を通じて自転車が使いやすい社会をつくる・輪の国びわ湖推進協議会の活動

連載
自転車社会の環境改善を目指して No.43
を通じて自転車が使いやすい社会をつくる
「ビワイチ」
輪の国びわ湖推進協議会の活動
文
特定非営利活動法人 自転車活用推進研究会 会員
輪の国びわ湖推進協議会 会長
藤本芳一
自転車活用推進研究会 事務局:
〒 141-0021 東京都品川区上大崎 3-3-1 自転車総合ビル 4 階
TEL 080-3918-2932 URL http://www.cyclists.jp/
今の日本では品質の悪い、安い自転
た認定証とステッカー(年毎に色を
車が主流で、そのことが自転車の可
変えます )を送付しています。申請
能性を狭めています。スポーツ自転
者は年々増加し、累積で 5000 人を
近年、各地で自転車利用環境の整
車を使い、長距離走行を楽しむこと
超えました。
備が進みつつありますが、普段自転
で、その本当のポテンシャルを理解
設立のきっかけ
さらに多くの方にビワイチを楽し
車 に 乗 らない 人 に自転車 の 良 さや、 する人が増えるのではないかと考え、 んでいただき、かつ安全に走行して
交通手段としての可能性を理解して
湖メンバーが手分けして実際に自転
滋賀県では「子供は一度はびわ湖一
車で走って調査し、その結果をまと
びわ湖推進協議会」を設立しました。
周サイクリングに挑戦する」と言われ、
「 びわ湖一周」と言うと、自転車に乗
らない人でも興味を示してくれます。
め、2011 年にガイドブック「 ぐるっ
PR から行政への働きかけまで
「 ビワイチ 」とは、以前から自転車
好 きの 間 で 使 われてきたびわ 湖一
とび わ 湖自転車 の 旅」
(京都新聞
出版センター)として出版しました。
びわ湖一周コースだけでなく、周辺
活動内容としては、まずびわ湖一
の「中山道」などの街道を走るコー
周 サイクリングの 略称 です。一周
周 サイクリング 認定証 の 発行 です。 ス、
「近江八幡・安土」などのエリ
約 200km。大阪−名古屋間にも匹
一周ルート上に 14 ヵ所のチェック
アをめぐるコースも掲載しています。
敵する距離ですが、平坦な道が多く、 ポイントを設け、スマートフォンや
その理由はひたすら走って終わりで
ちょっといいスポーツ自転車を使え
携帯電話でチェックを行って、表示
はなく、様々な見所や店に立ち寄っ
ばサイクリング初心者でも 1 泊 2 日
されるクイズに答えていただきます。 ていただき、ゆっくりと時間をかけ
程度で走破できます。がんばれば可
4 ヵ所以上でチェックすると認定証
てびわ湖や滋賀の魅力を知っていた
能だが、簡単ではない絶妙の距離で、 の発行を申請していただけ、当協議
だくことを目的にしているからです。
日本一の湖を走破するという明快な
これまでに 1 万部以上を販売し、今
会事務局からびわ湖のヨシ紙を使っ
目標にもなるため、自転車好き以外
年の春には改訂版を出版すべく、現
の方でも一度は挑戦したいと思うよ
在制作作業中です。
うです。
自転車に対して理解のある宿泊施
そこで、ビワイチを利用して、自
設や店を増やすため、協賛ショップ
転車 に 乗 らない 人 にもその 良 さを
の 募集 も 行 っており、現在 45 件 の
知っていただければ、そして自転車
登録があります。協賛ショップには、
好きが増加すれば、自転車利用環境
自転車で来られた方向けに割引やプ
整備 を 進 めるための 大 きな 力 にな
るのではないかと考えました。また、
042
いただくことを目的に、輪の国びわ
2009 年 10 月、市民の有志を中心に
もらうのは難しいものです。しかし、 NPO 法人や企業が集まり、
「輪の国
レゼントなどの特典を用意していた
びわ湖一周サイクリング認定証とステッカー
