第14回石炭利用技術会議 【 特 別 講 演 Ⅱ】 拡大する石炭利用とクリーンコールテクノロジーの最前線 野村 大阪大学 正勝 名誉教授 はじめに 去 る 9 月 に 「 2 1 世 紀 を 担 う ク リ ー ン コ ー ル テ ク ノ ロ ジ ー 」と い う 本 を 大 阪 大 学 出 版 会 か ら 刊 行 し 、 ピッ ツ バ ー グ 国 際 石 炭 会 議 の 受 付 で も 出 席 者 の 方 に 紹 介 さ せ て い た だ い た 。 こ の 本 は N E D O 関 西 支 部 か ら 援 助 を 頂 き 、 日 本 エ ネル ギー 学 会 関 西 支 部 の メ ン バ ー の 方 々 な ら び に わが 国 の 石 炭 関 連 の 技 術 者 の 方 々 に 執 筆 い た だい た も の で あ っ た 。 5 年 が か り の 成 果 で あ る 。 今 回 石 炭 利 用 総 合 セ ン タ ー か らこの本に関連してクリーンコールテクノロジーを紹介するように要請を受け、 こ の 機 会 に エ ネル ギー 全 般 に も 目 を 向 け た お 話 を さ せ て い た だこ う と 、 浅 学 な が ら 表 題 の よ う な タ イ ト ル を つ け さ せ て い た だい た 次 第 で あ る 。 1 .原 油 高 騰 私は今、全国石油協会の関西試験センターの顧問を承っており、時折センター を 訪 ねお 話 を さ せ て い た だい て い る 。 今 年 は な んと 言 っ て も 原 油 の 高 騰 が 石 油 精 製 に 携 わる 人 々 の ひと き わ高 い 関 心 を 引 い た 。 8 月 2 0 日 に は 1 バ ー レ ル 5 0 ド ル に 達 し よ う か と い う 勢 い で あ り 、 私 の 講 演 は 9 月 初 旬 で あ っ た 。 だか ら タ イ ト ルは「原油の高騰をどう考えるか」 という内容とした。私は化石資源予 測 の エキ ス パ ー ト で は な い が 、 こ の タイトルに対するしっかりした根拠 は持っていたのである。結論は現在 の高騰は心配する必要はないという こ と で あ る 。 2 0 0 1 年 の Hydrocarbon Resources の Gordon Research Conference( カ リ フ ォ ル ニア州のベンチュラで開催)でUS G S( Geology Survey)の マ ッ ケ イ ブ博士が述べた原油の埋蔵量に関し て の き わめ て 興 味 深 い 話 が 根 拠 で あ る (1) 。 彼 は 私 見 で あ る と 断 り な が ら 石油は想像以上に埋蔵されており、 図1 原油の埋蔵量の予測 第14回石炭利用技術会議 21世紀中に多分石油が枯渇することなく天然ガス使用に化石資源利用は移行す る で あ ろ う と い う 大 胆 な 予 想 で あ っ た( 図 1 )。私 は こ の 考 え に 依 拠 し な が ら 中 国 の エ ネル ギ ー 使 用 の 急 増 、 ロ シ ア の 石 油 会 社 ユー コ ス の 破 綻 危 機 、 イ ラ ク の 政 情 不 安 を 要 因 に あ げ 、 い わ ゆる 資 源 埋 蔵 量 に 不 安 が あ る と い う わけ で は な い と 断 じ たのである。その後1バーレル、55ドルを突破したが最近価格が安定化に向か っ て い る 。 た だこ う し た 楽 観 論 は 私 の 1 0 月 の ト ル コ 訪 問 後 、 疑 問 に 思 い 始 め て いる。これについては後ほど述べたい。 2 .石 油 の 埋 蔵 量 ( 石 油 の 地 政 学 ) 今 年 の 夏 の 日 本 エネル ギー 学 会 で の 特 別 講 演 で 茅 陽 一 先 生 が わが 国 の 長 期 エ ネ ル ギー 需 給 計 画 の 策 定 に つ い て 講 演 さ れ た (2) 。 こ の と き の 質 問 に 「 原 油 を 1 バ ー レ ル 2 5 ド ル に 設 定 し て い る が そ れ で い い の で し ょう か 」と い う 質 問 が 出 た 。 先生はアメリカでは原油の枯渇は最近、問題にはなっていないと聞いているとい われ た が 、 こ れ は U S G S の マ ッ ケ イ ブ 博 士 の 私 見 が 公 式 見 解 に な っ た こ と を 示 し て い る と 私 は そ の 場 で 感 じ た 。 私 は 直 ちに Gordon Research Conference を 思 い 出 し 了 解 し た が 、 多 く の 聴 衆 の 方 が ど う 感 じ ら れ た か は 分 か ら な い 。 エ ネル ギ ー問題は ひとつには化石資源の埋蔵量の問題であり、またその地政の問題でもあ り 、 石 油 に 代 わる 有 力 な エ ネル ギ ー が 見 当 た ら な い こ と で あ り 、 人 口 問 題 で も あ る。そしてその利用技術が現在達成している中身の問題でもあり、社会科学的観 点、技術開発の観点など極めて複雑に絡み合っているのである。中国は人口が1 3 億 人 と い われ イ ン ド は 9 億 人 と も い われ る 。 