Jpn. J. Ornithol. 57

英文誌和文要旨
Ornithological Science 掲載論文和文要旨
第六巻 (2007)
第1号
原著論文
中部日本の農耕地におけるケリの繁殖行動と繁殖
成功
高橋雅雄・大河原恭祐
地上営巣性のシギ類・チドリ類には農業環境で
繁殖する種が多く見られ,チドリ科ケリ属でも数
種が農業環境に依存している.その 1 種であるケ
リについて,北陸地方の水田地帯で繁殖活動を調
査した.2004 年と 2005 年の繁殖シーズンにそれ
ぞれ 35 ペアと 42 ペアを観察したが,ほぼ全てが
水田にテリトリーを形成していた.テリトリーや
巣はゆるやかに密集しており,セミコロニー制の
繁殖形態をとっていることが分かった.また,繁
殖活動に最も影響したのは農作業で, 全体で 33
巣 (42.9%) が春期の土起こしや代掻きによって破
壊された.一方,繁殖に成功できたペアはそれぞ
れ 16 ペア (45.7%) と 14 ペア (33.3%) だった.繁
殖成功にはテリトリーサイズも影響し,広いテリ
トリーを持つペアほど巣あたりの若鳥数は多かっ
た.また,ケリには親鳥が仔を激しく防衛する特
徴があるが,複数個体が参加した集団防衛も頻繁
に見られた.この防衛行動は主にカラス類や猛禽
類に対して行われるが,集団防衛は特に猛禽類に
対して起き,また営巣密集の高い場所で起きてい
た.これら防衛行動もまた繁殖成功へ影響し,巣
内のヒナ数の増加に貢献していた.即ち,ケリの
繁殖成功には,環境要因(農作業・テリトリーサ
イズ)と行動要因(防衛行動)が影響していた.
郊外部および農村部での Backyard bird feeding 実
施状況:オーストラリア・クイーンズランド州南
東部で実施したアンケート調査
石亀 豪・ Greg S. BAXTER
欧米諸国では自宅敷地内で行う野鳥の餌付け
(Backyard bird feeding) の人気が高い.オーストラ
リアでは,郊外部世帯の 3 分の 1 以上が定期的に
この形態の餌付けを行っていると報告されている.
本調査は,郊外部および農村部における Backyard
bird feeding の詳細な実施状況を把握すること,そ
して両地域間の比較を行うことを目的とした.
2003 年 8 月,オーストラリア・クイーンズランド
州南東部のブリスベーン郊外( 郊外部) および
ロッキヤー・バレー地区(農村部)の 1156 世帯
91
を対象にアンケート調査を実施した.その結果,
郊外部,農村部共に Backyard bird feeding の人気
の高さが確認された(餌付世帯率 3648%).同
国で大きな割合を占める農村部でも餌付けが広く
行われている可能性が示唆された.計 43 鳥種が餌
付け対象として確認された.「鳥と触れ合うため」,
「鳥を助けたいから」というのが餌付けの主な理由
だった.実施者のほとんどが,餌付けは鳥に良い
影響を与えている,もしくは影響は全くないと考
えていた.全質問で,郊外部世帯と農村部世帯に
顕著な差はなかった.餌付けの是非は意見が分か
れる.その影響に関する具体的検証が進むことは,
オーストラリアはもちろん,日本を含む Backyard
bird feeding が盛んな国の当局,餌付け実施者に
とって有益と思われる.
