Reprinted from The Economist Newspaper April 8th 2010 2010 年 4 月 8 日 | ニューヨーク |「エコノミスト」誌印刷版 ワイヤレス・ヘルスケア 医療がもっと身近になる 近い将来、ワイヤレス通信とソーシャルネットワーキングが医学の発展と共に医療を変える きた。だが実際には、医療の大 アストリップ社のソフトウェアと同 ド)が世間を賑わせているが、利 規模な個別対応を実現し,その 様に、患者の健康状態を携帯電 現在 Apple 社の iPad(アイパッ 用形態の可能性をひとつ見逃し 過程で全く新しいビジネスモデル 話経由で遠隔監視するためのサ ているのではないだろうか。ハー を作り出しているのは、もっとロ バード大学病院の救急医療「イ ーテクのワイヤレス機器とインタ ンフォマティックス」情報科学長 ーネットを利用した医療系ソフト ービスを提供している。 医師たちは,明らかに早い時期 であるラリー・ネイサンソン氏は, ウェアなのである。 からワイヤレス医療のターゲット 救急病棟でこの機器を用いた実 となっている。シンクタンクである 験を実施してきた。「臨床に応用 市場調査会社カロラマ・インフォ カリフォルニア医療基金(CHCF) してみたところ,初期運用はかな メーションによると、ワイヤレス医 の調査によると、米国の医師の 3 分の 2 がすでにスマートフォン りの成功を収めた。印刷された 療はあらゆる病院で利用されは 心電図よりも、スクリーンに映し じめている。ワイヤレス機器及び を所有している。また 3 分の 1 出されたもののほうが見やすく、 サービスの市場は、米国内だけ 以上が併用禁忌や推奨治療法 ベッドで寝ている患者のすぐ隣で でも 2007 年の 27 億ドルから などに関する情報を瞬時に提供 必要な医療データにアクセスし、 2012 年までに 96 億ドルに到達 する携帯電話やノートパソコン向 問診できることは素晴らしい。」と する見込みである。ネットワーク けのソフトウェア「エポクレイツ」 述べている。 技術メーカー、クアルコム社のド を利用している。このソフトウェア ン・ジョーンズ氏は、これによって は間もなく携帯電話を通じて電 ネイサンソン氏の熱意は、ワイ 診断や治療がよりスムーズに行 子カルテにアクセスできるサービ ヤレス機器が医療を改善し、とり われ、医師や看護師の時間短縮 スを展開していくであろう。CHCF わけ個々に応じた治療の確立へ に一役買っている、と主張してい レポートの執筆者はこれを「ワイ の可能性を示している。長年、専 る。業界大手の GE と米国の携 ヤレス医療における次世代の画 門家は遺伝子学の研究が進む 帯電話通信事業者スプリント社 期的アプリケーション」になるとコ と共に、患者一人ひとりの症状 は共同でこのサービスを病院に メントしている。 に適した治療が提供できる最盛 提供している。GE のソフトウェア 期が迎えられるだろうと予測して 「ケアスケープ」では、競合のエ スマートフォンから電子カルテへ、 ダとペルーを先駆けに mHealth インテルのエリック・ディッシュマ さらに健康状態の遠隔監視装置 システムを立ち上げた米国のテ ン氏が述べているように、もっと へと急速に展開し続ける新技術 クノロジー企業、ボクシーバのポ も成功を収めている小型機器は がコスト削減と同時に、患者や ール・マイヤー会長は、このよう 医師に活気を与えることにより、 なシステムは発展途上国で成功 体メーカー大手の同社は、異常 よい結果に結び付くと期待され を収め、現在では富裕国におい ている。このような楽観的なシナ ても展開され始めている、と述べ 「マジック・カーペット」のような高 リオが実現すると思われる主な ている。同社は妊婦に向けて医 理由は、今や誰もが携帯電話を 療情報を無料配信する米国政府 資している。また、企業連合コン 持っているという点にある。例え の新しい公衆衛生キャンペーン ティニュアは、血圧モニターや計 ば、高機能であるスマートフォン 「Text4Baby(テキストフォーベイ 測器のデータを診療所やグーグ を利用する患者は、食生活・エク ビー)」に協力し、世界最大級の ル・ヘルスをはじめとする個人電 内密なものかもしれない。半導 な動きを感知し転倒を予防する 齢者向けの健康管理機器に投 ササイズ・バイタルサイン(血圧、 試みになるだろうと言われている。 