ア メ リ カ が 2 億 7 千 万 人 、 日 本 が 1億3千万人、英、仏、独、伊 四カ国の人口 2億6千万人、アメリカが ヨー ロ ッ パ の 2 倍 の エ ネル ギー を 使 用 し 、 ヨー ロ ッ パ 4 カ 国 ( イ ギリ ス 、 ド イ ツ 、 フ ラ ン ス 、 イ タ リ ア ) が 日 本 の 約 2 倍 の エ ネル ギー を 使 用 す る 現 状 を 見 る と 、 ア メ リ カ が 人 口 の 割 り に 突 出 し て エ ネ ル ギー を 浪 費 し て い る こ と が 分 か る 。 原 油 の 高 騰 で 問 題 に な る 価 格 は W T I ( West Texas Intermediate) の 価 格 で 、 こ れ は ガ ソリ ン 収 率 の 高 い 軽 質 原 油 で あ り 、中 東 原 油 は そ れ ほ ど 高 騰 し て い な い の で あ る 。 実 際 、 東 京 工 業 品 取 引 所 の 理 事 長 は 「 W T I の 高 騰 は ガ ソリ ン 需 給 の 逼 迫 、 ハ リ ケーンによる生産・精製施設への被害、投機資金の流入など米国固有の事情によ る も の 」と 分 析 し て い る 。 し か し 今 回 原 油 の 高 騰 で 価 格 が 6 0 ド ル 近 く に 達 し た とき、世界がまさに石油に依存した存在であることを改めて認識した方々が多い の で は な か ろ う か 。 私 た ちは ま さ に 尚 、 油 上 の 楼 閣 に 住 んで お り 、 石 油 は 今 な お エ ネル ギー の 太 宗 で あ り 、 石 油 な く し て 世 界 は 成 り 立 た な い こ と に 改 め て 気 づ い た と い え よ う 。ピッ ツ バ ー グ 大 学 の Morsi 教 授 は そ の こ と を 昨 年 大 阪 大 学 の 講 演 で強調した。その石油は大半が中東に存在する。その中東が今、イラク問題で政 情不安に陥っていることの危険性に改めて気づく。ハンチントンの文明の衝突は 1998年の著書であるが9・11テロを言い当てる結果となり、その後この文 第14回石炭利用技術会議 明 の 衝 突 が 立 て 続 け に 議 論 さ れ て い る (3) 。 著 者 は こ の 議 論 の 内 容 を 知 ら な い が 、 石油が大半イスラム教徒の国に存在することを改めて認識しなければならないで あ ろ う 。 9 月 3 0 日 の 日 経 で 「 石 油 め ぐり 世 界 分 裂 の 恐 れ 」と い う ジ ョ ン ・ グ レ イ 氏 の 論 文 が あ り 、 1 0 月 1 8 日 に は 同 紙 で ダ ニ エル ・ ヤー ギン 氏 が 「 原 油 、 予 想 外 の 高 騰 も 」と い う 論 文 を 書 い て い る 。 現 在 の と こ ろ そ う は な っ て い な い が 心 配の種は尽きない。 3 .京 都 議 定 書 の 発 効 化 石 エ ネル ギー は 石 油 、 石 炭 そ し て 水力 原子力 6.1% 6.2% 天 然 ガ ス が 主 で あ る が( 図 2 )、こ れ ら を燃焼すると同じ熱量で見ると石炭、 石油 37.3% 石油、天然ガスとその二酸化炭素の排 出はほぼ5対4対3になり、石炭がも っとも多くの二酸化炭素を排出する。 石炭 26.5% 総量 97億4110万トン (石油換算) 2008年から2012年の5年間で わが 国 は 二 酸 化 炭 素 排 出 量 を 1 9 9 0 年 レ ベ ル の −6 % ま で 削 減 し な け れ ば 天然ガス 23.9% ならない。ロシアが批准すればこの京 都議定書が発効することになり、すで 図2 世界 の一次 エネル ギー に 占 める にロシア政府が批准に踏み切った。い エ ネル ギー 源 別 の 割 合 (2003,BP 統 計 ) よいよ京都議定書が発効する(200 5 年 2 月 か ら )。し か し こ の 問 題 は わが 国 の 経 済 に 大 き な ダ メ ー ジ を 与 え る の で は な い か と 心 配 さ れ て い る 。 二 酸 化 炭 素 問 題 に は 新 エ ネル ギー 利 用 で 対 応 で き な い のかというのが政治家や一般の方々の意見であるが、残念ながらそれは不可能な の で あ る 。 確 か に 太 陽 エ ネル ギー 利 用 は わが 国 が 世 界 を リ ー ド し て い る が 、 た と え ば 発 電 量 で 見 て も 2 0 1 0 年 で 5 0 0 万 キ ロ ワッ ト が 精 一 杯 で 、 全 体 の 2 億 キ ロ ワッ ト の 5 %に し か 過 ぎな い 。 し か ら ば 風 力 発 電 は と い う と わが 国 で は 風 況 が 向 い て い な く て 、 経 済 的 に は 太 陽 光 発 電 よ り は る か に 経 済 性 が あ る と い われ て い る も の の 、 2 0 1 0 年 で 5 % ぐら い で は な か ろ う か 。 