ミトコンドリア DNA コントロール領域の塩基配列
にもとづく渡りのアカヒゲ Erithacus komadori が
由来する繁殖集団の推定
関 伸一・小倉 豪
アカヒゲ Erithacus komadori の繁殖が確認され
ていない地域(先島諸島,沖縄島南部,九州)で
非繁殖期に捕獲された渡りの個体がどの繁殖集団
に由来するかを,40 個体についてミトコンドリア
DNA コントロール領域 1226 塩基の配列をもとに
推定した.これまでの繁殖集団の解析から,トカ
ラ列島,奄美大島,徳之島,沖縄島の 4 集団間で
はこの領域に遺伝的分化が認められ,それぞれ固
有のハプロタイプが優占することがわかっており,
繁殖集団推定に適した遺伝マーカーであると考え
られた.渡りの個体ではトカラ列島集団のハプロ
タイプが優占しており,35 個体であった.しかし,
先島諸島で捕獲された 3 個体は奄美大島集団のハ
プロタイプ,2 個体は徳之島集団のハプロタイプ
を持つ個体であった.トカラ列島,奄美大島,徳
之島集団のハプロタイプを持つ個体は,いずれも
特定の性や齢に限定されなかった.奄美大島,徳
之島集団は繁殖地でも通年観察されるが,完全な
留鳥の集団ではなく,一部の個体が非繁殖期に先
島諸島以南まで渡る部分的な渡り鳥の集団である
ことが明らかになった.しかし,これら集団にお
ける渡りをする個体の割合については今後の課題
である.また,沖縄島集団のハプロタイプを持つ
個体は非繁殖期にも繁殖地以外では確認されず,
この集団は完全な留鳥集団であることを示唆する
結果となった.
92
英文誌和文要旨
ハシブトガラス (Corvus macrorhynchos) の網膜
における視細胞,特に油球の分布様式に関する局
所解剖学的研究
Mohammad Lutfur RAHMAN ・青山真人
杉田昭栄
本研究では,ハシブトガラス (Corvus macrorhynchos) の網膜における視細胞,特に各色の油球の
分布様式について解析を行った.新鮮なハシブト
ガラス網膜の伸展標本の顕微鏡写真を撮影し,油
球の数を色別に数えた.また,網膜の伸展標本に
ニッスル染色を施し,視細胞の数を数えた.その
結果,ハシブトガラス網膜全体における視細胞数
の推定値は 17,933,788 個となった (N4).網膜の
部位別に視細胞の密度をみると, 最も高密度で
あったのは中心部における 92,109 個/mm2 であり,
以後頭頂側部,鼻側部の順に密度が高かった.ハ
シブトガラス網膜には赤,オレンジ,緑,透明の
4 色の油球が存在した.油球の密度は網膜中心部
において 91,202 個/mm2 で最も高く,中心部から
離れ周辺部に行くに従い急激に減少していた.最
も油球密度が低かったのは背側部の 13,192 個/
mm2 であった.各色の油球の密度と大きさ(油球
の面積)は,互いに反比例の関係を持って網膜上
に分布していた.油球の大きさの平均はそれぞれ
赤 6 m m2,オレンジ 4 m m2,緑 7 m m2,透明 4 m m2
であった.網膜周辺部における油球の大きさは,
中心部のそれと比較して有意に大きかった.また,
網膜上の同じ部位における油球の大きさは,その
色により有意に異なっていた.網膜中心部におい
てはオレンジ色の油球が最も数が多かった(全体
の 33%)が,その他の部位では緑の油球が最も多
かった.これらの結果より,ハシブトガラス網膜
における視細胞と油球の分布は一様ではなく,部
位により異なることが明らかとなった.ハシブト
ガラス網膜において視細胞密度が高かった部位は,
神経節細胞密度が高かった部位に一致し,著しく
高い色覚を持つ部位であると考えられた.
