本節では, レ…ザー光の吸収と非線形相互作用を中心 に研究の現状を

プラズマ・核融合学会誌 第75巻増刊「高エネルギー密度プラズマ研究とその応用」
1.2 電磁波との相互作用
本節では,レーザー光の吸収と非線形相互作用を中心
レーザー光の規格化されたベクトルポテンシャルθ=
に研究の現状を概説する.これまで,プラズマを発生す
(6!1)/(〃Zoo2)を用いると,電子の質量は〃Ze=〃Zoγ=〃Zo(1
る従来のレーザー[パルス幅τLが現象の特性時間より
+♂/2)1/2と表される.すなわち,相対論的運動により
も長く(τL≧10−100ps),強度∫Lが中程度(1016W・μm2
実効的な質量は大きくなり,プラズマ振動数が減少する.
≧1Lλ2≧IOl2W・μm2/cm2,λはレーザー波長)]の領域
この相対論的な効果は,後述するレーザー光の相対論的
におけるレーザー光の吸収や,伝播と非線形相互作用の
自己集束[3]や臨界密度以上の高密度領域へのレーザー
研究が中心に行われた[1].レーザーとプラズマの非線
光の侵入[4]を引き起こす原因となる.
形相互作用(パラメトリック不安定性等)は,電磁波の
まず,レーザー光の一般的な吸収過程である逆制動放
モードとプラズマの固有モード間の結合(例えば,誘導
射について述べる.この過程は,レーザー電場により振
ラマン散乱の場合は電磁波と電子プラズマ波,誘導ブリ
動している電子の周期的な運動が,イオンとの衝突によ
ュアン散乱の場合は,電磁波とイオン音波)により起き
り散乱され,電子の熱運動へ変換されるものである.後
る.モード問の分散関係より,その不安定性の成長が決
述するようにプラズマ中には様々な異常吸収があり,こ
定される[1].本節では,レーザーとプラズマの相互作
れと対比して逆制動放射による吸収過程を古典吸収と表
用を,プラズマ密度neがレーザー光の臨界密度(電磁
現する[1].レーザー強度が条件⑳oンth(∂oニoo/箔∂th
波がこれより高密度領域には伝播できない密度)π。近
は,それぞれ電子の振動速度と熱速度)以上の場合,電
傍(π,≧π。)と低密度(%,《%,)の場合に大別して,相対
子は熱運動よりもレーザー光による振動運動に支配さ
論的なレーザー強度領域(1Lλ2≧1018W・μm2/cm2)にお
れ,実効的な衝突周波数が減少するため,古典吸収の吸
ける吸収と非線形相互作用について述べる[2].その内
収率は減少する[5].また,低速度の電子ほどイオンと
容は,(1)臨界密度近傍における高強度レーザー光の吸収,
よく衝突するため,系の特性時間が電子のエネルギー緩
(2)低密度領域におけるレーザー光の伝搬と非線形相互作
和時間より短い場合,電子のエネルギー分布がマクスウ
用に関係する現象,特に相対論的な領域における自己集
ェル分布から高エネルギー成分が増大した形となり,
束と前方ラマン散乱,(3)高強度超短パルスレーザーとプ
Langdon効果と呼ばれる吸収率の減少が起こる[6].ま
ラズマの相互作用の解析手法とその他の非線形現象に大
た,臨界密度付近における密度のスケール長が比較的短
別される.
い場合に起こる重要な過程に,異常吸収の一つである共
1.2.1 臨界密度近傍における高強度レーザーの吸収
鳴吸収がある[1].レーザー強度の増加により臨界密度
レーザー光の吸収機構について,レーザー光の強度が
付近に密度勾配の急峻化が起こり,古典吸収の寄与を減
弱い場合から強い場合へ順を追って検討してみる.レー
少させる.
