「任天堂株式会社本社ビル」 1.建物概要 建物名称 任天堂株式会社本社ビル 所在地 京都市南区上鳥羽鉾立町 建物構造・階数 SRC+S B1,F7,P2 32,932.69 ㎡ 延床面積 空調面積(蓄熱部分) 25,596 ㎡(24,010 ㎡) リニューアル・新築 区分 新築 主要用途 事務所 写真1.建物外観 2.蓄熱式空調設備/システム 空調システム 容量(型式)×台数 空調機器メーカー 蓄熱空調導入年月 セントラル型 120 馬力相当×9 台 株式会社サンウェル・ジャパン 平成 12 年 10 月 設備設計事務所 株式会社吉村建築設計事務所 設備施工会社 株式会社竹中工務店 氷蓄熱槽 氷蓄熱槽 製氷機 製氷機 写真2.熱源の設置状況 写真3.CLIS-HR(製氷機) 写真4.氷蓄熱槽内部 (1)空調システム概要 本建物で採用された蓄熱空調システムは、氷蓄熱システムと躯体蓄熱システムがあり、 その概念を図2に示す。夏季は氷蓄熱と躯体蓄熱の併用を行い、中間期は氷蓄熱のみ となっている。 氷蓄熱システム(エコアイス) 冷媒自然循環システム 躯体蓄熱システム 製氷チラー 氷蓄熱槽 凝縮器 躯体蓄熱 切換ダンパー 室内機 蒸発器 図2.空調システムの概念図 (2)氷蓄熱システム 本建物に納入した氷蓄熱システムはダイナミック型の氷蓄熱システムで、氷の生成 原理は図3に示すスーパーチラー内部で溶液を冷却しながら氷を析出し、氷蓄熱槽 へ搬送して蓄熱を行なう。このシ ステム図4に示すが、22時より 製氷運転を行い、午前8時又は製氷 完了温度(−6.6℃)に到達する と製氷運転が終了する。 ここで、生成される氷の粒は 50μm ∼100μm のシャーベット状の氷とな る。 (写真5参照) 図3.スーパーチラーの断面図 写真5.クリスタルリキッドアイス 氷蓄熱槽 120 馬力 F S F S F S S 製氷ポンプ S CLIS−HR 溶液2次ポンプ 氷,冷水 SH 氷,冷水 RH 2次側VCS 図4.熱源系統図 3.導入経緯: 任天堂(株)では本社ビルの建設にあたり、地球環境への貢献が最優先課題であると の判断により蓄熱空調方式の採用が決定された。蓄熱空調方式の中でも、氷蓄熱空調 方式を採用することで環境負荷低減を初め、電力負荷平準化やランニングコストの低 減及び省エネルギー等を達成できることが空調システムを決定する重要なポイント であると判断された。 導入のポイント また、本建物では氷蓄熱の低 温性を利用した冷媒自然循 環システムによる躯体蓄熱 1.環 境 負 荷 低 減 ( C O 2 削 減 ) を可能とし、新しい蓄熱空調 2.電 力 負 荷 の 平 準 化 システムにも積極的に取り 3.ラ ン ニ ン グ コ ス ト の 低 減 組まれている。 4.氷 蓄 熱 と 躯 体 蓄 熱 の 併 用 5.空 調 シ ス テ ム の 簡 素 化 4.配慮した点 (1) 熱源システム 将来の人員・内部発熱の増加を考慮した上で、熱源容量が決定されているため現状で は余裕がある状態となっている。また、本建物は平面的に60m×60mの正方形で あり、東西南北とも外乱の影響を受けるため二次側の空調ゾーニングのみならず、熱 源も負荷特性を考慮して北系統・南系統・東系統の3ゾーンでゾーニングが行なわれ ている。 氷蓄熱槽 北系統 東系統 CLIS-HR(製氷機) CLIS-HR 120 馬力×3台 氷蓄熱槽 150 m CLIS-HR 120 馬力×3台 3 氷蓄熱槽 150 m3 氷蓄熱槽 南系統 氷蓄熱槽 CLIS-HR 120 馬力×3台 氷蓄熱槽 150 m3 図4.熱源のゾーニング (2)熱源の運転パターン 夜間電力時間帯の22時より熱源の運転を行い、翌朝8時又は製氷完了温度(−6.6 ℃)まで製氷運転を行なう。午前8時以降は冷房運転のために解氷運転を行ない、夏 季(7月∼9月)の13時∼16時は蓄熱ピーク調整契約のため、熱源の運転は停止 することを基本としている。 ①北系統の熱源運転パターン(設計時) 氷蓄熱量が不足すると予測された場合には CLIS-HR120 馬力×1台づつを順次運転す るようにし、夕方に熱量が不足する時は2台目の追い掛け運転が行なわれる。 北系統の熱源運転パターン 1000000 900000 800000 熱量(kcal) 700000 600000 追掛(2台目) 500000 400000 300000 追掛(1台目) 夜間蓄熱 120 馬力×2 台停止 200000 100000 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 時刻(時) ②南系統の熱源運転パターン(設計時) 北系統と同様に、氷蓄熱量が不足すると予測された場合には CLIS-HR120 馬力×1 台づつの順次運転を行なうが、南系統は負荷が大きいために3台の追い掛け運転が 出来るようにされている。 南系統の熱源運転パターン 1000000 900000 800000 熱量(kcal) 700000 600000 追掛(3台目) 追掛(2台目) 500000 追掛(1台目) 120 馬力×2台停止 400000 夜間蓄熱 300000 200000 100000 0 1 3 5 7 9 11 13 15 時刻(時) 17 19 21 23 ③東系統の熱源運転パターン(設計時) 東系統も同様に氷蓄熱量が不足すると予測された場合には CLIS-HR120 馬力×1台 づつの順次運転を行なうが、東側は午前中の負荷が大きいために2台の追い掛け運 転ができるようにされている。 東系統の熱源運転パターン 1000000 900000 800000 600000 追掛(2台目) 120 馬力×2台停止 500000 追掛(1台目) 夜間蓄熱 400000 300000 200000 100000 時刻(時) 23 21 19 17 15 13 11 9 7 5 3 0 1 熱量(kcal) 700000 (2)防音・防振対策 ①防音対策 氷蓄熱システムは午後10より製氷運転を行なうため、近隣に対する騒音対策が必要 となる。当該敷地の周辺にはマンション等があるため、防音壁の設置を行い地域住民 に対する配慮がなされている。 ②振動対策 昼間に追い掛け運転が必要となった場合に、下階に振動が伝わらないように防振対策 がなされている。 5.問題となった点 特に問題になることは無かったが、竣工直前に製氷運転時の騒音値測定を行い、騒音に関 して問題がないことの確認がなされた。 6.そ の 他 本建物は竣工後、1年6ヶ月余り経過したが、将来の人員増加を考慮して設計されたこと もあり、使用されていない部分も一部あるため、設計時に予想した熱源運転パターンより も追い掛け運転時間が少なくなっているのが現状である。 株式会社サンウェル・ジャパン 企画部設計課長代理 吉竹裕二 (電話:06-6949-5141 ,FAX:06-6949-5140 )
© Copyright 2024 Paperzz