短報
南大東島において 2006 年になわばりを保有して
いた雄のダイトウコノハズクの急激な個体数減少
高木昌興・赤谷加奈・斉藤篤思・松井 晋
技術報告
PCR-RFLP 法を用いた日本のタカ目の種同定の予
備的研究
野畑重教・浅川千佳夫・篠沢隆雄
第2号
原著論文
カナダ西部のアスペン・パークランドにおける水鳥
群集:種構成に及ぼす魚類,水生無脊椎動物,環
境の影響
Caroline E. MCPARLAND
Cynthia A. PASZKOWSKI
プレーリー草原と北方林の移行帯にあたるアス
ペン・パークランド生態系には,多様な水鳥が生
息しており,その生態学的な価値は高い.しかし,
この地域の水鳥の基礎的な生態情報は不足してお
り,その保護のために,水鳥群集に関係する生物
的,非生物的な情報の集積が求められている.本
研究では,カナダ・アルバータ州の 25 の自然湖沼
において, 水鳥に加えて, 水生無脊椎動物, 魚
類,陸水学的要因を調査した.スズメ目を除いて
43 種の鳥類が記録された.CCA (Canonical Correspondence Analysis) の結果,二つの特徴的な群集,
(a) 超富栄養湖における“カイツブリ – カモメ群
集”と,(b) 富栄養湖における“小型カモ – シギ群
集”が認められた.”カイツブリ – カモメ群集”の
湖は,小型の魚類が生息することと,無脊椎動物
ではハエ目,ミジンコ類,等脚類,捕食性のヒル
であるグロシフォニ科が多いことにより特徴付け
られる. 一方,“ 小型カモ – シギ群集” の湖は,
魚類が見られないこと,無脊椎動物では腹足類,
イシビル類,ゲンゴロウ科,トビケラ科が多いこ
とにより特徴付けられる.“カイツブリ – カモメ群
集”で水鳥の種数が多いこと(魚のいる湖での水
鳥の種数の平均; 12.5,魚のいない湖での平均:
8.1)は,魚類が生息することと関係しているだろ
う.このような,情報はアスペン・パークランド
生態系における,水鳥の保護に役立つだろう.
カラマツ人工林による落葉広葉樹林の分断化は落
葉広葉樹林内の鳥類にとって重要である
山浦悠一・加藤和弘・高橋俊守
元来の生物の生息地の消失と分断化を引き起こ
すマトリックスは生物にとって必ずしも不適な生
息地ではない.カラマツ人工林のように,植生構
造が複雑なため質は低いものの生物の生息地とし
てある程度までは機能するマトリックスが存在す
る. しかし, 植生構造が複雑なマトリックスに
よって引き起こされる生息地の消失と分断化の相
対的な重要性を検討した研究は少ない.そこで,
カラマツ人工林によって引き起こされた落葉広葉
樹二次林(以下,広葉樹林)の消失と分断化が広
英文誌和文要旨
葉樹林内の鳥類の出現に及ぼす影響を調査した.
調査は,越冬期と繁殖期に長野県中部の筑摩山地
で行なった.周囲 1600 m の範囲で広葉樹林の消
失と分断化の程度が異なるように, 越冬期に 33
箇所,繁殖期に 51 箇所の調査地点を設けた.カ
ラマツ人工林が質の低い生息地として機能してい
ると考えられる 3 つの種群を解析の対象とした.
ランドスケープ構造の影響はフライキャッチャー
のみで見出され,フライキャッチャーは広葉樹林
の分断化から負の影響を受けた. フライキャッ
チャーは, パッチ間距離が短い長細い広葉樹林
パッチに囲まれている広葉樹林によく出現した.
この影響は,広葉樹林の林分構造との間で混同さ
れている影響を除去しても有意だった.広葉樹林
の分断化は広葉樹林の消失よりも重要だったため,
広葉樹林の連続性の崩壊(広葉樹林パッチの収縮
と隔離)は広葉樹林の面積では補えないかもしれ
ない.生息地の分断化は,コントラストの弱いラ
ンドスケープでは第一に考慮すべきかもしれない.
マダガスカルの固有種であるマミヤイロチョウ
Philepitta castanea の繁殖生態
Hajanirina RAKOTOMANANA
Lily-Arison RENE DE ROLAND
1990 年 10 月から 1991 年 1 月にかけてマダガス
カル南東部に位置するラヌマファナの熱帯雨林と
2000 年 10 月から 2001 年 2 月にかけてマダガスカ
ル北東部に位置するマスアラ半島の熱帯雨林にお
いてマダガスカルの固有種であるマミヤイロチョ
ウ Philepitta castanea の繁殖生態を調査した.今回
の調査で発見した洋ナシ形をした 3 巣は, Tambourissa spp. (Monimiaceae)と Cryptocarya spp.
(Lauraceae) の地上からの高さ 6–8 m にある吊り下
がった枝の先端にあった.ラヌマファナでは,雌
の色彩をした 2 個体が造巣に参加する一方,マス
アラで調査した 2 巣では黒色をした 1 羽の成鳥の
雄と 1 羽の雌が造巣に参加した.2 カ所の調査地
とも 1 羽の成鳥の雌だけが抱卵とヒナの世話を
行った.育雛期は約 17 日間で,雌の色彩をした 1
個 体 が , Tambourissa spp. や Aphloya theaformis
(ラヌマファナ)の果実を若鳥に給餌した.顕著な
性的二形,雌雄で異なる繁殖の役割分担,雄の誇
示行動をともなうなわばり参加は,本種の繁殖シ
ステムは一夫多妻の一種であるレックであること
を示唆する.
