ナバックレター 養鶏版Vol.25 家禽のサルモネラ菌対策の戦略的アプローチ(2) Christian Lückstädt, technical director, Addcon, Asia 有用効果 前号の試験結果より、二ギ酸カリウムにはブロイラーの病原性細菌に対する有用効果があることがはっきりと示 されています。二ギ酸カリウムを給与したブロイラーの屠体からは、サルモネラ及びカンピロバクター陽性検体 は確認されませんでした。 さらに、二ギ酸カリウム添加鶏群のそ嚢でもサルモネラ及びカンピロバクター陽性検体、そしてサルモネラ陽性 検体は確認されていません。二ギ酸カリウム添加鶏群では腸内カンピロバクター数が顕著に減少しました。エン テロバクター数が大幅に減少し、乳酸菌とビフィズス菌数が顕著に増加したことは、腸内細菌叢に対して二ギ酸 カリウムが効果的に作用したことを示しています。 ブロイラーに対する病原性細菌の影響の低減、そして腸内細菌叢の改善により、添加鶏群の腸内細菌叢はバランス のとれた状態(eubiosis)になることから、二ギ酸カリウムの添加によって家禽の能力も改善するであろうと考え られます。この仮説が引き金となって、さらなるブロイラー試験が実施されました。 フランスのブロイラーコマーシャル農場で二ギ酸カリウム(0.5%)の試験が実施されました。約34,500羽の初 生雛を無作為に選抜し、2試験群に分けました。試験42日の終了時に能力データを記録しました。 表4で、二ギ酸カリウム群では総合能力が改善されたことが明らかになっています。二ギ酸カリウム0.5%添加群 では増体量が2.8%増加しましたが、飼料要求率(FCR)は2.1%改善しました。 さらに、へい死率は23%以上低下 しました。 表4. フランスのブロイラーコマーシャル農場の試験成績 European Broiler Index(欧州ブロ イラー生産指数) (EBI)に基づく経済 解析により、本製品の使用は生産者に とって明らかに利益があることが示さ れました。EBIはブロイラーの生産効 率を表すのに広く用いられています。 対照群 二ギ酸カリウム0.5%群 17,250 17,250 2,130 2,190 FCR 1.95 1.91 へい死率(%) 1.94 1.49 供試ブロイラー羽数 出荷体重(g) 表5に計算式を示しました。 二ギ酸カリウム添加によりEBIは 5.5%近く改善し(250.4から264.1)、 ブロイラーの生産性を最大限に引き 上げました。 表5. 欧州ブロイラー生産指数(EBI)の計算式 1日増体量(g)× 生存率(%) EBI = × FCR 10 家禽における酸性化剤の作用機序は 主として抗菌作用によるものであり、胃内pHの低下が重要な作用である豚とは、この点で異なっています。前述 の試験では、酸性化剤添加飼料を給与したブロイラーでは出荷時体重が増加しました。酸性化剤添加群の平均1日 増体量は増加し、FCRは低下したことから、EBIは改善しました。 さらに、別の試験では、腸内細菌叢の顕著な改善―これはエンテロバクター数の減少と乳酸菌及びビフィズス菌数 の増加に現れています―によって明らかなように、鶏の健康状態は明らかに改善しました。 ブロイラー飼料に酸性化剤を用いることは、病原性細菌に起因する生産性の損失に対して生産者が取りうる手段の 中でも、貴重な戦略です。 二ギ酸カリウムなどの有機酸塩使用と粗挽き飼料の併用のような併用戦略は、サルモネラ菌対策に対してさらに 有効に作用する可能性があります。 1 ナバックレター 養鶏版Vol.25 最近の研究より、二ギ酸カリウムと粗挽き飼料の併用が豚においてサルモネラ菌の増殖を抑制する効果があること が証明されています。併用によって肥育期間中のサルモネラ菌の排菌を顕著に抑制することができました。 さらに、肥育期間中に二ギ酸カリウムを使用すると、飼料の組成は同じでも、回盲部リンパ節(Lnn. lleocaecales) のサルモネラ菌検出率は顕著に低下しました。 健康な腸 二ギ酸カリウムの飼料添加により、食肉処理時の盲腸pH値は統計学的に低下し、盲腸内のプロピオン酸と酪酸の 濃度は上昇しました。 別の試験では、二ギ酸カリウムの飼料添加によって短鎖脂肪酸であるプロピオン酸と酪酸の産生が促進され、サル モネラ菌の侵入遺伝子の発現を阻害する可能性が示唆されています。 酪酸は、調節遺伝子の発現など、腸上皮細胞の機能を活性化することが知られています。消化管遠位部、特に結腸 の酪酸濃度の上昇も、腸上皮細胞の増殖と成長を増進し、絨毛を伸長させ、陰窩の切れ込みをより深くします。 これらは、健康な腸を示す指標です。 したがって、二ギ酸カリウムは豚の消化管終末部でも酪酸の産生を促進し、腸内細菌叢の最適化に役立っています。 家禽の消化器生理学及び微生物学の研究では、二ギ酸カリウムの飼料添加には家禽に対しても同様の有用効果が あることが示唆されています。 前述の発表済みの試験結果は、病原性細菌の増殖を抑制する健康な腸及び食の安全性が飼料配合によってどのよう に達成されるかをはっきりと示しています。 また二ギ酸カリウムのようなバランスの取れた酸性化剤は、AGP添加を用いることなくブロイラーの能力を向上 させ、増体及び飼料効率を維持または改善する持続可能な選択肢であることがわかります。 これは「International Hatchery Practice Vol.24,No.5,P15・17」を抄訳したものです。 2
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