セグメンテーション/ターゲティング

セグメンテーション / ターゲティング
顧客理解のためのエッセンシャル
山本 泰史
テラデータ事業本部
営業推進統括部
マーケティング部
スペシャリスト
2005 年 10 月
セグメンテーション / ターゲティング
粒度コントロールの
ケイパビリティ…………………3
概要
セグメンテーションは、顧客マーケティング及びビジネスのあらゆ
セグメンテーションと
ターゲティングの違い…………4
る側面において必要となる顧客理解のための基礎的な手法であり、
この能力はそのまま長期的、短期的な市場適応能力を反映します。
セグメンテーションの単位……5
そして市場競争が激しくなる環境において、この能力は益々重要と
セグメンテーションの基礎 1
- 量的変数と質的変数…………6
なることでしょう。またターゲティングは、実施するマーケティン
セグメンテーションの基礎 2
- 属 性 の 種 類 …………………8
ある、顧客の輪郭を描き出すために必要不可欠な能力です。
セグメンテーションの手法 1
- 変数の作成……………………9
テーションとターゲティングの基礎的な考え方についてご紹介しま
セグメンテーションの手法 2
- セグメント変数の
保 持 方 法 と 利 用 ………………11
れ、次にセグメンテーションの単位、変数、属性といったセグメン
グキャンペーンの投資対効果を最大化するために最も重要な要素で
このホワイトペーパーでは顧客理解のための礎となる、セグメン
す。まず、セグメンテーションとターゲティングの違いについて触
テーションを形作る上で重要となる概念と手法についてご紹介しま
す。そしてこれらのセグメンテーション手法をベースにした、ター
ターゲティングの
粒度に関する考察……………12
ゲティングの手法について併せてご紹介していくことによって、特
定のキャンペーンにおいてもっとも合理的な顧客を選択していくた
ターゲティングの基礎 1
- リストからの対象抽出……13
めのプロセスと、顧客理解のために企業が保持可能なケイパビリテ
ィについて概観していきます。
ターゲティングの基礎 2
- リスト間での操作…………15
ターゲティングの手法例………16
1. セグメント内の
構 造 を 理 解 す る ………………17
2. セグメントの行動
パターンを理解する……………18
3. セグメント間の
違 い を 理 解 す る ………………20
モデリング環境の要件………21
ま と め …………………………21
2
セグメンテーション / ターゲティング
粒度コントロールのケイパビリティ
一般的なセグメンテーションとターゲ
品の選択肢を保持しています。供給過
報過多は、消費者に十分な知識を与え、
ティングの違いは、例えば“ 男女に区
剰な市場とは、供給者が必要とする総
上述した価格や機能に対するセンシテ
分し、男性に対して靴を販売する ”と
需要数に匹敵する需要が存在しない状
ィビティを与えます。これによって消
した場合の、男女の区分がセグメンテ
態を指し、特性として、需要の喚起が
費者は当該商品に対しての必要性と不
ーションであり、男性が ( 靴の ) ター
常にされ続けているために潜在需要は
必要性、つまりニーズを明確過ぎるほ
ゲットと表現されます。例えば雑誌の
存在せず、市場そのものが拡大しない
どに理解し、選択においてより厳しい
ようなメディアを用いてマーケティン
という傾向を持ちます。この拡大しな
目をもつようになります。逆の見方を
グを実施するとき、靴の広告ページは
い市場において競争原理が適切に働い
すれば、市場は臨界点まで需要喚起さ
男性の足元を対象としたメッセージに
ている場合、供給者全ての生き残りが
れた状態を維持し続け、上述したニー
なるでしょう。この構造は、顧客マー
許されないため、その中で生き残り、
ズに対して新たに喚起され、覚醒する
ケティング、つまり個人を識別し、必
あわよくば成長していくためには、何
消費者が存在しない状態となります。
要とあらば特定の個人向けにオーダー
らかの差別化要素が必要となります。
消費者は追加的なマーケティングメッ
メイド型のマーケティングを実施して
差別化要素は一般に商品やサービス /
セージに対して麻痺していくようにな
いく際にも適用されます。その個人の
ブランド認知度、機能、価格等によっ
り、Same old story となったマーケテ
特徴を理解し、そこに合わせた商品を
てもたらされます。この市場における
ィングメッセージに新たな関心を抱く
適用する、もしくはある特定のニーズ
複数のメジャープレイヤーがこのよう
ことが少なくなってくるのです。
を満たす商品がもっとも効くであろう
な差別化を実施していくとき、多大な
もちろん、上述したような構造の中で
顧客を識別する場合にもこれらは適用
マーケティング費用、多大な商品開発
も圧倒的な差別化を図ることが出来れ
されることになります。セグメンテー
/ 実装費用、そしてこれらをまかない
ば生き残り、成長を謳歌することも可
ションとターゲティングを写真に喩え
つつ市場における価格競争力を維持す
能でしょう。認知度や価格、機能等に
るのであれば、セグメンテーションは
るための企業体力が必要となります。
おいて卓越性を誇示することができれ
写真の解像度、つまり粒の細かさを意
そしてこのスピードは加速化し、一方
ば、それはマスチャネルのみならず、
味し、一方でターゲティングは対象へ
で競争は熾烈となり、その効果は低減
店頭やオンライン比較サイトのよう
のピントを意味します。この現実世界
していきます。メジャープレイヤー間
な全てのレイヤーにおいて強みを発揮
を正確に切り取るためには、高い解像
での機能や価格の差別化行動は、当初
し、思い通りの成果を挙げることが可
度を実現できるカメラと、ピントを合
のダイナミックなものから比較的微細
能となります。また、消費者の検討リ
わせるカメラのフォーカス機能やカメ
な部分にフォーカスが当てられたもの
ストに載るという意味においてマスマ
ラマンの力量の両方が必要になります。
となり、差異は小さなものとなってい
ーケティングが重要な位置付けを担う
しかしながら、現在の市場において
きます。そして同時に競争の熾烈化は、
ことも変わりありません。おそらく一
起こっているコトを眺めてみると、マ
商品 / ブランド認知や機能拡張、価格
定ボリュームのマスマーケティングな
ーケティングはあるべきセグメンテー
低減を追加的に実施した際の効果幅の
くして消費者の商品認知を得ることは
ションとターゲティングの粒度を失っ
減損をもたらすようになります。これ
困難なはずです。しかしながらそれが
ている場合があるように見受けられま
はおそらくその市場において新たなパ
決定的な差別化要素ではないことも考
す。マスマーケティングに過度に依存
ラダイムシフトが起こるまで続いてい
慮に入れなければなりません。検討リ
したマーケティング活動が、思ったよ
くことでしょうし、ポスト・パラダイ
ストに載ることと、最終的に選択され
うな成果を挙げられないケースです。
ムシフト環境下においても異なるステ
ることは全く別のことです。一方、上
供給過剰、かつ情報過多の今日の世界
ージで同じ競争を繰り広げるのみでし
述したような構造の中で、マーケティ
において、消費者は十分な知識と、商
ょう。また、もう一つの要素である情
ング経費や商品開発 / 実装費、価格リ
3
セグメンテーション / ターゲティング
ーダーシップといった量的で体力に依
てどのレベルに市場を細分化すれば自ら
採用されなければなりません。重要な点
存した戦略とは異なる手法を用いて期
の優位性を最もアピールできるかを認識
は商品やサービスを競合他社との関係に
待する成果を遂げる場合、セグメンテー
し、その細分化した市場に自らの商品を
おいて、もっとも優位性を発揮できるレ
ションとターゲティングの粒度をコント
ポジショニングすることによって期待す
ベルに粒度コントロールできる能力を持
ロールすることが有効な手法となりえま
る成果を得ることが目的です。従って必
つことであり、その企業におけるマーケ
す。これは単純に粒度を細かくするとい
要に応じてマスマーケティングも、より
ティング上のケイパビリティは粒度コン
うことを意味しません。自らの商品がも
粒度の細かいパーソナライズされたマー
トロール幅と最適な粒度の選択能力に大
っとも差別化できる市場がどこか、そし
ケティング手法も、ときにはその両方も
きく依存するということです。
セグメンテーションとターゲティングの違い
以上のような前提条件を踏まえ、現
図1.セグメ ン テ ー ション と タ ーゲティ ング の違 い
在のテクノロジーにおいて利用可能な
セグメンテーションとターゲティング
の手法、そしてその粒度について触れ
目的
手法
適用分野
ていきますが、その前に、セグメンテ
ーションとターゲティングの違いにつ
利用価値
セ グメ ンテ ー シ ョ ン
事業における顧客の理解
近似の変数に基づいて
顧客や取引をグルー ピ ング
事業戦略策定、商品企画/開発、
マーケティング等
セグメント間の違い、力関係や
その変化を理解できる
ターゲティング
キャンペーン利益の最大化
(セグメンテーションを用いて)
キャンペーン対象顧客を選別
マーケティングキャンペーン
キャンペーンに最も合致する
顧客を選別できる
いて整理しておきます。上述したよう
にセグメンテーションとは細分化であ
りに役立てることが出来るはずです。
った形でビジネスを遂行するのであれ
り、ターゲティングとは細分化したど
これに対してターゲティングは、対
ば、このセグメンテーションの変化に
の部分にフォーカスを当てるべきかと
象となる顧客を選択する手法です。目
基づいて事業ドメインや商品開発のベ
いうことです。図 1 にその違いを対比
的はある特定のキャンペーンに対し
クトルを設定する、または必要に応じ
させて表現しています。
て利益を最大化させることが可能な
て事業ドメインの修正、拡大、縮小を
セグメンテーションはある変数が同
顧客を導き出すことにあります。この
行うことになるでしょう。
じもしくは似ているという状態に基づ
両者の関係ですが、ターゲティングを
ちなみにターゲティングにはターゲ
いて、顧客をグルーピングする、もし
行っていく際にセグメンテーションは
ット顧客層にとって最適な商品を選択
くは分類する手法です。これはマーケ
非常に重要です。これが無ければ対象
するというプロセスと、自社が保持す
ティングのみならず、様々な分野に適
となる顧客を選別するための基準が無
る商品にもっともアピールするセグメ
用できます。またこれを利用してセグ
いため、ターゲティングは不可能に近
ントをターゲットとして選択するとい
メント間の違いや力関係を理解するこ
くなります。前項で記述した “ 粒度の
うプロセスがあります。いずれの場合
とも可能です。もちろんマーケティン
コントロール幅 ” とはセグメンテーシ
にも商品と顧客がマッチしていなけれ
グに活用することがもっとも大きな利
ョンを意味し、一方で “ 最適な粒度の
ば正しいターゲティングとは呼べませ
用用途であることは言わずもがなです
選択能力 ” とはターゲティングを意味
ん。よく言われる対比論で、プロダク
が、その目的はあくまでも汎用的なも
します。従って、ターゲティングはセ
トアウトとマーケットインの比較が議
のです。このセグメンテーションによ
グメンテーションに大きく依存してい
論され、往々にして今日の議論ではマ
って大きな利益を得るのはマーケティ
ますが、セグメンテーションはターゲ
ーケットインこそが正義であるかのよ
ング部門だけでなく、事業戦略や商品
ティングから基本的に独立した存在で
うに語られますが、顧客が必要とする
企画 / 開発の部門等も挙げられるでし
あり、企業がビジネスを遂行する上で
ものを提供するために、自社の事業ド
ょう。例えば小売業であればセグメン
モニタリングするべき対象であるとい
メインやそこから導き出された商品を
テーションを店頭の品揃えや売り場作