エ ネル ギー は も ちろ ん電 力 だけ で は な く 車 の 燃 料 は ガ ソリ ン や 軽 油 で あ り 、 灯 油 は 航 空 機 の 燃 料 で あ り 、 石 油 ヒ ー タ ー に 使 われ る 。 天 然 ガ ス も 家 庭 用 燃 料 や 工 場 で ボ イ ラ ー 燃 料 に 多 く 使 わ れ て い る 。 要 す る に わ れ われ 日 本 人 ( 人 類 ) は 猛 烈 な 量 の エ ネル ギ ー を 使 用 し て いるのである。まずそれを認識しなければならない。数年前、鹿児島の串木野に 原 油 の 地 下 備 蓄 ト ン ネ ル が で き た と い う の で 見 学 に 行 っ た が 、そ の と き 175 万 kl の原油が三日で消費されると聞いて驚愕したのが思い起こされる。分かりやすく 言 う と 幅 18 メ ー ト ル 、高 さ 22 メ ー ト ル 長 さ 5 5 5 メ ー ト ル の 長 大 な ト ン ネ ル 1 0 本 に 満 々 と た た え ら れ た 石 油 が わず か 三 日 の う ちに 消 費 さ れ る の で あ る 。 第14回石炭利用技術会議 二酸化炭素の排出を削減するために石炭から石油、石油から天然ガスへとシフト し て い く の だが 、 こ の こ と は 天 然 ガ ス の 価 格 の 高 騰 を 引 き 起 こ す 。 実 際 中 国 は エ ネル ギー 源 を 石 炭 に 頼 っ て い た が 、 最 近 石 油 や 天 然 ガ ス へ の シ フ ト が 見 ら れ 、 こ れが世界の原油の高騰の原因となったのである。その動きが世界の予測をはるか に超えたのであった。中国の電力事情が良くないことは世界に知られているが、 い ま や 中 国 は 2 0 0 2 年 の 時 点 で 消 費 電 力 が わが 国 の 2 倍 と な り 、 2 0 0 6 年 に は4倍に膨張しようとしている。主力は石炭であるが原子力発電、風力発電、太 陽 光 発 電 も 開 発 予 定 で あ る 。 さ て わが 国 は 二 酸 化 炭 素 削 減 を 目 標 に 地 球 温 暖 化 対 策推進大綱を1998年に定めたが2002年に引き続き2004年に対策原案 が 出 揃 っ た( 表 1 )。そ の 結 果 削 減 目 標 の 実 現 を 裏 付 け る 対 策 は 打 ち 出 せ ず に い る の で あ る 。 排 出 権 の 大 規 模 購 入 の 意 見 が 浮 上 し て い る の が 現 状 だ。 表 1 分 野 別 の CO 2 排 出 目 標 ( 2010 年 度 の 1990 年 度 比 増 減 率 (%)、 ▲は 減 ) 産業部門 運輸部門 民生部門 環境省案 ▲12.4 17.2 16 経産省案 ▲9 15 12 国交省案 − 18-21 − 現行大綱 ▲7 17 ▲2 主な削減対策 ・ 環境税導入 ・ 大規模事業者に排出枠を設 け、削減を義務づけ ・ 省 エネ推 進 ・ 原子力発電所の稼働率向上 ・ 低公害車の普及促進 ・ 荷主と物流事業者の連携強化 ・ 自動車の燃費基準の見直し ・ 省 エネ推 進 ・ 原子力発電所の新設 4 .二 酸 化 炭 素 回 収 の 重 要 性 二酸化炭素の発生を削減するには①二酸化炭素の発生量の少ない化石資源を使 う、②資源の利用効率を上げて相対的に二酸化炭素の発生を低下させる、③二酸 化 炭 素 を 発 生 さ せ な い 新 し い エ ネ ル ギー を 使 う な ど が あ る 。 ① は 天 然 ガ ス の 価 格 高騰に見られるようにそうした燃料の使用が経済的に難しくなる。その結果石炭 の 使 用 が 増 え て い る 。 わが 国 で は 長 く 石 炭 使 用 は 1 億 ト ン 前 後 で あ っ た ( こ の 時 代に大阪大学の社会科学研究所が石炭需要の減少を予測したがそうはならなかっ た )。そ れ が こ こ 数 年 増 加 基 調 に あ る 。現 在 石 炭 の 使 用 量 は 1 億 6 千 万 ト ン に 達 し て い る 。 平 成 1 6 年 は 1 億 7 千 万 ト ン と 聞 い て い る 。 ほ と んど 火 力 発 電 の 使 用 で 増加しているのである。これは後ほど述べる石炭をクリーンに利用する技術開発 が 進 ん だか ら で あ る 。 二 酸 化 炭 素 の 発 生 を 削 減 す る に は よ り ク リ ー ン な 燃 料 を 利 用するようになるが、それは一方でその燃料の価格の高騰を意味する。そこで石 炭利用からでてくる二酸化炭素を積極的に回収する方法が考えられるようになっ た。アメリカは京都議定書に参加していないが、二酸化炭素回収技術開発に最も 熱心で、膨大な研究開発費を投入している。 第14回石炭利用技術会議 わが 国 の ア カ デ ミ ズム の 世 界 で は 二 酸 化 炭 素 回 収 に 初 め か ら 意 味 な し と 即 断 さ れ る 方 が 多 い よ う に 思 う が 、 こ れ は こ う し た 技 術 が 経 済 や 法 規 制 と 深 く か か わっ て い る こ と を 理 解 し て い な い か ら で は な い か と 思 われ る 。 