言葉の裏にあるメッセージを嗅ぎ取る想像力と 思いを伝える

憲 法問題、私はこう 考える(No.10)
東京民医労書記局発行
言葉の裏にあるメッセージを嗅ぎ取る想像力と
思いを伝えることのできる言葉を今こそ!
桐山
まきさ ん(病体 労組)
『な ぜ、人を殺 してはい けないのか 』
ある集会のフロアー発言で、青年が言った。今どきの青年たちがよく使う言い回しの尻
上が り 口 調 で 、 発 言 の 最 後 は疑 問 文 の よ う な 、 内 容 を 自身 で 確 認 する た め の 言葉 の よ う
な、微妙な問いかけ型になった。
「改憲が決まれば、徴兵制が敷かれることになるのではないか。日本の子どもたちは将
来戦 地 に 赴 き 、 殺 し た り 殺 され た り す る こ と に な る か もし れ な い とい う こ と が現 実 味 を
帯びてきている」という発言を受けてのことだった。
青年の発言を受けてオトナたちは一瞬はっと息をのみ、次に騒然となった。‘命の重み’
がこ こ ま で 軽く な っ てし ま っ た のか 。‘ 説明 の 余地 の ない ’‘大 前 提の ’ それ に 対し て 疑
問を抱くとは、どういう育 ち方をしているのか。‘ 教育’行政は何をやって いたのか。あ
なた が 殺 す 命 は 、 愛 す る 誰 かが い る 命 、 父 も 母 も い つ くし み 大 切 に育 て た 命 なの だ と 、
厳し く や さ し く 語 り か け る フロ ア ー の オ ト ナ た ち が 必 死に な っ た 数十 分 だ っ た。 私 は こ
の場 に い た オ ト ナ の 一 人 で はあ っ た の だ が 、 青 年 の 疑 問? に す っ と引 き 込 ま れた 。 こ の
青年の発言の意図は、違うところに向かっていたのではないかと考えた。
『な ぜ、人を殺 してはい けないのか 』
この疑問は、あまりのインパクトの強さに会場がどよめき、怒りや不快感、あきれた感
の嫌な空気に包まれてしま い、「つい、うっかり日 常的に感じている自分の 疑問を話して
しまったがためにオトナたちをこんなに驚愕させて、シマッタ!」という態度の青年は、
『だけど、世界のどこでも ヒトはヒトを殺し、傷つ けあっている。(上官に )殺れって言
われ た ら 、 逆 ら え な い で し ょ。 だ っ て 、 殺 ら な か っ た ら自 分 が 殺 られ る し ・ ・・ 」 と 言
い残し、これ以上は、自分の意見を語る勇気を持たなかった。
『な ぜ、人を殺 してはい けないのか 』
殺してはいけないとされている自明の‘説明の余地のない’‘大前提の’‘命の重み’に対
し、 人 は あ ま り に 無 力 で 、 なぜ 世 界 中 で は 、 貧 困 で 、 病気 で 、 戦 争で ヒ ト が 死ん で い く
のか 。 日 本 の 中 で も 、 過 労 で、 看 取 ら れ ず に 、 保 護 を 打ち 切 ら れ 、置 き 去 り にさ れ 、 孤
独で毎日ヒトが亡くなっている。
この青年の時代、今は過度に競争をあおられ、中学不登校は13万人以上。勝ち負け分
類さ れ 、 就 職 は な く 、 親 は リス ト ラ 。 社 会 は 青 年 た ち にW E L C OM E を 言 って は く れ
ない 。 殺 し て は い け な い 命 を殺 し て し ま う か も し れ な い道 を わ ざ わざ 敷 き 、 そし て 、 自
分が 死 ぬ か も し れ な い 戦 地 へ向 か わ せ よ う と す る オ ト ナた ち の や って い る こ とは 、 子 ど
もの ‘ 命 の 重 み ’ を か け が えの な い も の と は 見 て い な いと い う メ ッセ ー ジ を 日々 送 っ て
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いる の と 同 じ な の で は な い か。 青 年 は 、 オ ト ナ は わ か らん ! 信 用 でき な い ! とし 、 オ ト
ナは オ ト ナ で 最 近 の 若 者 は 、命 を 粗 末 に し て い る 、 と 呆れ た り す る。 で も 、 オト ナ が 言
葉の裏にあるメッセージを嗅ぎ取る想像力を磨き、青年たちのわかる言葉を探さないと、
子どもたちとともに闘うこともできない。
国民投票法案が国会に提出される。その前に存分に話し合わなければならない。
わか り づ ら さ を 面 倒 臭 が っ ては な ら な い 。 し つ こ く 思 われ て も 、 その 手 を 離 して は な ら
ない 。
その手はまだ、やわらかく暖かい。オトナから青年に歩み寄っていかなければならない。
その青年が、オトナたちのメッセージを仲間に伝えてくれることを願って。
靖国神社が抱える自己矛盾を実感した実態調査
渡辺
幸彦さん(ほ くと医療労 組
中央 書記次長 )
数年前、まだ建物が大きくなる前に行ったことがあります。その日は2月11日で、旧
日本軍の軍服を着たコスプレ好きの若者と昔を懐かしんで集まった老人達がいました。
今回は4月9日でまだ桜が散らずに残っていました。参道には露天が並び、祭りの風情
が満ちていました。
靖国神社には二つの顔があります。一つは他の神社同様に様々な祈願をするところです。
絵馬 に は 合 格 祈 願 、 家 内 安 全な ど が 書 か れ て い ま す 。 もう 一 つ は 61 年 前 に あっ た 戦 争
は正 し か っ たと 主 張 し、 戦 死 者 を英 霊 と して ま つる 「 国体 護 持」、「戦 争 賛美 」 をす る と
ころです。
「遊就館」は日本の戦争の歴史を展示する施設であるという体裁をとりながら、彼らの
言う 「 大 東 亜 戦 争 」 の 正 当 性を 主 張 し て い ま す 。 ま た 、戦 後 行 わ れた 東 京 裁 判は 不 当 な
ものであり、間違っているとも主張しています。パール判事の石碑があり、碑文には「意
見書 の 結 語 」 が 刻 ま れ て い ます 。 彼 は 判 事 の 中 で た っ た一 人 被 告 の無 罪 を 主 張し た か ら
です。
靖国神社は二つの顔を持ちながら常に揺れ動いています。政治の思惑の中で反動的な動
きが 強 ま る 中 で 、 戦 争 推 進 神社 と し て の 側 面 が 強 く 押 し出 さ れ て いま す 。 一 方で 経 営 的
には苦しいようで、神社の裏には有料駐車場があります。
以上これは案内してくれた新宿平和委員会の方からの受け売りです。靖国神社の本質を
知るには、よくよく勉強しないと分からないということです。
靖国神社自身が抱える自己矛盾を感じた実態調査でした。靖国神社が他の神社と同じよ
うに 心 の 平 安 を 願 え る 場 に なる よ う 願 う と 同 時 に 、 今 の実 態 を 広 く知 ら せ る 必要 性 を 痛
感しています。
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