だきます。特典は、輪の国びわ湖ウェ
ブサイトやパンフレットに 掲載 し、 「滋賀プラス・サイクル推進協議会」
らについてはいずれも 今年本格実
自転車利用者へ PR しています。近
を設立しました。安全で快適な走行
施を目指しています。
年はビワイチサイクリストの増加に
環境づくりについて関係団体への提
より、宿泊施設からの問い合わせが
案活動もおこなっています。
増えていますが、制度としては日常
利用者へのサービスも視野に入れて
います。
また 安全啓発 の 一環 として、滋
ンケートや、湖岸数ヶ所にビデオカ
メラを 設置 しての 自転車走行台数
地域活性化の手段として
注目を集める
の測定が行われ、1 年間のビワイチ
推計台数は約 5 万 4 千台との発表が
ありました。 また、90% が 反時計
回り(左回り )であるとのことです。
賀県ゆかりのマンガ家、大塚志郎先
生にイラストをお願いし、
「自転車
道 の 駅 でのサイクリストへのア
現在、自転車を使った観光が地域
反時計回りの 方 が 湖岸近 くを 走 れ、
は左側通行」のポスターを作成して、 活性化の手段として大きく注目を集
景色も良く、交差する道も少ないた
県内の道の駅やコンビニに掲示しま
め、しまなみ海道を初めとして、サ
めです。ビワイチサイクリストは左
した。マンガを使ったことで中高生
イクリング環境の整備を積極的に進
側通行を守っている方が多いことが
にも人気があり、県外からも引き合
めている自治体が増えています。
推測できます。
いがあります。
輪の国びわ湖でも 2014 年から毎
これらの PR 活動とあわせて、滋
年、自転車を使った観光を各地で実
賀県 での 自転車 の日常利用環境整
践されている方々とのネットワーク
備を進めるため、県や県下の自治体、 づくりを目的に、サイクルツーリズ
警察、関連事業者と共に、2012年に
自転車+公共交通を優先的に
選べる社会へ
ムシンポジウムを 開催 しています。
遠くは岩手県や愛媛県からも、自治
滋賀県では「県民の 95%が駅から
体 や 観光 に 携 わる 方 の 参加 があり、 5km 以内に居住」というデータがあ
り、日常利用としての自転車に大き
関心の高さが伺えます。
「自転車は左側通行」ポスター
そして昨年、三日月滋賀県知事が
な可能性があります。しかし、現実
観光振興 のためビワイチの 推進 を
は車社会で、ようやく自転車の観光
表明し、ビワイチは次のステップに
利用に対する関心が高まりつつある
向 けて 大 きく 動 き 出 しました。県
段階で、日常利用のための環境整備
や各地域の自治体が主体となり、米
はまだまだこれからです。しかし輪
原駅前 でビワイチ 用 スポーツ 自転
の国びわ湖のビジョンは「移動する
車のレンタサイクルの実施、道の駅
ときの手段として、自転車+公共交
やコンビニ 等 にサイクルラックや
通を誰もが優先的に選ぶようにする
空気入 れや 工具 を 備 えたサイクル
ことで、将来に渡ってみんなが幸せ
サポートステーションの実施、車道
に暮らせる社会。
」の実現です。観光
上 の 自転車走行位置指定 のための
としてだけでなく、日常利用の促進
矢羽根印の表示、守山市での漁船を
にもさらに力を入 れ、滋賀を「輪 の
使 った 自転車搭載可能 な 湖上 タク
国」に、さらにその動きを全国に波及
シー等の試行が行われました。これ
させることを目指して行きます。
「自転車検定」を始めました
インターネットで、いつでも受験できる「自転車検定」サイトを設けました。無料のお試し検定も行っています。
自転車活用推進研究会のホームページ〈 http://www.cyclists.jp/ 〉からどうぞ。
自転車・バイク・自動車駐車場 パーキングプレス 2016 3月号
043
連
載