確 か に 二 酸 化 炭 素 を 回 収 することは大変効率が悪い考えなのではあるが、石炭を使う限り二酸化炭素回収 に 熱 意 を 示 さ な け れ ば な ら な い と 著 者 は 思 う の で あ る 。 な ぜな ら い く ら 石 炭 の 利 用効率を上げても、その技術を用いて石油を使うほうがさらに効率は上がるので あ り 、 天 然 ガ ス を 使 え ば 一 層 効 率 は 上 が る 。 だか ら 彼 ら は 二 酸 化 炭 素 削 減 に は 興 味 を 示 さ な い だろ う が 、 石 炭 技 術 者 は 二 酸 化 炭 素 回 収 に 執 念 を 見 せ な け れ ば な ら ない。それは石炭技術者の宿命といえる。その意味で石炭利用総合センターが最 近、新聞発表した二酸化炭素回収技術開発のニュースに著者は大いに共感したの で あ る 。 二 酸 化 炭 素 回 収 に は さ ま ざま な 方 法 が あ る 。 酸 素 燃 焼 に よ り 二 酸 化 炭 素 の濃度を上げるCCUJの方法は画期的である。そして二酸化炭素の地中固定や 海 底 貯 留 が 考 え ら れ て い る 。 息 の 長 い 研 究 開 発 で あ る が 地 道 に 進 め て い た だき た い。石炭と二酸化炭素の親和性を利用して二酸化炭素を石炭層に注入し天然ガス を取り出す方法も検討されているがアメリカのラーセンらは石炭に二酸化炭素が 吸着されるのではなく溶解することを最近主張しており、本法に問題があること を指摘している。いずれにしても石炭の経済性を生かすには二酸化炭素回収と貯 留は避けて通れない課題ではないかと著者は考える。 5 .水 素 社 会 へ の 道 燃料電池の燃料として水素が今注目を浴びている。2005年には燃料電池車 が 登 場 予 定 で あ る 。 燃 料 電 池 の 技 術 開 発 は あ ちこ ちで 講 演 さ れ て い る 。 ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー と 燃 料 電 池 の 組 み 合 わせ は 新 技 術 の 潮 流 と し て 多 く の 注 目 を 引 い て い る 。 し か し そ の 水 素 は ど こ か ら 来 る の だろ う か 。 コ ー ク ス 炉 か ら で る C O G は 水 素 を 5 0 % 以 上 含 むの で 水 素 燃 料 源 と し て 期 待 さ れ て い る 。 し か し 粗 鋼 1 億 ト ン と 鉄 の生産が右肩上がりでない現状を考えれば、コークスの生産量は決まってくる。 最近は中国の鉄需要で粗鋼の生産は増加しているようであるが、いずれにしても COGは粗鋼生産と連関するのである。水の電気分解といっても電気は結局化石 燃料からくるなら、二酸化炭素削減にはつながらない。二酸化炭素増加につなが らない水素製造法は原子力発電による電力の水の電気分解か、風力発電、太陽光 発 電 の 電 気 に よ る 水 の 電 気 分 解 で あ る が 、先 に 述 べ た よ う に 後 二 者 は 量 的 に み て 、 とても今の需要を満たせない。現在水素は天然ガスから部分酸化で製造する。当 然二酸化炭素が発生する。二酸化炭素削減にはつながらない。しかし利用効率が 高くなるので相対的に二酸化炭素の削減法となる場合がある。水素への期待は高 ま る 一 方 で あ る が 、 し か し 燃 料 電 池 の 経 済 的 な 実 用 化 は ま だま だ遠 い と 専 門 家 は 言 う 。 数 ヶ 月 前 、 自 家 用 車 の 燃 料 電 池 車 は 1 億 円 と も 言 われ 、 バ ス は 2 0 億 円 と も 言 われ た 。 当 分 は 宣 伝 用 で あ る 。 第14回石炭利用技術会議 6 .N E D O 関 西 事 務 所 と 石 炭 調 査 N E D O 関 西 事 務 所 は 平 成 1 0 年 に 開 所 し 、 関 西 地 区 で の エ ネル ギ ー 論 議 が 低 調 な こ と を 危 惧 さ れ 、 日 本 エ ネル ギー 学 会 の 関 西 支 部 を 核 に 広 く 近 畿 、 中 国 ・ 四 国 に お け る 石 炭 利 用 技 術 に か か わ る 企 業 と 石 炭 関 連 の 基 礎 研 究 に 取 り 組 む大 学 と 国研を対象に関西地域における石炭利用技術の動向調査を平成11年に開始した。 産官学合同委員会を開催、産業技術調査会WGと学術調査WGを設置、平成11 年末にはクリーンコールテクノロジーセミナーを開催し、関西地域が如何に多く の石炭を利用しているか、また石炭研究でも関西地域の大学が如何に活発に活動 しているかを示したのである。平成12年3月には総 ページ数196の関西地域 における石炭利用技術の動向調査(近畿・中国・四国)という報告書を作成、関 係各位に配布された。石炭利用状況に関しては電力(関西電力、中国電力、四国 電 力 、北 陸 電 力 、電 源 開 発 の 橘 湾 1 号 、2 号 の 出 力 、石 炭 使 用 量 な ど が 調 べ ら れ 、 鉄鋼・コークスでは川崎製鉄、住友金属、神戸製鋼所、中山製鋼、関西熱化学な どが対象となった。そのほかセメント、一般産業などの需要が明らかにされた。 