漢字書字について ―低成績の背景要因の検討とその支援― ◆従来 漢字の書字には、音韻情報処理や言語性短期記憶、視覚記憶などの関 連が指摘されています。 一方、部首の知識や、筆順など漢字学習の基礎スキルについてはこれま で検討されていません。 ◆目的 漢字が本格導入される小学2年生から6年生の、 漢字書字の苦手さにかかわる背景要因について、認知情報処 理と漢字基礎スキルのレベルで把握し、効果的な漢字書字の学 1 習支援を検討します。 調査課題 (1)漢字読字・書字テスト (2)漢字基礎スキルテスト 部品検出テスト 部首名テスト 筆順テスト (3)認知スキルテスト 言語性記憶テスト 視覚記憶テスト 漢字書字テストの平均値(SD) 2年生 3年生 4年生 5年生 6年生 92.77(10.54) 89.43(18.20) 85.36(18.43) 82.58(18.99) 86.72(16.49) 2 結果 ◆漢字書字低成績の背景要因: 漢字読字や部品検出、部首位置と部首名などの漢字書字基礎スキル の強低成績が関与する。 漢字読字の指導と合わせて、漢字部品の検出や部首知識の 形成を図る指導が効果的であり、漢字書字低成績に対する直 接的な予防効果が大きい可能性が示されました。 漢字部品や部首の知識を習得することによって、 画要素のチャンキングが促進され、その結果、漢字書字の成 績が改善する可能性 3 認知情報処理の特徴・部首に関する知識 を活用した支援の例 言語性短期記憶が弱い場合 草と葉っぱがあって 手がのびて 肉球が3つ りんごの木 菜 電 傘があって 雨がふっていて くもから カミナリ! 言語性短期記憶が強く視覚認知が弱い場合 4 漢字習得の推移 ・通常、学校や宿題で実施しているような反復学習では、直後ポスト、1週間後の保持 テストともに未定着です。 ・学習支援初期には、正答率50%ほどですが、中期以降は、2週間後の保持②でも 正答率が高く、安定する様子が見られました。 反復学習漢字 第1・2回 学習漢字 第3・4回 学習漢字 第5・6回 学習漢字 第7・8回 学習漢字 第9・10回 学習漢字 第11・12回学習漢字 大プレ : 学習前アセスメント(4月) プレ : 各回学習前テスト ポスト : 各回学習直後テスト 保持① : 学習1週間後テスト 保持② : 学習2週間後テスト 大ポスト : 学習後最終テスト(8月) 5
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