うことが言えます。顧客の嗜好性に添
逸脱することは、無用なコストと無用
4
セグメンテーション / ターゲティング
なリスクを自社にもたらすことにつな
一方でセグメンテーションとターゲテ
ト A とセグメント B という 2 つのグル
がります。また一般論で展開されるよ
ィングにおいて利用されるテクニック
ープとなりますが、ターゲティングの場
うに、顧客が無視された形での商品展
については、重複または同様のテクニ
合はキャンペーンの対象顧客リストか、
開が必要な成果をもたらさないことも
ックに依存しています。これがこの 2 つ
否かという判断の違いになるだけです。
また事実です。重要なことは商品から
の重要な違いをもつ概念が同一視され
以降においては便宜的にセグメンテー
のアプローチであれ、顧客からのアプ
がちな理由でもあります。いずれもテク
ションで重要になる手法と、ターゲテ
ローチであれ、それぞれがお互いにマ
ニックとしてみた際には顧客 A と顧客
ィングにおいて重要となる手法に分け
ッチすることが重要なのであり、ビジ
B の違いを発見し、それぞれを別のグル
てご紹介していきますが、それぞれのテ
ネスの結実を意味する取引には必ず商
ープに選り分ける手法です。これがセ
クニックは両方で利用可能である部分
品と顧客の両方が必要なのです。
グメンテーションの場合にはセグメン
が多いことを念頭においてください。
セグメンテーションの単位
ためのカウンターオファーを考えた場
図2.取 引をベースと したセグメ ンテーション
セグメント
朝食セグメント
昼食セグメント
会社員時間潰し
セグメント
だべりセグメント
ノイズセグメント
合計
分類基準
(取引発生の時間帯、オー ダー商品等)
7時から9時、コーヒーもしくはモーニングセット
11時半から13時、カレー、チャーハン等
9時から11時半及び13時以降、ドリンク類のみ、
1シート、ネクタイ/スーツ
13時以降、ドリンク類のみ 、2シート以上
上記以外の取引
合、このときのターゲットセグメント
取引数/日
24
49
22
は昼に多く来店していた顧客層から、
中華料理店に取られてしまった顧客層
に絞り込んだ顧客層ということになり
51
29
175
ますし、取引セグメントという観点か
らは、例えば今までこのお店で、お昼
にチャーハンを頼んでいた取引セグメ
このホワイトペーパーで中心に取り扱
グメントをターゲットとしたときのオ
ント、つまり 11 時半から 13 時程度の
う、セグメンテーションの単位は個人
ファーとなっていることでしょう。同
間で、チャーハンが含まれていたオー
です。しかしながらセグメンテーショ
様のセグメンテーションは、図 2 に示
ダーがカウンターオファーを実施する
ン、つまり同一もしくは近似の変数を
したように可能となるはずですし、こ
べきターゲットとなります。
用いて細分化し、企業活動に役立てる
のセグメンテーションの単位を取引
一方で 1 人の個人に視点を移すと、も
という意味では、識別可能な個人にと
( オーダー ) であるとした場合、取引
しかしたら朝食セグメントと昼食セグ
らわれる必要はありません。若干本論
データからそれぞれのセグメントが保
メントの、それぞれに該当する取引を
から外れますが、セグメンテーション
持しているボリューム ( 来店客数 ) や
発生させている顧客が存在するかもし
がより広範な概念であることを理解い
収益性 ( 平均的なオーダー額から導か
れません。この顧客は 2 つの顔を持ち、
ただくために、一つの例をご紹介しま
れる利益 ) も理解できるようになるは
上述したケースであれば昼食セグメン
しょう。とある喫茶店を思い浮かべて
ずです。また商圏環境が変化したこと
トの顔が離反していると考えることも
ください。この喫茶店では来店客が誰
による取引セグメントの変化も見出す
可能です。つまり言い換えれば、これ
であるかを識別できませんが、取引と
ことが出来ることでしょう。例えば近
はその個人の、時間によって異なる行
接客からセグメンテーションを行い、
くにオフィス街ができれば朝に特有の
動属性をセグメント化し、それぞれに
さらにターゲティングを行うことが可
取引セグメントは増加の傾向を示すか
対してターゲティングを行うことと近
能です。例えば朝であれば朝食と目覚
もしれませんし、隣に美味しい中華料
しいことを意味します。唯一欠落して
まし代わりのコーヒー、タバコのため
理店ができれば昼に特有の取引セグメ
いるのはこの 2 つの取引をつなぐ顧客
に来店する顧客が存在し、モーニング
ントは減少傾向を示すことでしょう。
を識別する術がここでは存在しないと
セットや煎れたてのコーヒーがこのセ
中華料理店に奪われた顧客を取り戻す
いうことです。当たり前のことなので
5
セグメンテーション / ターゲティング
すが、ほとんどの方は朝食と同じメニ
故に、その個人を出来る限り分かりや
たセグメンテーションは、意図的に識
ューを昼食に食しません。昨日着た服
すいステレオタイプに当てはめてしま
別可能な個人という概念を隠すことに
と同じ服を今日も身にまとうことは、
うことにあります。分かりやすくする
よってその行動属性そのものを浮かび
人生においてそう多くないことでしょ
努力そのものは問題ではありません。
上がらせるという意味においては、考
う。この個人の中に発見される多様性
しかしながらその個人が持つ、本来複
慮に値する重要な選択肢の一つである
やその範囲は、個人識別をしてしまう
雑で豊潤な多様性をスポイルしてし
と言えます。さらに、識別可能な個人
ことによって見逃されがちな理解の対
まい、それによってビジネス機会を逃
が存在する場合には行動属性と個人を
象であるとも言えます。問題は 1 人の
してしまうことは避けられなければな
n : 1 の関係で関係付ける形で発展さ
個人であることを識別できてしまうが
りません。このため取引をベースとし
せることも可能です。
セグメンテーションの基礎 1 - 量的変数と質的変数
1 つは量的変数、もう 1 つは質的変数
図3.セグメ ンテ ー ショ ンの構造
女性セグ メ ン ト
性別
(=女性)
F2セグメ ン ト
性別
(=女性)
年齢
(=35 -49歳)
女性、40歳
セグメンテーション
セ グ メ ン テ ー シ ョ ン 属性
及び条件
属性変数例
女性
所属セグメ ン ト グループ
性別セグメ ン ト グループ
ー
1つのセグメンテーション= 個のセグメンテーション属性によって構成
1つのセグメンテーション属性= 個の属性変数によって構成
です。量的変数は、例えば購買金額等
のように数値化され、かつ変数間の数
値幅が意味を持つものです。年間利益
額が 100 円の顧客と、200 円の顧客で
は、その企業に対する利益貢献度とし
ては 2 倍の違いがあります。平均的な
個人を単位としたセグメンテーション
ループはセグメントの集合です。セグ
週あたりの来店頻度が 2 回の顧客と 4
に話を戻します。セグメンテーション
メントグループ内の各セグメントはお
回の顧客では、来店頻度に 2 倍の差が
を、顧客をセグメント化 ( 細分化 ) す
互いに排他的であり、かつその集合が
有ります。この場合、2 つの変数間に
る作業であるとした場合、セグメン
包括的な顧客リストとなります。単純
はその変数をベースに比較する基準が
テーションの基準は個人の属性とい
な男女の別をベースにした性別セグメ
存在することを意味し、実際にその違
うことになります。単純な男女の別を
ントグループであれば、
“ 男性 ”、
“女
いの大きさを比較することに意味があ
セグメンテーションに適用するのであ
性 ”、
及び “ 不明 ”はそれぞれに排他
るであろう変数です。
れば、性別という属性を用い、その中
的であり、その集合が包括的な顧客
これに対して質的変数を量的変数の定
の変数は、一般的に男性、もしくは女
のリストとなります。セグメントは必
義と対峙させた場合、数値化された変
性の 2 種類に分けられることになりま
ずしもセグメントグループに含まれる
数間の数値幅が意味を持たないものと
す。そして通常、1 つの属性は n 個の
必要はありません。しかしながらセグ
捉えられます。仮に男女の別をそれぞ
変数を持ち、1 つのセグメントは、n
メントグループに属する場合は、上述
れ 1 と 2 で表現したとしましょう。男
個の属性を対象にしており、それぞれ
したルールに基づいてセグメントグル
性 =1、女性 =2 となっているのを入
の属性における変数のある部分を選択
ープ全体で包括的な顧客リストを構成
れ替えて、男性 =2、女性 =1 にして
することによって定義されます。特定
し、セグメントグループ内の構造はセ
も同じ意味を持ちます。どちらを 1 も
の属性を条件にしたセグメンテーショ
グメントにて概観できるようになりま
しくは 2 にするかという問題は、単な
ン ( 例 : 女性セグメント ) も想定され
す。図 3 に簡単な整理をしておきます
るルール付けだけの問題です。男性と
ますし、複数の属性及びその条件を規
が、これらがセグメンテーションの大
女性の間には何らかの度数が 1 : 2 の
定したセグメントも想定されます ( 例 :
枠であり、基礎的な概念です。そして
関係で存在する訳ではなく、単純に違
F2 セグメント )。また、セグメントグ
変数には、2 つの種類が存在します。
うという事実だけが存在し、何らかの
6
セグメンテーション / ターゲティング
2 倍のパフォーマンスを女性が保持し
許容しても構わないレベルです。同様
ションを実施していく上で、利用可能
ているということは意味しません。従
のことは年齢にも言えます。あと 1 日
な属性を網羅し、その属性が持つ変数
って、例えば管理上の煩雑さを考えな
で 30 歳の誕生日を迎える人と、昨日
が人為的な変数定義を必要とする場合
ければ、男性 =1、女性 =3 という数
29 歳の誕生日を迎えたばかりの人は、
には、この変数の持つ意味にまず着目
値に置き換えても意味は通ることにな
厳格には 364 日の経過日数差がありま
する必要があります。
ります。同様にある食品のアンケート
すが、変数としては 29 歳という変数
マーケティングにこれらの変数を利用
調査結果で、美味しい =3、普通 =2、
に含まれます。これもマーケティン
する上で重要な点は、個々のサンプル
美味しくない =1 とした場合、数字が
グ上は許容可能なレベルであり、い
が持つ変数を比較する際に、純粋に異
大きいほど調査で食したものに対する
ずれも量的変数と判断できるでしょ
なるという概念で比較すべきものなの
好感度は高いことがうかがえますが、
う。 では 20 代と 30 代という変数区
か、順序 ( 優劣、大小等 ) という概念
美 味 し く な い (=1)、 と 美 味 し い (=3)
分を利用した場合はどうでしょうか。
で比較するべきものか、それともある
に 3 倍の違いがあることは意味しませ
20 歳と 29 歳は同じ区分に含まれ、29
一定の単位を用いて比較しうるもの
ん。当然ながらセグメンテーションや
歳と 30 歳は、異なる区分に含まれる
なのかという点です。これら変数が
ターゲティングにおいてこの順序を検
とした場合、20 代と 30 代という年齢
何を意味しているかを理解し、最適
討することに意味があるとは思います
層セグメントの変数は、量的な意味を
な粒度を選択することが重要となり
が、この場合それぞれ “ 美味しい ” と
有していないように見えます。そもそ
ます。例えば、健康食品会社や化粧
“普通”、
そして“美味しくない”の間
も 29 歳は 20 歳よりも 30 歳に近しく、
品会社が、ある調査結果から肌の老
にある距離感を、ここから掴むこと
29 歳と 30 歳を別に区分する根拠は、
化を大きく感じるのは 27 歳であるこ
はできません。そもそもサンプルそ
人間の意図的なものです。この変数区
とを発見したとします。これに対応
れぞれがもつ感覚も違いますし、常
分は、例えば 50 代と 20 代をそれぞれ
