小児心身医学会ガイドライン集

漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン
日本東洋医学会 EBM 特別委員会 エビデンスレポート/診療ガイドライン・タスクフォース
以下の記載は、表題の診療ガイドラインから漢方製剤に関する記述を抽出したものです。診療にお
いて漢方製剤を使用される場合には、必ず、ガイドライン全体をお読みになり、その位置づけを正し
く理解された上で行ってください。
B-23 くり返す子どもの痛みの理解と対応
ガイドライン -小児心身医学会ガイドライン集日本小児心身医学会 くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン作成委員会
(委員長: 石崎優子 関西医科大学小児科)
南江堂、2009 年 6 月 20 日発行
■B23-1 漢方薬
疾患:
頭痛
引用など:
1) 日本東洋医学会学術教育委員会 (編) . 入門漢方医学 2002
2) 中村謙介. 和漢薬方意辞典 2004
3) 高山宏世. 腹証図解漢方常用処方解説 1995
4) 花輪壽彦. 漢方診療のレッスン増補版 2008
5) 林明宗. 東洋医学的治療による片頭痛の予防. 日本頭痛学会誌 2004; 31: 53-5.
有効性に関する記載ないしその要約:
『漢方治療は個人の体質・体調を重視し、心身全体の調和安定をはかる医療で、頭痛の治
療には、自覚症状や漢方医学的所見 (虚と実・陰と陽・気血水など) に留意し、証を見きわ
めて、漢方方剤を決定する。
子どもでは年少児ほど陰陽、虚実、気血水の病態がつかみにくく、症状や視診 (望診) 、客
観的所見などと共に家族からの情報収集が重要になる。
学童期・思春期の慢性頭痛に対して比較的よく使われる漢方方剤について虚実に分けて
示す。
初心者が漢方治療を行う場合、まず、子どもの体力の有無 (実証か虚証かの判定、胃腸が
丈夫かどうか、寒がりか否か) を見きわめる。実証の場合、多くは食欲旺盛で胃腸が丈夫
で暑がりである。』
『漢方医学的視点からみると、頭痛は冷えに由来する場合が多く、生活背景として陰性食品
(体を冷やす食品) を摂りすぎている場合が多いので、生活指導が重要である。
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漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン
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漢方薬の有効性を高めるためには腸内細菌の助けが必要であり、食事の影響を受けない
空腹時の服用が勧められる。漢方エキス剤の服用方法は、食前 (食事の 30 分以上前) あ
るいは食間 (食後 2~3 時間後) に熱い湯に溶いて服用するが、苦く飲みづらい場合は、オ
ブラートに包んだり、ココア、蜂蜜などに混ぜて飲ませてもよい。年長児に服用させる場合、
薬について納得のいく説明をし、どうしたらうまく飲めるかについて一緒に検討する。飲みづ
らくても薬の効果を納得できると、我慢して飲む子が多い。』
『漢方薬は指示どおりにきちんと服用することで、体がなじみよく効くようになるので、2 週間
から 1 カ月を目途に効果判定を行う。』
副作用に関する記載ないしその要約:
『漢方薬にアレルギーをもつ場合もあるので、好ましくない反応が出た場合は使用を中止す
る。』
■B23-2 葛根湯
疾患:
頭痛
有効性に関する記載ないしその要約:
『葛根湯は通常、風邪の初期に使われる。肩こりがひどく、体格ががっしりしていて、あまり
汗をかかないタイプには一度試みる必要がある。』
■B23-3 五苓散
疾患:
頭痛
有効性に関する記載ないしその要約:
『口渇があり、尿が少なく、胃部に振水音 (仰臥位にして指先で軽く叩いて聞こえるジャブジ
ャブ音) があれば、五苓散が有効である可能性が高い。』
■B23-4 桂枝人参湯、半夏白朮天麻湯、当帰芍薬散、真武
湯、呉茱萸湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯
疾患:
頭痛
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有効性に関する記載ないしその要約:
『冷えの度合いは、おおむね桂枝人参湯、半夏白朮天麻湯、当帰芍薬散、真武湯、呉茱萸
湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯の順に強くなる。』
■B23-5 桂枝茯苓丸、桃核承気湯
疾患:
頭痛
有効性に関する記載ないしその要約:
『思春期女子では、生理痛・生理不順に関係する頭痛が多い。生理痛と関連する頭痛とし
ては、桂枝茯苓丸が代表的であるが、生理痛が強く生理中にイライラが目立ち、赤ら顔で
便秘がち、がっしりした体格の女性には、桃核承気湯を考慮する。』
■B23-6 当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸+葛根湯
疾患:
頭痛
有効性に関する記載ないしその要約:
『冷え性で色白で華奢な女子で四肢がむくみやすいときには当帰芍薬散、冷え・のぼせが
あり、イライラして訴えが多く情緒不安定な場合には加味逍遙散を考慮する。生理痛が強く、
肩こりのひどい女性の場合、桂枝茯苓丸と葛根湯の併用が有効な場合もある。』
■B23-7 苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯、当帰芍薬散
疾患:
起立性調節障害
有効性に関する記載ないしその要約:
『苓桂朮甘湯や半夏白朮天麻湯や当帰芍薬散は起立性調節障害症状の例によく使われ
る。』
■B23-8 呉茱萸湯
疾患:
片頭痛
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有効性に関する記載ないしその要約:
『呉茱萸湯は片頭痛によく使われる方剤で胃部の振水音があり、嘔気があるなど五苓散と
似るが、頭痛が激烈で、顔色不良で冷えがあり、心窩部を指先で軽く叩くと振水音が聞こえ
る場合に用いる。』
■B23-9 真武湯
疾患:
頭痛
有効性に関する記載ないしその要約:
『冷え性で寒がりで顔色不良でめまいがある場合や、だるさを訴え横になりたがる場合に、
真武湯が有効な頭痛を疑う。』
■B23-10 呉茱萸湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯
疾患:
頭痛
副作用に関する記載ないしその要約:
『頭痛時によく使われる呉茱萸湯、あるいは当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、漢方薬の中でも
もっとも苦くて服用しにくい薬であることをあらかじめ伝え、初めての服薬で嫌にならないよう
に配慮することが望ましい。』
<以上 B23-1~B23-10 の記載として>
備考:
学童・思春期の頭痛に対する主な漢方方剤と選択の目安のチャートが記載されている。
■B23-11 漢方薬
疾患:
痛み
有効性に関する記載ないしその要約:
一般的な痛みへの薬物療法の表中に、特異的な治療薬: その他の項として、『漢方薬』の
記載がある。
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漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン
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■B23-12 桂枝加芍薬湯、小建中湯、人参湯、半夏瀉心湯
疾患:
過敏性腸症候群
有効性に関する記載ないしその要約:
過敏性腸症候群に対する薬物療法の表中に、漢方製剤の分類として、下記の記載がある。
『桂枝加芍薬湯 (すべての症状) 5.0~6.0g/日 分 2~3
小建中湯 (虚証、腹痛、下痢)
人参湯 (虚証、冷え、下痢)
7.5~10.0g/日 分 2~3
5.0~6.0g/日 分 2~3
半夏瀉心湯 (中間・実証) 5.0~6.0g/日 分 2~3 』
■B23-13 漢方薬
疾患:
小児慢性頭痛
有効性に関する記載ないしその要約:
小児慢性頭痛の治療アルゴリズムの薬物療法に、『頭痛の漢方療法』が記載されている。
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