2)太陽光発電所見学者の感想 1)見学の中で特に印象に残った点 ① 東電が発電設備の一部として太陽光発電所を運営しているとは、恥づかしながら、 知らなかった。 ② 建屋の屋上から見て発電所の全体が把握できて良かった。 ③ メンテナンスフリーであったこと。しかし、草刈くらいは必要であろう。 ④ 太陽光発電が騒がれている割に頼りない。もっと効率を上げる研究は今後どこまで 進むのか。 ⑤ パネル設置のために広大な敷地を必要とすること。 ⑥ 表面のゴミは、雨で流れるので、問題ないとの説明だったが、私もベランダにつけ ているが、清掃はしたほうが良いと思う。正しくは、清掃したほうが良いが、装置 のコストであわないのではないか。問題はあるが、それを解決するコストがかる等々 の説明が良いと思う。問題点を今後どのように解決していくかが見学のスタートラ インと思います。 2)太陽光発電の実用性や技術的課題、導入するための経済社会的仕組み等について ① メンテナンスが問題ではないかと思う。特に経年化による影響など。発送電インフ ラの一部として小規模であればある程度までの普及は期待できると思う。その意味 ではメガソーラーは如何なものか。特に FIT の買い取り価格が高すぎて投機的なプ ロジェクトが多いのは気がかり。効率的な蓄電技術が実現すれば世界は一変するだ ろうが。 ② 太陽光発電には広い面積が必要であるが、今後狭い場所で例えば鏡の反射光を活用 するなどして、多重にパネルを設置できれば面白いと思った。 ③ 風力発電と同様、限られた範囲、規模でならば実用化する価値があると思う。浮島 発電所のような性格の土地ならば活用すべきである。やはり、発電規模ごとのライ フサイクルコストを知りたい。 ④ 配電線に接続しているようであったが、発電電力量の変化に対し問題が発生すると したらどの程度の規模の場合か、説明が欲しかった。 ⑤ 太陽光発電が置かれている立場が,よくも悪くも,理解できた. ⑥ ・土地一平方メートルあたりの年平均出力は 7 ワット程度。 ・つまり、土地一平方メートルあたり年間 60 キロワット時の生産力。 ・土地を駐車場にした方が遙かに、桁違いに有効。 ⑦ 原子力発電に比べて圧倒的な発電量の差に愕然としたが、再生可能なエネルギーは 必要不可欠だと思った。 ⑧ 太陽光は、土地の利用面での土地コストの算入も必要。廃棄物埋め立て地だから無 料の説明と思いましたが、他では畑をつぶしてやっているところもあり、42 円/kw では、とても長続きはしない。都心近くの平らな広大な土地に、パネルが林立する 姿は、違和感がる。狭い日本、土地の有効活用も重要。太陽光パネルに下に別の有 効活用もありうる。 以上 謝辞: <本企画にご協力いただいた機関> 風力発電所:横浜市環境創造局環境エネルギー課 かわさきエコ暮らし未来館:川崎市環境局地球環境推進室 太陽光発電所:川崎市環境局/東京電力神奈川支店 経済産業省資源エネルギー庁/(財)日本原子力文化振興財団
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