する商品をオファーする際に、年齢
識的に考えても、“ すごく美味しい ”
比較する場合には当然ながら意味を発
層でくくった 30 代以上をターゲティ
と “ どちらかと言えば美味しい ” は
揮します。一方で 29 歳から 30 歳にな
ングすることは、3 歳 ( 年 ) 分の顧客
“ 美味しい ” というカテゴリーの中
ってその個人の生活パターンや嗜好性
層をまるまる見逃してしまうばかり
に閉じ込められていることが容易に
ががらりと変わることは稀です。だ
でなく、27 歳の最も反応度が高いで
想像できるからです。
からといって変数区分を 40 歳 -41 歳
あろう顧客層を見逃してしまうこと
では、例えば年齢という変数はどの
の間に求めても問題は解決しません。
になります。仮にこれらの企業が個
ように捉えられるでしょうか。ユリ
同様のことは今日 41 歳の誕生日を迎
別コンサルティングを行えるのであ
ウス日を用い、現在日付から生年月
えた人と、明日 41 歳の誕生日を迎え
れば、顧客ごとの肌年齢の違いや顧
日 を 差 し 引 き、365 で 割 れ ば 単 純 な
る 40 歳の人にも言えることだからで
客との対話のほうが、より豊かな顧
年齢を算出することが可能です ( 正
す。結論としては、一般的に企業が
客理解のベースとなり、きめ細やかな
確にはうるう年等が考慮されなけれ
個人から情報を取得するのが生年月
マーケティング対応の可能性を与えて
ば な り ま せ ん )。1974 年 1 月 1 日 生
日のレベルである以上、そして 1 つ
くれることは間違いありません。しか
まれと、1975 年 1 月 1 日生まれの間
の変数が含む値の幅 364 日が許容範
しながら取得できるデータの限界が人
には、ちょうど 1 年分の生後経過日
囲の限界であるという前提において、
口の一般値 (27 歳 ) と、個人の年齢だ
数差が存在し、これは量的変数という
年齢は量的変数であり、年齢層は質
けであるのであれば、最大限獲得可
ことが出来ます。もちろん生まれた時
的変数であると判断できるというこ
能な年齢レベルの粒度を用いること
間は違いますから厳格にはこれでも最
とになります。もっともこれは真実で
が、離散させた年齢層を用いるより
大 24 時間未満の誤差が存在しますが、
あるかではなく、そう判断するという
も大きな結果の違いをもたらすこと
少なくともマーケティングにおいては
ことでしかありません。セグメンテー
になります。
7
セグメンテーション / ターゲティング
セグメンテーションの基礎 2 - 属性の種類
続いて、属性の種類について紹介してい
利用したチャネルやそのタイミング、支
絞るということは最も基礎的な変数を
きます。変数とは、その個人がどのよう
出金額や、金融業における返済履歴、通
約半分に絞ったというのみであり、女
な特徴を保持しているかを量的、もしく
信業における通話時間等がそのセグメン
性も様々です。ファッションや個人の
は質的に表したものです。そして個人の
トの生活パターンや行動の範囲、嗜好性
スタイルという観点から装飾品を身に
特徴とは、デモグラフィック属性、サイ
を表すものであり、これらを複数組み合
つけない女性もいらっしゃることでし
コグラフィック属性、ビヘイビアル属性
わせることによって、その顧客に対する
ょうし、イヤリングの種類 ( デザイン
の 3 つに大別されます。
解像度はより高くなることでしょう。
や素材等 ) そのものに対する好みも存
デモグラフィック属性は、年齢、性別等
それでは、これらの属性種類間において、
在することでしょう。従って、この点
の身体的な特徴や、その名の通り人口統
優越はあるのでしょうか。結論から言え
からは絶対的な判断は出来ません。
計として利用されるような地理的な居住
ば、どの属性も絶対的なものではなく、
地域や世帯人数、保持している車の種類
その優越を決めるのは実施するキャンペ
サイコグラフィック属性 :
や年数等、その個人や関連する保持物の
ーンであり、実施するキャンペーンによ
“イヤリングが好き”とアンケートに答え
外見的な特徴を変数化したものです。こ
って属性間の優越は異なります。実施す
た人がイヤリングを購入するはずである。
れに対してサイコグラフィック属性は、
るキャンペーンやそこで対象となる商品
ターゲットとなる顧客におけるサイコ
主にアンケートデータ等から採取され、
群と最も合致するのがいずれの属性であ
グラフィック属性の変数と、商品が一
その個人がどんな意図や欲求、嗜好性、
るかという観点から選択されるべきで
致しているという意味においては合理
反応を保持しているかといった内面的
す。そしてその為にはこれらの属性を複
的ですが、一方で答えに対する確実性
な特徴を変数化したものです。買うつも
数組み合わせて利用することも重要な手
の度合いは様々な観点から異なります
り / 買うつもりは無い、欲しい / 欲しく
法になることでしょう。そもそも、ある
( 以下参照 )。この点からは絶対的な判
ない、好き / 嫌い、良い / 悪い等といっ
属性を保持しているが故に絶対にそのキ
断は出来ません。
たある事象に対する心理的な特徴や、趣
ャンペーンに反応する、対象となる商品
味、欲しいもの等の嗜好性を変数化しま
を購入するということはありえません。
購入可能性に対するギャップ
す。そしてビヘイビアル属性は、その個
有限であるキャンペーン資源をどの顧客
- イヤリングは好きだが、この商
人の実際の行動を変数化したものです。
に向けるべきかという問いに対して、広
品は嫌い、値段が高い等の理由で
従来から、ダイレクトマーケティングの
範かつ詳細な選択肢を提供するのがセグ
購入意欲がわかない。
業界においては最終来店日や来店頻度、
メンテーションであり、その中から少し
- イヤリングは好きか嫌いかと聞
支 出 額 等 は 集 計 さ れ、RFM: Recency
でも合理的で可能性の高い選択を行うの
かれれば好きだが、さして買いた
Frequency Monetary という形でスコア
がターゲティングです。例として、女性
いとも思わない。
化されてきました。企業から見た場合、
向けのイヤリングをキャンペーンで仕掛
- イヤリングは好きなのでたくさん
何らかのコンタクトがあったり、取引が
けるときに、それぞれの属性を選択した
持っている。
よって今は欲しくない。
あったりという情報がこれらのソースと
場合の肯定論と、否定論を挙げます。
ビヘイビアル属性 :
なりますし、時にはそのソースそのもの
がビヘイビアル属性として活用できるも
デモグラフィック属性 :
過去にイヤリングを買った人がイヤリ
のです。それらはインタラクション、ト
女性がイヤリングを購入するはずである。
ングを購入するはずである。
ランザクションデータと呼ばれ、その企
ターゲットとなる顧客におけるデモグ
ターゲットとなる顧客におけるビヘイ
業のチャネルから採取することが可能で
ラフィック属性の変数と商品の属性が
ビアル属性の変数と商品の属性が一致
すし、通常採取しているデータでもあり
一致しているという意味においては合
しているという意味においては合理的
ます。購入した商品や、その商品属性、
理的ですが、一方で女性という属性に
ですが、一方で当該属性は過去のもの
8
セグメンテーション / ターゲティング
であり、未来に対する確実性を示すも
理的であることは想像に難くありま
イ ヤ ル テ ィ が 高 い こ と が 想 定 で き、
のではありません。この点からは絶対
せん。結局のところ合理的な顧客を
かつ今までイヤリングを案内してい
的な判断は出来ません。
選択するためには、昔ながらのデモ
ないのであれば、案内する価値はあ
グラフィック属性、そして非常に曖
るといえます。
“百聞は一見に如かず”
購入可能性に対するギャップ
昧な “ 心理的側面 ” を質的変数に閉
と言いますが、ビヘイビアル属性は
- 同じようなイヤリングは既にあ
じ 込 め た サ イ コ グ ラ フ ィ ッ ク 属 性、
その人間が過去に行った行動がベー
るのでもう必要ない。
そしてビヘイビアル属性を総動員し
スとなっており、その属性が持つ現
- 過去にイヤリングを買ったが、
て、手元にある知識の中からベスト
実性は他の属性に比べて非常に優れ
結局自分には似合わないことがわ
といえる顧客グループを絞り込むし
ているものです。どんな商品を、い
かった。
かありません。但し、関連する属性、
つ買ったのか、どんな頻度で、どの
中でも今まで活用されてこなかった
ようなチャネルを介してコンタクト
ここで紹介した例は、デモグラフィ
ビヘイビアル属性を上手に取り入れ
があったのか、どのようなキャンペ
ック、サイコグラフィック、そして
ることによって、特定の商品案内や、
ーンに反応を示し、逆にどのような
ビヘイビアル属性をベースに購買予
キャンペーンに合致するであろう顧
キャンペーンには反応を示さなかっ
測の判断をした際に想定される是非
客リストの精度を高めることが可能
たのか等、ターゲティングに必要な
論を対比させたものです。将来の顧
となります。例えば複数回イヤリン
リアリティを如実に示してくれるだ
客行動を正確に予知することは不可
グを購入している顧客の場合、オフ
けでなく、実施するキャンペーンの
能であり、少しでも合理的なターゲ
ァーするイヤリングのデザインにお
手法に対しても示唆を与えてくれま
ットを選択するしかありません。上
いて、過去に購入したものとの類似
す。もちろん一方でそれ以外の属性
述した例において、男性で、イヤリ
性が低ければその購買可能性は高い
の価値をおとしめるものではありま
ングが嫌いと答え、過去にイヤリン
か も し れ ま せ ん。 自 社 ブ ラ ン ド の、
せんが、ビヘイビアル属性は大きな
グを買ったことの無い顧客にアプロ
イヤリング以外の商品カテゴリーは
価値を内包した属性であることが分
ーチすることと比べたら圧倒的に合
全て購入しているためにブランドロ
かります。
セグメンテーションの手法 1 - 変数の作成
グメンテーションを構築することも
図4.セグメンテーションの例
セグメント
有閑マダム
OL会社帰り
週末来店
開店時間待ち
ノイズセグメント
属性変数基準
女性
購買時間の51%以上が、11時から16時に発生
店内のレストラン、喫茶店を利用
女性
購買時間の51%以上が、平日の17時半以降に発生
購買曜日の51%以上が、土日に発生
駐車場利用
購買時間の51%以上が、10時から11時に発生
上記のいずれにも該当しない
想定されます。図 4 を参照ください。
ある百貨店を想定した例です。性別
が女性であるという属性変数と共に、
来店時間や曜日、利用したサービス
をベースに変数をカットして、それ
ぞれのセグメント属性に名前を付け
ています。当然ながらいずれにも合
続いて、セグメンテーション変数の
までも無く、データベース上のデー
致しない顧客も存在するため、それ
作成というテーマに移ります。もっ
タをそのままセグメンテーションと
らをノイズセグメントとして置いて
とも基礎的なセグメンテーションは、
して利用することが可能です。しか
います。将来的にここから購買傾向
自然変数を用いたセグメンテーショ
しながら一方で、もっと詳細に顧客
の変化を示すことによって、いずれ
ンです。例えばデモグラフィック属
をセグメントに分類したい場合、幾
かのセグメントに属するようになる
性としての性別は、なにも作成する
つかの属性変数を組み合わせて、セ
顧 客 も 存 在 す る か も し れ ま せ ん し、
9
セグメンテーション / ターゲティング
ここでカットした変数特性からは鈍
客がノイズセグメントも含めたいず
化し、いずれかのセグメントに属し
れかに重複無く含まれ、合計が 100%
ていたのが、ノイズセグメントに属
の顧客で構成されるようにしていま
するようになる顧客も発生すること
す。もう 1 つの理由としては、ある
でしょう。ここで記しているセグメ
一定時間帯での購買が高いことを示
