分析・科学機器業界における 日本の強みと今後の展望

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JASIS 開催 記念対談
分 析・科 学 機 器 業 界 における
日 本 の 強 みと今 後 の展 望
日本の「ものづくり」を影で支えてきた「分析展 / 科学機器展」が、この秋、J A S I S(ジャシス)として生まれ変わる。
長年、日本の分析科学研究を牽引し、本展とも関わってきた2人に、日本の強みと展望について語っていただいた。
二瓶好正 氏=学校法人 東京理科大学 特別顧問 澤田嗣郎 氏=独立行政法人 科学技術振興機構 開発顧問
二瓶 ■ まずは、日本の計測・分析技術開発の経緯について振り返り
たが、ほぼ確立したように思います。次は、一原子や一分子の存在
ましょうか。日本の近代的な学問や技術は、明治前後に欧米からも
状態や挙動を 3 次元で、かつ経時的 4 次元に可視化する技術が求め
たらされることで始まりました。何であれ、機器ができるにはそれ
られているように感じます。
までの先駆的な積み重ねが必要ですが、日本には積み重ねがないわ
二瓶 ■ 同感です。少し補足すると、動作状態下の動態、たとえば「生き
けです。しかし、着実に発展し、今では間違いなく世界の先頭を走っ
た細胞を丸ごと観察する技術」や「電位のかかった電極間の物質の
ていると思います。しかも、日本の分析科学機器メーカーのなかには、
状態を見てはかる技術」などが求められていると思います。後者な
明治創業で、現在まで続くものも少なくありません。
どは、即、高性能リチウムイオン電池の性能アップにもつながります。
澤田 ■ 歴史的には、まさにそのとおりだと思います。
対象物を知るには、見てはかることが原点になります。もし動的な
二瓶 ■ 昨年、日本分析化学会が創立 60 周年を迎え、記念誌に寄稿
状態の系を正確にはかれれば、そこに存在する課題をクリアする手
するために歴史的経緯を振り返る機会を得ました。それによると、
法もみえてくるはずで、社会応用につながる技術となるでしょう。
分析化学が日本において独立した学問として研究されはじめたのは、
澤田 ■ これまでの科学技術で「一部をとりだして見るという手法」
大正期です。第二次世界大戦中には欧米からの情報が途絶えるわけ
が発展してきたのは、そのようにしかできなかったからです。逆に
ですが、分光機器や電子顕微鏡については、日本なりの研究が進み
いえば、動的な状態の計測方法を開発できた者が、次の時代の天下
ました。
をとることになるのではないかと思います。日本にはスプリング 8
終戦後、日本は、アメリカの技術進歩に驚愕することになります。
やフォトンファクトリー、J-PARC などの大がかりな先端計測設備
昭和 20 年代までは、全国の研究者が、アメリカから 1 台入った装
があり、非常に恵まれた環境にあります。たとえば、JAXA のはや
置を使って測定しつつ技術開発を進め、まさに「追いつき、追い越せ」
ぶさがイトカワからもち帰った微粒子の解析などの優れた前例もあ
の時代でした。しかしながら、電子顕微鏡については日本独自で開
ります。なんとかして、新しい概念の技術を確立したいところです。
発を進め、昭和 30 年には日本の製品をヨーロッパに輸出しています。
特に走査型電子顕微鏡については、欧米で開発された製品とほぼ同
時に販売が始まり、世界と肩を並べるに至ったわけです。現在でも、
世界中の主だった研究所が、日本製の電子顕微鏡を導入しています。
歴史の浅い日本が短時間で欧米に追いついたのは、国策として開発
を進めてきたからではないでしょうか。
澤田 ■ そのとおりです。そして今、再び、日本という国が分析機器
開発の舵をどうきるべきか問われていると思います。私は「国が音
頭をとって、大学と産業界が協力して進める」という、得意とし
てきたやり方で最先端の分析機器開発を行うべきだと考えていま
す。田中 耕一先生や外村 彰先生の技術なども、そのような取り組
みの延長上に世に出てきました。
(独)科学技術振興機構(JST)で
は、8 年前から「先端計測分析技術・機器開発プログラム」が推進
中で、電子顕微鏡、レーザー分光機器、原子間力顕微鏡、質量分析計、
二瓶好正 氏
NMR など、ありとあらゆる先端計測機器の開発と、バイオ、ナノ
マテリアルなどのさまざまな応用分野の研究が進められています。
こうした国家プロジェクトは、今後も長く続けるべきでしょう。
二瓶 ■ 具体的には、どのような技術開発が急務だと思われますか。
工学博士
東京理科大学特別顧問
東京工芸大学理事
東京大学名誉教授
澤田 ■ 少し前まで、原子や分子を見る技術開発が求められていまし
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【併催】
※JASIS では、英語で聴講可能な豊富なプログラムを準備しています。
● 1. 『新技術説明会』
[名 称] JASIS 2012《分析展 2012
(第 50 回)
