平成20年度長期研修報告概要 鳥取県教育センター 研修企画課 長期研修生 露木 紅子 1 研究テーマ 自己表現する力を育む英語学習 ~「語順指導」と「音読指導」の連動を通した「書く力」の育成~ 2 はじめに 平成24年度から全面改訂される新学習指導要領で、英語の授業時数は中学校の教科の中で最も多 い週4時間となる。また、小学校外国語活動の導入に伴い英語を「読むこと」や「書くこと」にも力 を入れて4技能を総合的に伸ばす必要が出てきた。ただ単に授業時数が増えたというのではなく、ね らいを明確にし、生徒が自信を持てるような自己表現活動を設定していくことが求められている。そ してそれがまた新しい学習意欲を生むと考える。本研究では、所属校の実態や課題を踏まえ「自己表 現する力」を育むための方策に視点を置くこととする。 3 研究目的 自己表現することをねらいに置き、自分のことや身近な事項について英語で話したり書いたりする 力を育てたい。その中でも本研究では「自分の知っていることを他の人に伝える」という「書く力」 を育てることを目的とし、その具体的方策を考えていく。 (資料1) 4 研究内容 「語順指導」 ×「音読指導」 表現意欲を高めるための課題設定の工夫 ●必然性を高める ●具体性を高める ●自己関連性を高める ●自由度を高める ●検証授業の展開 実践校・学年:智頭町立智頭中学校・第2学年 67名 検証授業①:NEW HORIZON 2 Unit3(7時間) 検証授業②:NEW HORIZON 2 Unit6(11時間) ・検証授業では「語順と音読に関わる活動」を毎時間の 授業のラスト10分程度で実施した。 ・検証授業①で、語順指導は語順感覚を養い、英文を書 く手立てになることがわかった。 ・検証授業②では、音読指導との連動の効果を知るため (資料3)のように「音読なし群」と「音読あり群」 とに分け、比較検証した。 れ流の きとく書 を文英 ○語順指導 連動について 英文の規則性を習得させ、英文を書く手立てとする。 語順指導 ○音読指導 『音韻と文構造の基本的システムを獲得でき、語彙チャ 語順の定着・語彙チャンクの蓄積 ンクが蓄積され、反復によって文法規則の自動化が図れ 語順指導で扱った文を音読 るもの。基礎的な言語能力を育成する最良の方法が音読 だ。 』と元文教大学教授の土屋澄男氏は述べている。 英文を「書く」力 (2004.英語コミュニケーションの基礎を作る音読指導, 研究社) ○語順指導と音読指導の連動 語順指導で扱った文を音読することで、扱った英文が身近 (資料2) になり、語順が定着し語彙チャンクが蓄積され、英文を 英文を「書く」ときのプロセス 「書く力」につながると考える。(資料1・2) 課題の設定 今回は、特に Read & Look up の方法をとり定着をねらう。 語順指導 ○課題設定の工夫 英文を書こうとする 意欲 言語活動を英語で行う動機づけをしっかり行うことが大切。 語彙力 語順の理解 音読指導 英文が書ける (資料3) 検証実践について 音読なし 検証課題 音読あり (2クラス:45名) (1クラス:22名) 語順の学習 語順の学習 語順の学習で扱った文を音読 検証課題 語順の学習で扱った文を音読 検証課題 5 研究のまとめ 次の4つのことに効果があり、今後この取り組みを継続していくと「書く力」が身につき、 「自己表現」 できる生徒の育成につながると感じた。 検証①語彙チャンクの蓄積 検証②語順感覚の変容 ・「音読あり群」のほうがたくさんのチャンクが書ける ようになった。 ・「音読あり群」のほうが1文の中に書くチャンク数が 増えた。 (資料4は「音読あり群」の中の飛躍的に伸 びた例) (資料4) だれが/は どうする ・ 「音読あり群」のほうが語順感覚がより身につ いた。 (資料5) ・ 「音読あり群」のほうが「英文のきまりがわか った。」と検証授業後のアンケートに回答した。 ( 「音読なし群」65.0%、 「音読あり群」81.4%) (資料5) 何を/に 音読なし 3.2% 検証授業前 16.4% 100% 80% 60% 検証授業前 検証授業後 40% 20% 0% 検証授業後 3つのチャンク 4つのチャンク 9.8% だれが/は どうする 何を/に どのように どこで 5つのチャンク 音読あり 22% 100 % いつ 80 % 60 % 検証授業前 検証授業後 40 % +3チャンク 20 % 0% 3つのチャンク 4つのチャンク 5つのチャンク 検証④苦手意識の緩和 検証③学習意欲の向上 ・この「語順と音読に関わる活動」により、学年全体の ・全体的に英文を書くことへの苦手意識が緩和し 50.8%の生徒の学習意欲の向上が見られた。 「音 た。音読により語順の学習が定着し語順感覚が 読なし群」と「音読あり群」では学習意欲の向上に大 身についたことで、 「音読あり群」のほうが苦手 きく差が出た。 (資料6)音読学習での「覚えて読む 意識の緩和は顕著であった。 (資料7) こと・相互評価」などが生徒にプレッシャーを与えて ・無答率が低下した。 しまったのではないか。また学級の雰囲気が音読活動 (資料7) に及ぼす影響は大きく今回その2つの要因が学習意欲 自分で文章を考えて書くことは を左右したと考える。→課題①へ 得意ですか 「語順と音読に関わる活動」が 学習意欲を向上させましたか。 (資料6) 0% 検証授業前 20% 40% 37.5% 1.6% 1.6%12.5% 60% 80% 100% 46.9% 84.4% 11.4%減 検証授業後 1.6% 6.3% 19.0% 38.1% 34.9% 学年全体で30.6%の生徒の意識が改善 <音読なし> 28% <音読あり> 72% 73% 音読なし 音読あり 苦手意識の緩和 6 今後の課題 ①学習意欲を上げる音読指導の工夫 ③語順指導の教材の工夫 ②自己表現活動における成功体験の必要性 ④自己表現できる生徒を育成するための継続・発展指導 7 おわりに 書く力を育てるには継続・発展指導が必要である。今回の取り組みに終わらず、今後所属校の先生方 と生徒の「自己表現する力」を育てるために、3年間を見通し協力して指導に取り組みたい。
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