ントは、それぞれの顧客が置かれた
すために 51% という値を用いていま
生活をその変数が反映しているであ
す。しかしながら、51% が妥当であ
ろうという前提に立っています。同
る か ど う か は 誰 に も 分 か り ま せ ん。
100 回中 24 回反応すれば 2.4 と点数
様のことは、価格や割引への反応度
もしかしたら 50% も含むべきかもし
付けします。さらに過去のサンプル
合いを表すセグメント、特定のチャ
れません。例えば、オン / オフの変
が 少 な い ケ ー ス を 排 除 す る た め に、
ネルへの吸着度合いを表すセグメン
数 ( 男 性 / 女 性、 買 っ て い る / 買 っ
前提条件として過去に割引プロモー
ト、特定の商品や商品属性 ( 例えば
ていない ) の場合、変数基準を導く
ションを 5 回以上案内した顧客を前
色や機能、ブランド等 ) への執着度
ことは容易なことです。しかしなが
提とすることにします。以上を数式
合いを表すセグメントに分類するこ
らこの属性を選択するべきか否かを
化すると、図 5 のような形となりま
とにも適用できるでしょう。これら
決定すること、そして複数のカテゴ
す。懸念材料としてこの点数を元に
のセグメンテーションは、企業が自
リーに分かれる質的変数や量的変数
割引プロモーションを何度も案内し
らの顧客に対する輪郭を掴むことを
の中で最善の変数基準を設定するこ
ていくと、コンタクトの初期タイミ
可能にすると同時に、実施するター
とは、判断が難しい場合があります。
ングで割引プロモーションの対象と
ゲティングを容易にします。もちろ
この場合に利用するのがデータマイ
ならなかった顧客が、だんだん割引
ん実施するキャンペーンごとにこれ
ニングや統計解析の手法です。詳し
プロモーションから疎遠になり、あ
らの絞込みを行い “ 有閑マダム ” を
くは専門書に譲りますが、統計上の
るタイミングでその顧客の意識や置
識別することも可能ですが、それら
観点から、例えば上述のケースであ
かれた環境が変化し、心理的に変化
の手間を省くと共に、“ 有閑マダム ”
れば何 % が妥当であるかのかという
した反応度が、ビヘイビアル属性に
で “ 特定ブランドを支持 ” している
変数基準を提供してくれます。
現れない危険性が想定されます。こ
顧客層といった具合にターゲティン
もちろんデータマイニング等の手法
れらを回避するため、数式を高度に
グを何層にも絞り込んでいくための
を用いなくとも、マーケターが自身
する ( 時間軸や割引幅に応じてスコ
ベースにすることが可能となります。
の判断で変数基準を設定し、セグメ
アに加重を行う等 )、または時折反応
それでは、上述したようなセグメン
ンテーションを行うことも可能です。
をキャプチャするためにプロモーシ
トの変数区分を作成していくための
手法としてデータマイニングを用い
ョンをかける必要があるかもしれま
手法に関して、次に触れていきます。
たにしても、結局の所それを実際の
せん。ここではあくまでもシンプル
上記の “ 有閑マダム ” セグメントが
ターゲティングもしくはその他のビ
な例に留めましたが、重要なポイン
用いている変数には、購買発生時間
ジネス活動に適用するか否かは人間
トは、ある一定の数式 ( モデル ) に基
の 51% がある一定時間帯に発生して
の判断であり、人間の責任になりま
づいてその顧客の点数 ( スコア ) が算
いるという定義にしています。これ
す。例えば割引プロモーションに対
出され、そのスコアをベースにセグ
に は 2 つ の 理 由 が あ り ま す。1 つ は
する反応度をセグメンテーションと
メンテーションが構築されるという
単純に他のセグメント変数、
特に “OL
して利用するとしましょう。反応度
点です。場合によってはスコアをあ
会社帰り ” と互いに排他的な顧客を
を判断するために、過去の割引プロ
る一定の基準でカットし、実質的に
選定するために過半数の最低値を利
モーションへの反応を点数化します。
利用するセグメンテーションの変数
用しています。これによって、全顧
10 回中 3 回反応すればスコアは 3.0、
区分に利用することも考えられます。
10
図5.プロ モ ー ショ ン反応度の 数式例
Y = X1 / X2
X2 >= 5
Y
X1
X2
=割引プ ロ モ ー シ
ョ ン反応度
ョ ン反応回数
=割引プ ロ モ ー シ ョ ン案内回数
=割引プ ロ モ ー シ
セグメンテーション / ターゲティング
先ほどの割引プロモーションに対す
“ 反応度の高い ” 顧客に対する期待値
は、ある一定の数式、つまりモデル
る反応度であれば、反応度のスコア
であり、検証結果から上述したスコ
に基づき、顧客をその数式に適用す
がトップ 1,000 の顧客を “ 反応度の
アの 8.5 ポイント以上がこの結果を返
ることによってスコア ( 量的変数化 )
高い ” 顧客セグメントと判断するこ
したのであれば、8.5 以上を “ 反応度
を導き出し、必要に応じて区分化
とも可能ですし、トップ 30% の顧客、
の高い ” 顧客セグメントとして定義
( 質的変数化 ) します。同じことが他
もしくはスコア 5.0 以上の顧客を変数
することになります。このようなモ
の顧客行動にも適用できない理由は
区分とすることも想定されます。ま
デリング / スコアリング / 区分化の
なく、数式の複雑度や対象となる変
た、この区分設定に検証結果を用い
手法は、伝統的なダイレクトマーケ
数が異なるだけで、ロジックは同じ
ることも考えられるでしょう。例え
ティングにおいても実施されていま
ことです。
ば 80% 以上の確率で反応することが
す。RFM や Life Time Value の計算
セグメンテーションの手法 2 - セグメント変数の保持方法と利用
セグメンテーション手法の最後とし
の仕方を、変数条件のみ保持し、中身
支出金額をセグメントの属性変数とし
て、セグメント変数の保持方法と利用
の顧客リストは都度入れ替えるために
て捉え、履歴で把握することによって
について触れていきます。顧客毎の行
スケルトン ( 骨組み ) セグメントとこ
離反危険性を察知する考え方と理解で
動や特性を変数として捉え、利用して
こでは呼ぶこととします。
きます。ランドセルの購入から 6 年間
いく際には 2 つの利用方法が想定され
一方で、最新であることよりもその
を特定のセグメントとして認識すると
ます。1 つ目は、特定の属性変数を保
顧客がどのようにセグメント変数を
き、そのセグメンテーションの意図は
持するセグメントの最新状態を利用す
渡り歩いたかが重要な意味をなすとき
明確であり、セグメントの入口と出口
る方法であり、もう 1 つの利用方法は
も有ります。これは顧客の足跡を理解
はかなり明快に識別できるはずです。
セグメント付与結果を履歴として保持
する意味で、トレイル ( 足跡 ) セグメ
いずれにしてもセグメント属性間の移
し、過去から現在までの流れを理解し、
ントと呼ぶことが出来るでしょう。例
動 (In/Out) は、重大な顧客にとって
これを利用する方法です。例えば、シ
えば、旅行業において “ ホリディト
のイベントの発生を意味します。こ
ンプルに来月保険契約の期限が切れる
リップ (= 休日やインシーズンの、家
のイベントのタイミングに合わせて
顧客向けに継続を促すキャンペーンを
族連れの旅行が多いセグメント )” か
オファーの内容を変えることが出来
実行する際、1 年前のデータをもとに
ら “ パーマネントバケーション (= 平
れば、正しいタイミングで顧客の変
したセグメンテーションをベースにタ
日やオフシーズンの、夫婦 2 人での
化に対応することが可能となります
ーゲティングを行っても意味がありま
旅行が多いセグメント )” にセグメン
し、新たなビジネスチャンスの発生
せん。キャンペーンを実行するタイミ
トを移動した顧客には、どのようなこ
を “ 待ち受け ” て、それをトリガー
ングから見て来月保険契約が切れる顧
とが想定できるでしょうか。おそらく
にコミュニケーションやその方法の
客をリストアップしなければなりませ
ライフステージの変化があったことが
変更、新たな方向付けを行うことが
ん。この場合には鮮度が重要であり、
想定されます。同様の変化は、利用商
可能になります。また同時にこれら
常にリストは最新である必要がありま
品やサービスのボリューム、タイミン
の変化を無視してしまうことによっ
す。そしてこのような利用をする場合
グ、嗜好性等の変化をセグメント変数
て発生する顧客との “ 反り ” は、顧
には、そのセグメントを特徴付ける変
として捉え、これらを履歴で保持し、
客に対して無用なコンタクトやオフ
数条件を保持し、キャンペーンに利用
把握していくことによって理解できる
ァーを生み出します。これは時に顧
する際にその変数条件に合致する顧客
ことでしょう。単純に自社に対する支
客の気分を害するのみならず、無用
を常に最新状態に反映する手法が必要
出金額が減少傾向にあれば、離反の危
なキャンペーン経費を垂れ流す危険
となることでしょう。このような保持
険性が想定されますが、これも毎月の
性へとつながります。セグメント変
11
セグメンテーション / ターゲティング
数間の移動を理解することによって、
入する層、全く反応しない我が道を
ました。最後に、それぞれのセグメ
顧客との “ 反り ” を回避し、顧客の
行く層といった形で分類することが
ンテーションについて簡単に技術的
文脈に添った形でのマーケティング
考えられます。それぞれを A、B、C、
な捕捉をします。スケルトンセグメ
を実現することにつながるのです。
D とし、ある過去に流行したファッ
ントは、変数条件は作成の上保持し
またトレイルセグメントは、セグメ
ションに対してどのタイミングで購
ておき、
必要になった際に“その場で”
ント変数間の移動を考慮する以外に
入が発生したかを見ることが可能で
データベースに対して検索を実行す
も利用方法があります。セグメント
す。当然ながら流行とならなかった
ることによって、キャンペーン等に
毎のチャネルコンタクト頻度、利用 /
ファッションもありますので、A の
役立てます。これに対してトレイル
購入金額、利益金額、そして該当す
層においてそれぞれのファッション
セグメントは、コンピュータで変数
る顧客数等を履歴で理解し、必要に
がどの程度支持されたのか、または
を判断し、時には計算をして、一定
応じてセグメント属性間で比較する
A から B への伝播がどの程度発生し
期間毎に顧客に対して付与し、履歴
ことによって、自社がビジネスをし
たのかを見ることによって、リトマ
で保持していく形になります。しか
ている顧客セグメントの趨勢を理解
ス試験紙的にそのファッションが流
しながら作成したセグメンテーショ
することが可能となります。これら
行となるか、後続のピークポイント
ンそのものが廃れることも、新たな
に合わせてマーケティングを行うこ
である C へのアクションが必要かを
セグメンテーションを分析の結果発
とも重要になりますし、商品やサー
見極めることも可能となります。ま
見することも考えられるため、セグ
ビス、チャネル等をメジャーセグメ
た A はオピニオンリーダー的な役割
メンテーションそのものをファイン
ント中心に構築する、または収益性
を担っていることから、これらの顧
チューンして利用していくことも想
の高いセグメントに対してキャンペ
客層からはインタビュー等の時間を
定しなければなりません。セグメン
ーンや商品開発の投資額を傾斜する
とり、それなりの報酬と引き換えに
テーションが完成するということは
ことも考えられます。また、同様に
商品開発の参考にする、またはテス
自社のビジネス環境やビジネス活動
ス ケ ル ト ン セ グ メ ン ト に 関 し て も、
ターとしての役割をお願いすること
が変わっていく限り有り得ないこと
セグメント属性間の関係にも注目す
も想定できるでしょう。また、D に
