ハイブリッド ローン アレンジメントに対するEU親子会社指令の改正

Transaction M&A News
ハイブリッド ローン アレンジメントに対する
EU 親子会社指令の改正
Issue 69, July 2014
In brief
2014年6月20日、欧州連合(The European Union: EU)は、EU加盟国のハイブリッドローンに関する税務上の
取り扱いの違いから生じる課税上のミスマッチに対応するため、EU親子会社指令の改正に合意しました。当
該指令は、子会社から親会社への配当に係る源泉税の免除、つまり親会社段階での二重課税排除を目的と
したものです。
EU加盟国は当該指令により、所得がいずれの法人においても課税されず、想定外の課税上の利益を生むこ
ととなる「二重非課税」を生むべきではないという点で合意しました。
EUの懸念は、複数の加盟国で事業を行う企業グループが、配当が課税される国だけで事業を行う企業グ
ループよりも税務上の便益を受ける場合における、課税上のミスマッチが生じていることです。
当該改正により、日本企業においても、既にEU加盟国内で投資ストラクチャーを組んでハイブリッドローンの
便益を受けている場合、および今後EU加盟国内の企業グループのM&Aを検討する場合には、資金還流方
法および投資ストラクチャーの見直し等が必要になると考えられます。
In detail

改正指令4.1(a)では、加盟国に所在する親会社(もし
くはその恒久的施設)が受領した配当は、当該配当
が子会社において損金算入されない限りにおいて親
会社の加盟国において課税しないことを求めており、
子会社において損金算入される場合は課税すること
を求めています。

当該改正は2013年11月に開かれた欧州委員会
(European Commission: EC)の提言に基づいていま
す。
EU経済・財務相理事会(Economic and Financial
Affairs Council: ECOFIN)の合意によると、今度の欧
州理事会で改正指令4.1(a)は採択される見込みであ
り、EU加盟国は2015年12月31日までに改正法を国
内法に取り入れる予定です。
ECOFINの決定は、添付資料によると次のように要約
されます。

改正指令 4.1(a)は、子会社から親会社へ支払
われる配当に対して双方の国での税務上の取
り扱いの違いにより、二重非課税および想定外
の課税上の便益が生まれる場合に適用されま
す。
改正指令 4.1(a)は、二重非課税が生じていない
場合、またはその適用により二重課税が起きる
場合には適用されません。
この採択は、EU 加盟国に直接課税の範囲につ
いて将来的な立法提言の採択を強制するもの
ではありません。
また、ECは2012年12月6日のEU加盟国に対するア
グレッシブ・タックス・プランニングに関する勧告に基
づき、現行指令の租税回避規定に替えて、一般的租
税回避防止規定(GAAR)を取り入れることを提案して
います。
この提案については、次回イタリアで開かれるEU理
事会でさらなる議論がされる予定です。
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The takeaway
この改正指令は、EU加盟国に持株会社を持つ多国籍企業が利用する特定のハイブリッドインストルメンツに影響しますが、当
該ハイブリッドインストルメンツから生じる所得について、どのように課税されるべきかを強制するものではありません。
この新ルールは、Profit-Participating Loans(PPLs)やObligations Remboursables en Actions (ORAs)などのEU内のハイブリッド
インストルメンツについて適用され、Convertible Preferred Equity Certificates (CPECs)などのEUとEU外で利用されるハイブリッ
ドインストルメンツについては適用されません。(注)
なお、この改正は、経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development :OECD)が税源浸食と利益
移転(Base Erosion and Profit Shifting :BEPS)の中で議論を進めているハイブリッドミスマッチの取り決めの考えに、先行して対
応するものとなります。
(注)
Profit-Participating Loans (PPLs)およびObligations Remboursables en Actions (ORAs)とは、それぞれオランダおよびフランス
の投資で用いられる金融手法であり、Convertible Preferred Equity Certificates (CPECs)とは米国からルクセンブルグへの投資
において用いられる金融手法です。これらはいずれもローンと資本の両性格をもつハイブリッドな金融手法であり、設計次第で
は借手側ではローンとして扱われるのに対し、貸手側では資本として扱うことが可能となります。
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