技術開発状況に関しては四国電力、北陸電力が石炭灰の有効利用研究を進めてお り、中国電力が加圧流動床複合発電設備の運転性改善の研究を行っていること、 大阪ガスが日本ガス協会と石炭水添ガス化技術開発を行っていること、関西電力 が石炭の燃焼特性把握研究を行っていること、住友金属が多目的石炭転換技術の 開 発 を 行 っ て い る こ と 、N K K が コ ー ク ス 炉 寿 命 延 長 技 術 開 発 を 行 っ て い る こ と 、 神戸製鋼所がFASTMET&FASTMELTの研究を行っていることなどが 明らかになった。このほか関西熱化学では石炭のコークス化性の評価方法に関す る研究を行っておりまた宇部興産は石炭の脱灰性と燃焼性の検討を単独で行って いることなどが明らかになった。ボイラー エンジニアリング関係では石川島播磨 重工や川崎重工それにバブコック日立がそれぞれ独自に微粉炭燃焼技術の開発や 環境性に優れたボイラーの開発に注力していることが判明した。総括としては石 炭および石炭灰の利用技術の開発が愁眉の急であることが推察された。その後平 成12年度も同様の調査を継続し、平成13年度にはクリーンコールガイドブッ クと題する報告書をまとめた。平成14年にはNEDO関西支部と九州支部がク リーンコールテクノロジー講座を広島で開催し、基調講演として私が「関西地域 に お け る 石 炭 利 用 技 術 の 動 向 調 査 ―調 査 か ら み え て き た 石 炭 利 用 技 術 の 姿 」と い う 副 題 で 講 演 し 、 九 州 大 学 の 持 田 教 授 が 特 別 講 演 と し て 「 わが 国 の 石 炭 利 用 技 術 開 発 の 目 標 、 2 1 世 紀 に お け る 課 題 案 」と 題 し て 講 演 さ れ た 。 こ の あ と に 神 戸 製 鋼 所 か ら 「 神 鋼 神 戸 発 電 所 の 概 要 」の 話 が あ り 宇 部 興 産 か ら 「 コ ー ル セ ン タ ー を 中 心 と す る 石 炭 利 用 の 現 状 」、日 本 鋼 管 か ら「 使 用 済 み プ ラ ス テ ィ ッ ク の 高 炉 原 料 化 シ ス テ ム 」と 興 味 深 い 最 前 線 の 建 設 や 技 術 の 紹 介 が な さ れ た 。 こ う し た N E D O関西支部を中心にした活動の中から今回の大阪大学出版会の「21世紀を担う 第14回石炭利用技術会議 ク リ ー コ ー ル テ ク ノ ロ ジ ー 」と い う 書 籍 の 出 版 に つ な が っ た の で あ る 。 私 は 偶 然 日 本 エ ネル ギー 学 会 の 関 西 支 部 の 支 部 長 を し て お り こ の 好 機 に 遭 遇 し た の で あ っ た。 7 .ク リ ー ン コ ー ル テ ク ノ ロ ジ ー アメリカは電力の約52−53%が石炭火力によっている。しかも旧式の熱効 率 の 低 い 小 規 模 発 電 所 が 多 い 。 一 昨 年 ア イ オ ワ州 立 大 学 を 訪 問 す る 機 会 が あ り 白 煙を吹き上げるスタックを見ながら学内に発電施設を持つ大学の存在に驚いたの で あ る が 、い か に も 旧 式 の 設 備 で あ っ た 。一 般 に こ う し た 発 電 機 は 熱 効 率 が 3 5 % 近辺であるが、たとえば四国電力や電源開発の橘湾発電所の発電機は41%の熱 効率である。これが石炭から天然ガスになると48% ぐらいになるらしい。熱効 率が上がることは二酸化炭素の発生が減ることである。北陸電力の発電所を訪ね た と き 現 場 の 人 た ちが 燃 料 電 池 な ど の 家 庭 用 発 電 機 が 設 置 さ れ れ ば こ う し た 大 型 発電機は将来消滅して行くと本当に心配しておられた。確かに天然ガスを改質し て 水 素 に し て か ら 燃 料 電 池 で 家 庭 用 電 力 を 発 生 さ せ そ の と き の 熱 を シ ャ ワー や 浴 室 の 湯 や 炊 事 の 湯 に 利 用 す れ ば 熱 効 率 は 7 0 % ぐら い に 上 昇 す る と 見 ら れ て い る が、そうした時代は案外早く来るかもしれない。それは移動する車に比べ水素の 供 給 が 容 易 で あ る か ら で あ る 。 し か し 燃 料 電 池 は 決 し て ま だ安 く は な い 。 こ の あ た り の 考 察 は な か な か 難 し い 。 わ れ われ が 出 版 し た ク リ ー ン コ ー ル テ ク ノ ロ ジ ー の 書 籍 (4) は 執 筆 者 が 4 0 名 、 編 集 委 員 は 1 0 名 で あ る 。 平 成 1 1 年 か ら 調 査 が 始 ま っ た こ と を 考 え る と 計 約 5 年 は か か っ た こ と に な る 。何 度 も 編 集 委 員 会 を 重 ね 、 関西特有の好きなことを自由に言う方々の鋭い質問や助言に助けられて石炭利用 技術という硬い本の割には読みやすい内容になったと思っている。この本を一冊 気 楽 に 読 ん で い た だけ れ ば 、 石 炭 だけ で は な く 、 な んと な く エ ネル ギー 全 般 の こ とも分かる仕組みになっている。