■■■■■ 特別寄稿 ■■■■■ 赤外線パターン投射式深度センサの 光学系調整 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科/船谷浩之、中村彰宏、柴田智広 Microsoft社のKinectをはじめとする赤外線式深度センサが注目を集めている。これらのセ ンサは、基本的に人体のモーションを取得することを目的としているため、近距離における 精度が十分でない、もしくはアプリケーションに必要な深度分解能が得られない場合があ る。そのような場合でも、センサの構成を変えることなく、視差を変化させるプリズムを加え るのみで、深度分解能の調整が可能となる場合がある。 本稿ではパターン投射式センサを対象とし、プリズムの視差変化により、深度方向の分解能 および計測範囲を解析的に導出し、実際に作成した光学系を用いて実証した。 1 はじめに レンズの焦点距離とエミッタとレシーバの距離が 固定され、計測可能な範囲を柔軟に変えることが できない。この不満に応えた製品として、NYKO 赤外線パターンを対象に投射し、その深度マッ 社から販売されているKienctの焦点距離を短縮す プ(あるいは深度画像) を得る安価なセンサは、イ る Zoom for Kinect 8)は、Kinect のパターン生成器 メージセンサおよび DSP の高集積化、低価格化と および IR カメラの前にレンズを設置し、画角を広 ともに、ASUS 社が Xtion、Microsoft 社が Kinect げることでより近距離での人体計測を可能にして を販売したことで 2010 年の後半から注目を浴び いる。われわれはこの方式とは別に、プリズムに た。これらのセンサは以下の理由により、深度画 よって赤外線パターン投影式の深度取得に用いら 像によるモーションキャプチャ3〜5)、物体認識 6) ・ れる視差を変化させることで、深度分解能と深度 3Dマッピング など様々な領域で盛んに利用され 方向のセンサ範囲を調整する事のできる光学系を ている。 開発した。この光学系を介して得られる深度(みか ① 安価で導入が容易な点 け深度)と、実際の深度(実深度)の関係式を赤外 ② OpenNI1)、Kinect SDK2)などソフトウェア基 線パターン投影式の深度取得の原理から導き、検 盤が整備されており、既存の技術との融和性 証実験によって式で示される関係が正しいことを が高い点 確認した。 7) ③ 幅広い応用に必要十分な精度を有する点 以降、2 章では深度センサの深度マップ取得法 について、3 章では本研究で開発した光学系の原 さて、Kinect、Xtion は赤外線パターンを投射 理とみかけ深度・実深度間の関係式について、4 し、パターンの歪みによって距離を測定する方式 章では 3 章の関係式の検証のための実験について、 を取っている。これらのセンサは特に安価に入手 5 章でまとめと今後の課題について述べる。 可能であるが、人体用として開発されているため、 82 ︱December 2012 eizojoho industrial
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