93
中国四川省白坡山自然保護区におけるアカガシラ
ミヤマテッケイ Arborophila torqueola のつがい形
成期における生息場所利用
Wen Bo LIAO ・ Jin Chu HU ・ Cao LI
資源選択に関する多くの研究の目的は, 種に
よって選好される生息場所を明らかにすることで
ある.しかしながら,ある生息場所の特徴につい
ての好みは,景観的構成,捕食圧,固体の資源要
求などの要因の組み合わせによって決まると考え
られる.生息場所利用のさまざまな違いの原因を
明らかにすることは,ある種の生息場所に関する
生態の機能的な側面を理解するのに多いに役立つ
だろう. アカガシラミヤマテッケイ Arborophila
torqueola は広葉樹林を必要とする種であるが,亜
熱帯林の分断化の結果,その個体数は減少してい
る.つがい形成期(3 月– 4 月)の生息場所の条件
がこの種の生存と繁殖に重要だと考えられるけれ
ども,この時期の生息場所利用についての情報が
ほとんどない.そこで,中国南西部の山岳地帯で
ある白坡山自然保護区において,アカガシラミヤ
マテッケイの生息場所利用の調査を行った.2004
年と 2005 年のつがい形成期に,ポインティング
ドッグを使って鳥の位置を見つけ出し,鳥が飛び
出した場所 60 カ所と,対照区として 100 m の範
囲内からランダムに選んだ 60 カ所の生息場所の特
徴を測定した.記録した情報は,地形,植生の形
質, 落葉層についてである. アカガシラミヤマ
テッケイが主に利用したのは,標高 2400–2900 m
の範囲,傾斜 28.62.9 度の東斜面,水源地と道
路に近い場所であった.利用した場所では,ラン
ダムに選んだ場所よりも高木と低木の被度が高く
て落葉層が厚く, 逆にササの個体数や被度は低
かった.主成分分析によって,鳥の生息場所選好
を最もよく説明するのは,隠蔽の度合い,食料,
地形と水資源であることが分かった.密猟,畜産,
伐採を抑制する森林管理を行えば,生息場所の質
と利用可能性の改善によって本種に有益な効果が
もたらされるだろう.生息場所利用パターンに基
づいて,アカガシラミヤマテッケイとシセンミヤ
マテッケイ A. rufipectus の生息場所の違いを検討
した結果,白坡山自然保護区はアカガシラミヤマ
テッケイにとってより好ましい環境であることが
分かった.
94
英文誌和文要旨
日本スズメ (Passer montanus) 網膜の領域による
特徴―神経節細胞と油球の分布―
Mohammad Lutfur LAHMAN ・青山真人
杉田昭栄
本研究は,日本スズメの網膜における神経節細
胞と錐体細胞に含まれる油球について,その密度
と数を確認することを目的とした.スズメを致死
量の麻酔(ペントバルビタール 30 mg/kg)により
屠殺した後,眼球を眼窩より取り出し,さらに網
膜を剥離した.網膜の神経節細胞の観察のため網
膜伸展標本を作製し,0.1% クレンシルバイオレッ
ト溶液により染色を施した.また,油球の観察に
ついては,新鮮な網膜を伸展標本にし,各種油球
の色を顕微鏡下で観察した.その結果,スズメの
網膜の神経節細胞の総数は約 1.6106 個と推定さ
れた.網膜全体の平均的な神経節細胞の密度は,
18,539 個/mm2 であった.神経節細胞の密度は網
膜の中心窩付近において最も高く( 26,000 個/
mm2),中心窩から離れるにしたがいその密度は減
少した.神経節細胞の大きさは,最高密度域では
小さく,最小密度域では大きかった.スズメの網
膜には,赤,黄,緑,透明の 4 色の油球を持って
いた.網膜全体の平均的な油球の密度(4 色の合
計)は 25,680 個/mm2 であった.4 色の油球の中
で,緑の密度が最も高かった.神経節細胞の結果
と同様,網膜の中心窩付近が油球の密度が最も高
く,50,731 個/mm2 であった.さらに神経節細胞
と同様,網膜の各領域において,細胞の密度と大
きさの関係は逆転していた.これらの結果から,
スズメの網膜は部位によって視覚能力は一様では
ないと考えられた.特に,高密度領域は一箇所で
あり,この部位が特に高い視覚能力を持つものと
考えられた.