ザー強度の増加にともない,臨界密度近傍の領域におけ
臨界密度付近に急峻な密度勾配を持ったプラズマ中に
るエネルギー吸収機構の中心は,古典吸収から電子によ
おけるレーザー光の吸収および粒子の加速過程には,共
る異常吸収,そしてエネルギー緩和を経ないイオンヘの
鳴吸収もしくは疑似共鳴吸収(not−so−resonantreso.
直接エネルギー変換へと移行する.
nance absorption)[7],1×B加熱[8]等がある.疑似
電磁波の媒質中における伝播は,誘電的性質すなわち
共鳴吸収は,共鳴吸収と同様にレーザー電場耽が密度
分散関係によって決まる.レーザ周波数と波数を(ωα
勾配方向▽%の成分を持つ(瓦・▽π≠0)場合に起こる
島),プラズマ周波数ωp2ニ4π〆πe/〃z,(電子密度n,,
が,共鳴吸収とは異なり電子プラズマ波との共鳴(ωpニ
電子質量〃Z。)とし,衝突の効果を無視すると,外部磁場
ωo)が必要ではない.この疑似共鳴吸収のメカニズム
がないプラズマ中における電磁波の分散関係は,ω02ニωp2
は次のようなものである.プラズマ中の電子が,プラズ
+々0202,すなわち,屈折率%ニ〉簾)2
マと真空(あるいは低密度)の境界で急峻に変化するレー
となる.プラズマ周波数がレーザー周波数より高くなる
ザー電場により,真空領域に引き出され高い速度で振動
と,屈折率が虚数となり,レーザー光は侵入できなくな
する.この電子がプラズマ中に再突入する際に位相情報
る.ただし,高強度レーザー中の電子は相対論的な速度
を失い,振動速度程度の高速電子を発生する.この疑似
で運動することもある.この場合,電子の静止質量〃Zo,
共鳴吸収は,電子の振幅70刊0/ω0が密度のスケール長
4
第1章高エネルギー密度プラズマのモデル
一1/2(ωpo/ωo)2(π(プ,z)/%oγ(7,z)),と近似できる(καωpo
Ldより大きい場合(70>Ld)に重要な吸収過程となる.
先に述べた吸収過程は,すべて電子に関するものであ
は,それぞれ軸中心の電子密度とプラズマ周波数).し
る.一般に,イオンは大きな質量を持つためレーザー光
たがって弱相対論(weakly relativistic)近似,dろ之)2《1
に対して直接には応答できず,電子からの熱緩和により
を仮定すると屈折率は,
加熱される.ところが,レーザー光の強度がさらに増加
麟1一驚)211厚+幣)]・
すると,電子からの熱緩和を経ないイオンヘのエネル
ギー変換が生じる[9,10].レーザー強度がより強く
(瓦λ2≧1019W・岬2/cm2),光圧子がプラズマの圧力を越
となり,軸の中心にレーザー光強度がピークを持つ
えると,光子圧と釣り合った静電場によりイオンがレー
(蝕2/∂7<0)あるいは電子密度のくぼみがあるとき,
ザーの進行方向に加速される.このとき,イオンが加速
伽/δグ〈0の条件を満足する可能性がある.詳細な議論
される速度∂fは,光子圧とプラズマの運動量の流れの
は参考文献[3]に譲るが,レーザー出力が臨界出力
釣り合い(左/o駁ni孤∂f)∂f)により次のように決まる.
(一P。些17(ωo/ωpo)2[GWl))を越える場合に,光導波
(opticalguiding)が起こり,レーザー光は回折により拡
∂f/6−4〉颪
がることなく伝搬する.これを相対論的自己収束(re−
この速度でレーザーとプラズマの境界が移動すると,反
lativistic selffocusing)と呼ぶ[3].このとき,この効果
射光の周波数が赤方偏移をおこし,入射光との周波数差・
に加えて,レーザー強度の強い領域からレーザー光の動
のエネルギーが吸収される[11].また,イオン加速があ
重力(ponderomotive force)により電子が排斥される効
る条件[9]を満足するとき,プラズマ中に無衝突衝撃波
果(伽e/∂7<0)により,軸中心に密度のくぼみ(cavity)
が発生する.