/科学機器展 2012
(第 35 回)
》
[会 期] 平成 24 年 9 月 5 日(水)∼ 7 日(金)
《 3 日間 》
[開場時間] 10:00∼17:00
[会 期]
平成 24 年 9 月 5 日(水)∼ 7 日(金)
《 3 日間 》
[会 場] アパホテル&リゾート
《 東京ベイ幕張 》
/ホテルニューオータニ幕張
[会 場] 幕張メッセ国際展示場
[入 場 料] 無料
[主 催] 社団法人日本分析機器工業会/一般社団法人 日本科学機器協会
[聴 講 料] 無料
● 2. 『JASIS コンファレンス』
[会 期]
平成 24 年 9 月 4 日(火)∼ 7 日
(金)
《 4 日間 》
[会 場] 幕張メッセ国際会議場
詳細はこちら
http://www.jasis.jp/
[聴 講 料] 有料(一部無料もあります)
※要旨集有料
二瓶 ■ 研究開発には、基礎研究が先行するシーズ・オリエンティド
二瓶 ■ そうなのです。知識に根ざした基礎を積み上げる教育は普遍
と社会的な求めが先行するニーズ・オリエンティドがありますが、
だと思いますが、学生側からすると、社会でどう役立つのかわかり
最近増えている課題解決型のプロジェクトは、後者のニーズ・オリ
にくいということもあります。
エンティドだといえます。急務となっているものとして、低レベ
澤田 ■ 学問が細分化しすぎている点も問題だと思います。分析機器
ル放射線が人体に与える影響を計測できる技術の開発もありますね。
の原理に興味をもったとしても、どこで何を勉強すればよいのかわ
原発事故以降、市民の関心を集めていますが、低レベル放射線につ
かりにくくなっていますね。物理、ナノテク、機械工学、バイオと
いてはまったく未解明です。低レベルだと細胞レベルでの影響を詳
幅広い分野が必要ですので、日本も欧米のように大学間の学生や研
しく調べる必要がありますが、現在はそれをはかる技術がないのです。
究者の移動をゆるくしたらいいと思うのですが。私立の東京理科大
一方で、すぐには産業応用できないシーズ・オリエンティドな研
などでは可能なのではないですか?
究開発にも、非常に重要なものがあると思います。先に述べた「一
二瓶 ■ 大学院レベルではやっていますが、カリキュラムが固まって
細胞を丸ごと解析できるような共焦点顕微鏡の開発」は、その一つ
いる学部ではないですね。アメリカの学部生をみていると、教科書
でしょう。細胞中の全分子を徹底的に調べて、その動態まで計測で
レベルの知識はあまり詰め込んでいません。ところが大学院レベル
きれば、さまざまな方面で世の中のニーズに応えられると思いますし、
になると、自分の専門分野とその周辺領域の習得意欲がすさまじい。
基礎研究も進むはずです。製薬研究なども急速に加速すると思います。
動機付けがしっかりしているからでしょう。クリエイティブな研究
澤田 ■ 国もそのへんの重要性は痛感しており、取り組み始めていま
開発というと、最終的に勝つのはアメリカ流なのではないでしょうか。
す。いずれにしても、学問、産業、省庁間と、さまざまな次元で異
澤田 ■ そういう意味では、東京大学の秋入学などは突破口になるか
分野融合が重要ということになりますね。教育においても異分野融
もしれませんね。人材が流動的になる気がします。
合が鍵なのですが、実はそこが問題でもあります。
二瓶 ■ 交流ということでは、今回の JASIS も役割の一端を果たせる
と思います。とくに、分析展と科学機器展が融合され、統一された
澤田 ■ 裾野が広がるメリットは大きいでしょう。少し残念なのは、分
析科学機器というとユーザーが限られており、市場がせまく小規模な
ビジネスとみられてしまうことです。新生 JASIS になったことで、世
界に向けて、
その存在の重要性をどうどうとアピールしてほしいですね。
二瓶 ■ そのためにも、日本発のブレイクスルーがほしいところでは
ないでしょうか。鍵は「高度なシステム化技術」にあるように思い
ます。装置は単独技術ではありえないので、異なった業界団体が一
体になることで、新たな装置化の概念がもたらされることを期待し
ています。アジアでは中国や韓国の追い上げが厳しいですが、学術
的な講演会、英語での対応、日本のものづくり思想の啓蒙などをす
ることで「アジアのハブ」として機能してもらいたいものです。
澤田嗣郎 氏
澤田 ■ そうですね。日本発のハイエンド商品の素晴らしさを理解し
工学博士
てもらい、ユーザーに応じたカスタマイズも可能であることをアピー
独立行政法人 科学技術振興機構
ルしたらよいと思います。
「より優れたデータがほしければ、日本
イノベーション推進本部
産学基礎基盤推進部 先端計測室
開発統括
製を使うとよい」といった神話を作りたいですね。それが、日本が
東京大学名誉教授
生きる道だと思っています。
二瓶 ■ 全く同感です。私も新生 JASIS に期待しています。
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ことは大変意義深いですね。