です。継続的なセグメンテーション
るべきかもしれません。例えばファ
対して流行りモノの商品を案内する
の開発が必要になると共に、特にト
ッションアパレル等の流行が生まれ、
ことが経費と時間の無駄であること
レイルセグメントに関しては素デー
そ し て 消 え て い く 分 野 に お い て は、
も想像に難くありません。
タを保持し、新たなモデルを用いて
それらの先陣を切って購入をする層、
以上、スケルトンセグメント及びト
遡及し、セグメントを付与し直すこ
フォローする層、流行のピークで購
レイルセグメントについてご紹介し
とも重要になります。
ターゲティングの粒度に関する考察
セグメンテーションの構造がある程度
形作られたとき、これらのセグメンテ
ーションをマーケティング・キャンペー
ンの対象顧客選定に利用できることに
なります。つまりターゲティングです。
ターゲティングにおいても、粒度に対
図6.ターゲティング粒度の変遷
ターゲティング手法
マスマーケティング
ターゲットマーケティング
ワントゥワンマーケティング
1人10色型(?)マーケティング
コンセプト
人口全体を同一/近似の"1人" とみなす
同一/近似デモグラフィックを"1人"とみなす
同一/近似サイコグラフィックを"1人"とみなす
同一/近似ビヘイビアを"1人"とみなす
1人 の人間を"1人"とみなす
1人 の人間の1 シーンを"1人"とみなす
する考慮がなされなければなりません。
ながら、これらは一つの粒度から次の
度でも、たとえ重要度は変化するにし
図 6 は、ターゲティングの粒度に対す
粒度へと移行していったことを示す訳
ても、現代において一定の価値を保持
る変遷を捉えたチャートです。しかし
では有りません。前時代的と思える粒
しています。これはメディアの変遷に
12
セグメンテーション / ターゲティング
なぞらえると分かりやすいことでしょ
れてはなりません。そしてセグメンテ
ク属性、そしてビヘイビアル属性とい
う。パーソナルメディアにおいて、
郵便、
ーションの種類でご紹介してきたよう
うことになります ( ワン・トゥ・ワン・マ
電子メール、FAX、電話が存在する現
に、デモグラフィック属性、サイコグ
ーケティングが提唱したもう一つの
在においても電報が存在し続けるよう
ラフィック属性、そしてビヘイビアル
重要な概念は、商品の側を顧客に合
に、ブロードキャスト型メディアにおい
属性と粒度分解が進んでいくことにな
わせて調整するというカスタマイゼ
てポスター、雑誌 / 新聞、ラジオ、テレ
ります ( 必ずしも順番はこの限りでは
ーションの概念です。この概念は生
ビ、インターネットが共存し続けるよう
ないかもしれませんが )。興味深いの
産や商品開発とそのデリバリーに対
に、重層的な形でそれぞれがある一定の
は 90 年代半ばに謳われるようになった
する概念変容を促すという意味にお
位置付けを担うことになります。
ワン・トゥ・ワン・マーケティングの概
いては革新的でしたが、ここでの論
図 6 の一番上にあるのはマスマーケテ
念です。それまでのビヘイビアル属性
点からは若干外れるため簡単な指摘
ィングです。基本的にこの手法は、人
は、例えば RFM に代表されるような
にとどめます )。
口の全てを同じ人間であるという一部
個人の取引活動をベースにセグメンテ
この中で、ビヘイビアル属性は、特
分のみに視点を定め、マーケティング
ーション / ターゲティングを行うのに
に 1 人 10 色型マーケティングを実践
を実施する方法です。例えば全ての人
対して、テクノロジーとマーケティン
するという意味においては未開発の分
間にとって必要な商品であり、かつ競
グに対する期待は、粒度を個人のレベ
野かもしれません。例えば給料日前と、
合他社にとって明確な差別化を訴える
ルにまで落とし込みました。しかしな
給料日直後の経済活動は異なることで
ことが出来る商品であれば、この手法
がら、粒度という観点から個人を特徴
しょうし、それは特に所得が高くない
はもっとも効果の高い手法であると言
付ける場合、結局の所デモグラフィッ
顧客層や扶養者数が多い顧客層におい
えます。しかしながらこれはマスマー
ク / サイコグラフィック / ビヘイビア
て特に顕著に表れることでしょう。前
ケティングに対して好意的な意見でも
ル属性を総動員するしか手段はありま
者はビヘイビアル属性によって明らか
あります。実際には投資対効果を最大
せん。また一方で、人間の多面性それ
になり、後者が伝統的なデモグラフィ
化するために、対象を絞るという行為
ぞれを特徴付けるという観点をスポイ
ック属性であることはご承知の通りで
や努力を放棄したマーケティング活動
ルしてしまっています。また人間の多
す。ダイレクトマーケティングが培っ
と、識別することができないからです。
面性を意識した 1 人 10 色型マーケティ
てきた RFM の手法は、基本的にビヘ
そしてもちろんこれは非常に端的な区
ングは、その個人の TPO (Time Place
イビアの集計結果しかマーケターに与
分でしかありません。利用するチャネ
Occasion) によって発生するビヘイビア
えてくれませんが、その詳細を属性と
ル、つまりマスメディアとして考えた
の違いをベースにマーケティングをす
して捉え直すことによって、特定個人
場合には、対象となるセグメントが明
るため、純粋な粒度という観点からは
が TPO 毎にどのような行動を行うのか
解になっているコマーシャルメッセー
ビヘイビアル属性の活用レベルを深化
という、より詳細なパターンを理解す
ジも存在するため、あくまでも概念論
させた手法ということになります。そ
る可能性が広がることになります。
でしかありません。マーケティング手
ういった意味では、結局のところ我々
以降の項にてターゲティングの基礎的
法としてのマスマーケティングと、チ
がターゲティングに使える属性はデモ
な部分について触れ、その後想定され
ャネルとしてのマスメディアが混同さ
グラフィック属性、サイコグラフィッ
る手法について紹介していきます。
ターゲティングの基礎 1 - リストからの対象抽出
ターゲティングの手法としての最も
です。あるキャンペーンに対しても
は複数のセグメントを操作すること
基本的な部分は、データベースにお
っともレスポンスの高い、合理的な
になります。ここではそれらについ
ける操作言語である SQL (Structural
顧客を導き出すとき、これらの手法
てご紹介します。
Query Language) に学ぶことが可能
を通じて、特定の変数基準、もしく
13
セグメンテーション / ターゲティング
演算子による表現
いう表現となります。
ージは、0 文字を含む幾つかの文字列
以下にご紹介する演算子は通常、SQL
複 数 の 値 を指定する -I N, NOT I N
を示します。
の SELECT( 対象となる行列を選択する )
こ ち ら も 通 常、S Q L に お け る
‘20歳’ AND ‘25歳’という表現とな
文における WHERE( 条件指定 ) 句に
WHERE 句にて記述されます。複数
ります。
て記述されるものです。単純な数学表
の値を指定し、それらのいずれかに合
現と等しく、ある特定の顧客リストに
致する顧客をリストアップします。例
値の無いことを指定 -IS NULL
おける変数と、指定した変数を演算子
えば、20 歳、22 歳、24 歳の顧客のみ
ある特定の変数値が存在しない顧客
によって比較し、合致する顧客をリス
をリストアップする場合、一方でそれ
をリストアップする場合、つまり、そ
トアップします。各演算子は以下の通
らのみをリストの対象外とする場合
の値としていずれの値も保持していな
りです。[= 等しい ] 完全に合致する
には、IN‘20歳
(
’
‘22歳
,
’
‘24歳
,
’
) 、及び
い、空欄になっている顧客を指定する
顧客を選択。[> より大きい ] 変数が
NOT I N‘20
(
歳’
‘
, 22 歳‘24
,’ 歳 ’
) とな
場合には、値 ( 例えば電子メールアド
指定した値よりも大きい顧客を選択。
ります。
レス ) IS NULL と表現されます。
も小さい顧客を選択。[>= 以上 ] 変数
値内の一部分を指定する -LIKE
ここでは単純に顧客リストが存在し、
が指定した値以上となる顧客を選択。
SQL における WHERE 句にて記述さ
これらに対して抽出を行うことをイメ
[<= 以下 ] 変数が指定した値以下とな
れます。ある特定の顧客リストの中
ージした記述をしていますが、実際に
る顧客を選択。[<> 等しくない ] 変数
から、指定した値を、指定された変数
は、顧客のリストとその属性、特にト
が指定した値以外となる顧客を選択。
の一部分に含む顧客をリストアップし
ランザクションやインタラクション等
ます。例えば、住所に上 ( )、例えば
のビヘイビア属性は、別のテーブルで
範囲を指定する -BETWEEN
上町や上野等を含む顧客をリストアッ
保持されている方がデータベースとし
こ ち ら も 通 常、SQL に お け る
プする場合、またはアンケートのフリ
ては効率的であり、実際にそうなっ
WHERE 句にて記述されるものです。
ーフォーム欄に “ 眠 ”という文字が含
ているケースが多いと想定されます。
ある特定の顧客リストの中から、範
まれている顧客 ( 眠れない、安眠、睡
この場合には複数のテーブルを JOIN
囲条件に合致する顧客をリストアッ
眠等 ) をリストアップする場合には、
( 結合 ) 処理した上で抽出操作を行う
プ し ま す。 例 え ば 年 齢 が 20 歳 か ら
LIKE ‘
( 上 _’) 、
または LIKE‘
( % 眠 %’)
ことになります。
25 歳の顧客のみを絞り込む場合には、
と表現します。この場合、アンダーバ
BETWEEN ‘20歳’ AND ‘25歳’と
ーは特定の 1 文字を示し、パーセンテ
[< より小さい ] 変数が指定した値より
ターゲティングの基礎 2 - リスト間での操作
以下に示す命令は、2 つの顧客リス
も可能です。通常 SQL 文においては、
30 歳以上で返済状況が良好 ” に該当
トから 1 つの顧客リストを作成する
SELECT 文同士を結合する形で利用
する顧客はいずれのリストにも含まれ
場合に利用されます。例えば別々に
されます。
ますが、UNION にて結合されたリス
作成した 2 つのセグメントをあるキ
トには、これらの顧客の重複は排除さ
ャンペーン用に結合したい場合には、
結合取得 -UNION
以下のような命令文が利用されます。
A と B の 2 つのリストから重複を排
同様のことを繰り返すことにより、2
除した形で結合し、結果を返します。
重複部分の取得 -INTERSECT
つ以上の顧客リストから 1 つのキャ
例えば A=“ 年齢 30 歳以上 ”、
B=“ 返
A と B の 2 つのリストから重複する
ンペーンターゲットを導き出すこと
済状況が良好 ” とした場合、
“ 年齢が
部分のみを返します。上記の UNION
14
れ、1 行として返されます。
セグメンテーション / ターゲティング
の 例 を 用 い た 場 合、INTERSECT を
( これを C とします )、次に A と C の
キャンペーンにおけるターゲティング
指定すると、“ 年齢が 30 歳以上で返済
MINUS を取得します。これによって
を実行していく際に、電話をかけるこ
状況が良好な”顧客のみが返されます。
双方に重複している顧客を C として
とを許容していない顧客はこのターゲ
識別し、A から C を差し引くことが
ティングから除外されるべきです。当
重複部分以外の取得 -MINUS
可能となります。この考え方はキャン
然ながら顧客からパーミッションを得
A と B の 2 つのリストから重複しな
ペーンターゲットのリスト操作におけ
ていないことを行うという倫理 / コン
い部分を返します。上記の UNION の