ができる.ただし,相対論的自己集束は,レーザーのパ
その他に,超短パルス高強度レーザーを物質(特に,
ルス幅をτLとすると,τL>ωp一1の場合に有効に起こる
低密度ガス)に照射した場合には,光電場電離(Optical
[15].相対論的効果や動重力による自己収束によるプラ
field ionization)よる吸収が起こる[12].光電離による
ズマチャンネルが実験的に観測されている[16].
プラズマ生成,時間スケールはレーザーパルス幅に比べ
相対論的自己収束の条件(P>P、,τL>ωp−1)を満足
十分短いため,パルス内部の誘電率を大きく変化させる.
するレーザーパルスが,レーリー長を越える距離を伝搬
ここでは,詳しく述べないが,このため,イオン化にと
するとき,パルスは伝搬(縦)方向に多数のビーム列に
もなう集東・回折や自己変調が超短パルス高強度レー
分かれる.このとき,プラズマ波が励起されることによ
ザーの伝搬に強い影響を与える[13].
り,分かれたビームの間隔はプラズマ波の波長程度(λp
;o/ωp)となり,レーザーパルス包絡線の自己変調(en−
}.2.2低密度領域における光伝播と非線形相互作用
この節では相対論的領域(α≧王)におけるレーザーとプ
velopeselfmodulation)[17],あるいは前方ラマン散乱
ラズマの非線形相互作用について述べる.特に,低密度
(散乱角が有限)[18]と呼ばれる現象が起きる.現象を
プラズマ(ωp/ωO《1)中における超短パルス高強度レー
簡単に理解するため,レーザーと一緒に伝播する座標系
ザーの伝播に強く影響を与える相対論的自己収束(re−
(ζτ)で横方向にガウス形を仮定したパルスσ∼exp[一玩
lativistic selffocusing)[3]と前方ラマン散乱[14]につ
一Xc(ζτ)12/7,2(ζτ)1を考える.ここで,7,(ζτ),劣c(ζτ)
いて詳述する.
はビームのスポットサイズおよびその中心位置とする.
まずレーザー光の自己収束について説明する.以後,
スポットサイズプ、(ζτ)の小さい場所ほどレーザー強度
レーザー光の伝播方向を縦方向(Z),伝播軸に垂直な方
が強く,プラズマをより排除することにより,レーザー
向を横方向(7)と呼ぶ.一般に有限な口径のレーザー光
光が強く集光するカを受ける.また,スポットサイズ
は,レーリー長(Rayleighlength)ZRを越える距離の伝
7、(ζτ)が伝播方向に対して変調を受けること(ソーセー
播をするとき,真空中では横方向へ回折する.一方,屈
ジ不安定性)や,中心位置κ。(ζτ)が変調を受ける(レー
折率が横方向へ負の勾配を持つ場合(勧/∂7<0),軸中
ザーホース不安定性)[19]が起きることがある.
心の位相速度が外側の位相速度より遅いため,光は軸中
プラズマにおける誘導ラマン散乱は,入射レーザー光
心へ収束しようとして回折とつりあう可能性がある.プ
(ωo,島)が電子プラズマ波(ωP,馬)と散乱光(ω9亀)に崩壊
ラズマ周波数がレーザー周波数に比べ小さい場合
する過程である.誘導ラマン散乱は後方への散乱の成長
((ωp/ω0)2=(π♂π。)《1),プラズマ中の屈折率はπ=1
率が最大であり,前方に向かって成長率は減少する.し
5
プラズマ・核融合学会誌 第75巻増刊「高エネルギー密度プラズマ研究とその応用」
かし,高強度超短パルスレーザーの場合,入射光
は,現在もレーザープラズマ相互作用の理解やモデル化
(ω0,島)と同方向へ伝搬するストークス光(ω0一ωp,島一
が重要な課題となっている.