タンチョウの音声発達
Anna V. KLENOVA ・ Ilya A. VOLODIN
Elena V. VOLODINA
鳥類の音声発達には長い研究史がある.しかし
ほとんどの研究は鳴禽類に限定されており,それ
以外の鳥類はほとんど研究されていない.ここに,
発声学習をしない種であるタンチョウにおける発
達初期から後期にかけての音声の変化を詳述する.
トリル,PE 鳴き,PS 鳴きの 3 つのカテゴリの鳴
き声を記述する.鳴き声のパラメタ値の変化傾向
をふ化直後から 9.5 ヶ月の 10 段階の月齢に分けて
記述した.とりわけ,幼若期の高い声から成鳥期
の低い声への変化が生ずる変声期に見られる発声
の構造的な再構成について詳述する.また,他の
種のツルとの比較を生物学的に重要な発達段階に
おいて行い,タンチョウにおいて青年期のツルで
も幼若期の高音が維持されることの意義について
考察する.
混群を構成する鳥による枝面利用の多様性と柔軟
性:ニッチ分化か競争的階層か?
日野輝明
ニッチが重複する種間の資源分割のメカニズム
を説明するためのモデルとして,ニッチ分化と競
争的階層という 2 つのモデルが提案されている.
本研究では,混群を構成して樹冠で主に採食する
8 種の鳥(エナガ Aegithalos caudatus,ハシブトガ
ラ Parus palustris,シジュウカラ P. major,ゴジュ
ウカラ Sitta europaea,コゲラ Dendrocopos kizuki,
アカゲラ D. major,オオアカゲラ D. leucotos,ア
オゲラ Picus canus)を個体識別して,野外に設置
した人工の餌木上での枝面利用を 3 年間調べた.
3 種のカラ類とゴジュウカラは枝の上面を最も頻
繁に利用したのに対して,4 種のキツツキ類は枝
の側面を最も頻繁に利用した.この結果はニッチ
分化モデルで説明できる.カラ類 3 種間とキツツ
キ類 4 種間では,それぞれ体の小さな劣位種が体
の大きな優位種よりも枝面の利用範囲が広く,こ
の結果は競争的階層モデルによって説明できる.
さらに,2 年以上にわたって複数の個体が観察さ
れた 5 種(ハシブトガラ,シジュウカラ,ゴジュ
ウカラ,コゲラ,アカゲラ)では,個体,年,社
会的状況,餌量条件の違いによって枝面利用がど
のように変化するかが調べられた.ハシブトガラ
とコゲラは,それぞれ社会的優位種であるシジュ
ウカラとアカゲラと一緒に採食するときに枝面利
用を変化させた.ハシブトガラは,シジュウカラ
との敵対的な出会いの頻度が高い年ほど枝面の利
用範囲が広かった.同種個体間での枝面利用の違
いは劣位種(ハシブトガラ,コゲラ)で示された
が,優位種(シジュウカラ,アカゲラでは示され
なかった.このような個体による違いは,同じ群
れで採食する同種個体間の競争を緩和する効果が
あるかもしれない.枝面利用に及ぼす餌量条件の
効果は,本研究では示すことができなかった.
短報
沖縄島南部に生息するシロガシラ個体群の季節変
動
中村和雄
英文誌和文要旨
剖検,レントゲン検査およびエックス線 CT に基
づくオナガガモ腹壁ヘルニアの一症例
千葉 晃・本間隆平・外山美智雄・渡辺光博
95
本州北部のクマゲラ Dryocopus martius の営巣地
環境
鈴木まほろ・柳原千穂・藤井忠志・由井正敏