る基礎的で、かつ重要な手法です。図
プライアンス上の理由が一番の理由で
例を用いた場合、MINUS を指定する
7 に UNION、INTERSECT、MINUS
すが、それ以外にも重要な理由があり
と、“ 年齢が 30 歳以上で返済状況が良
のそれぞれの取得イメージを示します。
ます。正確な対象顧客のボリュームを
理解し、無駄なくコンタクトする上で
好な ” 顧客を排除し、残りの顧客のみ
が返されます。言い換えればいずれか
プライバシーの考慮
も本質的にコンタクトするべきでない
の条件にしか合致しない顧客が対象と
最後にプライバシーに関して触れてお
顧客を除外するべきですし、これを実
なります。
きます。上述してきた “ 基礎 ” とは若
施してしまうことによる顧客の心象を
干性質の違うものですが、顧客からの
害すこと、そしてそれによる離反が考
2 つ以上の顧客リストからの操作例
パーミッション、またはその種類はタ
慮されるべきです。これらを金額換算
容易に想定される例として、あるキ
ーゲティングの際に考慮されるべきで
したときに、コンタクトを取るべきで
ャンペーンにおける対象顧客リストか
す。セグメンテーションは特定の顧客
ない顧客にコンタクトした際のマーケ
ら、パーミッションを得られていない
とのコンタクトを意図したものではな
ティング経費の無駄、離反による将来
顧客をリストアウトする作業を想定し
いため、セグメンテーション全体やそ
的なこれらの顧客からの収益逸失、ま
てみましょう。キャンペーン対象顧客
れぞれの趨勢を理解するために、パー
たはそれらをリカバーするための追加
リストを A、オプトアウト顧客のリ
ミッションの有無そのものが問題とな
的な当該顧客群への費用支出が想定さ
ストを B とします。操作としてはま
ることはありません。しかしながら、
れ、最悪の場合には訴訟等に対応する
ず A と B の INTERSECT を 取 得 し
例えば電話でのアウトバウンドコール
費用支出を招くことになります。
ターゲティングを行っていく際に重
れる顧客リストを逆算して導き出す
顧客層を全体の中からスクリーニング
要となるポイントは 2 つあります。1
手法です。当然ながらこれらの 2 つ
していくアプローチを紹介していきま
つは各セグメントについての分析を
のアプローチは分断されたものでは
す。ただし後者のキャンペーン特性が
行い、理解と洞察を得ることによっ
なく、互いに影響を与え合うことに
大枠において決まっている場合にも、
て、実施するべきキャンペーンの特
なります。どちらかに偏ってしまえ
この中から適切な手法を選択すること
性 ( 利用するチャネル、タイミング、
ば、事業ドメインから外れた、顧客
になるため、それらについては随時触
商品等 ) を特定することに有ります。
におもねり過ぎたメッセージを訴え
れていくことします。各セグメントに
これは発見された顧客の嗜好性や行
るリスク、もしくは顧客の支持を得
関してスクリーニングを行っていくと
動パターンに基づいてキャンペーン
ることの無い、顧客を無視したメッ
き、以下の 3 つの手順に基づいて進め
プランニングをする探索的な手法で
セージを訴えるリスクを内包したキ
ていくことにより、そのセグメントの
す。そしてもう 1 つは、マーケター
ャンペーンとなってしまいます。
理解を深めることが可能です。もちろ
が既に、実施するキャンペーンの特
ここでは前者に相当する、認識され
んこれが全ての分析手法ではありませ
性に関して特定の意図を保持してお
ているセグメントについての包括的な
んが、少なくとも大枠でそのセグメン
り、これらに合致することが予測さ
分析によって、ターゲットとなり得る
トの特性を理解することが可能となる
ターゲティングの手法例
15
セグメンテーション / ターゲティング
ことでしょう。当然ながら各セグメン
2. セグメントの行動パターンを理解する
とが望ましいのですが、一方でマーケ
トはある一定の属性条件に基づいてセ
次に実施するべきは、そのセグメント
ターが費やす時間も貴重な資源であり、
グメント化されていますが、その指定
が持つ行動パターンを理解することで
重要なセグメントから優先順位をつけ
された属性条件以外に、どのような変
す。ここでは購買行動に焦点をあて、
て取り組むことが現実的な解となるこ
数特性を保持しているかを理解するこ
どのような商品を一緒に組み合わせて
とでしょう。サン = テグジュペリが描
とが分析を実施する目的です。セグメ
購入しているか、またどのようなサイ
いた小説 “ 星の王子さま ”の世界で、
ンテーション、及びターゲティングの
クルやタイミング、シーケンスで購入
キツネは王子さまに、50 億の夜空の星
基礎でご紹介してきたような、単純な
をしているかを理解します。当然なが
や 5,000 本のバラの花から、自分の星
絞込みや 2 リスト間の操作では、特定
ら同一セグメントにおいてもそれぞれ
とそこに咲く1本の花を“Differentiate”
の意図に基づいて属性条件を指定しま
の個人が同じ行動パターンを有すると
してくれるのは、費やした時間である
す。これはある一定の知識や前提条件
は限りませんので、パターンの集中度
ことを諭すシーンがあります。ターゲ
をセグメンテーションの主体者である
合いと分散度合いを理解することが必
ティングの世界において利用される変
マーケターが保持しており、これに基
要となります。
数データは、それこそそのままでは数
字や文字の羅列であり、顧客の輪郭を
づいて絞込みを行っているといえま
す。これに対し、分析は幾つかの視
3. セグメント間の違いを理解する
思い浮かべるには余りにも想像力の刺
点でこれらのセグメントを捉えなお
分析による理解を必要とする各セグメ
激に欠けるものです。キツネの言葉を
し、それまでに発見できなかった変
ントの内部的な理解がなされた後に、
借りれば、まさに “ 肝心なコトは目に
数特性を理解し、そこから更に絞り
実施するべきは複数のセグメント間の
見えない ”のかもしれませんし、
そこか
込むことによって実施するキャンペ
理解を行うことです。関連性が想定さ
ら輪郭を描ききるためには時間を費や
ーンの精度を向上させることを意図
れるセグメントとの比較を行うことに
して顧客理解に努めることが必要にな
しています。
よって、そのセグメントが持つ変数特
ります。もちろん無駄に時間を費やし
性が相対的にどのような意味を持つの
たり、それ自体が目的になったりして
かを理解します。
はいけませんが、一方で必要な時間を
1. セグメント内の構造を理解する
かけ、対象となる顧客の姿を理解する
最初に実施する分析は、特定セグメ
ントの内部構造を理解することです。
スクリーニングのアプローチは、重要
ことも必要です。顧客の量的 / 質的な
そのセグメントを各指標に照らし合
と考えるセグメント、キャンペーンタ
変数データは、生身の人間であるマー
わせたときに、セグメントの中がど
ーゲットの母集団に関して以上のよう
ケターの頭脳に、訴えかけるべき顧客
のような構造になっているかを理解
な手順でスクリーニングを行っていく
の明確なイメージを描かせるために存
します。またそれらの構造が時間軸
こととなります。本来であればきちん
在するのであり、理解したい顧客の姿
の変化に伴って、どのような変化傾
とした時間を費やし、全てのセグメン
もまた、量的 / 質的な変数データの背
向にあるかも理解するべき重要なポ
トに対してこれらの分析を実施し、自
後に存在する生身の人間であるという
イントです。
社の顧客に対して明快な理解を得るこ
ことも、忘れられてはなりません。
16
セグメンテーション / ターゲティング
1. セグメント内の構造を理解する
1-1. 層化分解による分析
をもたらす牽引要素を発見し、優良顧
分析例1-1.層化分解による分析
客層の予備軍をそこへ誘導するような
絞込条件=特定年度、特定地域
セグメント=セグメントA
売上金額区分
指標値
キャンペーンを計画することも考えら
顧客数
1,000
1,000
1,000
1,000
1,000
T 25%
2 N 25%
3 N 25%
B 25%
平均
平均来店回数 買上金額
平均買上金額 平均利益金額
/顧客
/顧客
/顧客
12
67,856,000
67,856
29,683
7
32,434,000
32,434
11,972
5
19,654,000
19,654
5,582
3
7,890,000
7,890
-300
6.75
31,958,500
31,959
11,734
れるでしょう。また別の分析の母集団
としてここで下側に位置する顧客層を
絞り込み、更にパフォーマンスが低い
理由を特定するためのベースとして利
用することも考えられるでしょう。こ
最初に実施するのは、セグメント内の
献度の高い顧客へのキャンペーンを実
こで等分を行っている理由は、層化さ
構造を理解するための分析手法です。
施したい場合には、リストの上位が対
れた各顧客グループにおけるパフォー
縦軸にリストしているのは買上金額の
象となるかもしれません。また収益性
マンスの偏りを理解することに有りま
ような、ある量的な変数をベースに等
の高い理由を来店回数や、ここには記
す。例えばここでは顧客 1 人あたりの
分化した顧客のグループです。ここで
載していませんが来店 1 回あたりの
買上金額において 8,000 円あたりが損
は例として 4 つに分解していますが、
支出額に発見できるかもしれません。
益分岐となると理解でき、現状の当該
これは n 等分すると考えて構いませ
ここでの想定は物品購入ですが、通
セグメントにおいては、Bottom 25%
ん。必要であれば 10 等分、50 等分、
信業の場合、各指標値は左から順に、
にこの損益分岐点が存在していること
100 等分といった形で層化します。そ
[ 顧客数 ]、[ 平均通話回数 / 顧客 ]、
が想定できます。顧客を等分に層化し
してそれぞれの層化された顧客グルー
[ 請求金額合計 ] 、[平均請求金額 / 顧客]、
ても、その他の指標も同様に応分のパ
プ毎の各指標値を理解することによっ
[ 平均利益金額 / 顧客 ] となり、来店
フォーマンスを保持しているとは限ら
て、当該セグメントにおけるパフォー
1 回あたりの支出額も、1 通話あたり
ず、そのときの偏りを理解することが
マンスが、どのような構造になってい
の時間や請求金額に読み替えることが
必要となります。
るかを理解します。例えば買上金額貢
可能です。これらの指標から、収益性
1-2. 経時変化の分析
していないのであれば、これはビジネスチ
分析例1-2.経時変化の分析
ャンスであり、顧客サービスレベルを低
絞込条件=特定年度、特定地域
セグメント=セグメントA
指標値=買上金額
セグメントA
セグメント属性1
セグメント属性2
合計
期間
下させるリスクでもあり、いずれにして
期間1
期間2
42,321
43,221
85,542
期間3
45,453
65,433
110,886
期間4
43,211
42,111
85,322
も市場変化を示す重要な兆候であると理
合計
43,223
43,577
86,800
174,208
194,342
368, 550
解できます。同様にここで規定した指標
値が低下傾向であれば、何らかの理由で
離反や、競合からの侵食が始まっている
続いての分析は、セグメント内の時間的変
時系列で把握していくことにより、どのセ
傾向と見て取ることができます。これら
化を理解するための分析です。指標値、期
グメント属性が拡大、または縮小傾向に
の縮小、もしくは拡大したセグメント /
間は例として置いていますが、任意のセグ
あるかを理解します。特定のセグメント属
セグメント属性をキャンペーンターゲッ
メントに関する指標値と任意の期間 ( 日、
性が大きな成長を続けており、自社が実施
トとすることも可能ですし、更にこれら
週、月、四半期、年等 ) を利用することに
している商品やサービス、キャンペーンが
の顧客グループを別な視点で分析するこ