島),反ストークス光(ω0+ωp,島+稀),プラズマ波(ωp,
(加藤進〉
稀)の4つの波が相互作用する前方散乱が,レーザーパ
ルスの伝搬に強く影響を与える.集光効果による前方ラ
参考文献
マン散乱は,レーザーパルスが横方向に変調を受けた結
[1]山中千代衛監著:レーザー工学(コロナ社,1981)
果,縦波である大振幅のプラズマ波(レーザーパルスの
第4章;W.L.Kruer,Th6Phッ就s6ゾLαs67−PZα3〃zα
後ろにできるため,自己変調航跡場とも呼ばれる)を生
傭6名副魏3(Addison−Wesley,New York,1988).
成する.一方,∫≦4(ωp/ωo)(ZR/o)の時間に対しては,
[2]IEEEJ.QuantElectron。33,1877(1997);児玉了祐
:プラズマ・核融合学会誌肱336(1998).
レーザーパルスが縦方向に変調を受ける,散乱角がゼロ
[3]C.E.Max,J.Arons and AB.Langdon,Phys.Rev.
の前方ラマン散乱(directforward Raman scattering)が
Lett33,209(1974);G.Schmit and W.Horton,Com−
重要となる[20,21].
ments Plasma Phys.Controlle(l Fusion9,85(1985);
1.2.3 解析手法
G.Z.Sun 6’αム,Phys.Fluids 30,526 (1987);P.
Sprangle,C,M.Tang and E.Esarey,IEEE Trans.
最後に,このような現象を評価・解析する手法につい
Plasma Sci.PS−15,145(1987).
て述べる.流体モデルを用いた様々な近似は,誘導ラマ
[4]E.Lefebvre an(l G.Bonnaud,Phys.Rev.Lett7生
ン散乱や自己変調等の不安定性の評価やプラズマ波の励
2002(1995);」.Fuchs6∫α乙, Phys.Rev.Lett.80,
起等については有効な解析手段である[15−20].しかし,
2326(1998).
レーザープラズマの相互作用の多くは,強い非線形性に
[5]L.Schlessinger and J.Wrig比Phys。Rev.A2“1934
より複雑な現象を引き起こすため,理論モデルやスケー
(1979);S.Kato,R,Kawakami and K.Mima,Phys.
ル則のみでは,実験結果を理解することができない.し
Rev.A43,5560(1991).
[6]A,B.Langdon,Phys.Rev.Lett44,575(1980).
たがって,電磁流体モデルと電磁粒子モデルに基づく計
[7]F.Brunel,Phy& Rev.Lett.5歌 52 (1987),Phys.
算機シミュレーションが,これらの相互作用を調べる強
Fluid.s31,2714(1988);P.Gibbon and A.Bell,Phys.
力な手段になっている.特に,相対論的なレーザー強度
Rev.Lett68,1535(1992);S.Kato窃αム,Phy$Fliu〔i
領域におけるwave breaking等の強い非線形や運動論
B5,564(1993)。
[8]W.L.Kruer and K.Estabrook,Phys.Fluids28,430
的効果が重要なレーザープラズマ相互作用の研究には,
(1985).
電磁粒子モデルに基づくPIC(Particle−ln−Cell〉法が有効
[9]J.Denavi七 Phys.Rev.Letむ 69,3052 (1992);S.
に利用されている[22].これと等価な運動論的シミュ
Miyamotoα認,プラズマ・核融合学会誌73,343
レーションとして,ブラゾフ方程式に基づくシミュレー
(1997).
ション手法も最近利用されている[23].PIC法は,マク
[10]S.Wilks6!α乙,Phy&Rev。多ett69,1383(1992);
スウェル方程式とローレンツカによる粒子の運動方程式
Phys.Fluids B5,2603(1993).