表紙の金色の縦と横の線は南十字星を初め意図 したものが、最終的にこうした形に変形したが、意味するところはクリーンコー ル テ ク ノ ロ ジ ー が 世 界 の エ ネル ギ ー 問 題 を 解 く 希 望 の 技 術 の 一 つ で あ る こ と を 示 唆しているのである。本書に従うとクリーンコールテクノロジーは①排煙処理技 術 、② 地 球 温 暖 化 対 策 技 術 、③ ハ ン ド リ ン グ 性 向 上 、ク リ ー ン 燃 料 へ の 転 換 技 術 、 ④石炭灰対策技術に分類できる。本文ではもっとやさしく分かりやすく述べられ て い る 。 石 炭 の 燃 焼 廃 ガ ス か ら S O x 、 N O x 、 煤 塵 ( ば い じ ん) を 取 り 除 く 技 術 は ご 承 知 の よ う に 、排 煙 脱 硫 技 術 、排 煙 脱 硝 技 術 、ば い じ ん処 理 技 術 と 呼 ば れ 、 前者には石灰石スラリー法、乾式脱硫技術がある。流動床ボイラーでは石灰石を 直接炉内に入れる炉内脱硫技術がある。二番目の脱硝技術では燃焼改善技術とN Oxを取り除く技術に分けられる。前者ではバーナーの改善で後者ではアンモニ ア で N O x を 還 元 し て 窒 素 に す る 方 法 が 一 般 に 使 われ て い る 。 ば い じ ん除 去 に は 電気集塵機、バグフ ィルター、サイクロンなどが利用される。②の二酸化炭素削 第14回石炭利用技術会議 減は熱効率を上げて相対的にCO2の削減を図る方法である。超超臨界圧発電技 術、加圧流動床複合発電技術、石炭ガス化複合発電技術、石炭ガス化燃料電池発 電技術などの開発が進められている。製鉄分野では溶融還元製鉄、セメント分野 では流動床セメント焼成技術などである。③のハンドリング性向上ではコールカ ー ト リ ッ ジ シ ス テ ム の 採 用 や Coal Water Mixture な ど の 技 術 が あ る 。 転 換 技 術 としては石炭ガス化、石炭液化などがある。これは良く知られているので詳細は 省く。④の石炭灰はスタックから排出されるフライアッシュとクリンカアッシュ に分類できる。石炭の12−13%も含まれるのでその量は膨大である。埋めた て地が逼迫する中、有効利用が求められている。著者は10月にトルコのチェシ ュメというところで開催された国際鉱物加工会議に出席したが石炭灰の処理には 大 変 な 関 心 が 集 ま っ て い た 。 ア メ リ カ 、 イ ス ラ エル 、 ト ル コ の 方 々 の 関 心 が 高 か った。今回の本では最後の章に各企業の導入事例を記載していた だいた。企業で クリーコールテクノロジーがどのように導入され実績を挙げているのか実例を見 る の が 一 番 で あ る 。 技 術 者 の 方 々 は 一 般 に 専 門 用 語 を 頻 繁 に 使 われ る 。 専 門 用 語 のそれぞれにできる だけ一般の方が理解しやすいように簡潔な説明をつけていた だい た 。 そ の た め に 一 般 の も の よ り 読 み や す く 理 解 し や す く な っ て い る 。 今 年 3 月にNEDOとCCUJが日本のクリーンコールテクノロジーと題してその技術 の内容を分かりやすい図表を用いて説明している。今回の私の講演でもこの図表 を 利 用 さ せ て い た だく 。 8 .基 礎 研 究 は 何 故 重 要 か ? 1 9 9 5 年 頃 で あ っ た ろ う か 、 日 本 鋼 管 の 宮 津 氏 が ピッ ツ バ ー グ 石 炭 会 議 で 招 待 講 演 を さ れ た 。 私 は そ の 講 演 を 聞 か せ て い た だい た 。 皆 さ ん抱 腹 絶 倒 で コ ー ク ス製造と製鋼の関連を話された。内容は詳しく覚えていないがそのときマセラル 分 析 の 技 術 が コ ー ク ス 製 造 の 新 技 術 と し て ア メ リ カ か ら 導 入 さ れ 、 わが 国 が そ の 技術を習熟して世界に冠たるコークス製造技術に進化させたことを述べられた。 石 炭 分 析 に お け る マ セ ラ ル の 重 要 性 は 横 川 先 生 か ら も ず い ぶ ん指 摘 を 受 け た も の である。現在進行中のCCUJのシミュレーション研究の初期の物性研究でマセ ラル分析を取り入れないといけないと指摘を受けたのである。石炭の物性には必 ずマセラル分析値を入れるようには気をつけた。私はアメリカが石炭研究の基礎 研究をその後真剣にしなくなったのはこのマセラル分析にあると見ている。石炭 のような複雑な物質を分子レベルに追及しても意味がないという意見はいま だに 存在する。研究を進めれば進めるほどそういった考えが沸いてくる。本当にそう だろうか。ラーセン教授は自分のした無水マレイン酸と石炭の反応で起きる Diels Alder 反 応 に よ る 重 量 変 化 は 今 の 石 炭 構 造 で は 説 明 で き な い と 報 告 し た の は1997年である。その後これまで提案された石炭構造には疑問の目が向けら れ て い る よ う に 感 じ る 。Shinn が Illinois No.6 の 石 炭 構 造 を 分 子 量 約 一 万 で 表 現 第14回石炭利用技術会議 し た と き (5) 多 く の 研 究 者 は こ れ 以 上 の 石 炭 構 造 研 究 は い ら な い と 感 じ た こ と だ ろ う。