なります。特定セグメント属性毎の趨勢を
これらのセグメント属性に対してアドレス
とも必要になってくるでしょう。
17
セグメンテーション / ターゲティング
2. セグメントの行動パターンを理解する
2-1. 関連性の分析
はその混合財 ) 、もしくは商品属性も適
分析例2-1.関連性の分析
用することが想定されるでしょう。ま
絞込条件=特定年度、特定地域
セグメント=セグメントA
基準商品分類=商品分類A
商品分類
商品分類B
指標値
たターゲティングへの適用方法も幾つ
顧客数
商品分類C
商品分類D
買上金額
か想定されます。ミュージシャン A と
買上金額/顧客 交叉率
53
6,892,234
130,042
51.5%
43
22
4,321,420
3,543,227
100,498
161,056
41.7%
21.4%
ミュージシャン B の関連性が高いとき、
どちらかのCD (もしくは.mp3ファイル )
を購入 (もしくはダウンロード ) してい
ここからは、指定したセグメントがど
品購入の場合は併買率や関連購買率と
ない顧客にそれぞれをクロスセルする
のような行動パターンを示すかを理解
読み替えることが可能です。これらの
ことも考えられますし、それぞれのミ
するための分析です。この分析では、
関連性、相性度から、シンプルなクロ
ュージシャンの新譜が発売されれば、
特定の商品分類を基準商品分類として、
スセリングに利用することが出来るの
どちらかを購入している顧客をターゲ
この商品分類と一緒に購入されている
はもちろんですが、同時に顧客が自社
ット候補とすることも可能です。また
商品分類を縦軸に置き、両方購入して
の商品やサービス群をどのように使っ
バイヤーがこれらの顧客層に支持され
いる顧客数を表示させたものです。特
ており、どのようなライフスタイルの
るであろう、比較的無名のミュージシ
定商品間の相性度、クロスセリングの
中にこれらの商品やサービス群を取り
ャン C を案内することも考えられるで
可能性等を理解するために用いられる
入れているかを想定することが可能と
しょう。この場合、バイヤーが見つけ
手法です。基準として規定した商品分
なります。キャンペーンターゲットと
るミュージシャン A、B、C に共通する
類 A に対して、商品分類 A と一緒に
してこれらの組み合わせを見たとき、
商品属性は音楽という商品の性質上極
購入される傾向が高ければ、縦軸に指
このライフスタイルに必要な構成要素
度に感性に依存したもの ( もの悲しいメ
定した商品分類との相性が高いことが
がオファーするべき商品やサービス群
ロディ、図太いベースライン等 ) ですが、
想定されます。交叉率は基準商品分類
であり、それは最もその顧客に自然に
それを案内した結果、つまり顧客の反
を購入した顧客の中で、一緒に縦軸の
訴えることができ、かつ魅力的なメッ
応度はデジタルにキャプチャ可能であ
商品分類を購入した顧客の割合を示し、
セージである可能性が高いと言えます。
り、それはすなわちバイヤーが捉えた
各商品分類とのクロスオーバーがどの
ここでは商品分類と記載していますが、
感性の持つ“市場性”を明確に数値化す
程度発生するかを理解しています。物
いずれの商品 ( 物財、非物財、もしく
ることでもあります。
2-2. タイミング / シーケンスの分析
に対して次の行動が引きずられ、連
分析例2-2.タイミング/シーケンスの分析
鎖する様を指します。最も端的な例
絞込条件=特定年度、特定地域
セグメント=セグメントA
基準商品分類=商品分類A
分析商品分類=全て
指標値=購入顧客数
商品分類
商品分類B
期間
は商品 A を購入した顧客が、商品 B
を購入するということです。前述し
期間0
商品分類C
商品分類D
合計
期間2(31-60日)
期間1(1-30日)
た [2-1. 関連性の分析 ] において、こ
期間3(61-90日)
100
20
80
12
の発生頻度に対する理解を得ることが
100
100
40
46
20
53
11
11
可能ですが、キャンペーンを実施して
300
106
153
34
いく意味においてはそのタイミングや
セグメントの行動パターンを理解す
タイミング及びシーケンスの分析です。
シーケンスも重要であり、この分析が
るためのもう一つの分析は、購入の
行動パターンとは、ある特定の行動
理解したいテーマはそこにあります。
18
セグメンテーション / ターゲティング
ここでは、基準商品分類である A を
ターンを認識し、キャンペーンの実施
充購入サイクルを理解するためにも活
購入した顧客が、その購入タイミング
タイミングに役立てることが可能とな
用することも想定されるでしょう。こ
を期間 0 とした際に、そこからどの程
ります。タイミングがやってきた顧客
の場合は基準商品と分析商品が同じ商
度の期間で各商品分類の購入に至った
をターゲットとして拾い上げ、イベン
品となります。基準商品、分析商品共
かを理解しています。横軸に指定した
トベース ( 例 : 商品 A を購入してから
に複数の商品を指定することにより、
のは、基準商品の購入日に対して、分
xx 日間経過し、まだ商品 B を購入して
同様の属性を持つ商品を併せて分析の
析商品が購入された日までの期間で
いない顧客にオファーを提供する ) の
対象とすることが可能です。このよう
す。当然ながらこのスケーリングは分
キャンペーンを実施していくことも想
な形で分析を行うことによって、行動
析の対象によって異なり、任意に指定
定されます。基準商品と分析商品の関
パターンに関する全般的な傾向を理解
されなければなりません。このレポー
係は、TV ゲーム機の購入顧客が再来
することが可能になると共に、キャン
トでは期間 0 以降のタイミングについ
店し、ゲームソフトのような関連 / 付
ペーンターゲットをイベントベースで
て理解を試みていますが、逆に期間 0
属製品を購入するタイミングを理解す
“ 待ち受ける ” 際にコントロールする
以前のタイミングを理解することも想
るといった形で適用することが想定さ
べきタイミングを理解することが可能
定されます。ここから、ある一定のパ
れます。またプリンタートナー等の補
となります。
3. セグメント間の違いを理解する
3-1. 嗜好性の比較分析
は各セグメントの嗜好性の集中度と分
分析例3-1.嗜好性の比較分析
散の範囲です。集中している、例えば
絞込条件=特定年度 、特定地域
セグメント=セグメントA及びセグメントB
指標値=購入顧客数
セグメント
商品分類
セグメント A
セグメント B
合計
商品分類A
顧客が多く含まれているセグメント属
商品分類B
103
342
445
232
434
666
商品分類C
102
453
555
商品分類D
200
365
565
性と商品分類の組合せは、当該セグメ
合計
637
1,594
2,231
ント顧客と自社を結び付けているアン
カー的な嗜好性であると考えられます
し、それ以外の組合せも含め、どのよ
最後にご紹介する 2 つの分析は、セグ
してここでは商品分類で区分していま
うに嗜好性が分散しているかを把握す
メント間に存在する違いを理解するた
すが、例えばファッションアパレルで
ることが、各セグメントの嗜好性の範
めの分析です。こちらの分析では、各
あればブランドや色彩の嗜好性といっ
囲を理解することにつながります。指
セグメントを縦軸に置き、一方で横軸
た商品属性、旅行代理店であれば旅行
標値に関しては、ここでは単純な購入
に商品分類を置くことによって、嗜好
先 ( ヨーロッパ派、アジア派、国内派
顧客数を指標値として利用しています。
性の違いを明確化しています。当然な
等 ) の嗜好性等の商品属性が考えられる
あわせて売上金額やサービスの利用回
がらそれぞれの個人には嗜好性という
ことでしょう。ここで指定したセグメ
数等で把握することは、その嗜好性の
ものが存在するものであり、その嗜好
ントが、例えば収益性に基づいたセグ
集中 / 分散度合いを総合的に理解する
性の違いそのものを理解したい場合に
メントであるとした場合、収益性の高
ことにつながります。ここから、これ
は、嗜好性をベースにセグメントその
い顧客セグメントはどのようなブラン
らのセグメントに対してキャンペーンを
ものが構築されなければなりません。
ド嗜好性を持つか、収益性の低いセグ
実施する際に、反応の高いオファーが何
ここではそれ以外の顧客を特徴付ける
メントとどのような傾向の違いを示す
であるかを理解することが可能となると
基準に基づいて作成されたセグメント
かということがこのレポートの理解す
共に、特定のオファーに対して反応の高
を並べ、各セグメントの嗜好性を比較
るべきテーマとなることでしょう。ま
いセグメントを探索することが可能とな
し、特徴を理解しています。横軸に関
た、もう一つの理解するべきポイント
ります。
19
セグメンテーション / ターゲティング
3-2. セグメント重複度合いの分析
ストし、縦軸に当年の同じセグメン
分析例3-2.セグメント重複度合いの分析
ト属性をリストし、指標値として顧
絞込条件=特定年度、特定地域
セグメント=セグメントB及びセグメントC
客数を利用することにより、離反が
指標値=買上金額構成比
セグメントB
セグメント属性1
セグメント属性2
セグメント属性3
合計
セグメントC セグメント属性1 セグメント属性2 セグメント属性3 合計
30.9%
16.6%
25.2%
49.5%
41.2%
54.3%
47.0%
23.6%
29.1%
27.9%
27.8%
26.9%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
想定される顧客グループや、逆に優
良顧客へと成長した顧客グループを
識別することが可能となります。ま
た 当 然、 通 常 の 全 く 観 点 の 異 な る
2 点 目 の 分 析 は、2 つ の セ グ メ ン ト
こともできるでしょう。本来この分
セグメントを比較することも可能で
間における、重複度合いを理解する
析のポイントは、2 つのセグメント
す。シンプルに年齢層と性別をそれ
ための分析手法です。縦軸と横軸に
がどのように絡み合っているかを理
ぞれ縦軸と横軸にとれば、自社顧客
それぞれ異なるセグメント / セグメ
解することにあるのですが、一方で、
のデモグラフィック構造を一覧するこ
ント属性をリストしてクロス集計す
同一のトレイルセグメントにおける
とになるでしょう。ここから特定の
ることによって、各セグメント属性
異なる期間を、それぞれ縦軸 / 横軸
セルに該当する ( 例えば 50 代男性等 )
の重複度合いを俯瞰することが可能
に配置することによって、両期間に
顧客グループを抜き出して、更に分
となります。分析例では買上金額の
おけるセグメント属性間の顧客移動
析の母集団とすることも場合も考え
構成比を指標値として表示していま
を理解できることも利用用途の一つ
られますし、シンプルにこの顧客グ
すが、顧客数を指標値に用いれば単
です。例えば横軸に前年の買上金額
ループをキャンペーンターゲットと
純な構造を理解することに利用する
をベースにしたセグメント属性をリ
することも想定されます。
モデリング環境の要件
ここまでで 6 つの分析手法を紹介
図8. n重のセグメンテーションモデリング例
し て き ま し た が、 こ れ ら に 共 通 す
登録セグメント(O
)
る部分をまとめておきます。1 点目
セグメントA
セグメント B
セグメントC
セグメントD
と し て 絞 り 込 み の 条 件 は、 分 析 を
実施する母集団を規定したい場合
-
操作
新規に特定変数顧客を抽出
さらに特定変数顧客を抽出
さらに分析結果を元に抽出
セグメントCとセグメントDの
U N IO Nを取得
結果セットの扱い(D)
セグメントAとして登録
セグメントBとして登録
セグメントCとして登録
キャンペーンEのターゲット
として利用
...