を多数の疑似粒子に対して自己無撞着に解く第一原理に
[11] R.Kodamaε!σム,Phys.Rev.Lett77,4906(1996).
基づく手法である[24].近年の計算機の進歩により,実
[12]LV.Keldysb Sov.Phys.JETP2α1307(王965エ
[王3]E.Esarey,G。Joyce and P.Sprangle,Phys.Rev.
験を再現できる多次元シミュレーションが可能になり,
A44,3908(1991);WB.Mori and T.Katsouleas,
実験と詳細な比較が行われている[25].ここでは,詳し
Phys.Rev.Lett.69,3495 (1992);P.Sprangle,E.
く取り上げることができなかったが,PIC法により発見
Esarey,and J.Krall,P薮ys.Rev。,E54,4211(1996);S。
された興味深い現象として,大振幅プラズマ波の崩壊と
Kato,Y.Kishimoto,」.Koga,Phys.Plasmas5,292
高速電子発生[26],高速電子による強磁場発生[27],プ
(1998);S。P.Le Blanc6!ol,Phy&Rev.Lett.77,5381
ラズマ中における低周波電磁波のソリトン[28]発生等
(1996);C.D.Decker,D。C.Eder an(1RA.London,
がある.
Phys。Plasmas3,414(1996).
[14]CJ.McKinstrie,R.Bingham,Phys.Fluids B4,2626
1.2.4 最後に
(1992);A.S.Sakharov and V』Σ.Kirsanov,Phys。Rev.
レーザーとプラズマとの相互作用は,高エネルギー密
E49,3274(1994);C.D.Decker6!α乙,Pkys.Rev.E50,
度プラズマ発生に関わる重要な物理現象であり,その研
究の歴史は古く,多くのモデルや理論が構築されている.
3338(1994);S.Guerin6惚乙,Phy&Plasmas2,2807
(1995);C.D.Deckerασム,Phys』Plasmas3,1360
しかし,超高強度レーザーによるプラズマ発生に関して
(1996〉,
6
第1章 高エネルギー密度プラズマのモデル
[15]P.Sprangle,E Esarey and A.Ting Phys.Rev.
[23]H.Ruhlθ舌α1.,Phys.Rev.Lett822095(1999〉;H.
Lett.64,2011(1990);Phys.Rev.41,4463(1990).
Ruhl:プラズマ・核融合学会誌74,322(1998).
[16]P.Monot6勘ム,Phys.Rev.Lett74,2953(1995);K.
[24]C。K.Birdsall and A.B.Langdon,Plθs〃zαPhッsJo3∂彪
Krushelnickε!o乙,Phys.Rev.Lett.78,4047(1997);
Co〃z餌妙S吻銘1囲oπ (McGraw一田1,New York,
S,Y.Chenα{z乙,Phys.Rev.Letし80,2610(1998).
1976);」.M。Dawson,Rev.Mod.Phys.55,403(1983).
[17]P,Sprangleε渉α1.,Phys.Rev.Lett69,2200(1992);
[25]C.A.Coverdaleε!o乙,Phys.Re肱Lett。74,4659
J.Krall6如乙,Phys.Rev.48,2157(1993).
(1995);」.Fuchs8!σ乙,Phys.Rev。Lett80,1658
[18]T.M.Antonsen,Jr.and P.Mora,Phys.Rev。Lett69,
(1998);M.Borghesiα召1.,Phys.Rev.Lett80,5137
2304(1992);Phys.Flui(ls B5,1440(1993).
(1998).
[19]G.Shvets and J.S.Wurtele,Phys.Rev.Lett73,3540
[26]K.一C.Tzeng,W』B.Mori and T.Katsouleas,Phys.
(1994);P.Sprangle,J.Krall an(i E Esarey,Phys.