しかしこれは瀝青炭ではなく亜瀝青炭の構造である。褐炭、亜瀝青炭、瀝青 炭 で は ず い ぶ ん化 学 構 造 は 違 う は ず で あ る 。 Shinn の モ デ ル 構 築 を よ く よ く 見 る と架橋結合に関する分析はない。石炭は多環芳香族が架橋結合で結ばれており芳 香環にはいろいろの官能基が結合している。有機化学の立場で言うと芳香環の反 応 性 は こ の 置 換 基 で 大 い に 変 わる 。 架 橋 結 合 も 芳 香 環 の 大 き さ で 反 応 性 は 当 然 変 わる 。 加 熱 す る と 、 あ る 石 炭 は 融 け あ る 石 炭 は 融 け な い の は 何 故 な の か 長 い 間 分 からなかったのである。実際、熱分解でこの性質の違う石炭を分析すると壊れた 成 分 の 構 造 は そ んな に 違 わな い 。 融 け る と い う こ と は 分 子 が 壊 れ て フ ラ グ メ ン ト 化したのであろう。それを支配するのは架橋結合である。壊れやすい架橋結合と 壊 れ に く い 架 橋 結 合 が あ る の で あ ろ う か 。ア メ リ カ の Stock と い う 方 は 1 9 8 3 年 に ル テ ニ ウム 触 媒 酸 化 と い う 技 術 を 石 炭 に 適 用 し た ら 架 橋 結 合 が わか る こ と に 気 づ い た (6) 。 1 9 9 2 年 私 た ちは こ の 研 究 を 知 ら ず に 赤 平 炭 構 造 を 提 出 し た (7) 。 Stock 教 授 は 1 9 9 3 年 、彼 ら の 得 た 貴 重 な 架 橋 構 造 の 情 報 を 用 い て Pocahontas No.3 炭 の 化 学 構 造 を 表 現 し 公 表 し た (8) 。私 た ちは 無 言 の 批 評 を 感 じ 、す ぐさ ま R I C O 反 応 に 取 り 組 ん だ。 し か し こ の 反 応 は 難 し く 3 年 で 退 却 し た 。 し か し い く つかの改良は見出していたのである。その後トルコの博士研究員の力を得て定量 性 に 富 む方 法 を 確 立 し た 。 1 9 9 8 年 に 提 出 し た 棗 庄 炭 の 化 学 構 造 は こ の 分 析 方 法 に 基 づ い て い る (9) 。 こ の 構 造 は ラ ー セ ン 教 授 の 言 う 問 題 点 を ク リ ヤ ー し て い る のである。 話を元に戻そう。何故ある石炭は融けてある石炭は融けないのか。成分はそん な に 変 わら な い の に 。 結 局 こ の 問 題 は 石 炭 の 持 つ 移 行 性 水 素 の 挙 動 に よ る こ と が 判 明 し た 。 そ し て 私 た ちは 次 の 図 ( 図 3 ) を 用 い て 説 明 し た の で あ る 。 こ の 説 明 は C C U J の CCT ジ ャ ー ナ ル に す で に 発 表 し た (10) 。 今 、 も う ひ と つ 面 白 い こ と が 分 か っ て い る 。 そ れ は 石 炭 が 乾 留 中 に 水 素 を 吸 い 込 ん だり 吐 き 出 し た り し て い る と い う こ と で あ る( 図 4 )。石 炭 の 詳 細 な 分 析 に よ っ て ま る で 生 き 物 の よ う に 高 温 の 中 で と る 挙 動 が 分 か っ て き た の で あ る (11) 。も し 私 た ちが マ セ ラ ル 分 析 で 石 炭 研 究 は 十 分 で あ る と 判 断 し て い た ら こ こ ま で は 明 ら か に で き な か っ た だろ う 。 そ してこの結果は乾留中の石炭の化学変化を手に取るように理解できることを可能 にしたの だ。そしてこの成果は如何に安価にコークスを作るかにも多くの指針を 与えているのである。 第14回石炭利用技術会議 ラジカルが安定化される 流動性高い H 移行性H 残存 Goonyella H 再固化 軟化溶融範囲 軟化溶融前 H H H H Witbank H 揮発成分 H 溶媒可溶成分 H H H ラジカルが再結合 流動性低い 移行性H 消費 図 3 Goonyella 炭 と Witbank 炭 の 研 究 に よ る 石 炭 の 軟 化 溶 融 機 構 の 説 明 ( CCT ジャーナル第 3 号) H H H2 H H H H -H2 H H H H2 -H2 H H H 図4 芳香族化合物の水素の受容と放出 9 .終 わり に 私は石炭の応用研究、石炭液化から石炭の研究をスタートしたが、もともと有 機金属化合物の合成と物性で学位をとっているので、いつの間にか石炭の基礎研 究の面白さに取り付かれ石炭物性の研究を続けてきた。そうした研究を許してく ださ っ た 多 く の 方 に は 深 い 感 謝 の 気 持 ちを 持 っ て い る 。 ど んな に 複 雑 な 石 炭 挙 動 も石炭に関する化学的かつ物理的な基礎知識を持っていると容易に理解できるよ う に 思 われ る 。 特 に 化 学 の 知 識 は 重 要 で あ る 。 