子カルテサービスにワイヤレス 体温、脈拍数など)を記録する対 で転送できるための共用基準を 話型「健康」アプリケーションを使 さらに、携帯電話は医療分野に 作成している。 うことにより恩恵を受けるだろう。 おいて広がりつつあるワイヤレ Apple 社のアプリケーションスト ス化の一環に過ぎない。コンサ これらの機器は、医師の診断を アは何千種もの健康に関するア ルタント会社マッキンゼーは、世 より正確にするばかりではなく、 プリケーションを提供している。 界全体で今後 600 億ドル産業に 効果的な治療法を提供、または 高齢者向けにかんたん携帯を提 なる日も近いのではないかと予 患者の病状を管理する上で役に 供している米国のジッターバッグ 測している。ワイヤレス技術が組 立っている。また、医療関係者が、 社は最近、健康関連のサービス み込まれた「ホームヘルス」機器 患者一人一人の特記事項(好み を増やした。競合相手の電話会 は,多くの会社によって開発が や生活習慣など)を把握しやすく 社も同様のサービスを提供して 進められている。性質上明らか している。研究によると,慢性疾 いる。 に診療向きであるものも存在す 患をもつ患者であっても薬の服 る。医療機器メーカー大手のメド 用やインスリンの投与を適切に コンサルタント会社アーンスト・ア トロニック社は、小児糖尿病患者 欠かさず行うものばかりとは限ら ンド・ヤングのキャロライン・バッ の血糖値をワイヤレスで測定、 ない。効率的な電子リマインダー ク・ルース氏は,「mHealth」は, 記録するベッドサイドモニターを を好む患者もいれば、直接看護 豊かな国においても貧しい国に 開発中である。また、GE は身体 師による電話でのリマインダー おいても医療のありかたに変化 に装着し、ワイヤレスでバイタル が有効な場合もある。コンサルタ を与えていると指摘している。医 サインをモニターできる小型機器 ント会社プライスウォーターハウ 療コンサルティングを携帯電話 「ボディーセンサーネットワーク」 スクーパーズ(PWC)が 4 月 6 日 で提供しているメキシコのメディ を開発した。 に発表した世界的な消費者調査 コール・ホーム社は、すでに数百 によると、高齢者は手厚い個人 万の顧客を抱えている。ルワン 的な配慮を伴う質の高いケアを 好むのに対し、若年層は低価格 クサイトを展開している。この様 のケアと制度を好む傾向にある。 式は、たとえば潰瘍性大腸炎患 者が iphone のアプリケーション PWC の調査レポートによると, を通じて同じ病気を持つ患者と 近年、医療制度は顧客を分類し やり取りできるフォーラムを作成 た上で、それぞれに応じた個別 するなど、様々な使い方が可能 対応を始めている。一例として、 なため、好評を得ている。 南アフリカの保険会社であるディ スカバリー・ヘルスは、慢性疾患 患者がこのようなツールを利用 を有する患者に治療を継続させ し、治療に向けて自らイニシアテ るために、薬の服用を促すテキ ィブを取ることは、治療の中で通 ストメッセージを送付したり、きち 常一番難しいといわれている患 んと遵守している顧客に対して 者の行動の変革を促すのに大 報奨を与えたりするなどのサー 変有効である。患者は医師の指 ビスを行っている。 示よりも、むしろ支援してくれる 友人や家族の話に耳を傾ける傾 同様に、医薬品大手ジョンソン・ 向がある。同様に、医師や看護 エンド・ジョンソン傘下のウェルネ 師よりも携帯電話やワイヤレス スファーム、ヘルスメディアでは、 機器のほうが奨励を促すことも オンラインツール「デジタルヘル ある。もしかしたらオーダーメイド スコーチ」を利用して糖尿病患者 の遺伝子治療でさえもかなわな が自身の健康管理をし、体重を いのかもしれない。 減らすサポートをしている。研究 © The Economist Newspaper Limited, London (2010) によると、デジタルコーチを利用 している患者の半分は減量に成 功し、慢性疾患をもつ患者の健 康状態は改善され、それらの患 者の雇用主に年間 1,000 ドル相 当の価値をもたらすことを示唆し ている。 米国の競合、ヴァージン・ヘルス マイルズはそれに加えて、運動 や減量を患者に促すために同僚 や家族などが応援したり叱責し たりできるソーシャルネットワー
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