Plasmas6,2105(1999)。
Rev.Lett.73,3544(1994).
[27]A.Pukhov and J.Meyer−ter−Vehn,Phys.Rev.Lett
[20]W』B.Mori召地乙,Phys.Rev.Lett72,1482(1994).
76,3975(1996),
[21] K.Nakajima6!αム,Phys.Rev.Letむ74,4428(1995);
[28]V.K.Kozlov,A.G Litavk an(l EV.Suvorov,Sov.
A.Modena認σ乙,Nature133,606(1995);D.Um−
Phys JETP49,75(1979);P.K.Kaw,A.Sen,an(1T.
sta(lterαα1,Science273,472(1996).
Katsouleas,Phys.Rev.Lett 68,3172 (1992);N』L.
[22]A.Pukhov and J.Meyer−ter−Vehn,Phy$Plasmas5,
Tsintsa(lze6れzム,Phys.Rev。E58,4890(1998);S.V.
1880(1998);KげC.Tzeng,W.B。Mori and T.Kat−
Bulanov6!θ乙,Phys.Rev.Lett82,3440(1999);S.V.
souleas,Phys.Rev.Lett79,5258(1997);Y.Sentoku
Bulanovε渉磁,プラズマ・核融合学会誌75,506
and H.Ruhl;Phys.Plasmas5,4366(1998).
(1999).
1.3 粒子ビームとの相互作用
本節では粒子ビームの中でも特にイオンビームと物質
も含めて考えることが必要となる[4].
との相互作用について述べる.イオンビームの標的中で
イオンビームのターゲット中でのエネルギー損失は,
のエネルギー損失の過程はよく研究されており,常温物
主に束縛電子(bound electron)や自由電子とのクーロン
質中でのエネルギー損失であれば実験データも多数ある
衝突によって生じる.また,ビームが低速(keV程度)
[1,2].たとえば,アルミニウムのなかでの陽子ビーム
になってくると,イオンとのクーロン衝突や原子核との
の阻止能(stopping power)の実験データ[1]によれば陽
散乱過程も重要となってくる.イオンビームの阻止能
子ビームの運動エネルギーEbが100keV以上では,Eb
4Eb/砒はこれらの過程の和として,次のようにまとめ
が大きいほど,常温のターゲット中の阻止能は小さくな
られる.
る.そのため,Ebが数MeVの陽子ビームがターゲッ
4Eb
トに入射してくると,表面付近ではあまりエネルギーを
雌Sb。und+Sfree+Si。n+Snucleus
砒
失わず,減速して止まる直前に大量のエネルギーを失う.
(1)
こうしてブラッグピーク(bragg peak)を形成する.ビー
次にそれぞれの過程の基礎式を記述する.
ムによってエネルギーをあまり付与されない外側の領域
1.3.1 束縛電子による寄与(Sb。und)
がタンパーとして働くため,慣性核融合用のエネルギー
常温のターゲットはほとんど電離していないので,イ
ドライバー等には都合がよい.しかし,ビームがターゲ
オンビームは主に束縛電子とのクーロン衝突によってエ
ットの各部に与えるエネルギーの分布は,ターゲットの
ネルギーを失う.イオンビームの東縛電子によるエネル
温度や,重イオンの場合ではビームイオンの電離度,ター
ギーの損失は,ビームのエネルギー領域に依存して次の
ゲットヘの入射角によって大きく変化し,必ずしも
ように表される.
Bragg peakが現れるとは限らない.したがって,イオ
ンビームのターゲット内でのエネルギーの付与を正確に
①高エネルギー領域(∂b》∂B各2/3〉
評価することが必要で,高温ターゲット中の自由電子
で∂bはビーム粒子の速度,∂BはBohr速度,Ztはター
(free electron)の寄与[3]や,ビームの入射角の効果など
ゲット物質の原子番号である.
この領域ではBetheの式がよい近似を与える.ここ
7