に 利 用 し ま す。 こ こ で 絞 り 込 ま れ
た条件に含まれる顧客のみが分析
カラムに表示されている顧客グル
ストとして利用することができれ
の 対 象 と な り ま す。 ま た こ こ に は
ー プ、 も し く は そ の 指 標 値 が 代 替
ば、 そ れ は マ ー ケ タ ー に 柔 軟 性 に
複 数 の セ グ メ ン ト も 含 む、 特 定 の
表 現 す る 顧 客 グ ル ー プ は、 そ れ ぞ
富んだセグメンテーション / ターゲ
セグメントも母集団 (a) として含ま
れがそこから導き出されたセグメ
テ ィ ン グ の 手 法 を 提 供 し、 最 終 的
れ る こ と が 想 定 さ れ ま す。 そ し て
ン ト、 も し く は キ ャ ン ペ ー ン タ ー
に高度に洗練されたセグメント /
2 点 目 と し て 表 示 さ れ る 指 標 値 は、
ゲ ッ ト に な り 得 る と い う こ と で す。
キャンペーンターゲットをもたら
固定された値だけではなく自由に
これらの顧客グループをセグメント /
す こ と と な り ま す。 技 術 的 な 機 能
切 り 替 え を 行 い、 同 じ 切 り 口 で 複
キャンペーンターゲットの類を問
と し て は、 図 8 に 示 し た よ う な 連
数の指標値を比較する必要性があ
わ ず に 絞 り 込 み、 更 に 分 析 の 母 集
鎖が幾重にも実施できなくてはな
るということです。3 点目はここか
団 ((a) の部分 ) として利用する、も
りません。
ら発見されたそれぞれのセル / 行 /
しくは最終的なターゲット顧客リ
20
セグメンテーション / ターゲティング
まとめ
映画“ ガタカ ”では、遺伝子工学が
む の は、 今 を 犠 牲 に す る こ と に よ
実として人間の行動とは全く予想
発 達 し た 未 来 の 世 界 に お い て、 受
って将来の獲得利益を最大化した
し が た い も の で あ り、 我 々 が そ れ
精 段 階 で 遺 伝 子 操 作 を 行 い、 病 気
い か ら で あ り、 恋 愛 を ロ マ ン テ ィ
を読み解くための鍵は非常にわず
等の原因が取り除かれた形で生ま
ッ ク に 感 じ た り、 自 分 の 子 供 を い
かなものであることには変わりあ
れ て く る 人 間 が 描 か れ て い ま す。
と お し く 感 じ る の は、 そ う す る こ
りません。
また “ 利己的な遺伝子 ” を著した
とが種の保存を促すのにもっとも
そういった意味ではここで紹介し
オ ッ ク ス フ ォ ー ド 大 学 の 教 授、 リ
適 切 な 方 法 だ か ら で す。 そ れ は 自
てきたセグメンテーションとター
チャード・ドーキンスは遺伝子が
分 の 頭 脳 が そ う 考 え て い る、 心 が
ゲ テ ィ ン グ の 粒 度 で さ え も、 ホ モ
人 間 を 突 き 動 か し、 そ れ ら が 人 間
そ う 感 じ て い る の で は な く、 純 粋
サ ピ エ ン ス と 名 付 け ら れ た 動 物 の、
の 心 理 や 行 動 に 影 響 を 与 え、 自 ら
に 遺 伝 子 の 仕 業 で あ り、 ヒ ト は 操
しかも個体差がもたらす本来の複
の複製を存続させるために人間を
ら れ る の み な の で す。 頭 脳 や 心 理、
雑性を映し出すにはあまりにも稚
誘導していることを指摘していま
理性はそれを自らの主体性に基づ
拙 で、 本 来 必 要 な フ ォ ー カ ス か ら
す。 人 間 が 自 ら の 遺 伝 子 を 完 全 に
く も の だ と 思 わ せ、 適 切 か つ 自 律
は 程 遠 い も の な の か も し れ ま せ ん。
解 読 す る こ と に 成 功 し た と き、 も
的 に コ ン ト ロ ー ル さ せ る た め に、
今日の企業は顧客に関する膨大な
しかしたら遺伝子一つ一つの情報
遺伝子が進化の過程で発達させて
デ ー タ を 保 持 し、 ま た は そ の 可 能
や作用から表層に発生する人間の
き た 機 能 に 過 ぎ ま せ ん。 少 な く と
性 を 有 し て い ま す。 一 方 で 上 述 し
心 理 や 行 動 を 理 解 し、 マ ー ケ テ ィ
も遺伝子を基準に考えれば。
た 観 点 か ら 見 た と き、 こ れ ら の デ
ングに役立てる日が来るのかもし
将 来、 表 層 的 な 行 動 か ら 深 層 心 理、
ー タ が 顧 客 の 行 動 を 100% 正 確 に
れ ま せ ん。 心 理 学 や 計 量 経 済 学、
そしてその先へと分解していくト
予測するには、
“ 充分に ”不充分で
そして金融工学の理論を取り入れ
ップダウンアプローチがマーケテ
あ る こ と も 確 か で す。 コ ッ プ の 中
てきている現代のマーケティング
ィ ン グ に 寄 与 す る か、 そ れ と も ア
の 水 は 半 分 に も 満 た な い の に、 そ
は、 将 来 的 に 遺 伝 子 工 学 の 恩 恵 を
トミックレベルの遺伝子と環境変
の量は我々をそこで溺れさせるほ
もこうむることになるかもしれま
数 か ら、 表 層 の 行 動 モ デ ル を 導 き
ど に 膨 大 な の で す。 し か し な が ら、
せ ん。 人 間 を 動 物 と し て 捉 え た と
出すボトムアップアプローチがマ
だ か ら こ そ、 こ れ ら の デ ー タ を 最
き、 そ れ は 遺 伝 子 に よ り 作 ら れ て
ーケティングに寄与するかは分か
大 限 に 活 用 し、 お ぼ ろ げ な が ら に
お り、 外 界 か ら の イ ン プ ッ ト を 受
り ま せ ん。 い ず れ に し て も こ の 遠
も 顧 客 の 輪 郭 を 掴 み、 表 層 的 な 行
け、 そ れ が 行 動 を 促 し て い ま す。
大 な 構 造 を 理 解 で き た と き、 現 在
動の背景にある “ 何か ” を汲み取り、
頭 脳 や そ こ で う ご め く 心 理、 理 性、
とは比べ物にならない精度で個人
コンタクトに活かすことが必要と
これらは人類進化の過程で形成さ
の行動や反応を予測できるように
な り ま す。 そ し て こ こ か ら、 顧 客
れ、 社 会 生 活 の 中 で イ ン プ ッ ト さ
な り、 そ れ は マ ー ケ テ ィ ン グ の 効
が 期 待 す る コ ト と、 自 社 が 提 供 で
れ た 結 果 で あ り、 本 能 的 な 行 動 欲
果や効率を飛躍的に向上させるこ
きるコトのクロスポイントを見つ
求に対しての利益最大化を目的と
と に な る で し ょ う。 ま た 現 在 と は
け 出 さ な け れ ば な り ま せ ん。 現 在
したコントロールを行うための機
比べ物にならないほどプライバシ
得られる粒度を最大限に活用して
能 で す。 そ れ は 行 動 欲 求 に 対 し て、
ーに対する問題も考慮されなけれ
顧 客 を 理 解 し、 出 来 う る 限 り 個 人
自らの種の存続を目的とした欲求
ば な ら な い こ と で し ょ う。 も し か
や そ の 行 動 に ピ ン ト を 合 わ せ、 そ
制 限 と、 行 動 欲 求 に 対 す る 後 追 い
し た ら こ れ は Sci-Fi 映 画 / 小 説 に
の 個 人 に と っ て 最 適 な 商 品 を、 最
の 正 当 化 を す る に 過 ぎ ま せ ん。 学
影響を受けた過大な妄想でしかな
適な時空 ( タイミング + チャネル )
生が寝る間を惜しんで勉学に勤し
い の か も し れ ま せ ん が、 一 方 で 事
で提供していくための礎とするこ
21
セグメンテーション / ターゲティング
と は と て も 重 要 な こ と で す。 な ぜ
ー ル を 考 え た と き、 そ の 内 容 が 顧
こ そ が、 つ ま り タ ー ゲ テ ィ ン グ の
ならセグメンテーションとターゲ
客 の 期 待 と 合 致 し な い の で あ れ ば、
能力そのものがその結果の違いを
ティングに用いる属性変数を人間
それは個人から見た迷惑や無駄で
もたらしているといっても過言で
であるという 1 つの変数のみに着
あ り、 自 社 か ら 見 た 経 費 の 無 駄 で
は あ り ま せ ん。 そ の 個 人 に と っ て
目 し、 お お よ そ 目 を つ ぶ っ て マ ー
も あ り、 離 反 可 能 性 の 起 点 と も な
無 用 で、 意 味 の な い メ ッ セ ー ジ を
ケティングを実施するのと変わら
り 得 ま す。 一 方 で そ れ が 顧 客 の 期
送 ら な い と い う 意 味 に お い て、 そ
な い 手 法 を 採 択 す る の と、 個 体 差
待 と 合 致 す る の で あ れ ば、 そ れ は
してその個人にとってもっとも重
に 着 目 し、 出 来 る 限 り そ の 個 人 の
個人から見た期待の充足機会であ
要 な、 ニ ー ズ の 高 い 要 素 を サ ポ ー
目線に立ってマーケティングを実
り、 自 社 か ら 見 た 成 長 機 会 で あ る
トすることが出来るという可能性
践 す る の で は、 雲 泥 の 違 い が 有 る
だ け で な く、 そ の 個 人 に と っ て 自
を 肯 定 す る 意 味 に お い て、 セ グ メ
か ら で す。 そ し て こ の 雲 泥 の 違 い
社は必要な存在であるというレゾ
ン テ ー シ ョ ン と タ ー ゲ テ ィ ン グ は、
は、 マ ー ケ テ ィ ン グ の 効 果、 効 率
ンテートルをも示してくれている
マ ー ケ テ ィ ン グ、 ひ い て は 企 業 活
の み に も た ら さ れ る の で は な く、
のです。1 通のダイレクトメールが
動の重要な牽引子となるのです。
個人を尊重するという観点からも
180 度方向の異なる結果をもたらす
重要な点です。1 通のダイレクトメ
の で あ れ ば、 そ の 内 容 と 送 付 対 象
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