一 方 、 私 は エ ネル ギ ー 資 源 学 会 誌 の 編 集 に 長 く 携 わる こ と が で き 、 こ こ で エ ネ ル ギー に か か わる 最 新 の 情 報 を 多 く の 研 究 者 や 企 業 の 方 か ら 教 え て い た だい た 。 大 き く エ ネ ル ギー を 俯 瞰 す る 方 法 を こ こ で 学 ん だ。さ て 石 炭 研 究 も い ま や 利 用 技 術 に 直 結 し た も の が 求 め ら れ て い る 。 全国87の国立大学も外部資金の獲得が重要で実用化研究がこれまで以上に求め ら れ て お り 、 今 ま で の サ イ エン ス 的 な 研 究 は 難 し く な っ て お り 先 日 の 日 本 エ ネ ル ギー 学 会 の 石 炭 科 学 会 議 で も 共 処 理 や シ ミ ュ レ ー シ ョ ン や 微 量 金 属 の 問 題 な ど 化 第14回石炭利用技術会議 学 工 学 的 な 色 彩 が 大 変 強 く な っ て い る こ と を 感 じ た ( 余 談 だが 平 成 1 3 年 度 の 石 炭科学会議の予稿集の頁数450、平成15年150、平成16年126と減少 し て い る )。し か も 石 炭 は 二 酸 化 炭 素 の 問 題 を 抱 え て い る の で 逆 風 が い っ そ う 身 に しみる展開になりそうであるが(11月28日の日経新聞では天然ガス「サハリ ン 2 」の プ ロ ジ ェ ク ト に ロ シ ア 国 営 企 業 の 参 加 が 第 一 面 に 報 道 さ れ て い る )、や は り資源的には安定しており石油資源の今の不安定さを見ていると、クリーンコー ル テ ク ノ ロ ジ ー の 開 発 ・ 広 報 の ほ か に 石 油 に 代 わり う る も の と し て 石 炭 ガ ス 化 を 中 心 と し た い わ ゆる 水 素 、 C 1 化 学 の コ ン プ レ ッ ク ス (Clean Coal Complex と 呼 ぼ う )を 作 り 上 げ る 必 要 が あ る の で は な い だ ろ う か 。今 ク リ ー ン コ ー ル テ ク ノ ロ ジ ーが開発検討されているが、外部から大変見えにくい。CCCでは高効率発電は も ちろ んの こ と 二 酸 化 炭 素 の 回 収 、 水 素 の 製 造 、 D M E 、 F ・ T 反 応 も 取 り 上 げ る べ き で あ ろ う 。 い わ ゆ る 世 間 に 見 え る も の が 今 は 大 切 な の で は な い か 。 Public Acceptance が 重 要 で あ る 。石 炭 利 用 に 今 は あ ま り に も 誤 解 が 多 す ぎる か ら 。ま た 石油や天然ガスの動向も重要で、これら資源に関してはUSGSと何らかの関係 を持っておくことが重要ではないかと考える。何故なら彼らは世界で最も正確な 情報を持っているからである。最後に今回こうした広い内容の講演の機会を与え て く ださ っ た C C U J の 各 位 に 深 く お 礼 を 申 し 上 げ る 。 参考文献 ( 1 ) Peter J. McCabe Energy Resources-Cornucopia or Empty Barrel? AAPG Bulletin , 1998, 82(11), p.2110-2134. (2) 茅 陽一 第 13 回 日 本 エネル ギー 学 会 大 会 講 演 要 旨 集 ( 2004) ( 3 ) Samuel P. Huntington 著 、 鈴 木 主 税 訳 「 文 明 の 衝 突 」集 英 社 ( 1998) ( 4 ) 野 村 、三 浦 、鈴 木 、薄 井 編「 2 1 世 紀 を 担 う ク リ ー ン コ ー ル テ ク ノ ロ ジ ー 」 大 阪 大 学 出 版 会 ( 2004) ( 5 ) John H. Shinn Fuel , 1984, 63 , 1176. ( 6 ) Leon M. Stock、 Kwok-tuen Tse Fuel , 1983, 62 , 974. ( 7 ) M. Nomura, K. Matsubayashi, T. Ida, S. Murata, Fuel Processing Technology , 1992, 31 , 169. ( 8 ) Leon M. Stock, John V. Muntean Energy Fuels , 1993, 7 , 704. ( 9 ) M. Nomura, L. Artok, S. Murata, A. Yamamoto, H. Hama, H. Gao, K. Kidena Energy Fuels , 1998, 12 , 512. (10)野村、村田、貴傳名 CCT ジ ャ ー ナ ル 第 3 号 ( 2002) http://www.ccuj.or.jp/seika/sei05.htm#3 ( 1 1 ) K. Kidena, M. Hiro, S. Murata, M. Nomura, Energy & Fuels , in press .
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